カルテ番号 か・16(9)
早速会社経由で病院に連絡を取り、膵臓専門医としては日本一といわれるドクターの診断を受ける事になった。
それは最先端技術の膵臓専門超音波検査で発見された。
同じ機械を使っても、通常のドクターでは見逃してしまうような初期だった。
この卓越した診眼をもつドクターは驚いて言った。
「片倉さん、どうしてこれを疑ったのですか?血液検査にもマーカーにも表れていない段階です。もちろん自覚症状などあるわけがない」
片倉信吾はそれがあった事には驚かなかった。
風間陽水が言ったのだから、多分あるのだろうと思っていた。
そして風間陽水の事を正直に話そうかと思った。
この道のトップが驚くような凄い能力者と自分が知り合いなのを誇らしく思ったからだ。
だが、風間陽水がその道の一流に知られるのを望んでいないように思われたので黙った。
風間陽水には世を忍ぶようなところがある。
それなら、その生き方の支援者になりたい。
「僕にも説明ができないのですが、どうしても先生に診てもらいたい気持ちが抑えられなかったのです。迷信じみていますが、ご先祖様のお蔭ですかねぇ」
片倉信吾はそう言って、疑問の話題を終わりにした。
「いや私もこういう立場の医者ですが、多くの患者と係わり、人は不思議な縁で生かされていると感じる事例が沢山あります」
一流といわれる科学者や医師などは、最先端で物事を観ているからこそ科学実証主義では説明できない事例に多く接する。
また、一流だからこそ、それらを素直にやわらかく受け止めるだけの大きさを持っている。
(登場する人物・組織・その他はフィックションです)
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