(6)いい本の選び方、いい読み方 ~「講義5」~
まず、大きい書店に行く。専門分野を受け持つ書店員(ブックアドバイザー)を最大限に利用する。「○○問題に関心がある。お薦めの本は何か」と尋ね、基本書、入門書を求める。
①書店員が一番いいという本
②書店員が二番目にいいという本
③その分野で今一番売れている本
これらを3冊とか5冊買う。買う册数は奇数。著者の見解、主張が分かれている場合、自分で判断しなくてよいからだ。
今売れている本というのがミソ。話題の引き出し作りにつながるのは、今売れている本だ。
装丁、タイトルがいい加減なのは、中身もいい加減だ。特にカバーに誤字、誤植があったり、帯の文が変な本はハナから没。平置き、平積みは本の顔が見える。
翻訳書は、真ん中あたりを開けて見る。冒頭と最後は凄く力を入れてチェックしているが、中抜き、中だるみになっているのが時々ある。
頭の良くなる本を選ぶ。真理を追究しながら読める本だ。人間の限界とは何だろう? こういう形で読むなら、小説でもよい。
本の読み方は精読しかない。しかし、それだけだと読める分量が限られる。精読する本以外は、知識を得るため速読せざるを得ない。その分野に精通している場合には1冊30分。1冊3分で読む超速読もある。
精読した本の中で、これは凄いなと思ったら、ノートに書き写す(ワープロでもいいし、コピーしてノートに貼ってもよい)。これが一番覚えられる、という方法で行う。そして、しばらく時間を置く。発酵させる。この作業は絶対に必要だ。ボールペンで重要箇所、要点をノートにまとめてもよい。
精読はノートと一体だ。自分に不必要なこと、覚えていること、知っていることは書かなくてよい。
(7)「問題」と「問題の場」を混同しない ~「講義6」~
<例>問題の場・・・・「不況」
問題・・・・デフレ対策で不況を克服することができるか?
「問題」は、必ず答えなくてはならない形の疑問形にしなくてはならない。
不況を金融政策で解決できるのか?
それとも政府の財政投融資が必要とされるか?
ただ「不況が問題だ」と言って、問題の場をうろうろしていても時間を無駄にするだけだ。具体的な処方箋につながる質問を出さなくてはならない。
(8)聞き上手になる ~「講義9」、「講義13」~
前提・・・・相手のことをよく知っておく。
相手が話したい話題になったら、「その通りですね」と相づちを打つことが大切。
相手が謙遜している時、相手が心の奥底では否定してほしいところでは、「そうじゃないでしょ」と否定してあげる。
もっと簡単な方法は、相手の言っていることを適時に反復する。すると、実際にはそのやり取りにおいて何ら新しい情報をこちらから提供していないのに、会話は成立し、流れていく。オウム返しの技だ。
<例>この方法を一番うまく使った手本は、ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』における「大審問官」のくだりだ。アリョーシャは、イワンとの会話において、イワンの話すことと同じことをオウム返しに行っている。それ以外には何もしていない。しかし、あれだけの長編小説の中で一番重要な部分を成している。
オウム返し話法の基本は、相手の主張に同意する方向でオウム返しすることだ。人は、自分の意見に賛成してくれる人には、話を続けやすい。相手との話を長く続けるコツは、相手の話に一度乗っかってみることだ。
その上で、こちらの主張、言い分を通したいとき、ちょっと大げさなぐらい、相手に感嘆符が見えるくらいで話す方法もあるが、これは言葉の異化効果といって、若干レベルの低いオウム返し話法だ。
意外な話で関心を惹きつけたあと、こっちの会話に引き込む。こちらのテクニックのほうが上だ。ただし、意外感が行きすぎると、滑る。スベルと、相手はこちらの話に興味をなくす.。
だから、オウム返しの話法が安全で使いやすい。上手なやり方は、意味のないことを繰り返すオウム返しがいい。<例>「ほう、お名前が一郎さんですか。もしかすると、ご長男ですか?」
会話の入口のところでは、これで十分。あとは、動物の話をするとか。
(8)質問力 ~「講義9」(その2)~
会話の流れの中で有効な質問をする。この質問力は、どうすれば身につくか。
そもそも、質問とは何か。混沌たるものから物事を分けていくことだ。質問することで、混沌の中から形となって切り取られ、表れてくる。だから、質問は会話の道具として重要なのだ。ハンマー(質問)は、それによってバラバラに置かれている材木(混沌たる状態)から、犬小屋というもう一つの形を作り出す道具だ。
質問は便利だが、その人の力量が問われる。
質問力は、その質問に関することをどのぐらい理解しているかが問題になってくる。理解している以上の質問はできない。
だから、「質問の質」で、相手のレベルを推し量ることもできる。
鋭い質問を相手に発すると、相手が「こいつはできるな」と思う。自分の売り込みに使える。
質問力のレベルは、別の角度から見ると、数学の世界になる。数学者にとって、問題さえ設定できれば解答はほぼ、できたも同然になる。数学者は、結論が見えるから問題設定もできる。あとは、その間をどうやってつなげていくかだ。理系は、積み重ね方式の学問というより、実は直感で成り立っている。
良い質問を持つためには、常識力と非常識力がいる。それが、飛翔する力を与える。
常識力がつき過ぎて、非常識力がなくなると、面白みに欠けた人間になる。そして、楕円が分からなくなる。楕円の軌跡を描くような変な質問、焦点が二つあるような質問ができるのはいいことなのだ。真理は、必ずどっかに焦点が二つある。
質問する権利を持った人間は、物語をつくることができる。質問の連続が物語をつくる。
(9)人脈構築術、トラブル処理術の要諦 ~「あとがき」~
人生で起きる問題はすべて応用問題だ。本書全体を通じて強調しているのは、たった一つのことだけだ。つまり、
「相手の内在的論理をとらえろ」
わかりやすく言えば、
「相手の立場になって考える」
相手は個人だけではなく、企業や官庁という組織のこともある。この感覚をつかんだ上で、正しい行動をとるのだ。つまり、
(a)やるべきことをきちんとやる。
(b)やってはいけないことをやらない。
□佐藤優『人たらしの流儀』(PHP文庫、2013)
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【参考】
「【佐藤優】信頼関係の作り方 ~『人たらしの流儀』~」
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まず、大きい書店に行く。専門分野を受け持つ書店員(ブックアドバイザー)を最大限に利用する。「○○問題に関心がある。お薦めの本は何か」と尋ね、基本書、入門書を求める。
①書店員が一番いいという本
②書店員が二番目にいいという本
③その分野で今一番売れている本
これらを3冊とか5冊買う。買う册数は奇数。著者の見解、主張が分かれている場合、自分で判断しなくてよいからだ。
今売れている本というのがミソ。話題の引き出し作りにつながるのは、今売れている本だ。
装丁、タイトルがいい加減なのは、中身もいい加減だ。特にカバーに誤字、誤植があったり、帯の文が変な本はハナから没。平置き、平積みは本の顔が見える。
翻訳書は、真ん中あたりを開けて見る。冒頭と最後は凄く力を入れてチェックしているが、中抜き、中だるみになっているのが時々ある。
頭の良くなる本を選ぶ。真理を追究しながら読める本だ。人間の限界とは何だろう? こういう形で読むなら、小説でもよい。
本の読み方は精読しかない。しかし、それだけだと読める分量が限られる。精読する本以外は、知識を得るため速読せざるを得ない。その分野に精通している場合には1冊30分。1冊3分で読む超速読もある。
精読した本の中で、これは凄いなと思ったら、ノートに書き写す(ワープロでもいいし、コピーしてノートに貼ってもよい)。これが一番覚えられる、という方法で行う。そして、しばらく時間を置く。発酵させる。この作業は絶対に必要だ。ボールペンで重要箇所、要点をノートにまとめてもよい。
精読はノートと一体だ。自分に不必要なこと、覚えていること、知っていることは書かなくてよい。
(7)「問題」と「問題の場」を混同しない ~「講義6」~
<例>問題の場・・・・「不況」
問題・・・・デフレ対策で不況を克服することができるか?
「問題」は、必ず答えなくてはならない形の疑問形にしなくてはならない。
不況を金融政策で解決できるのか?
それとも政府の財政投融資が必要とされるか?
ただ「不況が問題だ」と言って、問題の場をうろうろしていても時間を無駄にするだけだ。具体的な処方箋につながる質問を出さなくてはならない。
(8)聞き上手になる ~「講義9」、「講義13」~
前提・・・・相手のことをよく知っておく。
相手が話したい話題になったら、「その通りですね」と相づちを打つことが大切。
相手が謙遜している時、相手が心の奥底では否定してほしいところでは、「そうじゃないでしょ」と否定してあげる。
もっと簡単な方法は、相手の言っていることを適時に反復する。すると、実際にはそのやり取りにおいて何ら新しい情報をこちらから提供していないのに、会話は成立し、流れていく。オウム返しの技だ。
<例>この方法を一番うまく使った手本は、ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』における「大審問官」のくだりだ。アリョーシャは、イワンとの会話において、イワンの話すことと同じことをオウム返しに行っている。それ以外には何もしていない。しかし、あれだけの長編小説の中で一番重要な部分を成している。
オウム返し話法の基本は、相手の主張に同意する方向でオウム返しすることだ。人は、自分の意見に賛成してくれる人には、話を続けやすい。相手との話を長く続けるコツは、相手の話に一度乗っかってみることだ。
その上で、こちらの主張、言い分を通したいとき、ちょっと大げさなぐらい、相手に感嘆符が見えるくらいで話す方法もあるが、これは言葉の異化効果といって、若干レベルの低いオウム返し話法だ。
意外な話で関心を惹きつけたあと、こっちの会話に引き込む。こちらのテクニックのほうが上だ。ただし、意外感が行きすぎると、滑る。スベルと、相手はこちらの話に興味をなくす.。
だから、オウム返しの話法が安全で使いやすい。上手なやり方は、意味のないことを繰り返すオウム返しがいい。<例>「ほう、お名前が一郎さんですか。もしかすると、ご長男ですか?」
会話の入口のところでは、これで十分。あとは、動物の話をするとか。
(8)質問力 ~「講義9」(その2)~
会話の流れの中で有効な質問をする。この質問力は、どうすれば身につくか。
そもそも、質問とは何か。混沌たるものから物事を分けていくことだ。質問することで、混沌の中から形となって切り取られ、表れてくる。だから、質問は会話の道具として重要なのだ。ハンマー(質問)は、それによってバラバラに置かれている材木(混沌たる状態)から、犬小屋というもう一つの形を作り出す道具だ。
質問は便利だが、その人の力量が問われる。
質問力は、その質問に関することをどのぐらい理解しているかが問題になってくる。理解している以上の質問はできない。
だから、「質問の質」で、相手のレベルを推し量ることもできる。
鋭い質問を相手に発すると、相手が「こいつはできるな」と思う。自分の売り込みに使える。
質問力のレベルは、別の角度から見ると、数学の世界になる。数学者にとって、問題さえ設定できれば解答はほぼ、できたも同然になる。数学者は、結論が見えるから問題設定もできる。あとは、その間をどうやってつなげていくかだ。理系は、積み重ね方式の学問というより、実は直感で成り立っている。
良い質問を持つためには、常識力と非常識力がいる。それが、飛翔する力を与える。
常識力がつき過ぎて、非常識力がなくなると、面白みに欠けた人間になる。そして、楕円が分からなくなる。楕円の軌跡を描くような変な質問、焦点が二つあるような質問ができるのはいいことなのだ。真理は、必ずどっかに焦点が二つある。
質問する権利を持った人間は、物語をつくることができる。質問の連続が物語をつくる。
(9)人脈構築術、トラブル処理術の要諦 ~「あとがき」~
人生で起きる問題はすべて応用問題だ。本書全体を通じて強調しているのは、たった一つのことだけだ。つまり、
「相手の内在的論理をとらえろ」
わかりやすく言えば、
「相手の立場になって考える」
相手は個人だけではなく、企業や官庁という組織のこともある。この感覚をつかんだ上で、正しい行動をとるのだ。つまり、
(a)やるべきことをきちんとやる。
(b)やってはいけないことをやらない。
□佐藤優『人たらしの流儀』(PHP文庫、2013)
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【参考】
「【佐藤優】信頼関係の作り方 ~『人たらしの流儀』~」
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