震災がれきの広域処理については、もっぱら放射能の汚染不安が争点になっているように報じられています。もちろん放射能は拡散させずに「集中して閉じ込める」がセオリーですが、今回は放射能の問題を棚上げして、震災地の地元経済復興支援の側面から、どのようながれき処理が望ましいかを考えてみたいと思う。
焼却炉わずか5基、阪神では34基
岩手県陸前高田市では、市長ががれき専用の焼却炉の建設を震災直後から県に提案したが「環境アセスの手続きに2、3年かかる」と説明があっただけでその後、県からも国からも動きはない。同じようなことは南相馬市や他の自治体でも耳にする。阪神淡路大震災では、震災後3カ月から1年以内に兵庫県内7市町に仮設焼却炉が34基稼働した。ところが東日本の震災では、岩手、宮城の仮設焼却炉はまだわずか5基。(岩手宮城両県の計画希望は27基)
広域処理では輸送費等、総コストは増大する。阪神淡路大震災の処理単価は2万2千円/トン。しかし今回の広域処理の試算では最大で7万円/トンとなる。安全はもとより迅速な効率的な処理のためにも災害廃棄物専用の仮設焼却炉を現地に造ることがもっとも効果的であることは誰でも理解できるところ。被災地での処理対応は現地の雇用促進にもつながる。もし汚染が少ないなら、なおさら木材は燃料に使えるしバイオ発電や防災林の基盤として高台の造成に利用することもできる。被災地の市町村の本当の復興に役立つ道は、今進めている広域処理なのだろうか。真に地元経済の活性化、復興を考えるならその答えは現地での「集中専用処理」にあるのではないだろうか。
マスコミ広告にムダ投資
政府は「広域処理」の旗振りに宣伝広告費だけでもすでに30億円以上を大手メディアに投じてしまった。それを受けてかマスコミの論調が総じて広域がれき処理に肯定的なのは困ったものだ。いま必要とされているのは、宣伝広告などに貴重な資金を費やすのではなく仮設焼却炉を現地に早急に建設することだ。ここでも政府の大きな判断ミスを感じる。
【写真】仙台市に建設された仮設焼却炉(社会新報5/16から)
参考(再掲):
まどかさんのガレキ処理への疑問