天神ビッグバン(旧大名小跡地活用事業)のクレーン転倒事故から1週間、福岡市や現場からは何の音沙汰もない。原因究明中とは言え、死者1人という重大事故である。JVトップである清水建設から事故の報告がないというのは解せない。普通では考えられないが、ここが国家戦略特区の現場であることを考えると、そういうこともあるのかと思ってしまう。
福岡市は平成26年、安倍政権時に国家戦略特区「創業特区」に指定され、これまで規制緩和による改革を進めてきた。その象徴となっているのが「天神ビッグバン」であり、高島市長の肝いり事業である。今回、そこで死亡事故が起きた。しかも、目玉となるホテル建設現場である。福岡市としては、大ごとにしたくないというのが本音なのではないか。
そういえば、今から4年前、博多駅前で陥没事故が起きたが、高島市長の第一声は、市民への謝罪の言葉ではなく、「はらわたが煮えくり返っている」だった。最高責任者としての自覚のなさに驚いたものだが、事故現場は天神ビッグバンの延長線上にあって、国家戦略特区に指定されていた。そこに水を差されたことで本音が出た。(今回は無言を貫いているが)この時、埋め戻しの早さが賞賛され、高島市長は時の人となっていたが、結局、誰一人として責任を取ることはなかった。大成建設からは謝罪の言葉はあったが。
菅政権が誕生した16日、高島市長は記者団の取材に応じている。安倍政権を支えてきた菅新総理への期待を口にし、国家戦略特区についても語っている。どうやら、これまで以上に改革を進めていくつもりのようだ。それにしても、記者から事故についての質問はなかったのだろうか。(記事にはなっていないが)何はともあれ、国家戦略特区を推進していくというのなら、事故についてもきちんと報告すべきと思うが。
16日午後、記者団の質問に答える高島市長 (写真:産経新聞より)
《余談》
先日、書いた記事「天神ビッグバンでクレーン転倒事故」が人気ランキング6位(5719人訪問)になっていた。ブログ開設以来、初めてのことでびっくりした(というか目を疑った)が、これも世間の関心の高さの表れではないかと思うなど。
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