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語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【保健】「新世代エコ洗剤」は本当にエコか ~AESの悪影響~

2016年02月29日 | 医療・保健・福祉・介護
 ①「ハッピー エレファント」(サラヤ)
 ②「緑の魔女」(ミマスクリーンケア)
 ③「ジョイコンパクト モイストケア」(プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン)
 ④「チャーミー マジカ」(ライオン)
 
 (1)最近、「新世代」の台所用洗剤が次々に発売されている。売り文句は「自然環境への影響が小さい」「手肌に優しい」など。従来の洗剤とそれほど違うのか?

 (2)①のボトルに貼られたシールには、「天然由来原料100%」と大きく書かれている。「植物原料100%の洗浄成分は優れた洗浄力と生分解性を発揮します」とも。
 これを見て「自然環境に影響の少ないエコな洗剤だ」と幻想を持つ人がいるかもしれない。
 しかし、その成分を見る限り、従来の台所用洗剤と大差ない。
 ①の主成分は、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム(AES)だ。AESは、代表的な合成界面活性剤の一種で、従来の台所用洗剤の主成分として使われている。
 サラヤは、原料が100%植物であることを強調しているが、原料が植物であろうと石油であろうと、それらから作られるAESは、化学的に同じだし、性質も同じだ。
 ことさら原料が植物であることを強調し、エコをうたうのは、何も知らない消費者を騙しているのだ。

 (3)AESは、皮膚刺激性の強い合成界面活性剤だ。
 AESの0.25%溶液をヒト29人に対して48時間貼付した実験では、
   6人にかすかな紅斑
   1人に明瞭な紅斑
   1人に強い刺激反応
が認められた。これは、『洗剤の毒性とその評価』【注1】に掲載されているデータだが、同書では「AESは高濃度で刺激性を示し、その閾値は1回の塗布で濃度5%以上、反復塗布では1%付近、1回閉鎖塗布では0.1%付近と推定される」と結論づけている。

 (4)AESは、石けん(脂肪酸ナトリウム)に比べると、魚に対する悪影響が大きい。AESの各魚種に対するLC50(半数致死濃度)は、次のとおり(数値が小さいほど悪影響が大きい)【注2】。
   ヤマメ 3.2mg/リットル
   コイ 5.6mg/リットル
   ボラ 1.5mg/リットル  
 これに対して、石けんの場合、5種類の魚種に対するLC50は、もっとも小さな値でも約17mg/リットルにすぎない【注3】。
 これらのデータからすると、AESは石けんに比べて生態系への影響がかなり大きい。

 (5)以上のほか、
  (a)ソホロリピッド(界面活性剤の一種)は、パーム油と糖から天然発酵母の発酵により得られたもので、完全に水と二酸化炭素に分解される、という。
  (b)アルキルポリグリコシドは、合成界面活性剤の中では、皮膚に対する刺激が少ない、とされている。
 しかし、主成分がAESである以上、基本的には従来の台所用洗剤とそれほど変わらない。

 (6)エコの国・ドイツ生まれを強調する②だが、主成分のポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステルナトリウムは、実はAESの一種だ。
 AESにはいくつか種類があって、その代表がポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステルナトリウムだ。
 もう一つの界面活性剤であるヤシ油脂肪アミドプロピルベタインは、ヤシ油から作られる合成界面活性剤で、皮膚や目に対する刺激性が弱い、とされている。
 しかし、主成分がAESである以上、①と同じことが癒える。

 (7)③と④の場合、従来の台所用洗剤と同様に、AESとポリオキシエチレンアルキルエーテル(POER)が配合されている。POERは分解されにくいため、魚などへの影響が大きい合成界面活性剤だ。

 (8)台所用洗剤は手荒れを起こし、河川や湖沼を汚染する、という一般通念がある。それを覆そうとして各メーカーは新製品を開発し、巧みなうたい文句で消費者の心をつかもうとしている。
 しかし、中身は従来の製品と基本的には変わっていないのだ。

 ①「ハッピー エレファント」(サラヤ)・・・・主成分のアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム(AES)は、皮膚刺激性があり、手が荒れる可能性がある。魚への悪影響も石けんより大きい。
 ②「緑の魔女」(ミマスクリーンケア)・・・・主成分のポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステルナトリウムは、皮膚刺激性があり、手が荒れる可能性がある。魚への悪影響も石けんより大きい。
 ③「ジョイコンパクト モイストケア」(プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン)・・・・主成分のアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、さらにポリオキシエチレンアルキルエーテルによる手荒れや魚への悪影響が懸念される。なお、③に含まれるアルキルアミンオキシドは合成界面活性剤の一種だが、蛋白変性を防ぐため、手荒れを起こしにくくする、とされている。
 ④「チャーミー マジカ」(ライオン)・・・・アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、さらにポリオキシエチレンアルキルエーテルによる手荒れや魚への悪影響が懸念される。なお、④に含まれるアルキルスルホン酸ナトリウムも合成界面活性剤の一種で、蛋白変性作用があるため、手荒れを起こす懸念がある。

 【注1】旧・厚生省環境衛生局食品化学課編著『洗剤の毒性とその評価』(日本食品衛生協会、1982)
 【注2】若林明子・元淑徳大学国際コミュニケーション学部教授
 【注3】日本水環境学会[水環境と洗剤研究委員会]編『非イオン界面活性剤と水環境』(技報堂出版、2000)

□渡辺雄二(科学ジャーナリスト)「「新世代エコ洗剤」のエコ度を見れば」(「週刊金曜日」2016年2月19日号)
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【食】GM鮭をきっかけに盛り上がる米国の表示運動

2016年02月28日 | 生活
 (1)2015年11月、米国で遺伝子組換え(GM)動物食品としては初めて、成長スピードを早めた鮭が米国食品医薬品局(FDA)によって承認された。
 すでにパナマの養殖場に輸送されているとみられている。パナマで育てられた後、切り身となって米国市場に流れるのは、(このまま何もなければ)2017年になりそうだ。
 米国で流通すれば、日本の食卓に登場するのも時間の問題となる。

 (2)これまで、GM食品というと、主に作物だった。
 これに魚が加わった。やがて豚、鶏なども登場する可能性がある。
 GM技術もゲノム編集技術が登場するなど、幅が広がってきた。
 GM食品の世界が、この鮭の登場をきっかけに大きく変わりつつあるといえる。

 (3)GM鮭が実際に米国市場に出回るのか。
 その帰趨を左右するのが、表示だ。
 米国では、消費者団体を中心にGM食品表示を求める運動が盛り上がってきた。その結果、2016年7月1日からバーモント州においてGM食品表示が始まることになった。小さな州で成立した法律だが、全米から注目を集めてきた。なぜなら、バーモント州だけで流通している食品は少なく、影響は他の州にも拡大するからだ。加えて表示を求める消費者運動に弾みをつけるからだ。

 (4)バイオ業界や食品業界は、バーモント州の表示をなきものにしようと攻撃を加えてきた。
 初め、裁判を起こしたが敗訴。
 ついで、国家レベルで無効にしようとする食品表示法案を連邦議会下院に提出し、2015年7月末に可決。上院に回され、その行方が注目されていたが、市民多数が議会に働きかけ、この法案は取り上げられないことになった。
 そのため、業界団体の意向を受けた議員は、包括的歳出法案の中に付帯事項という形で、州政府のGM食品表示法を無効にする条項を加えた。予算と絡めたこの方法は米国独自のものだが、最終的には、この付帯条項は削除されて法案は議決された。
 かくて、バーモント州におけるGM食品表示法の施行が確実になった。
 さらに、包括的歳出法は、FDAに対して、GM鮭の表示を義務化することを求め、そのための指針作成に加え、表示制度ができるまでGM鮭を販売してはいけない、としている。
 すでに発表されたFDAの表示指針では、GM鮭と通常の鮭は実質的に同等であり、義務表示は求めないことになっている。これでは、消費者は知ることも選ぶこともできなくなるため、今度はGM鮭の表示が焦点になっている。

 (5)このように米国で盛り上がりを見せているGM食品表示運動の拡大が、スーパーなどの食品販売店に影響をもたらした。
 すでに8,000を超える店が、GM鮭の不売を宣言している。不売の意思を明らかにしていないのは、ウォルマートくらいだ。

 (6)さらに、食品メーカーにも影響を与えた。
  (a)キャンベルスープ社・・・・GM原料を使わないことを宣言し、米国全土でGM食品表示を行うことを明らかにした。
  (b)製菓会社ハーシー・・・・2015年2月に主力商品である「ミルクチョコレートバー」と「キッス」でGM原料を使わないことを宣言し、2015年末までに実行した。
 大手の食品メーカーがこのような方針を出し始めたのは、GM鮭の承認に加え、バーモント州での表示制度がもたらす影響の大きさを物語っている。

□天笠啓祐「GM鮭をきっかけに盛り上がる米国の表示運動」(「週刊金曜日」2016年2月12日号)
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【堤未果】再生可能エネルギーを悪用する投資家たち

2016年02月27日 | 社会
 (1)2015年は、温室効果ガス排出削減を国際的コンセンサスとする潮流と共に幕を閉じた。
 12月12日、第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)が採択したのは、地球温暖化対策における2020年以降の新たな枠組みとなる「パリ協定」だ。
 同協定は、今世紀後半までの「ゼロ炭素化」を求める。温室効果ガス削減を先進国に課する京都議定書と違い、国連に加盟する全196ヵ国に対して法的拘束力を持つ。

 (2)2016年1月16日、この流れに沿うようにして、国際再生エネルギー機関(IRENA)が、再生可能エネルギーの使用が、気候変動だけでなく経済効果にも大きな影響を与えることを示す試算を発表した。
 2030年までに、風力、地熱、水力、太陽光、バイオマスなどのエネルギー使用率を現在の倍に増やすことで、世界の総GDP額が1兆3,000億ドル増加、雇用も増大し、化石燃料の輸入に係る政府支出も減るという。
 エネルギー輸入大国たる日本が、再生エネルギー使用率を倍増させた場合、そのGDP増加率はトップのウクライナについで160ヵ国中2位だ。

 (3)IRENAへの分担金出資比率が最も高い米国では、再生エネルギー利用率100%をめざす自治体が少なくない。
   カルフォニア州サンフランシスコは2020年、
   同サンディエゴは2035年
までに全ての電力を再生エネルギーに置き換えるという目標を掲げている。
 ハワイの州議会は、2045年までに州内の電力を100%再生エネルギーで賄う法案を可決した。

 (4)再生エネルギー自体への投資も増えている。
 2015年の世界における再生エネルギー向け投資額は、原油価格下落や欧州経済悪化にもかかわらず、2004年の6倍の3,293億ドルに達した。

 (5)米国の思想家レスター・ブラウン博士(環境問題の世界的権威)によれば、米国金融市場では30年以上前から原発への投資がない代わりに、再生エネルギーへの投資が数十億ドル規模で拡大しつつある。
 レスター・ブラウン博士(米国の環境問題思想家)によれば、米国の金融市場では、30年以上前から原発への投資がない代わりに、再生エネルギーへの投資が数十億ドル規模で拡大しているという。博士は、新著『大転換』の中で、再生エネルギーへの転換と投資が、今の時代にとっても経済的にも必然だと説く。

 (6)だが、新しい潮流は常にその規模と、生み出される利権の大きさが比例する。
 <例>2012年7月から日本で実施されている「再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)」もその一つ。太陽光発電で作られた電力を、電力会社が
   1kWh=42円
という諸外国の倍値で買い取ってくれる制度だ。この買取価格を決定した政府委員会の委員長は、その後、自然エネルギーの公益財団法人理事に就いた。
 当時史上最悪の原発事故を起こした日本で、反原発運動の急激な高まりと共に成立したこの制度は、外資規制が緩い日本で認可時点の買取価格が20年保証される、という破格の特権に外国人投資家たちが飛びついた。
 この制度が導入されて以来、外資を中心に、太陽光電力事業者が殺到した。
 だが、買取価格のコストが日本国民の電気料金に上乗せされる一方で、外資事業者の利益は国外へと流れる構造に、年々批判と見直しを求める声が高まっている。

□堤未果「再生可能エネルギーは重要。でも、それを悪用する投資家たちには気をつけろ ~ジャーナリストの目 第284回~」(「週刊現代」2016年2月20日号)
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 【参考】
【堤未果】【TPP】国家の枠組みが形骸化 ~医療への影響懸念~
【堤未果】「消費増税は福祉のため」という大ウソ ~大手マスコミの沈黙~
【堤未果】最も儲けるのは大国の産軍複合体 ~対テロ戦争の拡大~
【堤未果】【TPP】妥結で日本の農地は海外企業のものになる
【堤未果】情報漏洩・巨大利権など不安材料が多数 ~マイナンバー~
【堤未果】大衆を好戦ムードへ向かわせたマスコミの大罪
【堤未果】【ギリシャ】緊縮財政なのに軍事予算を削減できない理由
【堤未果】地方の介護現場を完全に無視 ~高齢者の「移住」提言~
【堤未果】本当に患者のためか疑問 ~国民健康保険法の改正~
【堤未果】サービス残業は絶対なくならない ~残業代ゼロ法案~
【堤未果】医師不足に拍車をかける国家戦略特区
【堤未果】「イスラム国」掃討と膨れあがる米の軍事費 ~いつか来た道~
【堤未果】格差大国アメリカの後を追う日本 ~金融緩和と年金改革~
【堤未果】米国社会の変質 ~ミズーリ州の武装警察~
【米国】国民皆保険という美名の裏で大増税開始 ~オバマケア~
【食】中国の鶏肉問題--流通のグローバル化で食の安全はますます困難に
【堤未果】「水道の民営化」が招く社会インフラ大崩壊 ~価格高騰に水質低下~
【堤未果】「社会保障のための増税」のウソ ~来るべき医療崩壊~
【堤未果】世界が危惧する日本のジャーナリズム ~「監視大国」米国以下~
【堤未果】アベノミクスと米国経済の危うい共通点
【食】中国の鶏肉問題--流通のグローバル化で食の安全はますます困難に
【政治】国家戦略特区法の危険性
【米国】と日本における民営化の悲惨 ~株式会社化する国家~  
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【食】「チャーハンの素」で健康被害 ~添加物~

2016年02月27日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)チャーハンは、
   ごはん+卵+豚肉+魚介類(エビやカニなど)+ネギ
など多彩な食材を炒めて作るため、
   三大栄養素(蛋白質・炭水化物・脂質)+ビタミン+ミネラル
を一品で摂ることができる。
 市販の「チャーハンの素」の売りは、
  (a)「焼き豚チャーハンの素」(永谷園)・・・・3分でパラッ!
  (b)「豚キムチ炒飯の素」(江崎グリコ)・・・・卵とごはんで3分半
と、どちらも「簡単&時短」だ。人気があるのは当然だ。

 (2)「チャーハンの素」には添加物が多数含まれているが、健康被害が懸念されているものも含まれている。
  (a)「焼き豚チャーハンの素」・・・・カラメル色素、カロチノイド色素、香料、調味料(アミノ酸等)
  (b)「豚キムチ炒飯の素」・・・・①具:着色料(カラメル色素)、カロチノイド色素、香料、調味料(アミノ酸等)、②たれ:カロチノイド色素、香料、調味料(アミノ酸等)、乳化剤

 (3)カラメル色素。
 茶色い色素を持つ。もっとも使用料の多い着色料。製法は大きく分けて4つある。
   Ⅰ:ブドウ糖や糖蜜などを加熱処理した焙焼法で得られる物質。
   Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ:亜硫酸化合物やアンモニウム化合物を加えて熱処理したもので、変異原性やビタミンBの破壊などが指摘されている。
 日本では、その危険性からⅡの使用が禁止されているが、「カラメル色素」のみの表示でからはⅠ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳのいずれを使用しているのか、消費者は知ることができない。安全志向の中で焙焼法が増えている、と言われているが、不純物の問題などがクリアできていない点もあって、カルメラ色素の添加は不安が大きい。

 (4)カロチノイド色素。
 アナトー色素とも呼ばれる既存添加物。
 主色素は、ビキシンおよびノルビキシンで、黄色~橙色の着色目的で添加される。カラメル同様、変異原性の疑いがある。

 (5)香料。
 一括表示の添加物。①天然と②合成がある。
 使用される物質は、危険性の高いものも含めて100品目以上あり、何品目か組み合わせて作られるのが一般的だ。
 香料添加の危険性として、
   ・喘息発作の主要原因
   ・偏頭痛の誘因
   ・うつの原因
などが指摘されている。

 (6)調味料(アミノ酸等)。
 旨みを出したり、塩味を和らげるために使用される添加物。
 「(アミノ酸等)」とは、グルタミン酸Naを水酸化Naで中和したものだ。
 調味料(アミノ酸等)添加の不安点として、
   ・多食によるしびれや頭痛
   ・食用油との加熱による変異原性物質の発生
   ・目の損傷
などが指摘されている。にもかかわらず、多くの加工食品に添加されている。

 (7)乳化剤。
 一括表示の添加物。「界面活性剤」の働きを持つため、「乳化、分散、浸透、洗浄、起泡、消泡、離型等の目的で使用される添加物及びその製剤」と定義される。
 香料と同じように、何種類かを併用して使用されることが多いが、一括表示のため、どの物質がどれくらい使われているか、不明だ。
 大豆レシチンが使用されている場合には、遺伝子組み換えの危険性もある。

 (8)その他・・・・パウダー類やエキス類の製造法、食品の素性などを考えると、「チャーハンの素」1袋には驚くような添加物が入っていることが容易に推定できる。

□沢木みずほ「「チャーハンの素」がなくてもチャーハンは作れるから・・・・」(「週刊金曜日」2016年2月19日号)
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【政治】選挙に勝利するためのテクニック ~『政治家やめます。』~

2016年02月26日 | ノンフィクション


(1)写真(pp.59-60)
 2年以内に行われる総選挙に向かって、早くも準備が始まった【注1】。まず、背広での写真撮影である。ポスター用はもちろんだが、名刺向けの写真だった。
 吊り下げで売っている背広を三着ほど買い込み、名古屋市の写真スタジオで撮影することになった。撮影に臨むにあたり、忠治がメガネに関してアドバイスしていた。
「いいか、ポスターを撮影するときは、レンズの入っていないフレームのものも用意するんだ。日頃使うメガネと同じフレームのものを、だ。レンズの入ったままのメガネで撮影するとな、顔の輪郭がレンズによって不自然に切れてしまう。わかるだろ? 記念撮影ならば、それも仕方ないが、多くの人に顔を覚えてもらう選挙ポスターでは、顔がアップになるだけに、その点も配慮しなければならない。メガネを掛けている政治家にとって、これは常識だぞ」

 【注1】1988年。

(2)名刺(pp.69-70、p.76)
 名刺を配るのも仕事、人に頭を下げるのも仕事、と度胸をつけるために動く統一郎の姿に、忠治はもちろん忠治の秘書、ブレーンらもあれこれ指示を出す。最初の2万枚はあっという間にはけ、そんなことを繰り返しているうちに、
「この名刺、もう3枚もらったよ。5枚ためたら、何かもらえる?」
「午前中に、半田市でもらったよ。また、くれるの?」
 と質問されることもあった。
 新たに写真入りの名刺を4種類、新調した。「今こそ道を」「日本の開発はまず道路から」「決断 今こそ道路を」「物の豊かさよりも心の豊かさを」と写真もそれぞれ変え、衆議院の解散までに10万枚配ることを目標にした。1日平均で300枚、約1年間名刺を配り続けることになる。

 11月3日【注2】にはこの日だけで2,405枚を配った。1日における最高記録だった。

 【注2】1988年。

(3)自民党の「虎の巻」(pp.65-66)
 2年以内には行われる総選挙の準備を自民党が進めてゆく中、統一郎の元に「虎の巻」が届けられた【注3】。正確には忠治の事務所に届けられたものだが、「自由民主党選挙対策委員会」が編纂する、文庫本より一回り大きいソフトカバーで250ページほどの「衆議院選挙実戦の手引」だった。参議院版も年ごとに発刊されている。
 現役の代議士に10冊送られてくるもので、第1章には「立候補決意から選挙まで」、第2章には「選挙のための実務準備」から第9章に「投票当日の注意」、第11章は「選挙運動における主な禁止事項」とあり、すべて「です・ます」調で解説していた。選挙違反事項の法律解説、電話の掛け方の事例、職業によって掛ける時間帯を考慮することなど、まさしく当代随一の選挙指南本といえた。
「これを候補者だけでなく、選挙に携わるアルバイトなどにも読ませるように」
 という党本部の意向であり、10冊以上必要な場合は1冊500円で頒布していた。 

 【注3】1988年。

(4)私家版「虎の巻」(pp.67-68)
 忠治が残した選挙の虎の巻がある。住宅地図だ。改訂版が出るたびに購入する選挙区の住宅地図に、「忠政会」に入会している者の家には赤鉛筆で○がしてある。南知多町に所用があれば南知多町の住宅地図を、武豊町に行くのならば武豊町の住宅地図を持参して、支持者の自宅に参上して、挨拶し、ポスターを手渡して「なにとぞ、よろしくお願いします」と依頼するのは常識だった。

(5)個別訪問(p.45)
 14回の当選を果たしているものの【注4】、終戦後、2回の出馬は涙を飲んだ。3回目となった選挙で初当選を飾ってから13回連続で当選を果たしたが、連続14回はならず、落選も経験した。革新の社会党に食われたのだ。75歳を超え、誰もが「引退か」と思いもしたが、忠治は歩行に困難をきたしている右足でも軽自動車を自ら運転し、右足を引きずって、知多半島を一軒一軒訪ねる地道な努力で、14回目の当選を果たした。

 【注4】主語は久野忠治。

(6)ネクタイ(pp.73-74)
 統一郎を神輿に乗せ、神輿を担ぐ陣営としては、リクルート事件も竹下も関係はないが、一般有権者にとってイメージ的に竹下派はよくない。総理総裁【注5】という援軍を得た丹羽陣営に対して、久野陣営は選挙区で名刺を配って顔を覚えてもらい、ミニ集会を活発に開く地道な作戦で勝負することにした。
 統一郎の意識には海部に対する対抗心めいたものもあった。その意識がネクタイに現れていた。海部は水玉模様のネクタイをトレードマークにしている。統一郎は、水玉模様のネクタイは一切使わず、斜めのストライプのものしか身につけなくなっていた。道路公団勤務のときは、ネクタイを締めるにしても地味めだったが、立候補を決意してからは派手めとなった。

 【注5】海部俊樹。引用した一節は、1989年8~9月日頃のことと推定される。

(8)記念撮影(p.74)
 自民党本部の幹事長室を統一郎は訪ね、幹事長の小沢【注6】に面会し、握手で記念撮影をした。この記念撮影は選挙区の支持者へのピーアールでもあり、「当選後はよろしくご指導をお願い致します」という儀礼的な意味もあった【注7】。

 【注6】小沢一郎。
 【注7】1989年9月14日より少し前のことと推定される。

(9)ミニ集会(p.75)
 巨人が日本シリーズで近鉄相手に3連敗から4連勝した10月【注8】には、田中角栄、福田赳夫、鈴木善幸といった首相経験者が引退を表明し、ひとつの時代に区切りが訪れた。これで「三角大福中」は中曽根が残ったが、その中曽根はリクルート事件で落選を恐れ、首相経験者ながらも群馬3区の選挙区を地道に歩き回り、戸別訪問、ミニ集会を開催し「三人寄れば中曽根が来る」とまで揶揄された。

 【注8】1989年。

(10)ポスター(p.80)
 当落に関係することではないといっても、公示当日の午前中に選挙区内のすべての掲示板に貼れるかどうか、は組織力を把握する目安として、マスコミはもちろん、他陣営も注目している。貼れなければ泡沫候補扱いにされかねないのである【注9】。

 【注9】第39回総選挙は、1990年2月3日届け出、2月5日公示。選挙運動は15日間である。

(11)選挙カー(p.86)
「おい、見ただろ! 61歳になる草川昭三先生が、雨の中を、窓から身を乗り出して手を振っておるんだぞ!」
「52歳になるお前が恥ずかしがっていてどうするんだ! 士気に影響する!」
『自民党公認 くの統一郎』と似顔絵の看板が屋根に付けられ、車体にはルビ入りで「久野統括一郎」と入った選挙カーに乗って初の「お願い」から戻るや、ブレーンたちに食ってかかられた。統一郎と同年齢ぐらいの者らが主だが、みな忠治の応援を手伝ってきて、選挙運動はベテランの域に達している。いくら統一郎が初出馬といっても、物足りなさを遠慮なく口にした。

(12)電柱(p.94)
 そんな中、統一郎は犬や猫と動くもの、さらには電柱が視界に入ると「人だっ!」と反射的に頭を下げるようになった。正確に言えば、この現象は選挙カーの助手席から身を乗り出して応援をしているときに感じるものではない。自民党の愛知県連が所有する、後部座席が屋根のないオープン式となっている演説用の特別仕様車に乗ったときに起こる現象であった。助手席に座れば視界が180度以内だが、このオープンカーに立つと、視界は左右の背後、地表も含めて180度以上に広く感じる。車はゆっくり動いていても、オープンカーは高さもあるだけに、統一郎は動くものが視界に入ると、「人がいるっ!」と咄嗟に頭を下げるが、「なんだ、犬か」「猫じゃないか」と何度も思い知らされた。人の姿も途切れ、一休みだな、と思う間もなく、視界に人が入ったと思い、慌てて頭を下げると、それは電柱だったということも多分にあった。

(13)演説会(pp.90-91)
 演説会でも容赦なく、ブレーンは注意する。
「どうして、会場の真ん中の花道を通らないんだ! 笑顔で歩きながら、両脇の人に握手しながら、演壇に向かうためなんだぞ!」
「どうして、両脇に行ってしまうんだ! 真ん中だぞ! 真ん中を歩け!」
 統一郎はハイ、と頭を垂れて、会場の真ん中を歩くが、ぎごちなさはどうしても抜けない。

(14)挨拶(p.89)
 挨拶文をバッチリ記憶したと思ったとき、バス旅行に行く遺族会の出発前に、バスの中で見送りの挨拶をすることになった。いざ、バスの中に入るや、気温の差で統一郎のメガネが曇った。メガネの曇りで人が見えなくとも、暗記した通り言うことができると思った途端、統一郎はすっかり挨拶文を忘れていた。それからというものは、場の雰囲気をつかみながら、あまりカッコイイことを言おうとするのはやめた。

□小林照幸『政治家やめます。 ~ある国会議員の十年間~』(角川文庫、2010)の「「第1章 初出馬」
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【政治】における義理、政治家に向く性格・向かない性格 ~『政治家やめます。』~

2016年02月26日 | ノンフィクション


 (1)「政治の世界もな、義理と人情で成り立っているんだ」
 忠治はこう言ったことがある。政局、時局が混乱を呈しながらも、党利党略、派閥の論理が優先される政治にあるこの言葉。義理と人情を重んじなければ、生きてゆけぬのが永田町という世界だった。

 (2)(1)は、『政治家やめます。』の序章に出てくる久野忠治の観察だ。
 義理とは何か。
 万国共通に「おれも遣るからおまえも寄こせ(Do ut des)」だと、きだ みのるは整理する(『にっぽん』、岩波新書、1967)。
 ここから「聞く義理はない」のごとき表現が生まれる。

 (3)ところで、(1)の引用に続き、小林照幸は次のように書く。
 「だが、それを貫き通すのには必然、統一郎は『いい人』にならなければいけないことを肌身を持って知った。統一郎の選挙区である知多半島の愛知8区、旧愛知2区で行われた市長選や県議会議員選挙の地方選でも、強く思い知らされた。自分を納得させて、偽る姿が必要だった」

 (4)自分を偽るとは、どういうことか。
 自衛隊は軍隊であり、違憲だ、と統一郎は考えていた。しかし、ガイドラインに反対の立場を持っていたとしても、自民党や派閥が成立に向けて動いている以上、反対の余地はなかった。そこまではまだいい。だが、自民党は自民・自由の連立に加えて公明党を抱きこんだ。1999年4月27日、3党の賛成多数でガイドライン関連法案は衆議院特別委員会で可決された。
 統一郎は「冗談じゃないよ」とつぶやいた。これまでボロクソに両党が言いあってきて、泥仕合をした仲だ。社会党と組む以上の禁じ手じゃないか。
 「『四月会』での活動、選挙区では公明党、創価学会を叩き、時にはコケにもしてきた。それが、こういう形にあるとは・・・・」

 (5)自民党の公明党抱きこみを見て、統一郎は思い出した。かつて県議会選挙で一議席に二人の自民党候補を立てるのは変だ、と解決策を求めたところ、「自民党とはそういうところなんだッ!」と一喝されたのだ。
 「政権を維持するためには何でもやる『何でもアリ』。それが自民党という、他の政党にはない強烈な個性だった。その個性があったからこそ、55年体制の単独政権もなし得たのであり、その個性がないから55年体制下で野党は野党だったわけだ。/統一郎は、3期9年となった代議士生活で55年体制の崩壊を見た。また、野党も『何でもアリ』となった。それを素直に受け取れる自民党の政治家も多いのだろうが、統一郎は、半田市長選の一件もあり、とても受け入れられなくなっていた。/(自分は政治家に向いていない。向いていないから政治家はもうやめよう。引退だ。疲れた・・・・)/永田町の出来事がいよいよ決意を固くしたのだ」

 (6)政治家に向かない性格・・・・。
 小林照幸は、久野統一郎のきちょうめんさにも、政治家に向かない性格を見てとる。 
 <統一郎は金の管理を自分で行うことにした。リクルート事件などで、献金には疑わしい視線が注がれるだけに、秘書任せは安心できなかった。(中略)この時点で既に統一郎は大物議員になる素養がなかったことになる。リクルート事件見られたように、大物議員は金の管理は自分では行わない。「秘書が」「妻が」と言ったように、万一のときに自らに危害が及ばないように、あらかじめ予防線を張っているのである。統一郎自ら管理するということは、根が真面目な統一郎の姿が反映されていたともいえる>

 (7)贅言ながら、自民党から国政をになう政治家として立つには、統一郎と逆の性格を持てばよい。いや、これは独り自民党に限った話ではあるまい。
 君子、危うきに近寄らず。金銭管理は細君か秘書に一任する。検察の質問には、知らぬ存ぜぬを通す。
 党や派閥が政敵と野合しても気にしない。むしろ、党や派閥が勢力を拡大すれば、結果として自分がのし上がる好機と見る。昨日の敵は今日の友、明日にはまた敵になるかもしれないが、明日は明日の風が吹く。
 そして、県会議員選挙において、それぞれ義理のある複数の候補が立った時、旗幟を鮮明にせず、いずれにも愛想をふりまくのだ。

□小林照幸『政治家やめます。 ~ある国会議員の十年間~』(角川文庫、2010)
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【政治】自民党代議士への有権者のタカり方・カネのむしり方

2016年02月26日 | ノンフィクション


 (1)「よろしくお願いますと言うんなら、メシぐらい食わせろ」
「お茶も飲ませんで、1票入れろ、はないだろう?」
「選挙事務所では飲み食いが自由なんだろ? 俺たちも招け。弁当ぐらいはあるだろ?」
 などと統一郎【注】の耳元に、こんな言葉が入るのだ。「1票ほしいなら、何かよこせ」「何かもらって当然」と見返りを求める構図。統一郎は政治不信の根源を見た気がしたのである。
 こんなこともあった。選挙事務所に戻ってきたポスター張りのボランティアの一団に「ご苦労様」の意から、おにぎりとお茶を出す。このとき、おにぎりを手にした一人が、「この中に入っているの?」と統一郎に冗談交じりとも取れるし、取れない口調で言う。
 「おにぎりの中に1万円札は入っているのか?」の意味である。
 だが、迷う統一郎に、14回の当選キャリアのある忠治【注】が、明快な言葉で慰留した。
「候補者は落選してもいいがな、生活を賭けた人は生きていけなくなるんだぞ。だから、皆、熱くなるんだ。わかるかな? 陣営にはそんな弱気を少しでも漏らしてみろ、結束にヒビが入っても、もう、まとめている時間なんてないんだぞ。マスコミに言ったら、大変なことになるからな」

 【引用者注】久野統一郎は二世議員。忠治はその父親。統一郎の初出馬における父子問答である。

 (2)飲み食いの炊き出しは、選挙を一緒に戦ってくれる支持者の慰労の役割も果たしているわけで、自民党選挙の典型例といえた。中曽根康弘、福田赳夫の両首相が立っていた旧群馬三区では、中曽根レストランと福田食堂がうまさを競った、という話があるほど、選挙期間中は支持者や1票をいれようか、という人を選挙事務所あるいは借りた場所で、飲み食いさせて選挙戦を競ってゆく。

 (3)こんなことがあって、カラオケ大会には、練習してから“本番”に臨んだのだった。
 こうした行事には1万円や5千円など、規模によって金額に差は出るものの、金を置いていかなければならない。1日に多ければ20件近くに熨斗袋を置いてゆく。
 しかし、統一郎のこの気配りも、忠治を知る者にとってはまだ不満のようだった。忠治はこうした催しには差し入れも怠らなかったからだ。
 圧巻だったのは、酒入りのオリジナルの5合徳利である。徳利の表に市川崑の筆による似顔絵と焼酎を引っ掛けた『久野チュー』と書かれている。優に1万本以上は作り、「忠政会」総会や国政報告会など各種催しで配布し、贈呈した。そのたびに「忠政会」の青年部長である栃尾や内田は、酒の入った徳利を何箱も運搬した。その他にも、ボールペン、鉛筆はもちろんのこと、揮毫を印刷した手拭い、団扇、扇子、タオル、ペナント、灰皿、カレンダー、手火鉢、傘など「久野チュー」の名前入りの忠治関連グッズが多数作られ、支持者らに配布されていった。
 昭和30年代、選挙前には、知多市に一門別の大相撲の巡業を招き、歌手の市丸を招いて公演を開催したり、といずれも入場無料で市民を集めて土俵上、舞台から忠治が挨拶した。
 自らの代議士生活20周年のときには、シングルレコードもつくった。

 (4)統一郎が代議士を引退した頃から、「久野統一郎君 ご苦労さん会」をやろう、との声が持ち上がり、琵琶湖畔への日帰りのバス旅行が企画されたのだった。企画を知らされたとき、統一郎は、
(あんな勝手なやめ方をしたけど、友達とは本当にありがたいものだ。ご招待してくれるんだな)
 と嬉しく思ったが、これは統一郎の勝手な思い込みだった。統一郎から感謝の旨を伝えられた世話役は、
「何をとぼけたことを言ってるんだ。勘違いするな。お前がお世話になった俺達に“ご苦労様でした”と言う会だぞ。選挙で俺達、いろいろと手伝ったんだからな、全額とは言わないが、みんなの旅費のある程度の負担はしろよ」
 と言ってきた。勝手にやめた手前、こう言われては返す言葉もない。

 (5)(1)~(4)は『政治家やめます。』からの引用だが、本書は選挙運動の収支も記す。
 統一郎の初出馬では、自民党から公認料および政治活動資金が各500万円支給された。このほか、陣中見舞いや寄付を合わせて合計2,671万円の収入があった。支出の合計は1,265万円余だった。支出のうち最多は人件費で、649万円余。ついで印刷費245万円余。食料費は43万円余だった。
 ちなみに、2回目は収入3,070万円、支出2,009万円余だった。

 (6)代議士となった統一郎の年収は、1,500万円前後だった。
 私設秘書は、交際費をふくめて一人当たり1千万円を要する。選挙区の事務所の維持費は、年間6千万円を要した。東京もふくめると1億円だ。

 (7)父親の後援会「忠政会」は、個人は1万円、法人は10万円の後援会費を募ることで維持してきたが、仮に千人の後援会員がいても、それだけでは機能しない。企業からの献金などがなくては、とても維持できない。「そして、金をもらったら、金をくれた人の意にはもう反せなくなる」
 統一郎の後援会「統友会」も同様に組織された。さらに、統一郎が議員に転職するまで勤めていた日本道路公団は後援会「道統会」、母校の早稲田大学の理工学部土木工学科の同窓生は「稲門会」をそれぞれ組織した。これらの後援会費、献金を足しても年間5千万円、6千万円にはならないこともある。「そんなとき、面倒を見るのは後援の企業と派閥の領袖たちである」
 派閥から、盆には「氷代」、暮には「餅代」が、それぞれ百万円の札束何本か代議士に渡される。年間約1千万円。この金が、選挙区での活動資金になる。統一郎は、父親の教えに従い、選挙区の有力者に分配した。

 (8)後援会の会費だけでは、政治活動資金としては苦しい、あと年間2千万円はほしい・・・・。
 そう統一郎がブレーンと相談した結果、パーティを開催することになった。
 パーティ券は1枚2万円。選挙区で金を集めるわけにはいかないから、東京で開く。パーティ券は一人当たり20万円を超えると、選挙管理委員会に収支報告しなければならない。大手企業や支援団体も心得ていて、買うのは20万円までだ。派閥の幹部は、まとめて50枚、100枚と買ってくれる。
 普段「世話になっている」中小企業や代議士には、「ご招待券」と刻印した券を送る。代議士仲間は、パーティ券と同額を「お祝い」の袋に入れて来場する。中小企業は、最低でも5万円、10万円は包んでくる。
 統一郎の初のパーティでは、4千万円が集まる見とおしとなった。

 (9)細かいことだが、自民党の勉強会こと部会では朝食が出る(秘書には出ない)。ご飯、みそ汁、生卵、野菜の煮付け、シラス干し、お茶が定番だ。
 野党は朝食を出さない。「与党と野党の違いは、そこだよ」と先輩議員。
 ・・・・ただし、野党となったとき自民党が朝食を提供したか否かは定かではない。

□小林照幸『政治家やめます。 ~ある国会議員の十年間~』(角川文庫、2010)
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【片山善博】選挙権年齢引下げと主権者教育のあり方

2016年02月26日 | ●片山善博
 (1)2016年夏の参議院選挙から、選挙権の年齢が18歳以上に引き下げられる。
 各地の高校では、それに備えて主権者教育ないし有権者教育が試みられている。
  (a)地方のある県立高校では、いわゆる模擬投票を演じた。教室を投票所と見立てて、そこに投票箱を設置し、投票立会人や選挙人名簿を確認し、投票用紙を交付する係などを配したうえで、生徒が順次投票した。
  (b)これも地方のある県で、県議会本会場を舞台に模擬議会を演じた。平素は県会議員の座る議席に選ばれた高校生が着席し、その中の数人が演壇から質問した。ここでは本物の知事が出席し、答弁に立った。

 (2)これから様々な試みがなされるはずなので予断は禁物だが、(1)-(a)、(b)の2事例を見るかぎり、片山教授が懸念し、恐れていた事態が進行しつつある。該当高校の教師はじめ関係者が悩みつつ取り組んでいるのを百も承知の上で、敢えてそう思わざるを得ない。
  (a)’主権者として選挙権を行使できることになる新有権者の自覚を促すとともに、実際の投票がどんなものか、疑似体験してもらう。
  (b)’選挙を通じて自分たちが選んだ代表が普段どんなことをやっているのか、それに近い場面を経験することを通じて政治に関心を持ってもらう。
 そんな狙いが(1)の事例には込められているにちがいない。しかし、いずれもピントがずれている。

 (3)なぜピントがずれた主権者教育なのか。
  (a)’’これを行うことにどんな意味があるのか。まさか、高校生たちが選挙に際し、投票所で働くことを想定して行っているわけではあるまい。初めての投票で戸惑わないよう配慮してのことだろう。しかし、投票の仕方が分からないから投票所に行くのを躊躇うというようなデータがあればともかく、そんな事情があるわけではないだろう。実際、老若男女の誰でも投票所に足を運べば、戸惑うことなく投票できるよう、昨今の選挙管理委員会は適切な案内表示を設定している。それでもわからない人には、その場のスタッフが懇切に教えてくれる。高校生に前もって投票所のまねごとをさせることなど無用で、貴重な時間を充てるのであれば、もっとほかにやるべきことがあるはずだ。
  (b)’’模擬議会も、いったい何のためにやるのか。ひょっとして高校生たちがいずれ被選挙権年齢に達した暁には地方議会議員をめざしてもらうよう、今から訓練しておくということか。それならそれで意味がないわけではないが、そもそも政治家の養成は学校が担う主権者教育の範疇を超えている。

 (4)(1)-(b)の模擬議会は、これまでも少なくない自治体で実施されてきた。「子ども議会」や「女性議会」だ。しかし、一般論としてだが、こうした模擬議会はやらないほうがいい。
 なぜか。
   ①模擬議会がモデルとしている現実の地方議会のありようは、決して模範とすべきでないからだ。議員が滔々と質問を読み上げる。それに対して、首長が、あらかじめ用意された答弁書を、これまたひたすら読み上げる。そんなやりとりに終始する議会は小学校の学芸会のようだ(揶揄)。
   ①’学芸会を貶しているのではない。学芸会は整然と決められたとおり進行されるのをよしとするが、言論の府として議論により合意形成を図るべき議会が、シナリオどおりの学芸会であってはならない、という意味だ。
   ①’’もし、身近な議会が学芸会ではなく、躍動的な運営がなされているのであれば、それを範として模擬議会を開くことには意義を見出せる。「一般論としてだが」と断った所以だ。
   ①’’’しかし、実際には、そうした議会は希有であり、全国の大方の自治体議会では相変わらず学芸会を演じ続けている。これからの民主政治の担い手である前途有為な高校生たちに、そんな学芸会のマネごとなど決してさせるべきではない。
   ②これまた一般論としてだが、「子ども議会」や「女性議会」が、ともすれば首長の人気取り施策の一環として利用されてきた節があるからだ。子どもや女性を議会に招じ入れ、そこで出された質問に懇切に答える姿勢を見せて、業界団体ばかりでなく、子どもや女性にも大いに関心をもって政治や行政を行っているとの好印象を与えるのだ。主権者教育が、あろうことか、権力者の人気取り施策のお先棒を担ぐようなことがあってはならない。

 (5)では、主権者教育、有権者教育として何が大切で、何をすればいいのか。
 それは一人ひとりが民主政治への関わりについて知見を広め、自覚をもってもらうことだ。それには国政よりも自分たちにより身近な自治体の問題をとりあげるのがわかりやすく、かつ、実践しやすいはずだ。
 <例>生徒たちの通学路である市道、その歩道における自転車通行のあり方を取り上げる。クラス委員が議員になったつもりで、規制の是非を論じてみるのだ。①スピードを出した自転車の怖さを感じることの多い徒歩通学の生徒は、歩道の自転車通行を禁止し、あるいは何らかの制限を加えてほしいと言うだろう。②一方、自転車通学の生徒は、それに難色を示すはずだ。
 たった一つのクラスの中でさえ、結論を得るのは容易なことではない。
 だが、民主政治とは、異なる考えを持つ成員の間で、常に合意を見出していかねばならない難儀な作業である。そのことを知るだけでもとても貴重な経験となる。
 もし、クラスで「市道である通学路の自転車通行に規制を設けるべき」との合意が得られたら、次は実践に移るのだ。早速、それを市議会への請願に持ち込むのだ。 
 総務省と文科省が作成した生徒用副教材「私たちが拓く日本の未来」では、どういうわけは「模擬請願」を勧めているが、そんなマネゴトではなく、真正の請願を出せばよい。

 (6)その高校生たちの請願に、市民の代表である市議会がどう向き合うか。
 適当にあしらうのか、それとも真摯に受け止めてくれるか。
 自分たちに意見陳述の機関が与えられるかどうか。
 そうした経験を通じて、高校生たちはわがまちにおける市民の位置づけや地方自治の実態を知るにちがいない。実は、それこそが生きた主権者教育なのだ。

□片山善博(慶應義塾大学教授)「選挙権年齢の引下げと主権者教育のあり方 ~日本を診る第76回~」(「世界」2016年3月号)
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 【参考】
【片山善博】TPPから見える日本政治の悪弊 ~説明責任の欠如~
【片山善博】政権与党内の議論のまやかし ~消費税軽減税率論議~
【経済】今導入すると格差が拡大する ~外形課税=赤字法人課税~
【片山善博】【沖縄】辺野古審査請求から見えてくる国のモラルハザード
【片山善博】川内原発再稼働への知事の「同意」を診る
【片山善博】違憲と不信で立ち枯れ ~安保法案~
【片山善博】【五輪】新国立競技場をめぐるドタバタ ~舛添知事にも落とし穴~
【片山善博】「ベトナム反中国暴動」報道への違和感
【片山善博】文部科学省の愚と憲法違反 ~竹富町教科書問題~
【片山善博】都知事選に見る政党の無責任 ~候補者の「品質管理」~
【片山善博】JR北海道の安全管理と道州制特区
【政治】地方議会における口利き政治の弊害 ~民主主義の空洞化(3)~
【政治】住民の声を聞こうとしない地方議会 ~民主主義の空洞化(2)~
【政治】福島県民を愚弄する国会 ~民主主義の空洞化(1)~
【社会】教育委員は何をなすべきか ~民意を汲みとる~
【社会】教育委員会は壊すより立て直す方が賢明
【社会】「教員駆け込み退職」と地方自治の不具合
【政治】何事も学ばず、何事も忘れない自民党 ~公共事業~
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【神戸】市営住宅を造らず新庁舎建設 ~被災住民の追い出し強行~

2016年02月25日 | 社会
【神戸】市営住宅を造らず新庁舎建設 ~被災住民の追い出し強行~

 (1)「借り上げ復興住宅問題」・・・・阪神・淡路大震災で不足した住居を、民間や都市再生機構(UR)から県や市が借り上げて提供していた。
 2015年9月、「シティハイツ西宮北口」(兵庫県西宮市)が最初の「20年の期限」を迎えた。
 神戸市では、「キャナルタウンウェスト」1~3号棟(JR兵庫駅のすぐ南)が同市で最も早く、1月30日に期限を迎えた。退去を拒否している3世帯に対し、神戸市はすでに退去通知書を出し、法廷闘争も辞さない構えだ。

 (2)丹戸郁江さん(72歳、キャナルタウン2号棟)は、乳癌で抗癌剤治療を続け、すぐ近くに住む妹夫妻の助けを頼って暮らしている。
 「癌は少し良くなったけど、頸椎の損傷で歩行困難になると言われている。妹と離れたら暮らしていけない。2年半前、私がインフルエンザで倒れている最中にインターホン越しに一方的に説明された」
 化粧品の販売事業をしていた丹戸さんは自宅が全壊し、避難生活の後、1996年3月にキャナルタウンに入居した。丹戸さんの持つ市との契約書には20年で退去しなくてはならないということは一切記載されていない。あくまで、市とURの契約が20年になっているだけだ。
 「年金生活ですが、いまも事業の負債が残っており、生活は苦しい」

 (3)神戸市は、要介護3以上、85歳以上には継続入居を認め、該当しない入居者には他の市営住宅をあっせん、転居を求めてきた。
 一方、UR側は「市の方針どおりにしているだけ」とするだけで、UR側から退去を求めているわけではないという。
 
 (4)神戸市は、2月2日、退去通告書を退去に応じない住民の弁護団に送った。「退去に応じなければ、1月31日以降、市がURに払う家賃に相当する損害賠償を求める」とし、訴訟も辞さない内容だ。
 市は、「応じて転居した他の入居者との不平等」を論拠にする。
 しかし、弁護団の吉田維一・弁護士は、
 「市は脅迫的なやり方で追い出すなど不公平なことを十分にやってきた。個人個人で事情は異なる。応じた人を引き合いに出して不平等論を持ち出すことは許されない」
と指摘しつつ、警戒する。
 「入居を続けられた時の市の経済的被害の説明も破綻している。今後も期限を迎えることになっている住宅を多く控え、市はここで譲歩するわけにはいかないと強硬になっている」

 (4)一方、神戸市は、2015年12月、長田区の再開発地区に新庁舎(県市の合同庁舎)を建設することを明らかにした。だが、具体的な内容もその予算も明確にしない。
 情報公開請求をしている出口俊一・兵庫県震災復興研究センター事務局長は、怒る。
 「市は、再開発の名目で長田区に高層ビルを乱立させ、現在、空き床だらけになっている。新庁舎を建てなくとも十分使えるはず。職員だけが来ればいい。都市部局に予算を訊いても、数十億くらいとか言うだけ」
 建設の大義名分は、「1,000人ほどの職員が来る。長田区にかつての賑わいを取り戻し、商店などを活性化したい」というものだ。
 そうであれば、庁舎内に食堂、喫茶店、売店などを造るのはおかしい。出口事務局長がその点を尋ねても、市は言葉を濁すばかり。三宮の本庁舎に入っているレストランなどと、すでに契約ができている可能性もある。
 染谷繁・中華料理店「雲来軒」(再開発地区)経営者はいう。「せっかく人が増えても庁舎内に食堂や喫茶店を造られては意味がない」

 (5)20年前に神戸市が民間からの借り上げをし、その後も借り上げ入居者のための市営住宅を造らなかったのは、「新たに建設すれば金がかかる。借り上げのほうが安い」という理由からだった。
 市営住宅は造らず、自分たちのための豪華庁舎などを造り続ける神戸市は、近く市主導で三宮の再開発にも着手する。
 災害を奇貨として再開発名目に不必要に豪華な箱モノ造りに邁進、ゼネコンに奉仕し続ける一方で、住民を追い出しにかかる。いったい行政の顔はどこに向いているのか。復興災害は拡大し続けている。

□粟野仁雄「市営住宅を造らず新庁舎建設 阪神・淡路大震災被災住民の「追い出し」を強行する神戸市」(「週刊金曜日」2016年2月12日号)
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 【参考】
【神戸】希望の星から転落した神戸空港 ~埋立開発行政の破綻③~
【神戸】「医療産業都市」の躓きと暴走 ~埋立開発行政の破綻②~
【神戸】生体肝移植失敗の原因 ~埋立開発行政の破綻~
【震災】神戸市長田区に見る「復興災害」(2)
【震災】神戸市長田区に見る「復興災害」(1)
【旅】復興を絵画で表現できるか ~平町公の試み~
【震災】二重ローン 得するのは銀行だけだ ~その対策~
【震災】復興のカギはパイプ役(住民の自主組織) ~神戸の過ち、奥尻の教訓~
書評:『神戸発 阪神大震災以後』
書評:『復興の闇・都市の非情 --阪神大震災、五年の軌跡』

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【古賀茂明】一線を越えた高市早苗総務相の発言

2016年02月25日 | 社会
 (1)高市早苗・総務大臣の電波停止発言が話題になっている。
 政治番組の政治的公平性などを定めた放送法第4条は、単なる倫理規範、すなわち、各社が自らを律するための努力目標に過ぎない。
 これに対し、自民党は、この条項がテレビ局に対して法的な義務を課す規範だとして、最終的にはこれを根拠に政府が電波を止めることもできるという解釈をしてきた。ただし、あまり露骨に言うと反発を受けるので、静かに裏で脅しに使うというのがこれまでのやり方だった。
 高市発言は、電波停止という「死刑」宣告もあるぞと声高に宣言したという意味で、これまでのラインを踏み越えるものだ。

 (2)そもそも、政治家である総務相が、「政治的公平性」を判断するということ自体が、完全な論理矛盾だ。
 先進国では、テレビ局の管理は、政府から独立した委員会などが行うのが常識だ。政府が直接番組内容に介入すると言ったら、すぐに憲法違反と言われるだろう。むろん、テレビ局は、こうした動きには。命懸けで対応していく。

 (3)しかし、日本のテレビ局は、個別のニュースでこの問題を取り上げても、せいぜいコメンテーターが異を唱え、メインキャスターが相槌を打つ程度だ。社としてどう考えるかについては、まったく発信しない。抗議するどころか、質問させされたくないというのが本音だろう。
 何しろ、日本のテレビ局の会長たちは、喜んで安倍晋三・総理と会食し、携帯の番号を交換して、電話がかかってくるのを見せびらかして喜ぶような連中だ。しかも、日本では、会社の経営陣が、平気で報道の現場に介入する。報道局長が、会長の意向に従って、政権批判をするコメンテーターをクビにしたり、スポンサー批判のニュースを抑えたりするのが日常茶飯事なのだ。
 こんな会社では、政権を怒らせるような報道をしようとすると、それは潰されるだけでなく、自分が飛ばされて、記事を書くことさえままならなくなる。だから、現場の記者たちは、政権批判に及び腰になる。

 (4)そもそもテレビ局に入った記者たちの多くは、権力を監視しようという意識さえ持っていない。先輩記者に対してどうして政権批判するのか、と批判する人さえいるらしい。
 つまり、上から下まで、ジャーナリストとしての最低限の倫理を持ち合わせていないのだ。
 そうした土壌を利用して、安倍政権は、ほぼ完全にテレビ局を制圧した。

 (5)2月12日に政府が発表した統一見解では、放送法4条が定める番組の政治的公平性の判断の際に、一つの番組だけで判断するのではなく、番組全体で判断するということを強調した。
 しかし、そんなことは本質的な問題ではない。
 むしろ、この見解は、同条を根拠にして政府が番組内容を統制できるという政府自民党の伝統的な考え方をあらためて確認しただけのものだ。

 (6)テレビ局は、むろん正式に抗議したりしないだろう。
 それ自体が、いかに日本のテレビ局が政府に従属しているかを示している。
 野党民主党も、政権時代にこの問題を放置し、自らもテレビ局に圧力をかけていた。
 日本に真の民主主義が根づくのは無理なのか。

□古賀茂明「一線を越えた高市発言 ~官々愕々第189回~」(「週刊現代」2016年3月5日号)
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 【参考】
【古賀茂明】シャープ救済劇と官僚の思惑
【古賀茂明】ルールが守られない国、日本 ~途上国体質~
【古賀茂明】争点化すべき企業献金問題
【古賀茂明】基地をめぐる二つの選挙
【古賀茂明】前半がバラマキ政策、後半が憲法改正 ~「先楽後憂」の今年~
【古賀茂明】玉虫色の民主・維新政策合意 ~平和主義も放棄?~
【古賀茂明】シリア空爆の裏にある真実 ~軍需産業の大儲け~
【古賀茂明】橋下市長の去就で、憲法改正が現実味?
【古賀茂明】空虚な「日本再興戦略」 ~成長戦略の挫折~
【古賀茂明】「なかったこと」にされた議事録 ~閣議決定の記録~
【古賀茂明】【原発】大手電力のエゴ丸出し
【古賀茂明】勝っても負けても安倍自民には得 ~大阪ダブル選
【古賀茂明】問題だらけの軽減税率 ~最悪の方向へ~
【古賀茂明】【原発】骨抜きの「ノーリターンルール」
【古賀茂明】アベノミクス「第二ステージ」 ~失敗を隠す官僚の常套手段~
【古賀茂明】難民と安倍とメルケルと ~ドイツと差がつく日本~
【古賀茂明】安保法成立の最大の戦犯
【古賀茂明】軽減税率、本当の問題 ~官々愕々第170回~
【古賀茂明】国民のために働く官僚の左遷 ~読売新聞の問答無用~
【古賀茂明】安倍首相の「積極的軍事主義」が根付くとき
【古賀茂明】電力自由化は進んでいない
【古賀茂明】【TPP】の漂流と「困った人たち」
【古賀茂明】安保法案の裏で利権拡大 ~原子力ムラ~
【古賀茂明】東芝の粉飾問題 ~「報道の粉飾」~
【古賀茂明】「反安倍」の起爆剤 ~若者たちの「反安倍」運動~
【古賀茂明】維新の党の深謀遠慮 ~風が吹けば橋下市長が儲かる~
【古賀茂明】腐った農政 ~画餅に帰しつつある「日本再興」~
【古賀茂明】読売新聞の大チョンボ ~違法訪問勧誘~
【古賀茂明】「信念」を問われる政治家 ~違憲な安保法制~
【古賀茂明】機能不全の3点セット ~戦争法案を止めるには~
【古賀茂明】維新が復活する日
【古賀茂明】戦争法案審議の傲慢と欺瞞 ~官僚のレトリック~
【古賀茂明】「再エネ」産業が終わる日 ~電源構成の政府案~
【古賀茂明】「増税先送り」「賃金増」のまやかし ~報道をどうチェックするか~
【古賀茂明】週末や平日夜間に開催 ~地方議会の改革~
【古賀茂明】原発再稼働も上からの目線で「粛々と」 ~菅官房長官~
【古賀茂明】テレビコメンテーターの種類 ~テレ朝問題(7)~
【報道】古賀氏ら降板の裏に新事実 ~テレ朝問題(6)~
【古賀茂明】役立たずの「情報監視審査会」 ~国民は知らぬがホトケ~
【報道】ジャーナリズムの役目と現状 ~テレ朝問題(5)~
【古賀茂明】氏を視聴者の7割が支持 ~テレ朝問題(4)~
【古賀茂明】氏、何があったかを全部話す ~テレ朝「報ステ」問題(3)~
【古賀茂明】氏に係る官邸の圧力 ~テレ朝「報道ステーション」(2)~
【古賀茂明】氏に対するバッシング ~テレ朝「報道ステーション」問題~
【古賀茂明】これが「美しい国」なのか ~安倍政権がめざすカジノ大国~
【古賀茂明】原発廃炉と新増設とはセット ~「重要なベースロード電源」論~
【古賀茂明】改革逆行国会 ~安倍政権の官僚優遇~
【古賀茂明】安部総理の「大嘘」の大罪 ~汚染水~
【古賀茂明】「政治とカネ」を監視するシステム ~マイナンバーの使い方~
【古賀茂明】南アとアパルトヘイト ~曽野綾子と産経新聞~
【古賀茂明】報道自粛に抗する声明
【古賀茂明】「戦争実現国会」への動き
【古賀茂明】日本人を見捨てた安倍首相 ~二つのウソ~
【古賀茂明】盗人猛々しい安倍政権とテレビ局
【古賀茂明】安倍政権が露骨な沖縄バッシングを行っている
【古賀茂明】官僚の暴走 ~経産省と防衛省~
【古賀茂明】安倍政権が、官僚主導によって再び動き出す
【古賀茂明】自民党の圧力文書 ~表現の自由を侵害~
【古賀茂明】自民党が犯した最大の罪 ~自民党若手政治家による自己批判~
【古賀茂明】解散と安倍政権の暴走 ~傾向と対策~
【古賀茂明】解散と安倍政権の暴走
【古賀茂明】文書通信交通滞在費と維新の法案
【古賀茂明】宮沢経産相は「官僚の守護神」 ~原発再稼働~
【古賀茂明】再生エネルギー買い取り停止の裏で
【古賀茂明】女性活用に本気でない安部政権
【古賀茂明】【原発】中間貯蔵施設で官僚焼け太り
【古賀茂明】御嶽山で多数の死者が出た背景 ~政治家の都合、官僚と学者の利権~
【古賀茂明】従順な小渕大臣と暴走する官僚 ~原発再稼働~
【古賀茂明】イスラム国との戦争 ~集団的自衛権~
【古賀茂明】「地方創生」は地方衰退への近道 ~虚構のアベノミクス~
【古賀茂明】【原発】原子力ムラの最終兵器
【古賀茂明】【原発】凍らない凍土壁に税金を投入し続けたわけ
【古賀茂明】【原発】勝俣恒久・元東電会長らの起訴 ~検察審査会~
【古賀茂明】安倍政権の武器輸出 ~時代遅れの「正義の味方」~
【古賀茂明】またも折れそうな第三の矢 ~医薬品ネット販売解禁の大嘘~
【古賀茂明】「1年後の夏」に向けた布石 ~集団的自衛権~
【古賀茂明】法人減税で浮き彫りにされる本当の支配者 ~官僚と経団連~
【古賀茂明】都議会「暴言問題」の真実 ~記者クラブによる隠蔽~
古賀茂明】集団的自衛権とワールドカップ
【古賀茂明】野党再編のカギは「戦争」
【古賀茂明】電力会社の歪んだ「競争」 ~税金をもらって商売~
【原発】【古賀茂明】規制委員会人事とメディアの責任
【古賀茂明】医師と官僚の癒着の構造
【古賀茂明】電力会社「値上げ救済」の愚 ~経営難は自業自得~
【古賀茂明】竹富町「教科書問題」の本質 ~原発推進教科書~
【古賀茂明】安部総理の「11本の矢」 ~戦争国家への道~
【古賀茂明】理研は利権 ~文科官僚~
【古賀茂明】「武器・原発・外国人」が成長戦略 ~アベノミクスの今~
【古賀茂明】マイナンバーを政治資金の監視に ~渡辺・猪瀬問題~
【古賀茂明】東電を絶対に潰さずに銀行を守る ~新再建計画~
【古賀茂明】「避難計画」なき原発再稼働
【古賀茂明】「建設バブル」の本当の問題 ~公共事業中毒の悪循環経済~  
【古賀茂明】安倍政権の戦争準備 ~恐怖の3点セット~
【原発】【古賀茂明】利権構造が完全復活 ~東日本大震災3年~
【古賀茂明】アベノミクスの限界 ~笑いの止まらない経産省~
【古賀茂明】労働者派遣法改正前にすべきこと
【古賀茂明】時代遅れな、あまりにも時代遅れな ~安部政権のエネルギー戦略~
【古賀茂明】森元首相の二枚舌 ~オリンピックの政治的利用~
【古賀茂明】若者を虜にする「安部の詐術」 ~脱出の道は一つ~

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【丸谷才一】短編小説から長編小説へ ~文学史~

2016年02月24日 | ●丸谷才一
 (1)近代日本文学は、小説中心であるとよく言われる。代表的な文学者を三人あげるなら、夏目漱石、谷崎潤一郎および大岡昇平だ。
 日本の文学では、詩や戯曲や批評の位置は低い。その理由ないし原因はいろいろあるが、19世紀ヨーロッパという小説の時代に刺戟されて成立したことが大きい。
 ただし、英米では小説を長編小説と短編小説に分けるが、わが国では普通こんな細分をせず、漠然と「小説」と呼ぶ。

 (2)わが近代文学は、長編小説作家漱石から本式に出発する形をとりながら、少なくとも戦前は長編小説を支配的形式とすることができなかった。文学の中心部にあるのは、短編小説であった。ここでいう支配的形式とは、平安朝日本の和歌とか、一番人気のある文芸形式で、俊秀がそこに群がることになるものをいう。

 (3)大正文学最高の人気作家芥川龍之介は、短編小説の名手で、どうしても長編小説を書くことができなかった。
 戦前日本の文学的権威は、志賀直哉と谷崎潤一郎の二人に定まっていたが、短編小説部門の志賀が圧倒的に格が高かった。長編作家である谷崎が優位に立つようになったのは、戦後のことである。

 (4)この逆転の前史は長かった。
 大正時代以来、作家たちは何とかして漱石につづこうと努め、果たさなかった。
 昭和の初期、横光利一は、漱石と同様、新聞小説という形式を用いて長編小説を書こうと志し、自己援護のため『純粋小説論』という論旨混沌たる評論を書いたりした。この評論の幼さは、あの時代の日本において長編小説を書く困難をよく示すものだった。これに対する囂々たる反響は、当時の日本社会が長編小説を熱望している証だった。
 読者は、紋切り型の私小説的短編小説、社会性と物語性を欠く作家生活の報告に飽きていた。作家の側にも、そこから脱出を志す意欲が激しかった。西欧風の本格的な構造をもつ長編小説への要望が大きかった。
 この気運にのって、高見順『故旧忘れ得べき』『如何なる星の下に』、阿部知二『冬の宿』、石川淳『白猫』、坂口安吾『吹雪物語』、伊藤整『得能五郎の生活と意見』などが出たが、作家たちはまだ私小説の理念と技法に縛られていた。また、作中人物の原型となり、読者となるはずの知的な中産階級の数が少なかった。執筆の自由への大幅な制約その他の事情もあって、この傾向は底流となるにとどまった。
 長編小説への動向があらわになったのは、戦後のことである。たとえば、伊藤整『鳴海仙吉』のように昭和10年代の作家たちが意欲を新たにして長編小説をふたたび手がけた。野上弥生子のような大家が、昭和12年以来中絶していた長編小説を書きついで、やがて『迷路』を完結した。
 そして、昭和10年代の長編小説運動を遠望していた青年たちが、西洋小説の教養と清新な野心にみちて、この形式に挑んだ。いわゆる戦後派作家たちの作品がそれだ。大岡昇平『野火』、三島由紀夫『仮面の告白』、野間宏『真空地帯』が先頭に立つ。このころから、日本文学の支配的形式は、短編小説ではなくて長編小説となった。主要な発表の媒体は、雑誌ではなくて単行本、それも書きおろしになった。小説を論評する主な場は、文芸時評ではなくって書評に転じた。
 そのあおりで、日本文学全体の相貌が改まった。短編小説を得意とする作家たちも長編小説を手がけなければならない格好になった。
 夏目漱石が素人好みの作家ではなく、一般の知識人にも文壇人にも認められる国民作家になったことも、小説家の典型として仰がれる人物が志賀から谷崎へと移行したのも、これに伴う現象だった。

 (5)これが大江健三郎や村上春樹の登場する以前の文学史である。
 今日、大正文学的ないし昭和戦前的な、自己身辺の事情を曲もなく告白する私小説的短編小説は、むしろ例外的な傍流とされている。大江や村上のように趣向のある長編小説で全世界的な読者を相手取るのが正統的で、日本の読者だけを対象とするのは、地方文学的態度とされているだろう。

□丸谷才一『星のあひびき』(集英社、2010/後に集英社文庫、2013)の「わたしと小説」
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【佐藤優】情報のプロならどうするか ~「私用メール」問題~

2016年02月24日 | ●佐藤優
 (1)米国大統領選挙で民主党の候補になる可能性が高いとみられているヒラリー・クリントン・前国務長官が、在任中に公務に私用メールアドレスを使った問題が深刻化している。
 <国務省は(2月)13日、同氏が当時送受信したメール551通を新たに公開した。今回は「極秘」事項はないが、この問題で元情報機関幹部から出馬辞退を求める声も出ており、風当たりはさらに強まりそうだ。(中略)
 メールには、日本の尖閣諸島国有化で悪化した日中関係改善に向け、日中双方の有識者を招く会合を開くかどうか国務省幹部に打診され、クリントン氏が実行に移すよう指示したものも含まれていた。
 国務省は、今月末までに残りの約9千ページ分を公開するとしている。1月に公開されたメールには最高機密の「極秘」指定が含まれていたことから、オバマ政権で国防情報局長官だったフリン氏は、最近のインタビューで「私なら(大統領選を)辞退して恐らく監獄に入るだろう」と非難した>【注1】

 (2)日本では、この問題の深刻さが理解されていない。米国国務長官は、国際政治、軍事、経済に重要な影響を与える。中国、ロシア、イランなどのインテリジェンス機関が、クリントン氏のメールアドレスを入手することはそれほど難しくない。
 報道では明らかにされていないが、クリントン氏は私用メールにも暗号をかけていなかったと推定される。それならば、初歩的な通信傍受技術を持っているインテリジェンス機関であれば、クリントン氏が私用メールを用いて行った秘密通信の内容を入手することができた。
 <この問題では、機密情報の取り扱いや漏洩の可能性について、連邦捜査局(FBI)も捜査を進めている>【注2】
 とのことだが、事態はきわめて深刻だ。

 (3)それとともに、米政府のサイバー・セキュリティ体制にも深刻な問題がある。国務長官が私用メールアドレスを使用していることに、国務省やホワイトハウスの職員が誰一人気付かなかった、ということは考えられない。誰もそのことを問題にせず、クリントン氏の私用メールアドレスの使用を止めさせなかったのは不自然だ。
 ①米政府関係者のサイバー・セキュリティに対する感覚が鈍感であるか、あるいは②問題を指摘してクリントン氏の不興を買うことを恐れ、誰も必要な指摘をしなかったか、のいずれかだ。
 いずれにせよ、お粗末な話だ。

 (4)日本の閣僚のセキュリティ感覚は大丈夫か。
 私用メールアドレスを用いて公務の連絡を行っている政治家や高級官僚が、一人もいない、とは断言できない。
 ちなみに、インテリジェンスのプロたちは、本当に重要な機密情報を伝達する場合は、メールはもとより極秘の暗号がかかった電報も用いない。ワープロではなく、タイプ打ちか手書きの手紙をクーリエ(外交伝書使)を通じて手渡す。情報漏れを防止するため、あえてローテクを用いるのだ。

 【注1】記事「クリントン氏のメール551通公開 出馬辞退求める声も」(朝日新聞デジタル 2016年2月15日)
 【注2】前掲記事。

□佐藤優「「私用メール」問題 情報のプロならどうするか ~佐藤優の人間観察 第147回~」(「週刊現代」2016年3月5日号)
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 【参考】
【佐藤優】今後、起こりうる財政破綻 ~対応策を学ぶ~
【佐藤優】テロリズムに対する統一戦線構築 ~カトリックとロシア正教~
【佐藤優】北方領土「出口論」を安倍首相は訪露で訴えよ
【佐藤優】社会の価値観、退行する社会
【佐藤優】夫婦の微妙な関係、安倍政権の内在的論理、警察捜査の正体
【佐藤優】ラブロフ露外相の真意 ~日本政府が怒った「強硬発言」~
【佐藤優】プーチンが彼を「殺した」のか? ~英報告書の波紋~
【佐藤優】情緒ではなく合理と実証で ~社会の再構築~
【佐藤優】中曽根康弘、21世紀の資本主義分析、北樺太の石油開発
【佐藤優】北朝鮮による核実験と辺野古基地問題
【佐藤優】日本人の思考の鋳型、死刑問題、キリスト教と政治
【佐藤優】サウジとイランと「国交断絶」の引き金になった男 ~ニムル師~
【佐藤優】中国株式市場の怪しさ、イノベーションの障害、ホラー映画の心理学
【佐藤優】矛盾したことを平気で言う「植民地担当相」 ~島尻安伊子~
【佐藤優】普天間基地移設問題の本質、外務省犯罪黒書、老後に快走!
【佐藤優】シリア難民が日本へ ~ハナ・アーレント『全体主義の起源』~
【佐藤優】陰険で根暗な前任、人柄が悪くて能力のある新任 ~駐露大使~
【佐藤優】世界史の基礎を身につける法、決断力の磨き方
【佐藤優】国内で育ったテロリストは潰せない ~米国の排外主義的気運~
【佐藤優】沖縄が敗訴したら起きること ~辺野古代執行訴訟~
【佐藤優】知を身につける ~行為から思考へ~
【佐藤優】プーチンの「外交ゲーム」に呑まれて
【佐藤優】世界イスラム革命の無差別攻撃 ~日本でテロ(3)~
【佐藤優】日本でもテロが起きる可能性 ~日本でテロ(2)~
【佐藤優】『日本でテロが起きる日』まえがきと目次 ~日本でテロ(1)~
【佐藤優】小泉劇場と「戦後保守」・北方領土、反知性主義を脱構築
【佐藤優】【中東】「スリーパー」はテロの指令を待っている
【佐藤優】東京オリンピックに係るインテリジェンス ~知の武装・抄~
【佐藤優】分析力の鍛錬、事例、実践例 ~知の教室・抄(3)~
【佐藤優】武器としての教養、闘い方、対話の技術 ~知の教室・抄(2)~
【佐藤優】知的技術、情報を拾う・使う、知をビジネスに ~知の教室・抄(1)~
【佐藤優】多忙なビジネスマンに明かす心得 ~情報収集術(2)~
【佐藤優】多忙なビジネスマンに明かす心得 ~情報収集術(1)~
【佐藤優】日本のインテリジェンス機能、必要な貯金額、副業の是非 ~知の教室~
【佐藤優】世の中でどう生き抜くかを考えるのが教養 ~知の教室~
【佐藤優】『知の教室 ~教養は最強の武器である~』目次
【佐藤優】『佐藤優の実践ゼミ』目次
『佐藤優の実践ゼミ 「地アタマ」を鍛える!』
 ★『佐藤優の実践ゼミ 「地アタマ」を鍛える!』目次はこちら
【佐藤優】サハリン・樺太史、酸素魚雷と潜水艦・伊400型、飼い猫の数
【佐藤優】第2次世界大戦、日ソ戦の悲惨 ~知を磨く読書~
【佐藤優】すべては国益のため--冷徹な「計算」 ~プーチン~
【佐藤優】安倍政権、沖縄へ警視庁機動隊投入 ~ソ連の手口と酷似~
【佐藤優】世の中でどう生き抜くかを考えるのが教養 ~知の教室~
【佐藤優】冷静な分析と憂国の情、ドストエフスキーの闇、最良のネコ入門書
【佐藤優】「クルド人」がトルコに怒る理由 ~日本でも衝突~
【佐藤優】異なるパラダイムが同時進行 ~激変する国際秩序~
【佐藤優】被虐待児の自立、ほんとうの法華経、外務官僚の反知性主義
【佐藤優】日本人が苦手な類比的思考 ~昭和史(10)~
【佐藤優】地政学の目で中国を読む ~昭和史(9)~
【佐藤優】これから重要なのは地政学と未来学 ~昭和史(8)~
【佐藤優】近代戦は個人の能力よりチーム力 ~昭和史(7)~
【佐藤優】戦略なき組織は敗北も自覚できない ~昭和史(6)~
【佐藤優】人材の枠を狭めると組織は滅ぶ ~昭和史(5)~
【佐藤優】企画、実行、評価を分けろ ~昭和史(4)~
【佐藤優】いざという時ほど基礎的学習が役に立つ ~昭和史(3)~
【佐藤優】現場にツケを回す上司のキーワードは「工夫しろ」 ~昭和史(2)~
【佐藤優】実戦なき組織は官僚化する ~昭和史(1)~
【佐藤優】バチカン教理省神父の告白 ~同性愛~
【佐藤優】進むEUの政治統合、七三一部隊、政治家のお遍路
【佐藤優】【米国】がこれから進むべき道 ~公約撤回~
【佐藤優】同志社大学神学部 私はいかに学び、考え、議論したか」「【佐藤優】プーチンのメッセージ
【佐藤優】ロシア人の受け止め方 ~ノーベル文学賞~
【佐藤優】×池上彰「新・教育論」
【佐藤優】沖縄・日本から分離か、安倍「改憲」を撃つ、親日派のいた英国となぜ開戦
【佐藤優】シリアで始まったグレート・ゲーム ~「疑わしきは殺す」~
【佐藤優】沖縄の自己決定権確立に大貢献 ~翁長国連演説~
【佐藤優】現実の問題を解決する能力 ~知を磨く読書~
【佐藤優】琉球独立宣言、よみがえる民族主義に備えよ、ウクライナ日記
【佐藤優】『知の教室 ~教養は最強の武器である~』目次
【佐藤優】ネット右翼の終わり、解釈改憲のからくり、ナチスの戦争
【佐藤優】「学力」の経済学、統計と予言、数学と戦略思考
【佐藤優】聖地で起きた「大事故」 ~イランが怒る理由~
【佐藤優】テロ対策、特高の現実 ~知を磨く読書~
【佐藤優】フランスにイスラム教の政権が生まれたら恐怖 ~『服従』~
【佐藤優】ロシアを怒らせた安倍政権の「外交スタンス」
【佐藤優】コネ社会ロシアに関する備忘録 ~知を磨く読書~
【佐藤優】ロシア、日本との約束を反故 ~対日関係悪化~
【佐藤優】ロシアと提携して中国を索制するカードを失った
【佐藤優】中国政府の「神話」に敗れた日本
【佐藤優】日本外交の無力さが露呈 ~ロシア首相の北方領土訪問~
【佐藤優】「アンテナ」が壊れた官邸と外務省 ~北方領土問題~
【佐藤優】基地への見解違いすぎる ~沖縄と政府の集中協議~
【佐藤優】慌てる政府の稚拙な手法には動じない ~翁長雄志~
【佐藤優】安倍外交に立ちはだかる壁 ~ロシア~
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【佐藤優】日中を衝突させたい米国の思惑 ~安倍“暴走”内閣(10)~
【佐藤優】国際法を無視する安倍政権 ~安倍“暴走”内閣(9)~
【佐藤優】日本に安保法制改正をやらせる米国 ~安倍“暴走”内閣(8)~
【佐藤優】民主主義と相性のよくない安倍政権 ~安倍“暴走”内閣(7)~
【佐藤優】官僚の首根っこを押さえる内閣人事局 ~安倍“暴走”内閣(6)~
【佐藤優】円安を喜び、ルーブル安を危惧する日本人の愚劣 ~安倍“暴走”内閣(5)~
【佐藤優】中小企業100万社を潰す竹中平蔵 ~安倍“暴走”内閣(4)~
【佐藤優】自民党を操る米国の策謀 ~安倍“暴走”内閣(3)~
【佐藤優】自民党の全体主義的スローガン ~安倍“暴走”内閣(2)~
【佐藤優】安倍“暴走”内閣で窮地に立つ日本 ~安倍“暴走”内閣(1)~
【佐藤優】ある外務官僚の「嘘」 ~藤崎一郎・元駐米大使~
【佐藤優】自民党の沖縄差別 ~安倍政権の言論弾圧~
【書評】佐藤優『超したたか勉強術』
【佐藤優】脳の記憶容量を大きく変える技術 ~超したたか勉強術(2)~
【佐藤優】表現力と読解力を向上させる技術 ~超したたか勉強術~
【佐藤優】恐ろしい本 ~元少年Aの手記『絶歌』~
【佐藤優】集団的自衛権にオーストラリアが出てくる理由 ~日本経済の軍事化~
【佐藤優】ロシアが警戒する日本とウクライナの「接近」 ~あれかこれか~
【佐藤優】【沖縄】知事訪米を機に変わった米国の「安保マフィア」
【佐藤優】ハワイ州知事の「消極的対応」は本当か? ~沖縄~
【佐藤優】米国をとるかロシアをとるか ~日本の「曖昧戦術」~
【佐藤優】エジプトで「死刑の嵐」が吹き荒れている
【佐藤優】エリートには貧困が見えない ~貧困対策は教育~
【佐藤優】バチカンの果たす「役割」 ~米国・キューバ関係~
【佐藤優】日米安保(2) ~改訂のない適用範囲拡大は無理筋~
【佐藤優】日米安保(1) ~安倍首相の米国議会演説~
【佐藤優】日米安保(1) ~安倍首相の米国議会演説~
【佐藤優】外相の認識を問う ~プーチンからの「シグナル」~
【佐藤優】ヒラリーとオバマの「大きな違い」
【佐藤優】「自殺願望」で片付けるには重すぎる ~ドイツ機墜落~
【佐藤優】【沖縄】キャラウェイ高等弁務官と菅官房長官 ~「自治は神話」~
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【佐藤優】明らかになったロシアの新たな「核戦略」 ~ミハイル・ワニン~
【佐藤優】北方領土返還の布石となるか ~鳩山元首相のクリミア訪問~
【佐藤優】米軍による日本への深刻な主権侵害 ~山城議長への私人逮捕~
【佐藤優】米大使襲撃の背景 ~韓国の空気~
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【佐藤優】ウクライナ問題に新たな枠組み ~独・仏・露と怒れる米国~
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【佐藤優】【ピケティ】『21世紀の資本』が避けている論点
【ピケティ】本では手薄な問題(旧植民地ほか) ~佐藤優によるインタビュー~
【佐藤優】優先順序は「イスラム国」かウクライナか ~ドイツの判断~
【佐藤優】ヨルダン政府に仕掛けた情報戦 ~「イスラム国」~
【佐藤優】ウクライナによる「歴史の見直し」をロシアが警戒 ~戦後70年~
【佐藤優】国際情勢の見方や分析 ~モサドとロシア対外諜報庁(SVR)~
【佐藤優】「イスラム国」が世界革命に本気で着手した
【佐藤優】「イスラム国」の正体 ~国家の新しいあり方~
【佐藤優】スンニー派とシーア派 ~「イスラム国」で中東が大混乱(4)~
【佐藤優】サウジアラビア ~「イスラム国」で中東が大混乱(3)~
【佐藤優】米国とイランの接近  ~「イスラム国」で中東が大混乱(2)~
【佐藤優】シリア問題 ~「イスラム国」で中東が大混乱(1)~
【佐藤優】イスラム過激派による自爆テロをどう理解するか ~『邪宗門』~
【佐藤優】の実践ゼミ(抄)
【佐藤優】の略歴
【佐藤優】表面的情報に惑わされるな ~英諜報機関トップによる警告~
【佐藤優】世界各地のテロリストが「大規模テロ」に走る理由
【佐藤優】ロシアが中立国へ送った「シグナル」 ~ペーテル・フルトクビスト~
【佐藤優】戦争の時代としての21世紀
【佐藤優】「拷問」を行わない諜報機関はない ~CIA尋問官のリンチ~
【佐藤優】米国の「人種差別」は終わっていない ~白人至上主義~
【佐藤優】【原発】推進を図るロシア ~セルゲイ・キリエンコ~
【佐藤優】【沖縄】辺野古への新基地建設は絶対に不可能だ
【佐藤優】沖縄の人の間で急速に広がる「変化」の本質 ~民族問題~
【佐藤優】「イスラム国」という組織の本質 ~アブバクル・バグダディ~
【佐藤優】ウクライナ東部 選挙で選ばれた「謎の男」 ~アレクサンドル・ザハルチェンコ~
【佐藤優】ロシアの隣国フィンランドの「処世術」 ~冷戦時代も今も~
【佐藤優】さりげなくテレビに出た「対日工作担当」 ~アナートリー・コーシキン~
【佐藤優】外交オンチの福田元首相 ~中国政府が示した「条件」~
【佐藤優】この機会に「国名表記」を変えるべき理由 ~ギオルギ・マルグベラシビリ~
【佐藤優】安倍政権の孤立主義的外交 ~米国は中東の泥沼へ再び~
【佐藤優】安倍政権の消極的外交 ~プーチンの勝利~
【佐藤優】ロシアはウクライナで「勝った」のか ~セルゲイ・ラブロフ~
【佐藤優】貪欲な資本主義へ抵抗の芽 ~揺らぐ国民国家~
【佐藤優】スコットランド「独立運動」は終わらず
「森訪露」で浮かび上がった路線対立
【佐藤優】イスラエルとパレスチナ、戦いの「発端」 ~サレフ・アル=アールーリ~
【佐藤優】水面下で進むアメリカvs.ドイツの「スパイ戦」
【佐藤優】ロシアの「報復」 ~日本が対象から外された理由~
【佐藤優】ウクライナ政権の「ネオナチ」と「任侠団体」 ~ビタリー・クリチコ~
【佐藤優】東西冷戦を終わらせた現実主義者の死 ~シェワルナゼ~
【佐藤優】日本は「戦争ができる」国になったのか ~閣議決定の限界~
【ウクライナ】内戦に米国の傭兵が関与 ~CIA~
【佐藤優】日本が「軍事貢献」を要求される日 ~イラクの過激派~
【佐藤優】イランがイラク情勢を懸念する理由 ~ハサン・ロウハニ~
【佐藤優】新・帝国時代の到来を端的に示すG7コミュニケ
【佐藤優】集団的自衛権、憲法改正 ~ウクライナから沖縄へ(4)~ 
【佐藤優】スコットランド、ベルギー、沖縄 ~ウクライナから沖縄へ(3)~ 
【佐藤優】遠隔地ナショナリズム ~ウクライナから沖縄へ(2)~
【佐藤優】ユニエイト教会 ~ウクライナから沖縄へ(1)~ 
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【堤未果】【TPP】国家の枠組みが形骸化 ~医療への影響懸念~

2016年02月23日 | 社会
 (1)第6回 関西スクエア 中之島クロストーク(白井聡がホスト役の対談・対論イベント) 
 期日:2016年2月10日(水)
 場所:中之島フェスティバルタワー(大阪市北区)

 (2)TPPは自由貿易のさらなる促進が建前だが【白井】、
 TPPの一番の問題は、自国を守るさまざまな制度が非関税障壁とみなされて撤廃されることだ。
 何でもかんでも非関税障壁と癒える。言語もそう。極端な話、日本語で会話するこの対談イベントも、日本語で書かれた新聞も、外国のメディア資本が「けしからん」と言い出したら対抗でいないかも【白井】。

 (3)TPPの最大のターゲットは国家という枠組みを形骸化させること。国民の安全を守るための環境や食の規制も、投資家から見れば商売の邪魔になる。
 なかでも医療への影響が最も懸念される。日本は薬消費大国。今の制度では医師などでつくる「中央社会保険医療協議会」(中医協)が薬価を抑えることで国民皆保険を維持しているが、TPPの条文には薬価規制を緩めるルールが書かれている。薬価が上がれば公的保険では支払いきれなくなる。
 そのため、世界保健機関(WHO)や国境なき医師団から批判が出ている。この2月4日にニュージーランドであったTPP署名式では、薬価が上がることに反対するデモ隊と警察が衝突した。
 日本の国民皆保険は資本家から見ると邪魔。これをなくせば広大な民間保険の市場が出現するから。こうした企業戦略の背景に、マイナス金利など、世界的に利潤が上がらず資本主義の終わりという状況があり、企業は国家が持つ健康保険や年金などに寄生している。【白井】

 (4)米国の子どもの5人に1人はホームレス状態。
 飢餓人口は、アフリカより多い、と言われている。つまり、米多国籍企業と金融財界は、自国内で略奪し尽くした。今後は日本や欧州などに同じビジネスモデルを広げていく。
  
 (5)米国では二大政党の対立軸が薄れ、選挙も投資商品になった。どの業界がどの候補者を支援しているか。献金額などの公表データをチェックすると見えてくる。
 ヒラリー氏は、企業寄りの「コーポレート・リベラル」だ。

 (6)集団的自衛権などに反応してしまうが、憲法改正の動きで今の政策決定プロセスがより強化されてしまうことが怖い。官僚や政府の各種会議の民間議員のように、選挙で選ばれていない人の権限をどうしようとしているのかが重要だ。
 伝統的にやりたい放題に近い行政権力を、さらに万能にするのが改正の主眼ではないか【白井】。

□堤未果×白井聡(政治学者)「TPP 医療への影響懸念」(朝日新聞 2016年2月23日)
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 【参考】
【堤未果】「消費増税は福祉のため」という大ウソ ~大手マスコミの沈黙~
【堤未果】最も儲けるのは大国の産軍複合体 ~対テロ戦争の拡大~
【堤未果】【TPP】妥結で日本の農地は海外企業のものになる
【堤未果】情報漏洩・巨大利権など不安材料が多数 ~マイナンバー~
【堤未果】大衆を好戦ムードへ向かわせたマスコミの大罪
【堤未果】【ギリシャ】緊縮財政なのに軍事予算を削減できない理由
【堤未果】地方の介護現場を完全に無視 ~高齢者の「移住」提言~
【堤未果】本当に患者のためか疑問 ~国民健康保険法の改正~
【堤未果】サービス残業は絶対なくならない ~残業代ゼロ法案~
【堤未果】医師不足に拍車をかける国家戦略特区
【堤未果】「イスラム国」掃討と膨れあがる米の軍事費 ~いつか来た道~
【堤未果】格差大国アメリカの後を追う日本 ~金融緩和と年金改革~
【堤未果】米国社会の変質 ~ミズーリ州の武装警察~
【米国】国民皆保険という美名の裏で大増税開始 ~オバマケア~
【食】中国の鶏肉問題--流通のグローバル化で食の安全はますます困難に
【堤未果】「水道の民営化」が招く社会インフラ大崩壊 ~価格高騰に水質低下~
【堤未果】「社会保障のための増税」のウソ ~来るべき医療崩壊~
【堤未果】世界が危惧する日本のジャーナリズム ~「監視大国」米国以下~
【堤未果】アベノミクスと米国経済の危うい共通点
【食】中国の鶏肉問題--流通のグローバル化で食の安全はますます困難に
【政治】国家戦略特区法の危険性
【米国】と日本における民営化の悲惨 ~株式会社化する国家~  
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【保健】高齢者の服薬適正化にGL ~容易な多剤併用に警鐘~

2016年02月23日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)時に老親が服用している薬の多さに驚く。
 「こんなに飲むなんて、身体にいいどころか、逆に身体に悪いんじゃない?」

 (2)実際、高齢者の緊急入院の3~6%は薬剤が原因と言われ、後期高齢者(75歳以上)では15%を超える。
 この背景に、加齢に伴う代謝機能の低下、多剤併用による「思わぬ副作用」の発症がある。
 つまり、高齢者は薬の代謝(解毒)、排泄機能が衰えるため、薬の効果が予想外に強く出てしまうのだ。
 また、複数の薬剤を飲むことで、互いの効果を増強したり、逆に打ち消したりすることもある。

 (3)東京大学医学部附属病院老年病科の研究では、
   6剤以上
を併用すると副作用が生じる頻度が有意に上昇することが示された。
 2015年末、一般社団法人日本老年学会は、
   「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」
を発刊した。ガイドライン自体は医療従事者向けだが、高齢者に対して
   「特に慎重な投与を要する薬」
のリストが掲載されていて、高齢者を抱える家族も一読に値する。リストには、
   ①依存性や副作用が強い睡眠薬
   ②口の渇き、便秘、目のかすみ、認知機能低下などの症状がでる「抗コリン作用」を持つ抗精神病薬
などが並んだ。このほか、高齢者によく処方される
   ③降圧剤
   ④抗不整脈薬
   ⑤経口糖尿病治療薬
などもリストアップされた点は注目される。より副作用の少ない薬への切り替え、飲む量の減少によって対応できることも明記された。

 (4)実はこのリストの当初の名称は
   「中止を考慮すべき薬」
だったのだが、医師や患者家族から「使用が禁じられていると誤解を招く」との意見が多く、「慎重な投与」という穏当な表現にとどまった。

 (5)「慎重な投与」とされた睡眠薬や抗精神病薬は、認知症に伴う徘徊、妄想・攻撃性などを鎮めるために使われることが多い。
 本人の苦痛を緩和するより、家族や介護者の負担を減らす側面が強い点は否定できない。
 しかし、そこには副作用が解っていても「薬を使わざるを得ない」悲痛な現状がある。
 高齢社会の日本では、単純な減薬ではなく、本人と家族双方にとって「適正な高齢者医療とは何か」という議論が必要だ。

□井出ゆきえ(医学ライター)「高齢者の服薬適正化にGL 容易な多剤併用に警鐘 ~カラダご医見番・ライフスタイル編 No.288~」(「週刊ダイヤモンド」2016年2月20日号)
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 【参考】
【保健】下剤は脳・心血管疾患リスク> ~背景にストレスや運動不足~
【保健】高脂肪食でシナプスが消失? ~動物実験~
【保健】2型糖尿病とフライド・ポテトとの関係 ~ポテトは煮物で~
【保健】世帯の所得と健康リスクの関係 ~食習慣と飲酒習慣~
【保健】抗がん剤の価格差は最大4倍以上 ~WHOの調査~
【保健】より危険な睡眠時無呼吸 ~脳・心疾患のリスク増~
【保健】初日の出の心身的効果 ~鬱対策は光を浴びて~
【保健】日本人肥満男性の食事と運動 ~糖尿病予防~
【保健】適性な「降圧目標値」 ~120未満で関連疾患が3割低下~
【保健】自由な裁量権でスリムに ~ストレスでメタボ~
【保健】目の老化には赤と緑と橙色 ~加齢黄斑変性症の予防~
【保健】早期発見のためにエコーと併用 ~乳がん検診~
【保健】骨折予防はカルシウムのほかに・・・・
【保健】前糖尿病患者は食習慣の改善を ~全国糖尿病週間~
【保健】糖質制限より脂質制限? ~体脂肪を減らす~
【保健】受動喫煙が歯周病リスクに ~ただし男性のみ~
【保健】貧乏ゆすりが命を救う? ~マナーより健康~
【保健】「高収入の勝ち組」の健康リスク? ~50歳以上の有害な飲酒~
【保健】照明用白色LEDのブルーライトは安全か?
【保健】目の愛護デー ~緑内障による失明を予防~
【保健】長時間労働は脳卒中リスク ~週41~48時間でも上昇~
【保健】ほぼ毎日食べると、死亡リスクが14%減少 ~唐辛子~
【保健】水族館でリラックス効果 ~血圧・心拍数に好影響~

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【政治】不倫議員への安倍首相の対応 ~二つの見方~

2016年02月22日 | 社会
 宮崎謙介・参議院議員(当時)に女性タレントとの不倫問題が発覚した。
 宮崎は議員を辞職したが、これに関する安倍晋三・首相の対応について、二つの見方がある。

 後藤謙次は、
 <宮崎謙介の議員辞職を主導したのは安倍自身だったようだ>【注1】
と推定する。

 他方、田崎史郎によれば、
 <「育休」を宣言した後に不倫を認めて議員辞職した前衆院議員・宮崎謙介の進退問題で、谷垣は直接触ろうとせず、国対委員長・佐藤勉に対応を委ねた。/佐藤は菅や二階派会長の総務会長・二階俊博らと連絡を取り、離党に持ち込もうとした。宮崎は、妻の衆院議員・金子恵美から「議員辞職しなさい」と迫られ、妻の忠告に従った。安倍らは補選につながる議員辞職は回避し、離党にとどめる考えだった>【注2】

 後藤は、元共同通信社記者、編集局長で、『ドキュメント 平成政治史』全3巻(岩波書店、2014)もある篤実な政治コラムニストだ。
 しかし、この件については田崎のコラムのほうが断然情報量が多いし、説得力がある。
 あるいは、この違いは週刊誌と日刊新聞との、情報の鮮度の違いかもしれない。

 【注1】後藤謙次(政治コラムニスト)「不祥事、問題発言、政策不信で自民党に吹く参院選の「逆風」 ~永田町ライブ!No.280」(「週刊ダイヤモンド」2016年2月27日号)
 【注2】田崎史郎(時事通信特別解説委員)「谷垣に冷たい視線」(日本海新聞 2016年2月22日)

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