この灰器にも「白井半七」の印があります。箱があり、うこん色の裂でくるんでありまして、裂には別の半七の印が押してあるので、これは、関東大震災に遭って関西に移った「7世白井半七」の製品だとわかります。ただ、震災前の今戸時代のものなのか、関西で開窯後のものなのかまではわかりません。灰器は先の「半田焙烙」も含めて、炉や土風炉に灰を盛り、ならす時に使うお茶の道具で、炉によって素焼きを磨いたもの、釉薬を施したもの、この画像のように磨いてから黒漆を施したもの、それに備前焼などのものもあるようですが、私はお茶の事は皆目わからないので、どういう時にどれを使うといった決まりごとは全然わかりません。
画像に見えるように、松葉を散らした模様が刻まれていて、素焼きして磨いて、黒漆で仕上げた上に松葉の沈線の上を金の漆で装飾してあります。黒漆のつやは、前述んの真塗りの土風炉ほどには光沢はなくて、鈍い光沢を放っています。
痛ましいのは、口縁の部分に2か所、欠けがあるんです。だからこそ、私のような貧乏人の手元にあるわけですが、金継ぎとかしたほうがいいんだか、いや金継ぎだと松葉の金色を邪魔してしまうようで、金ではない漆の継ぎ方はないんだろうか、、とああでもない、こうでもないと考えているんです。
私はお茶のことはわかりませんし、ただ今戸焼のことを知りたいばかりに、こうした品物を手元で眺めているわけで、実際に使うことはないと思っているんですが、、。
はい。松葉の彫りに金を施してあります。
黒字に金なので、金継ぎだと松葉を殺してしまわないかと思っているんです。