死んだ兵士の霊を慰めるためには、多分遺族の涙もウォー・レクエムも十分ではない。
家畜のように死ぬ者のために、どんな弔いの鐘がある?
大砲の化物じみた怒りだけだ。
どもりのライフルの早口のお喋りだけが、
おお急ぎでお祈りをとなえてくれるだろう。
これは第一次世界大戦で戦死したイギリスの詩人オーウェンの詩「悲運に倒れた青年たちへの賛歌」の一節である。私はこれからレイテ島上の戦闘について、私が事実と判断したものを、出来るだけ詳しく書くつもりである。75ミリ野砲の砲声と38銃の響きを再現したいと思っている。それが戦って死んだ者の霊を慰める唯一のものだと思っている。それが私に出来る唯一のことだからである。
□大岡昇平『レイテ戦記(1)』(中公文庫、2018)の「5 陸軍」から一部引用
家畜のように死ぬ者のために、どんな弔いの鐘がある?
大砲の化物じみた怒りだけだ。
どもりのライフルの早口のお喋りだけが、
おお急ぎでお祈りをとなえてくれるだろう。
これは第一次世界大戦で戦死したイギリスの詩人オーウェンの詩「悲運に倒れた青年たちへの賛歌」の一節である。私はこれからレイテ島上の戦闘について、私が事実と判断したものを、出来るだけ詳しく書くつもりである。75ミリ野砲の砲声と38銃の響きを再現したいと思っている。それが戦って死んだ者の霊を慰める唯一のものだと思っている。それが私に出来る唯一のことだからである。
□大岡昇平『レイテ戦記(1)』(中公文庫、2018)の「5 陸軍」から一部引用
