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トランプは大胆な歴史の書き換えに挑む覚悟を決めたようだ

2025-02-08 | 先住民族関連

 

田中良紹ジャーナリスト 2/7(金) 16:00

フーテン老人世直し録(787)

如月某日

 トランプ米大統領は4日、ホワイトハウスでイスラエルのネタニヤフ首相と会談した後、イスラエルのガザ地区を米国が長期間所有して再建し、ガザの住民をエジプトやヨルダンなど域外に移住させる考えを表明した。

 これは1993年に民主党のクリントン政権が政権のレガシー(遺産)として打ち出した「二国家共存(オスロ合意)」の完全否定である。このようにトランプは歴代民主党政権の政策を覆し、アメリカと世界の歴史を根本的に書き換えようとしている。

 当然ながらパレスティナ住民を始め、エジプト、ヨルダン、サウジアラビアなどのアラブ諸国、さらにはこの地にイスラエルを建国し紛争の根本原因を作った欧州諸国からも激しい反発の声が上がった。

 トランプの発言は国際法を無視した非常識な発言と非難されるが、しかしトランプからすれば、その非難は欧米リベラルの「常識」にすぎず、それを否定するのがトランプの打ち出した「常識の革命」である。欧米リベラルは「二国家共存」を理想のように言うが、パレスティナもイスラエルも本音では「二国家共存」を望んではいない。

 だからイスラエル建国から77年間もこの地で絶えず血が流され、報復が報復を呼ぶ悲惨な歴史が繰り返されてきた。それを愚かなことだと非難するのはたやすいが、人間が人間である以上誰も戦争をなくすことができないように両者の対立を止めることはできない。

 欧州帝国主義のエゴから生まれたアラブ国家の建設、そしてユダヤ人に対するホロコーストの贖罪意識から生まれたイスラエル建国が、この地域に永遠の対立をもたらした。そのくびきを解き放って中東に平和と安定をもたらすにはどうするか。

 フーテンは欧米リベラルが激しく非難するトランプの構想に、回答のない問題に対するドン・キホーテの挑戦を見る思いがした。しかしトランプの挑戦は単なる思い付きではない。そもそも2年前の10月7日、ハマスの大規模テロが起きた時、フーテンはイスラエルが事前にそれを知らなかったはずはないと考えた。

 あの狭いガザで準備されたテロ計画を世界最高のイスラエル諜報機関が気付かないことは考えられない。ネタニヤフは知っていてやらせた。目的はクリントン政権から押し付けられた「二国家共存」を否定するためである。ハマスのテロを好機としてイスラエルは激しい戦闘でガザを完全な焼土にした。その時ガザの北部にいたパレスティナ人を南部に追いやり、エジプトに脱出させる方策がとられた。

 その頃イスラエル発の情報では、「アラブの春」でエジプトに誕生したムスリム同胞団のムルシー政権は軍事クーデターで政権を失ったが、ムスリム同胞団の軍事部門がガザを実質支配するハマスである。それを考えるとハマスがエジプトに移住することで再びムスリム同胞団がエジプトを支配する可能性が生まれる。だからハマスにとっても悪い話ではない。

 問題は現在のエジプトのシシ政権がそれを認めないことで、現実にエジプトに移住したパレスティナ人は少数に過ぎなかった。そしてネタニヤフは西岸地区に住むパレスティナ人に対してもヨルダンに移住させることを計画していた。そうすればイスラエルは完全にユダヤ人の国家になる。

 だからガザから住民を立ち退かせる話は突然出たわけではない。2年前からイスラエル内で練られてきた計画だ。それをトランプが「米国が所有して中東のリビエラにする」と言い出したから、衝撃が大きく国際社会に反発が広がることになった。

 しかしこの構想を馬鹿にできないのは、トランプがサウジアラビアとイスラエルの国交正常化に執念を燃やし、その先にはイスラエルとイランの和解も考えている気配があることだ。そこまでいけば中東の平和と安定は保証される。

 イランを巡っては、一昨年に中国が仲介役となって断絶状態だったサウジアラビアとの国交が回復した。またイランは今年になってロシアと包括的戦略的パートナーシップ協定を結び、軍事と経済の両面でロシアが後ろ盾となる体制ができた。これが何を意味するかだが、フーテンはトランプの構想にはいずれ中国とロシアが参画すると考えている。

 昨年10月、イランとイスラエルは互いに相手領土をミサイル攻撃した。フーテンは深刻な戦争に発展すると緊張したが、現実に起きたことは事前に相手側に攻撃が分かるようにする極めて自制的なものだった。イランとイスラエルには本気で戦争する気がないことが証明された。

 そしてイラン傘下のテロ組織ハマスとヒズボラの軍事指導者が相次いでイスラエルに殺害され、イランの軍事的劣勢が明らかになる中、昨年末には突然シリアのアサド政権が崩壊して、イランの劣勢が決定的になった。優位に立つイスラエルは最近サウジアラビアの南に位置するイエメンに攻撃をかけ、イラン傘下のフーシ派を壊滅させようとしている。

 イエメンがイスラエルの傀儡国家になれば、サウジはイスラエルとイスラエルの傀儡国家イエメンに挟まれることになる。その情勢変化をトランプが待っている。それはサウジにイスラエルとの国交正常化に向かう方が得だという判断に向かわせるからだ。

 サウジアラビアがイスラエルとの国交正常化に動く時、パレスティナ国家の建設を大義に掲げるサウジがそれでも「二国家共存」に固執するだろうか。フーテンはサウジがトランプの構想に同意し、サウジがそちらに動けば、アラブ世界は雪崩を打ってトランプ構想を受け入れ、その先にはイスラエルとイランの関係正常化が中露の協力を得て達成される可能性がある。

 こうして77年間続いてきたイスラエルとパレスティナの戦争を終わらせ、イスラエルとサウジアラビア、イスラエルとイランの和解を達成することをトランプは考えていると思う。それには中国とロシアの協力が必須で、民主主義とか人権外交を掲げる欧米のリベラル思考では無理だ。

 かつてのアメリカがベトナム戦争の泥沼から抜け出す時、ニクソン共和党大統領は共産中国と歴史的和解を果たし、さらにソ連とも接近するデタント(緊張緩和)政策を採用した。その外交手法をトランプは意識している。中東和平は民主党政権の「二国家共存」を完全否定するところから始める必要があったのだ。

 しかし77年間続いてきた国際社会の「常識」をすぐに変えるのは現実には難しい。現状で反発が広がるのも無理はない。しかし「二国家共存」を理想だと押し付けても「嫌なものは嫌だ」という人間の本音を消すことはできない。それを解決するにはトランプの言う「常識の革命」が必要になる。

 トランプは大統領に就任すると、麻薬の米国流入などを理由にメキシコとカナダに25%、中国に10%の追加関税を課すと発表した。そのため世界は「関税」にのみ注目したが、「関税」は交渉のための手段に過ぎない。フーテンはそれよりもトランプが世界史の大胆な書き換えを始めたところに注目した。

 トランプが意識するのは第5代大統領ジェームズ・モンローと第37代大統領リチャード・ニクソンである。モンローは米国が他国の戦争に介入しない見返りに他国にもアメリカ大陸には手を出すなと宣言した。ニクソンはベトナム戦争を終わらせるため、中国とソ連に接近し、同盟国には冷淡な政策をとった。

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https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/7c3367ceab956c2cb3d1b709a6916447b0414608

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