最近不思議だな~と思う事がいくつかある。そのうちの筆頭が、日銀の様変わりだ。もちろん20年間金融の元締めとして、全然失敗して来た歴史がある。いや失敗と言おうか、常識的すぎて市場から足下を見られすぎていた失敗だ。それでもなおかつ愚直に常識を守っていた組織が、なぜここでアベノミクス、いやこの言葉は本当は良くない。それこそ20年前から、小出しの金融政策は市場から足下を見られて失敗すると言われ続けていたからだ。
一つだけ押さえておきたいのは、ある一定以上のインフラを整備したら、そこから先は経済効果が鈍ると言う事がある。貧しかった時代にインフラ整備でお金を落とすと、仕事を受けた企業が設備投資したり、仕事が増えた個人が冷蔵庫を買ったりテレビを買ったりする。更にインフレなんかあると、利益をもとに更に設備投資を増やす。借金してでも設備投資する。1960年代の日本のイメージだ。
結果公共投資事業が与える経済効果と言うのがとても大きくなる。しかし企業の設備投資が一巡し、個人もそれなりの生活が出来るようになると、利益を貯蓄に回すようになり、設備投資や消費に回らなくなる。経済学での乗数効果と言う奴だ。
生活一般は安定し個人の欲しがる物も減って来た。その上で企業は設備過剰が言われており、何に公共事業投資したら有効なのか皆目分からない状況が、実は20年前からあった。その迷走っぷりが年金のグリーンピアだったりする。
年金資金の有効活用ですね。将来は利用者による利益で運用をまかなうと言う物でした。確かにお金の世界では、永久機関は考えられそうなのですが、利用者のいない施設を作ったのはどうなのかと思います。
脱線しました。なぜ20年間も日銀は間違ったのかと言えば、失敗しましたと謝る、謝り方を知らなかったからなのではないのでしょうか。今回安倍内閣がどこか責任とると言っているニュアンスがあるので、謝るチャンスが生まれて来ている可能性があります。
あととても大きいのがアメリカの金融緩和策です。これらは日本の金融政策の失敗をよく見ていたと思います。とにかく一発目からでかく、市場を威嚇する勢いでやってしまう事。たださすがのアメリカでも市場よりは大きい事は出来ません。なのでQE3まで来てしまいました。
これが日銀を促したのではないのでしょうか。とりあえず実例はある。こういったのは大きいと思います。
日銀法改正の恫喝とかは確かにあるのでしょうが、彼らにとって実例があって、政治が保証する事が大切だったのでしょう。ましてや白川日銀総裁はシカゴ大学で博士号をとった、あの新自由経済学派の牙城、マネタリストであり金融政策に精通しているはずの人物なのですが、彼ですらその組織論理には勝てなかったのでしょうか。
あと公務員ですが、どうしてもミスを侵した場合の波及効果が大きすぎて先例主義になるのは解る。そのうえ責任の所在が明確でない場合、特にこの場合は政策目標が失敗したのか、手段としての金融政策が失敗したのか、解りにくい所があります。例えば前にちょっとした指数が上昇したのを受けて金利を引き上げたら、また不況に逆戻りしました。日銀の金融政策の失敗と言われていますが、政治がなぜそれに同意したのか、もしくは強行を許してしまったのかと考えれば、実は責任がどこにあるのかが明らかです。しかしトカゲのしっぽ切りのように日銀のせいにされてしまえば、彼らだって余計な事はしなくなるでしょう。
さてTPPですが安倍総理がアメリカに行ってから、急速に進みそうです。
さてここから謎なのですが、新聞の書き方です。なにか聖域があるような印象で書いています。アメリカも認めているようですが、TPPは多国間交渉なのです。
交渉なのです。その上目標が聖域なき関税撤廃なのです。あとは経済障壁撤廃です。これは変わっていません。交渉次第では、何とかなる事も多いのです。アメリカはそれを追認しただけに過ぎません。聖域は特にはありません。あるとすればニュージーランド・オーストラリア・カナダ・アメリカ間での乳製品・肉類の取り扱いになるのでしょうか。ここは現在やはり揉めています。コメはどうなるのかと言えば、現在の高い関税は無くなると思います。ただタイとベトナムでの米の輸出競争があります。ここからどう交渉を仕掛けて行けるか次第だと思います。
むしろGATTで決められた、コメのミニマムアクセス撤廃に向かうべきでしょう。国内にとっても国外にとっても全く意味のない、最低輸入量規定なんて不健康な制度です。その予算を大規模農業支援などに回した方がよほど有効だと思います。
噂になっているのに、コメを守るために砂糖と牛肉の関税を撤廃すると言う物があります。下手に聖域を作ると他の分野で妥協する事が増えて、逆に多数に迷惑になる可能性もあります。これを踏まえての交渉です。
個人的には黒船としてのTPPには期待したいです。でも新聞の書き方を見ると、誘導だよなこれと考えてしまいます。
尖閣諸島のアメリカの認識もそうです。「日本の施政権」を認めて安保の適用範囲としていますが、「主権」に関してはまたしてもアメリカは口を閉ざしています。報道はその辺りを曖昧にしているような気がします。
さて最後になりますが、アベノミクスが成功するためには一つだけ重要な点があります。財政規律です。このため消費税増税がかなり好意的に見られている、と言う事です。もしもアベノミクスが消費税値上げを前提としていなければ、ここまで好意的には受け止められなかったのではないのか。そう考えています。
国土強靭法によるバラマキがどうなるのか、もう少し注意深く見守る必要がありそうです。
現在での私の見立てでは、20年間の公共事業抑制で、スーパーゼネコン以外のゼネコン、地方有力建設会社、小規模建設会社等が淘汰されて、当然職人はてんでバラバラに散ってしまいました。そして後継者も育っていません。人材不足があります。機材も少なくなって来ています。この状況でいきなりの大量発注では、いいことが起きないと考えます。過重労働による事故の多発、手抜き、初歩的なミスなどが考えられます。
三年に渡り徐々に仕事を増やし、安定して継続的な発注にしてゆかないと本当の国土強靭にはならないのではないのでしょうか。
そして財政規律が緩んだと思われた瞬間に、更なる円安へと動くのでしょう。
実は安倍総理は今の所民主党の成果を、おいしく頂いているだけのような気がします。これもまたi-Phoneのようなイノベーティブなのですが、そろそろお祭りから慎重な運営へと変わるべきなのではないのかと思います。