北海道新聞 07/30 17:00
6月。何十年かぶりに「世界自然遺産知床」を訪れました。目的は、シャチ。北海道の先住民族アイヌ民族が「レプン・カムイ」と呼び、海の生き物の中で唯一「神」として敬意を払っていた鯨の一種です。
前日まで台風並みの強風と雨だったため、当日出航時間にならなければ船は出るかどうか分からない天候でした。1・5メートルほどのうねりはありましたが、出航約40分後にシャチを見つけました。遠目でもはっきり長い背ビレを見つけたすぐ後に、横一線で15頭ほどの大小さまざまなシャチが一斉に背を見せたのです。
「プシュッ、パシュッ」。呼吸音は100メートル以上離れていても十分に聞こえます。水中で尾ビレによって打たれた水は水面で大きなうねりとなり、いつまでも残っています。尾ビレ一振りの推進力は想像をはるかに超えていました。この群れは次第に複数頭の群れに分かれ、その一群が船の真横を通過。「あぁ!」。体の大きさと迫力に圧倒され言葉を失いました。警戒心を持ちながらもこちらの動きをすべて見透かしているように、一度潜るとあっという間に数十メートル先へ移動していました。
知床半島と国後島の間はわずか25キロ。この狭い根室海峡にはシャチをはじめ、さまざまな鯨類が集まる世界でも有数のスポットです。先日、世界的にも珍しい「白いシャチ」も確認された貴重な手付かずの自然がここにあるのです。
水族館で暮らす、すべての生き物がそれぞれの特性を発揮できる飼育を行うには、「野生」を垣間見ることが重要です。今回シャチの群れを目の当たりにして、野生動物のすごさを改めて痛感した次第です。(伊勢伸哉=館長)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/330172
6月。何十年かぶりに「世界自然遺産知床」を訪れました。目的は、シャチ。北海道の先住民族アイヌ民族が「レプン・カムイ」と呼び、海の生き物の中で唯一「神」として敬意を払っていた鯨の一種です。
前日まで台風並みの強風と雨だったため、当日出航時間にならなければ船は出るかどうか分からない天候でした。1・5メートルほどのうねりはありましたが、出航約40分後にシャチを見つけました。遠目でもはっきり長い背ビレを見つけたすぐ後に、横一線で15頭ほどの大小さまざまなシャチが一斉に背を見せたのです。
「プシュッ、パシュッ」。呼吸音は100メートル以上離れていても十分に聞こえます。水中で尾ビレによって打たれた水は水面で大きなうねりとなり、いつまでも残っています。尾ビレ一振りの推進力は想像をはるかに超えていました。この群れは次第に複数頭の群れに分かれ、その一群が船の真横を通過。「あぁ!」。体の大きさと迫力に圧倒され言葉を失いました。警戒心を持ちながらもこちらの動きをすべて見透かしているように、一度潜るとあっという間に数十メートル先へ移動していました。
知床半島と国後島の間はわずか25キロ。この狭い根室海峡にはシャチをはじめ、さまざまな鯨類が集まる世界でも有数のスポットです。先日、世界的にも珍しい「白いシャチ」も確認された貴重な手付かずの自然がここにあるのです。
水族館で暮らす、すべての生き物がそれぞれの特性を発揮できる飼育を行うには、「野生」を垣間見ることが重要です。今回シャチの群れを目の当たりにして、野生動物のすごさを改めて痛感した次第です。(伊勢伸哉=館長)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/330172