【凡例】☆印は共選作。①、②以下丸文字は一席、二席等。
<金子兜太選>
①語り部の遺影となりて八月尽 (太田市)吉部修一
②秋暑しとどのつまりは老いにけり (山梨県市川三郷町)笠井彰
⑨入院の祈りは一つ新月に (福岡市)伊佐利子
⑩鉄砲百合四つ開けば四方向く (下関市)内田恒生
【評】吉部さん。戦禍を知る人がまた一人減ってしまった。語り継ぐこと増々大事に。笠井さん。達観、嘆息、いずれにしても、まだまだ。阿知波さん。日常を爽やかに詠む。季語も日常を。十句目内田氏。含意と読むか否かは読み手次第。
<長谷川櫂選>
①秋暑し残生の錆(さび)ことのほか (山梨県市川三郷町)笠井彰
②宇宙樹のごと立ち上る雲の峰 (島根県邑南町)高橋多津子
⑥一山の大気動きて秋に入る (三重県菰野町)川村佳子
⑨仏壇に残暑そのまま閉ぢにけり (飯塚市)釋蜩硯
【評】一席。「残生の錆」とは! 残生までゆかなくても、年を重ねるにつれ帯びる錆がある。二席。宇宙を抱擁する一本の巨樹。青空にうすうすと見えるのだ。(後略)
<大串章選>
①秋暑し社葬の長き列に居て (川口市)青柳悠
②☆渾身(こんしん)のバックホームや雲の峰 (町田市)川井一郎
④熱帯夜消したき記憶つぎつぎと (東京都)大澤都志子
⑥芋殻焚く姉妹を雲が見て通る (群馬県東吾妻町)酒井大岳
⑩夏草や鎌倉古道に人を見ず (我孫子市)渡辺肇幸
【評】第一句。現役社員の突然死であろうか。先輩同僚の長い列が続く。第二句。何としても本塁を踏ませてはならない。夏の高校野球が目に浮かぶ。(後略)
<稲畑汀子選>
①ずぶ濡(ぬ)れとなれば走らず大夕立 (横浜市)渡辺萩風
③☆渾身のバックホームや雲の峰 (町田市)川井一郎
⑤父母(ちちはは)の声を探してゐる墓参 (神戸市)岩水ひとみ
【評】一句目。夕立でずぶ濡れの作者が開き直った瞬間である。(中略)三句目。野球の一コマ。フライをキャッチしてからの渾身の姿。
□「朝日俳壇」(朝日新聞 2017年9月10日)
「朝日俳壇」
↓クリック、プリーズ。↓

【参考】
「【朝日俳壇抄】つむじ風空蝉そらを飛びにけり ~9月4日~」
「【朝日俳壇抄】蟻地獄あなたの帰り待つてます ~8月28日~」
「【朝日俳壇抄】八月や骨で還れの骨さへも ~8月21日~」
「【朝日俳壇抄】戦争の滴り落つる日本かな ~8月14日~」
「【朝日俳壇抄】渾渾と泉湧きくる日野原忌 ~8月7日~」
「【朝日俳壇抄】天の川鳴門の渦に流れ入る ~7月31日~」
「【朝日俳壇抄】ヒアリ来る地球はますます炎えてくる ~7月24日~」
「【朝日俳壇抄】為政者の驕り露見や青嵐 ~7月10日~」
「【朝日俳壇抄】叩かれて叩かれてなほ油虫 ~7月3日~」
「【朝日俳壇抄】政権も徒党に堕すや走り梅雨 ~6月26日~」
「【朝日俳壇抄】妻はヨガ吾は吟行風薫る ~6月19日~」
「【朝日俳壇抄】あの人も人間失格桜桃忌 ~6月5日~」
「【朝日俳壇抄】地響きに滝の重さのありにけり ~5月29日~」
「【朝日俳壇抄】聖五月人には青の時代あり ~5月22日~」
「【朝日俳壇抄】戦後よりまた戦前へ四月馬鹿 ~5月15日~」
「【朝日俳壇抄】空爆の次は花見のニュースかな ~5月7日~」
「【朝日俳壇抄】鞦韆は蹴るべし愛は返すべし ~5月1日~」
<金子兜太選>
①語り部の遺影となりて八月尽 (太田市)吉部修一
②秋暑しとどのつまりは老いにけり (山梨県市川三郷町)笠井彰
⑨入院の祈りは一つ新月に (福岡市)伊佐利子
⑩鉄砲百合四つ開けば四方向く (下関市)内田恒生
【評】吉部さん。戦禍を知る人がまた一人減ってしまった。語り継ぐこと増々大事に。笠井さん。達観、嘆息、いずれにしても、まだまだ。阿知波さん。日常を爽やかに詠む。季語も日常を。十句目内田氏。含意と読むか否かは読み手次第。
<長谷川櫂選>
①秋暑し残生の錆(さび)ことのほか (山梨県市川三郷町)笠井彰
②宇宙樹のごと立ち上る雲の峰 (島根県邑南町)高橋多津子
⑥一山の大気動きて秋に入る (三重県菰野町)川村佳子
⑨仏壇に残暑そのまま閉ぢにけり (飯塚市)釋蜩硯
【評】一席。「残生の錆」とは! 残生までゆかなくても、年を重ねるにつれ帯びる錆がある。二席。宇宙を抱擁する一本の巨樹。青空にうすうすと見えるのだ。(後略)
<大串章選>
①秋暑し社葬の長き列に居て (川口市)青柳悠
②☆渾身(こんしん)のバックホームや雲の峰 (町田市)川井一郎
④熱帯夜消したき記憶つぎつぎと (東京都)大澤都志子
⑥芋殻焚く姉妹を雲が見て通る (群馬県東吾妻町)酒井大岳
⑩夏草や鎌倉古道に人を見ず (我孫子市)渡辺肇幸
【評】第一句。現役社員の突然死であろうか。先輩同僚の長い列が続く。第二句。何としても本塁を踏ませてはならない。夏の高校野球が目に浮かぶ。(後略)
<稲畑汀子選>
①ずぶ濡(ぬ)れとなれば走らず大夕立 (横浜市)渡辺萩風
③☆渾身のバックホームや雲の峰 (町田市)川井一郎
⑤父母(ちちはは)の声を探してゐる墓参 (神戸市)岩水ひとみ
【評】一句目。夕立でずぶ濡れの作者が開き直った瞬間である。(中略)三句目。野球の一コマ。フライをキャッチしてからの渾身の姿。
□「朝日俳壇」(朝日新聞 2017年9月10日)
「朝日俳壇」
↓クリック、プリーズ。↓



【参考】
「【朝日俳壇抄】つむじ風空蝉そらを飛びにけり ~9月4日~」
「【朝日俳壇抄】蟻地獄あなたの帰り待つてます ~8月28日~」
「【朝日俳壇抄】八月や骨で還れの骨さへも ~8月21日~」
「【朝日俳壇抄】戦争の滴り落つる日本かな ~8月14日~」
「【朝日俳壇抄】渾渾と泉湧きくる日野原忌 ~8月7日~」
「【朝日俳壇抄】天の川鳴門の渦に流れ入る ~7月31日~」
「【朝日俳壇抄】ヒアリ来る地球はますます炎えてくる ~7月24日~」
「【朝日俳壇抄】為政者の驕り露見や青嵐 ~7月10日~」
「【朝日俳壇抄】叩かれて叩かれてなほ油虫 ~7月3日~」
「【朝日俳壇抄】政権も徒党に堕すや走り梅雨 ~6月26日~」
「【朝日俳壇抄】妻はヨガ吾は吟行風薫る ~6月19日~」
「【朝日俳壇抄】あの人も人間失格桜桃忌 ~6月5日~」
「【朝日俳壇抄】地響きに滝の重さのありにけり ~5月29日~」
「【朝日俳壇抄】聖五月人には青の時代あり ~5月22日~」
「【朝日俳壇抄】戦後よりまた戦前へ四月馬鹿 ~5月15日~」
「【朝日俳壇抄】空爆の次は花見のニュースかな ~5月7日~」
「【朝日俳壇抄】鞦韆は蹴るべし愛は返すべし ~5月1日~」