(1)日本維新の会が、各共同代表をリーダーとする2つのグループに分裂した。
橋下徹は、結いの党、みんなの党、さらには民主党まで巻き込んだ野党再編につなげたい、としている。政権を担う能力のある野党がないことが、安倍政権の高支持率を下支えしている。この状況下で、自民党と対峙できる野党の誕生という期待がかかる。
しかし、今の再編のやり方では、その実現は難しい。
大手新聞各社の社説では、単なる数合わせだけでなく、大きな政策の旗印を掲げた再編を期待する、というが、事はそう簡単ではない。
(2)自民党時代から民主党時代まで、最近の政治の対立軸は、主に経済政策に関するものだった。
思い切った構造改革をするのか。
それとも、既得権グループを温存しながら漸進的改革をするのか。
みんなの党、結いの党の基本路線は思い切った改革路線だ。
維新は、改革に抵抗する政治家が多い石原慎太郎が率いる太陽の党と野合して寄り道をしたが、今回、石原グループを切ったことで、ようやく本来の「改革」路線での野党再編が見えてきた。
維新、みんな、結いの3党は経済構造改革をめざす点で一致しているから、この3党の合流は自然なように見える。
しかし、それだけでは、合流の条件としては不十分だ。
(3)何故なら、安倍政権は経済政策よりも戦争志向の安保政策を重視している。3党が経済政策で一致して合流しても、外交安全保障政策で一枚岩でなければ、矢継ぎ早に繰り出される戦争志向の政策への賛否で踏み絵を踏まされ、新党の統一基盤は簡単に揺らぐことになる。
外交安全保障政策で超タカ派の石原グループが切られた後に残る橋下グループには、実は石原ほど極端ではないものの、外交安全保障政策で安部総理の考えに近いタカ派が非常に多い。
みんなの党も、最近は右寄りの姿勢を強めている。
一方、結いの党は、維新やみんなに比べてはるかにリベラル色が濃い。
そこで焦点になるのが、結いの党の姿勢だ。維新との連合を拒否していた渡辺喜美・みんなの党前代表が失脚し、みんなと維新の合流の可能性が出てきた。維新の右派は、政策的には結いの党よりみんなの党に近い。維新がみんなの党になびくのを防ぐために、結いの党はある程度の右旋回に追い込まれる可能性がある。現に、集団的自衛権や原発問題でその兆候が現れている。
(4)一方、最大野党の民主党は、極端な右から左まで、何でもありの理念なき政党だ。前原誠司や細野豪志らは維新との合流をめざす、という。彼らも構造改革派だが、外交安全保障では右寄り。特に前原は安倍に近い。
(5)こうなると、野党再編はかなり右寄りの維新が結いの党を吸収し、その後、民主党右派と合流する、という図式になる。
安倍政権のさらに右に、石原新党もできる。
これでは安倍政権を利するだけで、今の野党の支持率合計十数パーセントの中での小さな再編で終わることになるだろう。
そして、公明党も、野党の右傾化の中、与党の地位を守るため最後は妥協せざるを得なくなり、安部の路線はさらに強化される。
(5)今、最大の野党は民主党でも維新でもない。
4割前後に膨らんだ無党派層だ。彼らの多くは「改革」を支持するが、「戦争」は絶対に嫌だ、という層だ。
これまでその層に応える政党がなかった。
逆に言えば、「改革はするが、戦争はしない」という政党を作れば、4割の無党派層の多くが雪崩をうって支持に回るだろう。
それこそが、めざすべき「野党再編」ではないか。
□古賀茂明「野党再編のカギは「戦争」 ~官々愕々第113回~」(「週刊現代」2014年6月28日号)
↓クリック、プリーズ。↓

【参考】
「【古賀茂明】電力会社の歪んだ「競争」 ~税金をもらって商売~」
「【原発】【古賀茂明】規制委員会人事とメディアの責任」
「【古賀茂明】医師と官僚の癒着の構造」
「【古賀茂明】電力会社「値上げ救済」の愚 ~経営難は自業自得~」
「【古賀茂明】竹富町「教科書問題」の本質 ~原発推進教科書~」
「【古賀茂明】安部総理の「11本の矢」 ~戦争国家への道~」
「【古賀茂明】理研は利権 ~文科官僚~」
「【古賀茂明】「武器・原発・外国人」が成長戦略 ~アベノミクスの今~」
「【古賀茂明】マイナンバーを政治資金の監視に ~渡辺・猪瀬問題~」
「【古賀茂明】東電を絶対に潰さずに銀行を守る ~新再建計画~」
「【古賀茂明】「避難計画」なき原発再稼働」
「【古賀茂明】「建設バブル」の本当の問題 ~公共事業中毒の悪循環経済~ 」
「【古賀茂明】安倍政権の戦争準備 ~恐怖の3点セット~」
「【原発】【古賀茂明】利権構造が完全復活 ~東日本大震災3年~」
「【古賀茂明】アベノミクスの限界 ~笑いの止まらない経産省~」
「【古賀茂明】労働者派遣法改正前にすべきこと」
「【古賀茂明】時代遅れな、あまりにも時代遅れな ~安部政権のエネルギー戦略~」
「【古賀茂明】森元首相の二枚舌 ~オリンピックの政治的利用~」
「【古賀茂明】若者を虜にする「安部の詐術」 ~脱出の道は一つ~」
橋下徹は、結いの党、みんなの党、さらには民主党まで巻き込んだ野党再編につなげたい、としている。政権を担う能力のある野党がないことが、安倍政権の高支持率を下支えしている。この状況下で、自民党と対峙できる野党の誕生という期待がかかる。
しかし、今の再編のやり方では、その実現は難しい。
大手新聞各社の社説では、単なる数合わせだけでなく、大きな政策の旗印を掲げた再編を期待する、というが、事はそう簡単ではない。
(2)自民党時代から民主党時代まで、最近の政治の対立軸は、主に経済政策に関するものだった。
思い切った構造改革をするのか。
それとも、既得権グループを温存しながら漸進的改革をするのか。
みんなの党、結いの党の基本路線は思い切った改革路線だ。
維新は、改革に抵抗する政治家が多い石原慎太郎が率いる太陽の党と野合して寄り道をしたが、今回、石原グループを切ったことで、ようやく本来の「改革」路線での野党再編が見えてきた。
維新、みんな、結いの3党は経済構造改革をめざす点で一致しているから、この3党の合流は自然なように見える。
しかし、それだけでは、合流の条件としては不十分だ。
(3)何故なら、安倍政権は経済政策よりも戦争志向の安保政策を重視している。3党が経済政策で一致して合流しても、外交安全保障政策で一枚岩でなければ、矢継ぎ早に繰り出される戦争志向の政策への賛否で踏み絵を踏まされ、新党の統一基盤は簡単に揺らぐことになる。
外交安全保障政策で超タカ派の石原グループが切られた後に残る橋下グループには、実は石原ほど極端ではないものの、外交安全保障政策で安部総理の考えに近いタカ派が非常に多い。
みんなの党も、最近は右寄りの姿勢を強めている。
一方、結いの党は、維新やみんなに比べてはるかにリベラル色が濃い。
そこで焦点になるのが、結いの党の姿勢だ。維新との連合を拒否していた渡辺喜美・みんなの党前代表が失脚し、みんなと維新の合流の可能性が出てきた。維新の右派は、政策的には結いの党よりみんなの党に近い。維新がみんなの党になびくのを防ぐために、結いの党はある程度の右旋回に追い込まれる可能性がある。現に、集団的自衛権や原発問題でその兆候が現れている。
(4)一方、最大野党の民主党は、極端な右から左まで、何でもありの理念なき政党だ。前原誠司や細野豪志らは維新との合流をめざす、という。彼らも構造改革派だが、外交安全保障では右寄り。特に前原は安倍に近い。
(5)こうなると、野党再編はかなり右寄りの維新が結いの党を吸収し、その後、民主党右派と合流する、という図式になる。
安倍政権のさらに右に、石原新党もできる。
これでは安倍政権を利するだけで、今の野党の支持率合計十数パーセントの中での小さな再編で終わることになるだろう。
そして、公明党も、野党の右傾化の中、与党の地位を守るため最後は妥協せざるを得なくなり、安部の路線はさらに強化される。
(5)今、最大の野党は民主党でも維新でもない。
4割前後に膨らんだ無党派層だ。彼らの多くは「改革」を支持するが、「戦争」は絶対に嫌だ、という層だ。
これまでその層に応える政党がなかった。
逆に言えば、「改革はするが、戦争はしない」という政党を作れば、4割の無党派層の多くが雪崩をうって支持に回るだろう。
それこそが、めざすべき「野党再編」ではないか。
□古賀茂明「野党再編のカギは「戦争」 ~官々愕々第113回~」(「週刊現代」2014年6月28日号)
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【参考】
「【古賀茂明】電力会社の歪んだ「競争」 ~税金をもらって商売~」
「【原発】【古賀茂明】規制委員会人事とメディアの責任」
「【古賀茂明】医師と官僚の癒着の構造」
「【古賀茂明】電力会社「値上げ救済」の愚 ~経営難は自業自得~」
「【古賀茂明】竹富町「教科書問題」の本質 ~原発推進教科書~」
「【古賀茂明】安部総理の「11本の矢」 ~戦争国家への道~」
「【古賀茂明】理研は利権 ~文科官僚~」
「【古賀茂明】「武器・原発・外国人」が成長戦略 ~アベノミクスの今~」
「【古賀茂明】マイナンバーを政治資金の監視に ~渡辺・猪瀬問題~」
「【古賀茂明】東電を絶対に潰さずに銀行を守る ~新再建計画~」
「【古賀茂明】「避難計画」なき原発再稼働」
「【古賀茂明】「建設バブル」の本当の問題 ~公共事業中毒の悪循環経済~ 」
「【古賀茂明】安倍政権の戦争準備 ~恐怖の3点セット~」
「【原発】【古賀茂明】利権構造が完全復活 ~東日本大震災3年~」
「【古賀茂明】アベノミクスの限界 ~笑いの止まらない経産省~」
「【古賀茂明】労働者派遣法改正前にすべきこと」
「【古賀茂明】時代遅れな、あまりにも時代遅れな ~安部政権のエネルギー戦略~」
「【古賀茂明】森元首相の二枚舌 ~オリンピックの政治的利用~」
「【古賀茂明】若者を虜にする「安部の詐術」 ~脱出の道は一つ~」