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本書のハードカバーは2010年11月に刊行された。佐々淳行は1930年12月11日生まれだから、当時、近く満80歳の誕生日を迎えようとしていたころだ。どうやら、生涯現役の「危機管理マン」を貫くらしい。
その彼が、本書で、畏敬をこめて生涯現役ドクターの逸話を語っている。
*
日野原重明・聖路加国際病院理事長は、100歳を超えてなお現役医師として名高い。
58歳の時、当時は同病院内科医長だったが、「よど号事件」の人質になった。福岡市で開催される日本内科医学会に出席するため搭乗していたのだ。
彼がパステルナーク『ドクトル・ジバゴ』を読み耽っていたら、赤軍派の一人がアジ演説を始めた。
「我々は・・・・この日航機をハイジャックした、うんぬん」
定番の長い長い演説を終えると、犯人は「何か質問は?」と131人の乗客に訊いた。
すると乗客の一人が、
「ハイジャックって何ですか? 何語でスペルは?」
と尋ねた。
当時、まだハイジャックは日本語になっていなかった。警視庁の警備無線の第一声も「乗っ取り事件」だった。
犯人は答に窮し、黙り込んだ。
そこで、日野原医師が、
「君は学生だろ? ハイジャックやるなら、その意味やスペルぐらい勉強しておきなさい。それは英語で、昔英国で起きた馬車を狙った路上強盗のことだよ。スペルは、H、I、J、A、C、K」
と講義した。
犯人は、「どうもすみません」と頭を下げた。
□佐々淳行『日本赤軍とのわが「七年戦争」 ~ザ・ハイジャック~』(文春文庫、2013.3)
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