語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【佐藤優】一粒の麦

2018年09月04日 | ●佐藤優
 <一粒の麦が地に落ちて死ななければ、それはただ一粒のままである。しかし、もし死んだなら、豊かに実を結ぶようになる。自分の命を愛する者はそれを失い、この世で自分の命を憎む者は、それを保って永遠の命に至るであろう。 --「ヨハネによる福音書」12章24-25節

 ここにはキリスト教の発想が端的に表れている。
 一粒の麦は、そのままならば、いつまでも一粒のままである。しかし、土に落ちて「死ぬ」ならば、そこから芽が生えて、穂が実れば、そこから多くの麦粒が生まれる。自分が死を恐れずに行動することによって、自分の命に固執するよりもはるかに多くの成果をあげることができる。
 この前提にあるのは、キリスト教徒にとって死は、永遠の別れではなく、いずれ最後の審判のときに、死んだ人々も復活するという信仰だ。この信仰によってキリスト教は、生命至上主義を相対化する。人間は、例外なく、いずれ死ぬ。この現実を理解せずに、いつまでも生きようと自己愛にとらわれる人は、決して幸せをつかむことができない。
 もっとも、命を粗末にすることをキリスト教が説いているわけではない。同じ一粒の麦でも、コンクリート舗装の上に落ちたのでは、そこから芽が生えることはない。ただの無駄死には意味がないということが、このイエスの言葉からうかがわれる。>

□佐藤優『人生の役に立つ聖書の名言』(講談社、2017)の「苦難に負けない言葉」の「一粒の麦」を引用

 【参考】
【佐藤優】平和ではなく剣を
【佐藤優】恐れるな
【佐藤優】迫害される人
【佐藤優】平和をつくる人
【佐藤優】心の清い人
【佐藤優】あわれみ深い人
【佐藤優】正しさを望む人
【佐藤優】柔和な人
【佐藤優】悲しんでいる人
【佐藤優】心の貧しい人
【佐藤優】地の塩となれ
【佐藤優】狭い門を選べ
【佐藤優】求めれば与えられる
【佐藤優】明日を思い悩むな
【佐藤優】思い悩むな
【佐藤優】まえがき ~『人生の役に立つ聖書の名言』~



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