水上陽平の独善雑記

水上陽平流の表現でいろいろな事を書いています。本館は http://iiki.desu.jp/ 「氣の空間」

「迷解剣客商売・31」

2011-05-31 18:57:03 | Weblog



田沼意次の妾腹、女剣客の三冬。
おはると同い年で、大治郎より5歳若い。
最初は危機を救った小兵衛に想いを寄せる。
小兵衛は、40歳年下の二人から惚れられるわけだ。
だが、小兵衛はおはるに言い寄られ夫婦となった。

剣一筋で処女でウブな三冬は、それすらも気づかぬ。
だが、女として身体がうずき、いつしか対象が大治郎になる。
その事自体が、三冬には不思議でわけがわからないままだ。
剣一筋の身体と心から、人の、女の、やわらかさが出始めていた。
それも小兵衛、大治郎親子との親交からだ。

その三人の剣客が一組の男女関係の事件を解決した。
その顛末に小兵衛がとった策に、まだまだマジメな大治郎は驚く。
「真偽は紙一重。
嘘の皮をかぶって真をつらぬけば、それでよいことよ」
人がシアワセになるのに、真偽など適当に使えばいい。
ワシも、この仕事をしていて、つくづくそう思う。
生命力が上がるなら、嘘の百や千や万くらい・・・

        
(過去のプログは本館 「氣の空間・氣功療法院」です。
治療・若返り・悩み相談受付中。日本中出張します)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「迷解剣客商売・30」

2011-05-30 20:26:21 | Weblog



この物語は、小兵衛一人の名人ぶりだけじゃない。
剣一筋の真っ直ぐな大治郎や三冬が変わっていく。
純朴の堅木が、しなやかな大木に育つ過程が描かれている。
それは、巨木の小兵衛の雰囲気から学んで変化する。
息・大治郎も次第に柔軟な人間に変わっていく。

年下のおはるを「母上」と冗談で呼んだりできるようになった。
もちろん小兵衛の冗談は普段通りだ。
「夜狐が若い女に化けて、布団にもぐり込んだかえ?」
武士であり、剣客だった当時を想像すると、かなりくだけている。
まるで町民の冗談だから、まわりの町民から慕われる。
ときには、弥七でさえ呆れるほどの冗談も言う。

「ものごとは、段取りが大切だ」
小兵衛の教えを思い出しながら、大治郎は事件を解決する。
段取りとは、先を見通し、心配りをする事。
自だけを伸ばしても段取りはできない。
他を観、まわりを観、心を配って他を動かし、自が動く。
すると、無駄な動きをしなくても事が進む。
「段取り、よかったぞ」
褒める小兵衛、褒められた大治郎、共に笑顔だ。
(「東海道・見付宿」より)


        
(過去のプログは本館 「氣の空間・氣功療法院」です。
治療・若返り・悩み相談受付中。日本中出張します)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「迷解剣客商売・29」

2011-05-29 19:00:12 | Weblog



心身金に余裕ある小兵衛だ。
生命力旺盛で、執着心は少ない。
だから子供のような探求心やいたずら心もある。
名人だから、人と人は浅く淡く付き合うのがいいと思っている。
だが癖で、困っている人を、つい、助けてしまう。
助けを依頼されないなら、簡単に手を出すべきでない。
それは理解しているし、自分でも半分反省しているのだが・・・

基本的には、自分と係わりの無い場合は、手を出さない。
少しでも、つながりがあると、親切にしてしまう。
その優しい真心は、相手に伝わるから小兵衛を慕う。
そんな一人に金貸しの幸右衛門がいた。
事件の顛末に幸右衛門は死んでしまう。
残された1500両と屋敷を小兵衛に託す。

金が集まるのではない。
人の心が集まる。
たまたま金を持っている人は、それを金に託して小兵衛に渡す。
商売で金を集めてはいないのだ。
剣客商売の題名からはズレがある。


        
(過去のプログは本館 「氣の空間・氣功療法院」です。
治療・若返り・悩み相談受付中。日本中出張します)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「迷解剣客商売・28」

2011-05-28 19:08:45 | Weblog



一流の剣客である大治郎。
その技で道場を経営しているという表現もできる。
だが、無外流の真髄は技じゃない。
剣の道を通じて、生きる大切なモノを養っている。
大治郎も技の商売人でなく、人物で道場が成り立っている。

剣客から放たれた名人の小兵衛。
例えば田沼意次から50両、100両が届く。
あっさりと、いただく。
利得無しに、金を活かす事ができるからだ。
いただくだけの事を充分しているからだ。

ある大名が小兵衛に100両の隠居祝いを届けた。
20年以上も前に、子供だった、その大名を二度教えた。
複雑なお家事情で苦労していた子供だった。
初めての教授で、小兵衛と子供は心が通じた。
その教え、小兵衛の心情は子供にとって恩となった。
たった二度でも、小兵衛を恩師と思えた。
だから、大名となってから小兵衛に祝いを出す。
もちろん、あっさり受け取る。
こうしてみても剣客商売の題名はそぐわない。
小兵衛は剣客から外れている。

        
(過去のプログは本館 「氣の空間・氣功療法院」です。
治療・若返り・悩み相談受付中。日本中出張します)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「迷解剣客商売・27」

2011-05-27 19:47:39 | Weblog



金が入るようには、気を使わない。
金が活きるように、使い方に気を使う。
すると、金貸しが言う。
「秋山さんのような御方にこそ、お金を借りていただきたい」
名人には、勝手に、お金が来たがるようだ。

何かを手伝ってもらった人だけでない。
何気なく寄った茶店の使用人にさえ、こころづけを渡す。
駕籠かきにも、駕籠代の他に飯代を渡す。
弥七の手下の手下にさえ、別途で小遣いを渡す。
欲しいものを買う為に使うのではなく、人に渡すのだ。
お礼として、渡すのだ。
だから、お金が活きてしまう。

渡された方も、次の人に更に親切になる。
小兵衛に始まって、優しさが連鎖する。
金が、金のままだと冷たい関係になる。
金が、こころづけ(心付)として役に立つから活きる。
コツは、使う名人なのだ。
財を成す事から放れているから、金使いの名人なのだ。

        
(過去のプログは本館 「氣の空間・氣功療法院」です。
治療・若返り・悩み相談受付中。日本中出張します)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「迷解剣客商売・26」

2011-05-26 20:56:01 | Weblog


今日の独善つぶやき・・・

桐生へ一日治療に行った。
嘗て織物の街だった。
だが、シャッター街の通りもある。
学校が多く、学生が多いのはいい。


「迷解剣客商売・26」

小兵衛の碁敵でもある町医者の小川宗哲。
金の有る無し、身分の上下に関わらず行き届いた治療をする。
生き神さま、と慕われるほどの老医でもある。
「わしは金を恐れ、金を避けてるにすぎないのだ」

嘗て、金がどしどし入ってきて、金を貯める事に夢中になった。
ある時、ハッと気づく。
こんな事(金儲け)してて何が面白いのか。
自分は死なぬと思って、頼もしい金を数えている。
幸い医者だから、人の寿命や死を知っている。
冷静に観れば、人の命は儚い。
いつ、どこで、どのように死に旅立つのかもわからない。
20年30年経つのも、あっ、という間だ。
以後、本当の医道を歩むことになる。

そんな宗哲だからこそ、小兵衛の金の扱い方に感心している。
「大金をつかんでも、たちまちこれを散らし、悠々としている。
小判のヤツどもを、あご、で使っていなさるわえ」
小兵衛は、使い方が上手い。
見返り無しの相手に、負担無いように嬉しい金額を渡す。
心がこもっているから、金でつながる関係にならない。
心で慕う関係になるのだ。

        
(過去のプログは本館 「氣の空間・氣功療法院」です。
治療・若返り・悩み相談受付中。日本中出張します)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「迷解剣客商売・25」

2011-05-25 20:43:41 | Weblog



社会で生きていくのに大きな柱が幾つかある。
最優先の絶対的な柱は生命だ。
その器である身体の維持管理も最優先だ。
心は優先でもなく、大切でもない。
心を優先にすると、何かと不都合が生じる。
だが、多くの人が心を大切だと考えている。

この勘違いから、人の世のアレコレが起こる。
だから、面白いといえば面白いが・・・
心は身体に付属しているが、出しゃばりだ。
しかも不安定で勝手に動き出す、困ったちゃんだ。
困ったちゃんだから、一番人間らしい部分でもある。

絶対的ではないが、かなり影響がある柱もある。
社会という内側で暮らす時に必要なのが、金という柱。
この柱の扱いに秀でた人と、不器用な人とが分かれる。
お金は、才能の一つだと思っている。
生まれつき良い人も、努力で才能を伸ばす人もいる。
だが、ちっとも才能の無い人もいる。
ワシも才能の無い一人だ・・・
名人の小兵衛は、金の扱いにも名人だった。

        
(過去のプログは本館 「氣の空間・氣功療法院」です。
治療・若返り・悩み相談受付中。日本中出張します)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「迷解剣客商売・24」

2011-05-24 19:13:51 | Weblog



ある時、鰻売りの又六が強くなりたいと大治郎にお願いする。
悪いヤツから、売り上げを脅し取られているのだ。
大治郎は小兵衛に相談し、10日間で強くする事を承知する。
強くなるのは、技じゃないのだ。

大治郎「剣術は懸命に10年して、俺は強い、という自信が出る。
更に10年やると、相手の強さがわかる。
それから、また10年やると・・・」
又六「合わせて30年もかね」
大治郎「そうだ。すると己がいかに弱いかがわかる」
又六「それじゃ、何にもならねぇ」
大治郎「40年やると、もう、何が何だかわからなくなる」
又六「だって先生は俺と同じ年頃なのに・・・」
大治郎苦笑する。
小兵衛の言葉の受け売りだ。

ほとんどの道に通用する言葉だろう。
特に技の道は当てはまるだろう。
ワシはまだ20年たってないが、わけがわからない。
故御師匠様も「わからんばかりだと、解ってきた」と。
この世は、わからぬ事ばかりだと解り出した。
わからない事だらけだと知って、プロの自覚が高まった。
初期は、やるたびに何かが解ったと思っていたものだ。

10日間、又六は大治郎と寝食を共にする。
本物といれば、本物の「氣」は伝わるものだ。
本物の剣客ともなれば、肚(はら)胆(きも)が伝わる。
強さは優しさがあるからと、理屈無く染み込む。
僅か10日間でも、チンピラなど問題じゃなくなる。
自信をもって、又六は鰻売りに精を出すようになった。
(「悪い虫」より)


        
(過去のプログは本館 「氣の空間・氣功療法院」です。
治療・若返り・悩み相談受付中。日本中出張します)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「迷解剣客商売・23」

2011-05-23 18:47:30 | Weblog



小兵衛と嘗て試合をした牛堀も一流の剣客だ。
それ以来、小兵衛と親しくしている。
剣の道は人の道、というのが無外流の真髄らしい。
名人の小兵衛は、それを感じる多くの人から慕われる。
人の道だから一律ではない。
無外流は、個々の個性を活かす剣術であり道だった。

宗家の辻が飄然と道場から去った時の後始末。
竜虎といわれた小兵衛も嶋岡も他の高弟もわきまえていた。
例え宗家の道場が無くなっても、無外流の教えを貫いた。
体裁や損得で立場にこだわるようでは、真髄は消えてしまう。
それぞれが、自分をわきまえた決定に師の辻は満足していた。
結果として、宗家の道場は閉鎖となった。

牛堀「おれも秋山さんをみていると、剣の道を外したくなる。
しかし、あの自由自在、融通無碍の境地にはなれぬ」
一流から名人へは、こだわりから放れて進める。
そんな小兵衛でも、一流になった大治郎を心配してしまう。
大治郎暗殺の話を聞いて心が動くが、本人には伝えない。
優しさからの心の弱さは、人の強さかもしれない。
(「まゆ墨の金ちゃん」より)

        
(過去のプログは本館 「氣の空間・氣功療法院」です。
治療・若返り・悩み相談受付中。日本中出張します)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「迷解剣客商売・22」

2011-05-22 19:37:04 | Weblog



大治郎は恩師嶋岡礼蔵の遺髪を収めに大和の国(奈良)へ。
その帰り道、仇討ち騒動に巻き込まれる。
一応の決着がついて、小兵衛に報告する。
そして、自分の行動についての意見も聞く。
父というより、剣と人生の師匠なのだ。
小兵衛「ふうん、やるねぇ、お前も・・・」
大治郎「恐れ入ります」

そもそもの発端はオンナの心だ。
ここで、オンナという不可思議な生きものの一端を語る。
一方的に熱を上げていた男を、結婚してからも忘れられぬ。
夫に抱かれている時も、夢中で男の名を口走る。
夫は不倫を疑い、いつも男(部下)に辛く当たった。
まぁ、妻が夢中で口走るんだもの、夫も疑うわな。
元々男性は根性(心)が狭い。
上下関係や利権関係があれば、結構意地悪するようだ。
で、キレた男が上司を斬っちゃった・・・

惚れた男が敵(かたき)となり、仇討ちに出た妻。
自分が発端だけど、武家社会はそういうものだ。
でも義理の弟(夫の弟)と一緒の旅でデキてしまう。
でも、やっぱり、抱かれると夢中で敵の男の名を・・・
あ~あ・・・少しコントロールを覚えればいいのに・・・
妻の皆さんも注意しましょうね。
童貞の大治郎には、そんなオンナの不可思議さが理解できない。
小兵衛「そうさ。剣術よりも、むずかしいぞ」

その場で、今度は小兵衛が切り出す。
かねてより、おはる(40歳年下)に結婚を迫られていたのだ。
「おはると夫婦の盃をかわしたい。いいか?」
「そ、それは、父上の好き勝手に・・・」
「おはる、大治郎が許してくれたぞ」
真っ赤になった、おはる「ありがとうございます、若先生」
秋山大治郎、憮然としている。
こういう情景が池波作品のもう一つの魅力なんだなぁ。
(「春の鈴鹿川」より)

        
(過去のプログは本館 「氣の空間・氣功療法院」です。
治療・若返り・悩み相談受付中。日本中出張します)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする