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【脊振風力発電計画】大和エネルギー、糸島市除外の計画公表

2021-01-19 17:19:00 | 脊振風力・ILC

脊振山系で風力発電計画を進めている大和エネルギー(大阪市)は14日、事業実施区域を絞り込んだ「方法書」を公表した。それによると、発電機設置場所を含む区域から糸島市側の全エリアを除外(事業区域522haから353haに変更)して、2024年度に着工、26年度の発電・売電開始を目指すとしている。22日からは、唐津市、佐賀市、糸島市の3ヵ所で住民説明会の開催を予定している。

いや、どういう「方法書」を出してくるのかと思っていたら、糸島市を除外した計画に切り替えてきた。昨年7月に公表した「配慮書」には、発電機設置場所として糸島市も含んでいた。ところが、糸島市民から景観を破壊するなど反対の声が多く上がったものだから、そこを除外したというわけだ。どれどれと設置図を見ると、県境ぎりぎりのところに発電機が見事に並んでいる。除外したというのは、つまり、厄介な自治体の行政手続きを不要にしたということに他ならない。計画遂行のための策である。(悪い言い方をすれば、口封じ)

事業実施区域は脊振北山県立自然公園である。大胆不敵にも、そこに10機も発電機を設置しようというのだから、信じられない。しかも、7機は脊振山自然歩道沿いに予定されており、「第3種特別地域」に入る。そのため、設置には佐賀県知事の許可が必要になる。このような事業が簡単に許可されてはならないと思うが、地元住民(唐津市)から反対意見が出ないとなると、話はトントン拍子で進む恐れもある。そうなる前に何とかしなくてはならない。できるものなら、住民説明会に参加して意見したいところだがそれもできない。こうなったら、もう一度、意見書を出すしかない。

 

 

風力発電機の設置計画図(以下、資料は大和エネルギー方法書より)※リンクは縦覧期間中のみ(1月14日~2月15日)

県境すれすれのところに並ぶ発電機 美しい山容の女岳が悲惨なことに 茶色のラインは県境、これに沿って登山道がある

 

 

 

重要な自然環境その1

すべて脊振北山県立自然公園の中 うち7機は第3種特別地域 緑色内のメッシュ部分は「浮嶽」の美しい自然林があるところ 

 

 

 

重要な自然環境その2

すべて土砂流出防備保安林の中 ここに約159mの発電機を設置するとどういうことになるか それでなくとも、ここ数年、脊振山地では豪雨による土砂崩壊が多発しているというのに、、

 

※土砂流出防備保安林とは、下流に重要な保全対象がある地域で土砂流出の著しい地域や崩壊、流出のおそれがある区域に、林木及び地表植生などの作用によって、林地の表面侵食や崩壊による土砂の流出を防止するもの。

 

 

地質図

地質は脆弱な花崗閃緑岩 おまけに断層も    自然を甘く見ているとトンでもないことに、、

 

 

 

人と自然のふれあいの場 

糸島市側には自然とふれあう場所も多く、人への影響も大きい  

 

 

 

~ 脊振の山を自然を愛する皆さん、意見をドシドシ送りましょう! ~

(仮称)DREAM Wind 佐賀唐津風力発電事業環境影響評価方法書の縦覧並びに住民説明会の実施について(2021.1.14)

 

《関連記事》

区域から糸島市除外 脊振山系西側風力発電所計画 住民説明会予定(西日本新聞 2021.1.15)

 

《参考資料》

林野庁

 


糸島市「輝く小さな街」世界3位!~脊振風力発電はどうなる?

2020-11-17 16:57:57 | 脊振風力・ILC

久しぶりに明るい話題。英国を拠点とした世界的な情報誌「MONOCLE」が、人口25万人未満の街を対象とした「輝く小さな街」の2021年のランキングを発表、福岡県糸島市が世界3位に選ばれた。自然の豊かさ=玄界灘の恵みと新鮮で安全な農畜産物が手に入ること。生活の質が優れている=福岡市に隣接して都市生活も享受しやすいことなどが評価された。ちなみに、ランキング1位はポルトガルのポルト、2位はベルギーのルーベンだった。

糸島市は福岡市の西側に位置し、人口10万人の街。海と山に囲まれた風光明媚なところで、若い農業者や事業者、アーティストが多い。福岡市から近く利便性もよいことから、都市圏からの移住者が目立つ。同誌もそのあたりのところを評価しているようで、糸島暮らしを「素晴らしい選択」と推奨している。ここで、個人的に気になるのが「脊振山系風力発電計画」である。

同誌はランキング紹介のところで、芥屋にある立石山(標高210m)の山頂から見た糸島半島と玄界灘の写真を掲載し、自然の素晴らしさを伝えている。しかし、そこから南におよそ10kmのところ、脊振山地(浮嶽近く)で高さ160mに上る巨大な風力発電機(8基~10基)を設置する計画が進められている。当然のことながら、景観は全く違ったものになり、自然環境に与える影響も懸念される。

先月、佐賀県知事は事業者(大和エネルギー)に意見書を送っているが、その後は目立った動きはない。おそらく今、事業者が方法書などを作成しているものと思われる。そこで、佐賀県のホームページを見ると、県民から風力発電計画反対の意見が寄せられていた。県の回答をみると、風力発電機の設置場所は、脊振北山県立自然公園の特別地域と普通地域にまたがる区域で、設置に際しては、県立自然公園条例により特別地域では県知事の許可が、特別地域と一体的に風景の保護を図る必要がある普通地域では市町への届出が必要と書かれている。佐賀県側は唐津市、福岡県側は糸島市への届け出が必要となる。

今、糸島市は世界から注目されている。これで事業者のハードルも高くなったのではないだろうか。一方の糸島市はどのような判断をするのか。風力発電計画をすんなり受け入れるのか、それとも美しい景観を守っていくのか、、ますます目が離せなくなった。

 

 

下の写真2枚はいずれも立石山から見た糸島半島。

Itoshima, Japan(MONOCLE Bright lights, small cityより

 

 

糸島市観光協会「いこいこ糸島」より

美しい玄界灘の海岸線 

 

 

 

糸島市と脊振風力発電計画の位置関係(大和エネルギー縦覧資料に加筆)

 

 

 

《関連記事》

糸島市が「輝く街」世界3位に 「自然と都市生活を享受」国際誌が評価(西日本新聞 2020.11.13

 

《関連資料》

糸島市HP

 

 


【脊振風力発電計画】佐賀県知事、事業者へ意見書提出(10月13日更新)

2020-10-04 19:54:00 | 脊振風力・ILC

脊振山系風力発電計画に動きがあった。1日、佐賀県山口知事は、環境影響評価審査会の審議(7月15日と9月24日開催)を踏まえ、事業者である大和エネルギーに意見書を提出した。意見書では、事業実施想定区域は脊振北山県立自然公園に指定されており、自然環境への影響が懸念されるとし、重大な環境影響等を回避や低減できない場合は、風力発電機の削減もしくは事業計画の見直しを行うよう求めている。また、周辺住民や地元関係者に丁寧に説明し、理解を得るよう求めている。(知事には計画はあり得ないと言ってほしかったが)

意見書を読むと、風力発電によって想定される影響がてんこ盛りである。騒音の問題、影の問題、土壌や河川の水質問題、動物への影響、景観の問題など。最後、設置区域周辺に位置する脊振山系「浮嶽」に触れ、ここに多くの登山者が訪れることから、眺望のよいところ以外についても調査し、地元関係者からも情報収集を行うよう求めている。(いやいや、ここは県の意見を入れるところだろう)

それにしても、これほど多くの懸念材料があるところに、わざわざ風力発電を設置しなければならない理由は何なのか。是が非でもここに設置しなければならない理由は、営利目的以外に何があるのか。全く理解できないが、今後、大和エネルギーは、これらの意見を踏まえ、アセス項目や調査手法を示す方法書の作成に取り掛かる。こうした動きに、糸島市民からは計画見直しを求める声が出ている。一方、設置場所となる唐津市では今のところ動きはない。今後、場所がはっきり示されれば、唐津市民からも反対の声が上がるのではないか。

ちなみに、全国では風力発電計画の撤回や見直しを求める動きが相次いでいる。先月、山形県の霊峰「出羽三山」の風力発電計画が地元の強い反対により撤回された。事業者(前田建設工業)が説明会をはじめて事業内容が明らかになると、全国に反対の声が広がったという。また、青森県十和田市奥瀬の風力発電計画に関しても、「霊山十和田参詣道・十和田古道」の歴史的な景観に甚大な影響を与えるとして、十和田市の市民グループが反対している。(こちらも声を上げないと)

かく言う、脊振山系の「浮嶽」も霊峰である。その歴史的価値を失うことがあってはならないだろう。先月の審議会で、大和エネルギーは住民説明会を開催する意向を示している。同社には、是非とも反対の声に耳を傾けてほしい。

 

 

9月24日、佐賀県庁で開催された環境影響評価審査会の様子 写真左が専門委員で反対側が事業者かな? (写真:佐賀新聞より)

 

 

 

 

手前に浮嶽、画面中央に女岳、奥に二丈岳 ここに巨大な発電機が立ち並ぶ、、(写真:ヤマレコより)

 

 こちらは、風力発電事業実施想定区域図(大和エネルギー資料に加筆) 

 

 

《流石!和歌山県仁坂知事の意見書 2020.10.13更新》

大和エネルギーは和歌山県でも風力発電計画を進めている。9月3日、仁坂知事は同社に意見書を提出しているが、これがなかなか読み応えがある。地球温暖化により再生可能エネルギーの導入が進められていることに対して、「それはあくまで自然環境や生活環境との調和を前提としたものでなければならず、そうでないものは是認できない」ときっちり述べている。さらに、「事業実施想定区域及びその周辺には、県民の財産として将来にわたり守っていくべき自然環境が形成維持されている」とも述べており、県民への思いがひしひしと伝わる。山口知事の意見書はまるで是認しているかのようだったが。流石、仁坂知事、的を得ている。

 

仮称)DREAM Wind和歌山有田川・日高川風力発電事業 知事意見書(2020.9.3.)

 

 

《関連記事》

脊振山系風力、「丁寧な説明を」 事業者に知事意見提出(佐賀新聞 2020.10.1)

脊振山系の風力発電計画 住民説明会実施へ 糸島の市民団体反発(佐賀新聞 2020.9.25)

山形・出羽三山周辺の風力発電計画を撤回 業者、反対運動受け判断 (河北新報 2020.9.10)

十和田古道の景観考慮「風力発電見直しを」(Web東奥 2020.9.1)

 

《参考資料》

佐賀県HP。「(仮称)DREAM Wind佐賀唐津風力発電事業に係る計画段階環境配慮書」に対する知事意見を提出しました(2020.10.1)

 

 


脊振山系風力発電計画、住民反対運動はじまる

2020-08-22 08:22:00 | 脊振風力・ILC

コロナ禍のどさくさに紛れて進められている脊振山系の風力発電計画。10日夜中、この計画環境配慮書に対する意見書を必死に書いて、締め切り当日(11日)、ぎりぎりに大和エネルギーへ送ることができた。11日からしばらく山口に居たので気付かなかったが、12日の西日本新聞にこの計画についての記事が掲載されていた。そこで糸島市民有志による反対運動がはじまっていることを知った。

記事によると、想定区域の一つである糸島市の住民有志が「景観、自然、水源の破壊が懸念される」として、SNS上で計画反対を訴え、賛同を募っていたという。有志6人は今月11日に糸島市役所を訪ね、市長宛てに、民意に寄り添った対応を求める文書を提出、環境配慮書に対する300人以上の意見を事業者に送ることも報告していた。一方、もう一つの想定区域である唐津市では、今のところ動きはないようだ。

発電機の建設場所について、西日本新聞の取材に大和エネルギーの担当者は「基本的に唐津市側に設置することを考えている」と説明している。おそらく糸島市側には居住地があるからだろう。(そのあたりのことは意見書で指摘しておいた)唐津側には近くに居住地もなく、脊振山系南側は傾斜も緩やかで設置に好適だと考えているのだろう。しかし、そこは脊振北山自然公園のド真ん中。工作物の設置に関しては自然公園法や県条例などに基づく許可が必要になる。(簡単に許可は出さないと思うが)ここは佐賀県の良識が問われるところだろう。あとは唐津市民の関心が高まってくれればよいのだが。ともかく、美しい脊振を守るためにやれることはやっていきたい。

 

 

「(仮称)DREAM Wind佐賀唐津風力発電事業に係る計画段階環境配慮書」縦覧より

風力発電設置想定区域 女岳(紫文字記入)を囲むように計画されている

 

 

 

自然公園のど真ん中 自然への挑戦か、、

 

 

 

 

糸島市民からの呼びかけポスター(高田 哲助さんface bookより)

脊振山縦走路が発電機だらけに、、

 

 

《関連記事》

脊振山系に風力発電計画 糸島、唐津の県境 住民に反対活動も(西日本新聞 2020.8.12)

 

《参考》

糸島市の市民団体「唐津―糸島の山の未来を考える会」薦田雄一代表face book

 

 

 


寝耳に水!脊振山系に風力発電計画(8月8日更新) 

2020-07-17 09:54:14 | 脊振風力・ILC

16日の佐賀新聞に驚くニュースが。なんと脊振山地に風力発電計画があるという。記事によると、事業者は大阪府の「大和エネルギー」で、脊振山地に発電機8~10基を設置(最大出力3万2千KW)、2026年の運転開始を目指しているという。昨日(15日)、佐賀県庁で環境影響評価審査会(会長は穴井謙福岡大工学部教授など15人)があり、事業内容が明らかになった。委員からは「自然が豊かで普通なら避ける場所」という指摘も。真っ当な意見だろう。

脊振山に風力発電計画があったとは、まさに寝耳に水、今日まで知る由もなかった。佐賀県のホームページを確認してみたが、該当するような資料はない。おそらく今回はじめて報道されたのではないだろうか。設置場所は明らかにされていないが、佐賀新聞の地図から推測すると、荒川峠(佐賀県唐津市)から荒谷峠(福岡県糸島市)間のようだ。どちらの峠にも林道があり、機材を運ぶには好都合だ。しかし、そこには美しい山容の女岳(めだけ)がある。そのため脊振山系でも人気の登山ルートになっている。そこに160メートルもある巨大なタワーを建てようというのだから、信じられない。

脊振山地では7年前、国際リニアコライダー計画の候補地になったが、ILC立地評価会議は脊振山地は適材地ではないと判断し、もう一つの候補地だった北上山地に決定した。この時、佐賀や福岡市民からは反対の声が多く上がっていた(私も反対した)が、今回の風力発電計画はまだ知らない人も多いのではないだろうか。反対運動の噂も聞かない。何はともあれ、佐賀県はじめ審査会委員の方々には適正な判断をお願いしたい。美しい脊振山地を壊さないでほしい。(一難去ってまた一難だ)

 

 

脊振山地がこういうことに、、 (写真は愛媛県西宇和島郡・佐多岬半島 大和エネルギーHPより)

 

 

 

 

脊振山系 風力発電機の設置想定区域(佐賀新聞より)

 

 

 

 

おそらくこの範囲内では(紫色部分) (国土地理院地図使用)

 

 

九州は線状降水帯が発生しやすい場所だと言われている。そのため今、福岡県の東峰村や熊本県では、線状降水帯の発生を早期に予測するための実証実験が進められている。今回の九州豪雨では事前に危険を察知し、自治体へ情報が送られていた。あとは精度の問題だという。3年前の九州北部豪雨では、脊振山地付近で線状降水帯が発生し、朝倉などで甚大な被害が出たが、脊振山地でも多くのところで土砂災害が発生した。西日本豪雨も同様。いわば線状降水帯の多発地帯。そういうところに風力発電機を設置するとどうなるか、想像に難くない。問題は環境や景観だけではない。防災上の観点からも大いに問題があると思うのだが。

 

《追記》

佐賀県ホームページに審査会の案内が掲載されていた。委員名簿は掲載されているが、資料はない。今後、議事録は出てくるはずだが。

「(仮称)DREAM Wind佐賀唐津風力発電事業に係る計画段階環境配慮書」に関する環境影響評価審査会

 

 

《風力発電計画についての意見書受付は8月11日まで 2020.8.8更新》

コロナ禍ですっぽり頭から抜けていたが、「(仮称)DREAM Wind 佐賀唐津風力発電事業に係る計画段階環境配慮書」の縦覧がはじまっていた。ブログにコメントをいただいて知ったのだが、意見書の受付期限は来週11日まで、もう時間はない。そもそも情報が公になったのが7月16日で受付が7月7日から、しかも期間は正味1ヵ月しかないとは。出来レースか。(とにかく急いで書くしかない)

大和エネルギー㈱HP「(仮称)DREAM Wind 佐賀唐津風力発電事業に係る計画段階環境配慮書の縦覧について」

 

 

《関連記事》

脊振山系で風力発電計画 唐津市と糸島市(福岡県)の市境、最大で3.2万キロワット(佐賀新聞 2020.7.16)

線状降水帯の発生予測、精度が課題 熊本の豪雨前日に察知できたが…(西日本新聞 2020.7.16)

 

《参考資料》

線状降水帯の停滞が豪雨災害を引き起こす(JAMSTEC 国立研究開発法人 海洋開発研究機構 2020.7.06)

 ※どうして九州で線状降水帯が発生しやすいのかなどの説明あり