どうも私は昔から、何事をするのにも要領が悪いのです。ぼんやりしているうちにもうあさっては2月8日の初午です。慌てて装束稲荷さまの招き狐を塗っていました。
授与されることになった頃は同じ型ではあったのですが、耳や尻尾の二本線には朱色を使って塗っていました。すなわち、口も耳も尻尾も爪の点々もみな朱色だったのです。
その後、ちょっと色の変化があったほうがいいなと思って、耳と尻尾と爪の部分にはスカーレットの染料を使うことにしました。
染料と顔料の違いはその粒子の細かさの違いです。顔料は粒子が粗いので、塗っても下地に吸収されずに上に乗っているという感じで、不透明な感じです。染料は粒子が細かいので下地に吸収されたり、透明感があります。
具体的にいえば、顔料を布に塗っても吸収されないので乾くとぼろぼろ落ちます。染料は布地に吸収されるので表面に固まりません。
凧絵とか昔の提灯とかにはそのため染料で塗られたものが多く、光を通すのでその用途にかなった色材です。全国に昔作られた土人形も幕末から明治、大正、昭和にかけて染料が使われていたところが多いと思います。
スカーレットは赤い染料の代表的なものですが、そのまま溶いた発色は青みが強くて赤紫色の黒ずんだような色です。いかにも赤っぽくするには、樺色(アッシドオレンジ)やピンクの染料を混ぜて赤みを作ります。
溶かした膠に染料を混ぜて使いますが、胡粉地に塗ると、吸収されて色が薄くなるので、下地に予め黄色の染料か顔料を塗ってからスカーレット染料を置くと、鮮明な発色になります。
そんな訳で、赤く発色させるためにも赤や紅色の顔料を使う場合もありますが、予め黄色くした下地に染料を置けば、透明感があり、照りのある感触に仕上がるのです。
ちょうど縁日のりんご飴をのような効果です。
何とか塗り終わったので一晩乾かして、明日包んで装束稲荷さまへ納めに行こうと思っています。