昨年7月27日、衝撃的なニュースが飛び込んできた。登山家の平出和也さんと中島健郎さんがK2西壁で滑落したというもの。当時、両氏が所属する石井スポーツが「重要なお知らせ」として事故の内容を伝えていた。あれから8ヵ月。ふたたび衝撃が蘇った。
先週末(8日)、NHKが遭難に至るまでの映像を放送した。タイトルは「K2西壁 ふたりの軌跡~平出和也と中島健郎が挑んだ空白地帯」。事前にXのTLに情報が入っていた(目にしていた)ので、当日は急いで山口から戻った。ぎりぎりセーフでBSをつけたが、やっていない。宮崎では放送されないのか?確認してみると、BSではなくBSP4Kでの放送だった。てっきりBSだと思っていた。慌てて4Kに切り替えたが、なぜ同時放送をしなかったのか。これでは見れない人も多いのではないか。第一、平出さんの奥様も4Kでは見れないと仰っている。なにかスポンサーから要請があったのか。それとも放送権の問題なのか。理由はよくわからないが、結局、30分遅れで見ることになった。
映像は、西壁基部(途中から見たのでどちらかわからないが6月26日5650mか6月29日6700mのいずれか)を偵察しているところだった。平出さんは「もう今回1回で終わりにしたい」、中島さんも「何回も(偵察に)来る場所じゃないね」と吐露。おふたりもわかっていた。偵察が命取りになる可能性があることを。ふとこの時、登山家の大石明弘さんのnoteを思い出した。大石さんは「平出和也のK2西壁遭難と20年前の想い出」の中で、「アルパインスタイルでは通常行わない偵察を、なぜか彼らは行っていた。そしてその時に事故はおきた…」「背負ったものをかなぐり捨てて、ふたりは帰ってくればよかったのだ…」と。そう、かなぐり捨ててほしかった。(再放送を改めて見て、遠征中止のタイミングはあったように思えた)
カメラは、ラストトライへ向けてBCを出発するふたりの様子も捉えていた。気のせいかふたりとも元気がないように見えた。撮影は、山岳カメラマンの石井邦彦さんがされていたのだろう。放送最後のクレジットに石井さんの名前があった。NHKグレートヒマラヤの健郎さんと石井さんのコンビは絶妙でいつも楽しませてもらっていた。石井さんもどのような思いでおられることか。その後、カメラは滑落直前まで捉えていた。ここまで放送されるとは思わなかったが、それがふたりを写した最後の映像となった。
見終えて虚しさしかなかった。平出さんの奥様は「失ったものを見るのではなく、彼らが何を成そうとしたのか、どれだけ楽しんでいたのかを見てほしい」と仰っていた。が、正直、ふたりが楽しんでいるようには見えなかった。楽しそうに見えたのは、平出さんが子供さんの描いた山の絵にチュ―していた時、そして健郎さんが奥さん差し入れの梅干しをおにぎりに入れて食べている時だった。幸せそうだった。ご家族のためにも生きて帰ってほしかった。。今はただご冥福を祈るだけ。。
※再放送を見ることができましたので、一部写真を追加(加筆)しました。(3月22日22時55分更新)
「K2西壁 ふたりの軌跡~平出和也と中島健郎が挑んだ空白地帯」3月8日の放送より
再放送はBSで放送されるので多くの反響があるのでは、、(山口から午後6時までに戻って来れるか、、)
番組冒頭で映し出された映像
ABC(5670m)を出発するふたり(スタッフが目にした最後の姿からはじまった)
2回目の西壁偵察で
平出さんのひと言
健郎さんが平出さんを撮影しながら、ひと言
西壁偵察からBCへ戻って
このタイミングで踏みとどまることはできなかったのか、、
BC滞在中(停滞中)
健郎さん、偵察中に撮った写真を見ながら
K2をスケッチ
美しくて。。もっと健郎さんの描く絵を見たかったよ。。
登山記録中
※この映像は今回のものではないかもしれません
7月2日の登山記録
西壁偵察から戻って書かれた記録
健郎さんの登山記録は2006年から16年間で64冊にも上る
健郎さんは「描(書)き続けることの天才」と奥様がコメントされていました(奥様は美しい方でした)
7月24日、ラストトライへ
BC出発時の様子
また会いたかったよ。。
振り向いて手を振るふたり(いかないで。。)
K2西壁ルート
7月26日(滑落事故前日)
C2(7500m)でビバーク
7月27日(滑落事故当日)
C2から上部偵察へ向かうふたり
これが最後の映像に
このあと7550mを登攀中に氷とともに1000m近く滑落。6300mのところに今も眠る。
いつの日か、ご遺体がご家族のもとへ戻りますように。(合掌)
最後に
番組制作および放送をご承諾された、平出和也さん、中島健郎さんのご家族に感謝いたします。
※この放送は、NHKオンデマンドで見ることができます(有料視聴)。期限は2026年3月19日までです。