もうすぐ初午(稲荷祭)。今年は2月6日(土)です。被官様(被官稲荷様)の鉄砲狐を大急ぎで仕上げているところです。昨年夏場に生まれてはじめての入院ということになって、そのあとも体に無理をしないようにという時期もあり、例年膠の使いづらい夏場こそ型抜きに集中して備える時期なのに出だしが遅れて大変申し訳ないことになっています。
今戸焼としても今戸人形としても古典落語にも登場するくらいの定番の鉄砲狐です。配色は天保年間以来のもので、赤部分だけは明治以降の赤にしています。本来は赤部分は江戸後期であれば朱色か鉛丹で、明治以降は洋紅とかコチニールとかの顔料、またはスカーレット染料を使うのが定番ですが、スカーレット染料だと膠がパリパリにめくれる心配があるので、代用のもので塗っています。
彩色としてはシンプルなものですが、狭い作業場で一度に並べることができない数なのでまわしながら色を置いていくという作業がしんどいです。スペースさえ確保できれば、、。しかし数をまわして作業する間、いろいろなことを思い浮かべながら筆を動かしています。まさに、落語の「今戸の狐」を地で行っているという感じ、。「金貼り」「銀貼り」というのは実物を観た事がないんですが、、。
それとこれは実際の伝説に聞く明治時代今戸で「馬車馬」と呼ばれていたという狐作りのおかみさんの話とか(一日に狐を作る量がものすごいので馬車馬と呼ばれた、という話)とか、、。
一度に全部を並べて仕事できないので、青いコンテナにしまったり、出したりしながら進めていきます。
画像でちょっと変だな?と思う人があるかもしれませんが、写っている狐がまだ全部が「髭なし」の状態なんです。目と一緒に描き込んでしまうのが合理的なんですが、自分の場合、ひととおり塗り終わってペアリングしてからどっちかを「髭あり」にする、というやり方にしています。というのも「あり」と「なし」が一対一にしなければならないので、余計に髭を描き過ぎたりしないように、またペアのどっちが髭が似合いそうか考えて入れます。
早く仕上げてお納めに行こうと思います。