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インドを暴力の渦に巻き込むヒンズー至上主義団体「RSS」とは何か

2019-12-31 | 先住民族関連
クーリエ12/30(月) 15:01配信
インドで続く政治的な混乱には、ドイツのファシズム思想の影響を受けた「ラシュトリヤ・スワヤムセワク・サンガ(通称RSS)」というヒンズー至上主義団体が大きく関与している。モディ首相や与党BJPとも太いパイプを持つRSSの実態に、ブッカー賞作家のアルンダティ・ロイ氏が迫った。
インドを蝕むヒンズー至上主義団体
いまインド国内で起きているインクルージョン(包摂)の暴力とエクスクルージョン(除外)の暴力は、この国を根底から覆し、世界におけるインドの意味とその位置付けを考え直さなければならなくなるかもしれない、社会的動乱の前兆なのです。
インド国憲法は、「インドは世俗の社会主義共和国である」と定義しています。ここで私たちインド人の考える「世俗」とは、世界の他の地域の考え方と若干異なっています。私たちにとってそれは、法の下ですべての宗教に同等の権利が保障されている社会を意味します。
実際には、インドは世俗であったことも社会主義国であったこともありません。インドは、これまでずっと高位カーストのヒンズー教徒の国として機能してきました。
ただ、世俗主義であるという妄想がたとえそれが偽善的であったとしても、インドを「可能」にしてきた唯一の小さなより所だったのです。この偽善が、私たちが持っているなかで最善のものでした。それを失えば、インドは終わりを迎えるでしょう。
2019年5月、2期目の勝利が確実になった総選挙後のスピーチで、ナレンドラ・モディ首相は誇らしげに「今回の選挙キャンペーンでは、どの政党のどの候補者も『世俗主義』という言葉を使う勇気がなかった」と声高に語りました。そして、世俗主義の箱はもう空っぽになったと言ったのです。
そう、とうとう公になったのです。インドは、「空っぽの道」をひたすら突き進んでいると。そして私たちは、いまさら「偽善」を懐かしく慈しんでいるのです。なぜなら、良識はもはや名残りとどめるていど、あるいはあるように見せかけているていどになってしまったのですから。
インドは「国」ではありません。インドは「大陸」なのです。ヨーロッパ全域よりも、もっと複雑で多様性に富み、もっとたくさんの言語を話し──最新の調査では、方言を含めずに780にも上りました──もっとたくさんの先住民族が住み、もっと数多くの宗教が存在している場所なのです。
想像してみて下さい。この果てしなく広がる土地、このもろくて統制が難しい社会のエコシステムが、単一民族、単一言語、単一宗教、単一憲法の教義を高々と掲げる「ヒンズー至上主義団体」によって突然乗っ取られたのです。
イスラム教徒はユダヤ人
その団体とは、1925年に設立され、現政権のバラティヤ・ジャナタ党(BJP)の支持母体である「ラシュトリヤ・スワヤムセワク・サンガ(通称RSS)」のことです。RSSの創始者たちは、当時のドイツやイタリアのファシズムに大きな思想的影響を受けました。彼らはインドのイスラム教徒をドイツのユダヤ人に見立て、ヒンズー教徒の国であるインドには彼らの居場所はないと信じていました。
今日のRSSは、その考え方からは一定の距離をとっているようにみえます。ただ、その根底には、常にイスラム教徒は信用できない「よそ者だ」という考え方があり、私たちは、BJPの政治家たちのスピーチや支持者集会で繰り返し叫ばれるスローガンに、それを垣間見ることができます。
たとえば「イスラム教徒に残されている場所は、墓場かパキスタンだけだ」などです。2019年10月、RSSの最高リーダーであるモハン・バグワットはこう発言しました。「インドはヒンズー国家である。決して妥協することは出来ない」と。
このアイデアは、インドの美しいすべてのものを泡に変えてしまいます。
世界最大級の愛国団体
RSSは現在、彼らがやろうとしていることは画期的な革命であると印象づけようとしています。つまり、ヒンズー教徒の手によって、ついにこれまで支配者だったムスリム王朝の数世紀にわたる圧政を取り除くことができたと。
しかし、この歴史解釈は捏造されたフェイク・プロジェクトに過ぎません。インドの数百万人に上るムスリムは、カースト制度の残酷な差別から逃れるために、ヒンズー教からイスラム教に改宗した人々の子孫たちだからです。
ナチスドイツがあの構想を大陸全体に(またそれを越えて)広めようとしようとした国だったとするならば、RSSが支配するインドは、ある意味まったく逆のベクトルを目指しているといえるでしょう。大陸を、ひとつの国に委縮させようとしているからです。
いえ、国でもなく州や県というべきかもしれません。原始的な単一民族と単一宗教の行政単位です。
この過程は、想像できないような暴力的なものになるでしょう。それはまるで、スローモーションで核分裂が起こり、放射線が放たれ、その周りのすべてを汚染してしまうような政治プロセスです。それは彼らにとって自滅の道であることは間違いありません。問題はその過程で他に何が、誰が、どれくらい巻き添えになってしまうかです。
いま、世界で勃興する白人至上主義者やネオナチの団体、そのいずれもRSSが誇るマンパワーやインフラにはかなわないでしょう。
RSSには、インド全土に1万7000もの「シャカス」とよばれる支部があり、武装し訓練を受けた「ボランティア」、つまり民兵組織のメンバーを60万人も擁しています。
RSSは数百万人の生徒たちが通う学校も運営しており、傘下の診療所や協同組合や農民団体やメディアや女性団体も組織されています。最近、彼らはインド軍に志願するためのトレーニングセンターを開設したと発表しました。「バグワ・ドワージ」と呼ばれるサフラン色のシンボル旗の下、RSSの「ファミリー」であるすべての右翼団体(サンガ・パリワール)は、繁栄・繁殖していくようにデザインされています。
これらの団体は、いわば民間企業にとってのダミー会社に匹敵するものですが、マイノリティの人々に対してショッキングな暴力行為を働くことを任務とし、これまで数千人もの人が命を落としています。暴力、コミュナル暴動、偽旗作戦が彼らの組織的戦略であり、これまでの彼らの選挙戦略のまさに中核となってきたものなのです。
ナレンドラ・モディ首相は、彼の人生を通してRSSのメンバーでした。
彼は、まさにRSSの申し子なのです。高位カースト出身ではないもののインド史上、彼以上にRSSをインドで最も権力ある団体に変貌させるべく力を注いできた人物はおらず、また、やがて訪れるであろう最大の栄光の時代に向け、新しい章を執筆しているのが彼なのです。
モディが首相の座に就くまでの物語をまたお話しなければならないのは本当に胸がムカつくのですが、それについては、記憶喪失にかかってしまったので、もはや義務として何度も繰り返さなければいけないということにしましょう。【第3回に続く】
※この記事は2019年11月に行われた、ジョナサン・シェル・メモリアル・レクチャーの講演記録を翻訳したものです。
Arundhati Roy
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191230-00000004-courrier-int

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まさにインスタ映え! 井浦新、高橋メアリージュン、ブルゾンらの“旅”写真が美しい

2019-12-31 | 先住民族関連
クランクイン 2019/12/30 16:00
 年末を旅先で過ごす芸能人たちが続々とインスタグラムを更新中。俳優の井浦新や高橋メアリージュン、タレントのブルゾンちえみらが、まさに“インスタ映え”と呼べる美しい写真を披露している。
 井浦は30日に「ナバホ族の聖地・アンテロープキャニオンに雪が降る」と投稿したのは、滞在中のアメリカ・アリゾナ州の渓谷の写真。アメリカの先住民族・ナバホ族の土地に位置するアンテロープ・キャニオンは、砂岩の侵食によって何百万年もかけて形成された地層が、幻想的な風景を作り出す観光名所の一つ。
 投稿された複数の写真には、井浦が興味深そうに砂岩の地層を眺めるものやカメラに向かってポーズを取るもの、さらに渓谷に雪が降る様子を捉えた美しい風景も収められている。この井浦の投稿に、ファンからは「すごいところですね」「美しい!神秘的」といった声が集まっている。
 モロッコにある世界遺産「アイット・ベン・ハドゥの集落」の写真を投稿したのは女優の高橋メアリージュン。『アラビアのロレンス』や『グラディエーター』といった大作映画のロケ地としても知られる当地の壮大な景色の中での記念撮影を公開した高橋の投稿に、ファンからは「凄い綺麗な景色ですね」「気持ち良さそう」などの声が寄せられている。さらにこの投稿以外にも、アフリカ滞在中に撮影した旅の様子も写真で披露している。
 そしてブルゾンは、スリランカにある世界遺産「シーギリヤ」の写真と動画を公開。シーギリヤは、5世紀に建造された要塞(ようさい)化した岩上の王宮跡とそれを取り囲む都市の遺跡。「シーギリヤロックのスガスガしさはとてつもなかった、ぜ!」というコメントと共にシーギリヤから見下ろすスリランカの豊かな緑や歴史を感じさせる遺跡の風景を披露。ファンからは「最高な絶景」「素晴らしい!」といった投稿が相次いでいる。
引用:「井浦新」インスタグラム(@el_arata_nest)
   「高橋メアリージュン」インスタグラム(@maryjuntakahashi)
   「ブルゾンちえみ」インスタグラム(@buruzon333)
https://www.crank-in.net/news/72512/1

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「ヒグマの会」設立40年記念フォーラム 駆除から共存を模索

2019-12-30 | アイヌ民族関連
北海道新聞 12/29 05:00
 北海道に生息する日本最大の陸上哺乳類ヒグマ。その生態について研究してきた「ヒグマの会」(坪田敏男会長)が設立40年を迎えた。8日に札幌市内で開かれた記念フォーラム「ヒグマックス クマづくしの1日」では、会員らが最新の研究成果を発表した。会の歩みとともに内容を詳報する。
 ヒグマの会は、研究者やクマ撃ちハンターと、北大生でつくる北大ヒグマ研究グループのメンバーを中心に1979年創設した。初代会長には札幌市円山動物園2代目園長の故中川敏さんが就任。会員第1号は、アイヌ民族で初めて国会議員となった故萱野茂さん。
 道は家畜や人への被害を減らすため、足跡を追うのが容易な残雪期に捕獲する春グマ駆除を66年に開始。大幅に生息数を減らした。
 大雪山系でクマの家族を数年にわたり追跡調査していた同会は82年、ヒグマ保護を訴える要望書を知事に提出した。ヒグマを害獣として駆逐するのではなく、保護して共存を目指す存在として扱う転機となり、春グマ駆除は90年に廃止された。
 道内各地で毎年、専門家と市民が意見を交わすフォーラムを開き、ヒグマとの付き合い方を模索。当初12人だった会員は現在166人に増え、ヒグマ研究に携わる人材育成に貢献する。(内山岳志、津野慶)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/379346

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「捕鯨再開」の権利を求めて─アメリカ先住民・マカ族「捕鯨」の戦い

2019-12-30 | 先住民族関連
COURRiER 12/29(日) 11:30配信
日本は2019年に国際捕鯨委員会(IWC)から脱退し、国際的な批判を受けながらも1986年以来となる商業捕鯨を再開した。
一方アメリカでは、大切な伝統である捕鯨を再開すべく戦っている人たちがいる。アメリカ先住民のマカ族だ。彼らは19世紀に捕鯨する権利を政府から与えられるも、商業捕鯨による乱獲の様子を見て自主的に捕鯨を中止していたのだ。その後、1972年に同国で「海産哺乳動物保護法」(海産哺乳動物を殺すことや無暗に触ることを禁ずる法律)が成立し、反捕鯨運動が活発化した。以降、マカ族は安定して捕鯨する権利を得られずにいる。
数千年続く「捕鯨」という伝統を引き継ぎたいマカ族、そして環境や野生動物を守るべく立ち上がる活動家たち。彼らはそれぞれ何を思い、戦っているのか──。
伝統を取り戻すために
コククジラは毎冬、夏のあいだに餌場としているアラスカから、出産のためにメキシコのバハ・カリフォルニア半島へと約6000マイルの旅を始める。
そんなコククジラをアメリカ先住民のマカ族が捕鯨しても良いか否かが、ワシントン州の行政裁判で決まるかもしれない。
マカ族はワシントン州オリンピック半島のネア・ベイ地区に暮らしている。彼らは伝統的な捕鯨を再開し、今後10年間で20頭まで捕獲する権利を得るべく、アメリカ海洋大気庁(NOAA)に対して「海産哺乳動物保護法」の免除を求めているのだ。
政府はかつて「1855年条約」において、マカ族に捕鯨権を付与している。この条約の存在もあり、マカ族の要求は連邦政府と世界中の「部族共同体」から支持されているのだ。
1855年、当時のワシントン州知事アイザック・スティーブンスは、3万ドルと30万エーカーの土地の譲渡を交換条件に、マカ族に対して「魚、鯨、アザラシの狩猟権」をあたえた。彼らは条約で具体的に言及されている、捕鯨権を持ったアメリカで唯一の部族なのだ。
マカ族の鯨ハンターであるパトリック・デポーにとって、法律の存在意義は単純明快である。
「誰もが賛成し納得する必要はないけど、決まったからには尊重するべきもの。それが法律というものでしょう」
謎の大量死を遂げる鯨たち─それでも狩る?
現在おこなわれている裁判は、ふたつの立場の間に感情的な議論と亀裂を生んでいる。
この「ふたつの立場」とは、アメリカ先住民の「伝統的な生活様式を継続する」権利(法律により認められている権利だ)を支持する人々と、捕鯨などの「伝統的な習慣は現代的視点から再評価されるべき」だと考える人々だ。
「捕鯨をするか否か──これは部族に属する人々の命に関わる問題ではありません。彼らは生きるために鯨の肉を必要としていないのです」
反捕鯨活動家で、オリンピック半島に本拠を置く団体「鯨保護のための半島市民」創設者であるマーガレット・オーエンズは言う。「鯨は何十年も生き、個体同士で仲を深めます。彼らは知覚を持つ存在なのです」。
オーエンズたちと、その同志である「シーシェパード・リーガル」や「動物愛護団体(AWI)」は、主に鯨の「福祉」を重要視している。しかし今回においては「鯨の個体数を保護しなければならない」という連邦政府の義務を指摘しつつ、科学的な視点で捕鯨における問題を主張している。
たとえば、絶滅の危機にさらされている北太平洋のコククジラについて。あるいはピュージェット湾を数ヵ月のあいだ餌場とするべく、北方からやってくる鯨たち。マカ族による捕鯨の際に、これらの鯨が誤って殺されてしまう可能性があるという懸念があるのだ。
また彼らは、太平洋岸に沿って大量の鯨が不可解に死んでいるにもかかわらず、捕鯨を推進する政府の主張を疑問に思っている。2019年1月以降、214頭を超える鯨が北米の西海岸に打ち上げられているのだ。5月31日、NOAAはコククジラの「異常な大量死」を調査中であると公表している。
「いまの状況がどれほど酷いものなのか、その詳しい実情を私たちはあまりわかっていないのです」と、動物愛護団体の生物学者であるD.J.シューベルトは言う。大半の鯨が死後、海中に沈む。ということは、打ち上げられている個体以外に何百頭もの鯨が死んでいる可能性があるのだ。
1999年と2000年にも似たような大量死が発生している。その際は鯨の固体数が25%減少したが、原因は不明のままだ。
「北極の環境は急激に変化し、食物網も大きく変わりました。今後改善することはないでしょう」とシューベルトは言う。
「だからこそ私たちは、捕鯨再開を保留にしたいのです。少なくとも、NOAAが大量死の原因を特定するまでは」
白熱する議論
11月にシアトル市で公開討論がおこなわれた。この裁判では、行政法判事のジョージ・ジョーダンが7日間にわたって20名以上の科学者や活動家らの証言に耳を傾けた。
マカ族は連邦政府の弁護士や専門家と法廷に立ち、動物愛護団体の弁護士や科学者と対峙した。鯨の「声」として知られる反捕鯨活動家のオーエンズは、付添人2名と共に判事の真向かいに座っていた。
皆専門家の証言に耳を傾け、反対尋問や再尋問をおこなっていた。原因不明な鯨の大量死によって引き起こされるかもしれない事態や、北極の気候変動における鯨への影響をめぐり、議論は白熱した。
ジョーダンは、1月に連邦政府に対して自身の意見を加えた報告書を提出する予定だ。そして一般意見公募(パブリックコメント)期間の終了後、NOAAはマカ族に対する「海産哺乳動物保護法の適用」を免除し、「捕鯨許可を申請すること」を認めるか、その可否が決定する。
これにより、捕鯨は早ければ来年末にも再開されるかもしれない。あるいは、反捕鯨団体が「保護法の適用免除」と「捕鯨許可」に異議を申し立て、裁判所に再び訴えれば無期限に延期される可能性もある。
かつて乱獲の「尻拭い」をしたマカ族
マカ族は捕鯨再開をあまりにも長く待ってきた。
何千年にもわたり、マカ族とヌートカ族(ネア・ベイ地区からバンクーバー島の太平洋岸に至る海岸地域に住む部族。マカ族と親しい関係にある)は生きるために捕鯨をおこなっていた。この伝統は彼らの言語や文化の隅々まで浸透しているのだ。
マカ族のシンボルである「かぎ爪に鯨を抱えたサンダーバード(雷神鳥)」は彼らのアイデンティティーたる捕鯨の重要性を証明している。「かつてマカ族が飢餓に見舞われたときに、サンダーバードが鯨をもたらし、私たちを養ってくれたのです」と、そのシンボルの背景にある伝説をデポーは説明する。
彼によれば、1920年代にマカ族は自発的に捕鯨を止めたという。商業捕鯨船の乱獲により鯨が絶滅寸前にまで追いやられているのを見ていたからである。
「私たちマカ族は常に環境との調和を保ち、持続可能な暮らし方をしてきました」
ネア・ベイにあるマカ文化センターの中を歩きながら、デポーは言う。彼は部族の伝統的なボード作りや織物の専門技術など、さまざまな職人技を紹介してくれた。マカ族には、生態系を維持するために、漁獲や木材伐採に関する厳しい制限が設けられているという。
オリンピック半島の終点に位置するマカ族の保護区には、約1500人が暮らしている。この半島は山の多い、岩だらけの地だ。西側には太平洋、北側にはファン・デ・フカ海峡とセイリッシュ海がある。風雨にさらされた建物が立ち並ぶ村は、港と部族のマリーナ(係船港)に隣接している。
保護区へ足を踏み入れると、町を走る主要幹線道路112号線沿いに植えられた葉の落ちた木に、白頭ワシが止まっていた。寒く暗い雨のなか、自動車やトラックがゆっくりと進んでいる。【つづく】
SUSANNE RUST
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191229-00000002-courrier-int

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沖縄に広がる「台湾に学べ」——台湾展・島嶼音楽祭に見る日台交流の新しい姿

2019-12-30 | ウチナー・沖縄
Nippon 2019.12.29

「台湾に学ばなくては」。沖縄で最近、よく耳にする言葉だ。沖縄は2022年、日本復帰50年を迎える。文化の「日本化」が進む中で、伝統文化を守ろうという機運が高まっている。参考になるのが、島の文化を大切にする隣人、台湾なのである。今秋、沖縄県立博物館・美術館で「台湾展 黒潮でつながる隣(とぅない)ジマ」が開かれ、台湾と沖縄の文化交流イベント「島嶼音楽季(音楽祭)」の開催も重なった。内なる文化の見直しで先を行く台湾に学ぼうとする沖縄の姿から、日台交流の未来が見えてくる。
台湾・沖縄・日本の関係史を明快に解説した「台湾展」
2019年末、心待ちにしていた郵便物が届いた。沖縄県立博物館・美術館で9月6日から11月4日まで開かれた「台湾展」の図録(非売品)。会期に間に合わなかったのは残念だが、それだけ手をかけたのだろう。台湾と沖縄・日本の歴史が時代を追って関連付けられ、最後に展示資料一覧の写真が付く。日本語・中国語の併記には、日台で読んでほしいという思いがにじむ。序章「台湾の沖縄関係資料について」で、館長の田名真之が『隋書』の「琉求伝」に触れて「『琉求』は沖縄か台湾か、古くから論争があり、台湾説が有力と思われるが決着は付いていない」と指摘する。論争の行方はともかく、台湾と沖縄が昔から近い存在だったことは間違いない。
図録をめくりながら、展示の記憶がよみがえってきた。会場に入ると、まず狙いを説明した文章が目に入る。「世界がますます狭くなり、多様な言語、多様な文化、多様な価値観が存在する現代社会。その中にあって、昔から交流の深い隣人の本当の姿をまずは知ることから始めてみませんか。台湾は、黒潮でつながっている『隣のシマ』なのですから」
入場者が見入っていたのは、横幅16メートルの「台湾・沖縄・日本関連略年表」だった。それを見ると、17世紀初頭に薩摩が琉球に侵攻したころ、台湾ではオランダの支配が始まっていたことが分かる。そして日本の明治維新後、台湾出兵のきっかけは、宮古島の船が遭難して台湾に漂着し、乗組員が殺された牡丹社事件がきっかけだった。その後、琉球王国は解体されて沖縄県として日本に編入され、台湾は日清戦争後に日本の植民地になり、沖縄から渡る人も増えていく。太平洋戦争では沖縄戦のあと日本が降伏し、沖縄は米軍統治下に入り、台湾には国民党軍がやってきた……。私は大学で日本の植民地史を学び、新聞記者として沖縄や台湾の取材を続けてきたが、台湾・沖縄・日本の関係史をここまで分かりやすく図解した年表を見たことがない。
最後のコーナー「沖縄の湾生」にも感心した。「湾生」というのは戦前、日本統治下の台湾に渡った官吏、会社員、商人、漁民らの子どもとして現地で生まれ育った日本人のことだ。その人々が台湾のことを語るビデオが流れていた。例えば1927年に台中で生まれた川平朝清は、日本が戦争に敗れる1945年まで台湾に住み、戦後は沖縄へ。沖縄放送協会初代会長、昭和女子大学教授などを務めた。タレントのジョン・カビラ、川平慈英の父親でもある。日本の植民地だった台湾では「支配者側」、それが沖縄に戻ったら「被支配者」。初めて差別の構造や台湾人の気持ちが分かり、「いい教訓だった」と振り返る。今度の台湾展については「沖縄の人も沖縄一点主義にならずに、やっと台湾に気が付いてくれたかという気持ちでいっぱいです」。
生存者のビデオ証言で締めくくることで、展示「物」が証言「者」にリレーされて現在につながったかのようだった。この展示を企画した学芸員の久部良和子は「歴史の記録の最後に、記憶を置こうと思った」と語る。「川平さんの証言を聴くと、台湾も沖縄も歴史に翻弄されてきたことが分かる。日本が一流で、沖縄は二流、台湾は三流といった差別感を払拭することが出発点でしょう。今はむしろ、台湾の方が進んでいます。台湾が元気なのはなぜかと考えると、言葉と文化。台湾語を守り、先住民族の文化も大事にしている。台湾人だという意識、自信がエネルギーになっている。台湾展には、もっと台湾から学ぶべきだというメッセージを込めたつもりです」
久部良は琉球大学3年のとき、教授に連れられて初めて台湾に行った。「琉球史をやっていた自分がこんなに近い台湾のことを知らなかったことに衝撃を受けた」という。その後、台湾大学に留学し、文化人類学を学ぶ。「原住民博物館」の立ち上げなどに関わったあと、沖縄に戻って県公文書館の専門員になった。国立劇場おきなわを経て県立博物館・美術館に移って3年目、2020年春に定年を迎える。その直前にライフワークの集大成と言える台湾展を無事に終えたことになる。
台湾・沖縄で進む新しい文化交流の形
台湾展と会期が重なった「島嶼音楽季(H.O.T Islands Music Festival)」は、2018年に台湾で行われた5回目の模様をすでに報告した。Hは花蓮、Oは沖縄、Tは台東の頭文字で、台湾東部と沖縄の文化交流イベントとしてすっかり定着した。6回目は沖縄の番で、2019年9月19日から27日まで開かれた。台湾と沖縄で1年ごとに交互開催という試みもユニークだが、音楽を入口にして生活文化まるごと交流へと広げ、深めていく活動が軌道に乗った感がある。「隣人の本当の姿を知ろう」と呼び掛ける台湾展に通じる姿勢と言えるだろう。

2019年9月23日、沖縄県那覇市で開催された「島嶼音楽季(H.O.T Islands Music Festival)」の「島嶼音楽会」フィナーレ(筆者撮影)
台湾と沖縄から集った「音楽人ワークショップ」「島嶼音楽会」のあと、「地域訪問と文化体験」が開催された。沖縄県工芸振興センターを訪ねて紅型などの製作過程を見学したり、八重瀬町の具志頭歴史民俗資料館で旧石器時代の人骨化石「港川人」の発見までの経緯を説明してもらったり。「港川人はどこからやってきたの?」のコーナーでは、「2万年前、3万年前から、太平洋沿岸の地域で人々の行き来があったのかもしれない」という説明に、台湾と沖縄の近さを改めて感じた人が多かったようだ。7月には「3万年前の航海」再現を目指した丸木舟が、台湾東海岸から200キロを超える距離を航行して与那国島に漕ぎ付くことに成功したばかり。「隣人を知ろう」として、自らのルーツを考えることにつながるのが文化交流の面白さでもある。
島嶼音楽季の関連企画「島嶼工芸展」には、台東県の石山集落が伝統を復活させたアミ族の「月桃織」や、花蓮県のガヴァラン族の「バナナ織」などが展示されていた。島嶼音楽季を主催する「国立台東生活美学館」の李吉崇館長は、同じ建物内で開かれている台湾展を見学したあと、「年表を見て、台湾と沖縄がこんなに密接な関係があったのかと改めて驚くとともに、私たちがやってきた島嶼音楽季は間違いではなかったと確信した」とうれしそうだった。「交互に続ける基礎はできた。花蓮・台東は政府中心に民間を引っ張る形で官民一緒に議論、実行する組織ができているが、沖縄は民間中心。民間の力がしっかりしていれば、政府はサポートすればいいだけ。沖縄がそういう方向になって、交流が深まっていけば」と期待を込めた。
沖縄側のキュレーターで音楽プロデューサーの伊禮武志によれば、沖縄側行政の協力は、まだ台湾とバランスが取れていない。民間も力があるとは言いがたい。伊禮たちは沖縄で7月、民間でよりスムーズに継続した交流をし、アジア・島嶼地域の懸け橋となり、国際的なネットワークの構築を図るための「島嶼交流ネットワーク準備室」(仮称)の立ち上げに向けた説明会を開いた。「まずはネットワークをつくり、台湾に頼っている現状を変えていきたい」。そう語る伊禮は「一番近い外国だから」と台湾に通い始め、沖縄の文化を紹介するうちに現地に移住するまでになった。「台湾の特に東海岸は第二の故郷。人々がおおらかで昔の沖縄のような気がします」
島嶼音楽季に5回目から参加している沖縄のジャズサックス奏者、こはもと正たちは10月26日、南城市の野外ジャズ・フェスティバル「Jazz in Nanjo」と「宜野座村祭り」に台湾からブヌン族の母娘6人グループ「小芳家族」を招いた。1年前の島嶼音楽季で歌声を聴いて「ジャズっぽい。沖縄の人にも聴かせたい」と感動したからだ。宜野座の小学校や中学校の合唱コンクールにも参加した。12月14日には、台東市内で「Okinawa Night in 鐵花村」が開かれた。こはもとや、島嶼音楽季に2年連続で参加した沖縄民謡の仲村奈月らが参加。伊禮が仕掛けた「ミニ島嶼音楽季」で、パイワン族の集落訪問なども島嶼交流ネットワーク準備室の活動として実施された。
行ったり来たり。2020年の島嶼音楽季は台湾の番だが、双方で進む「島嶼プラットホーム」構築の動きを足掛かりに、沖縄でも何らかのイベントを催す方向だ。
明らかに新しい文化交流の形が、台湾・沖縄に着々とできあがりつつある。
バナー写真=「台湾展 黒潮でつながる隣(とぅない)ジマ」で横幅16メートルの「台湾・沖縄・日本関連略年表」に見入る入場者(沖縄県立博物館・美術館提供)
https://www.nippon.com/ja/japan-topics/g00790/

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アイヌ研究の倫理指針案まとまる

2019-12-29 | アイヌ民族関連
NHK 12月28日 07時22分
日本人類学会や日本考古学協会などは、アイヌの研究について遺骨の利用制限などを盛り込んだ倫理指針案をまとめました。
指針案をまとめたのは日本人類学会、日本考古学協会、日本文化人類学会それに北海道アイヌ協会の4団体です。
アイヌの研究をめぐっては全国の大学が明治から昭和にかけて研究目的で遺骨を墓地から掘り出すなどして収集していましたが不適切な管理も明らかになり、アイヌの団体から返還を求める訴訟が相次ぐなど問題となっています。
北海道アイヌ協会の働きかけで作られることになった指針案ではこれまで当事者不在のまま研究が進められていたことなどを指摘しています。
その上で「アイヌ民族の中に研究に対する強い不信感を抱かせる原因となったことを深く反省する」と明記しています。
そして一部の例外を除き明治以降に埋葬された遺骨や副葬品、盗掘や遺族などから直接の同意を得ずに収集された資料などは研究対象とすべきではないとしています。
さらにアイヌやその関係者が参加した審査委員会を新たに設置し、研究者は事前審査を受ける必要があるとしています。
指針案はそれぞれの団体のホームページで読むことができ来年1月末までパブリックコメントを実施し、意見を踏まえた上で年度内に正式に策定する予定です。
https://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20191228/7000016651.html?fbclid=IwAR0w3530KF6FQGm7sq8IANR9hude-K4rF0ii4xtI3MHV-M616HLozzGAu3E

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今冬も伝統漁具で冬ザケ漁 千歳アイヌ協会

2019-12-29 | アイヌ民族関連
北海道新聞 12/28 20:35

 【千歳】千歳アイヌ協会は28日、千歳市の千歳川上流部で、伝統漁具「マレク」(かぎもり)を用いたサケの捕獲を始めた。昨冬に続き2度目で、冬の伝統サケ漁は珍しい。技術継承を目的に道から150匹を上限に許可を得ており、初日は5匹を捕獲した。
 許可区間はサケ捕獲施設インディアン水車の上流約12キロ。温かな湧き水でサケが冬も自然産卵する。許可期間は、人工ふ化増殖に用いるサケ親魚の捕獲終了後の12月8日~来年2月28日で、増殖団体の同意を得て捕獲上限、区間、期間とも昨冬より拡大した。
 この日は会員2人が先端にかぎ針の付いたマレクで突いて雄4匹、雌1匹を捕らえた。最大で全長80センチと大ぶりで、トバなどに加工して儀式の際に用いる。会員で千歳アイヌ文化伝承保存会の石辺勝行会長(74)は「魚が少なく苦心したが、捕獲でき感謝をささげたい。若者に技術を伝えるために継続して行えれば」。
 5月に施行されたアイヌ施策推進法は、国や都道府県が伝統サケ漁に「適切な配慮をする」と定めている。今回の許可期間などの拡大について、道は「従来通り道の規則に基づき認めた。法の規定とは別」としている。(中川大介)
☆マレクのクは小文字
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/379326

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渋谷スクランブル交差点を音楽プレーヤーに。KDDIが進める「街づくり」とは?

2019-12-29 | アイヌ民族関連
bizSPA 12/28(土) 15:46配信
 12月11日から15日にかけ、渋谷を舞台に電子音楽 × デジタルアートの祭典「MUTEK.JP」が開催された。2000年にカナダのモントリオールから始まった祭典であり、日本での開催は4度目となる。
 会期中に同時開催された「This is Quebec」では、渋谷とケベック州のエンターテイメントの未来を考えるイベントが催された。
渋谷の文化振興は黎明期。もっと面白くなる
 クリエイティブシティを宣言する渋谷では、まもなく実用化される5Gを活かした新しいエンターテイメントを創出するため、「渋谷エンタメテック推進プロジェクト」による実証実験が行われている。
 同プロジェクトに関わるKDDIからは、革新担当部長の三浦伊知郎氏が登壇し、実際に取り組んでいる内容について説明した。
「『エンタメ×5G』で渋谷の街をアップデートする。AR(拡張現実)やVR(仮想現実)、MR(複合現実)といったXR(クロスリアリティ)技術を駆使し、街中にバーチャル空間を作れば、渋谷の街自体でエンターテイメントを楽しめるようになります」
スクランブル交差点、宮下公園が音楽プレーヤーに
「スクランブル交差点や宮下公園が音楽プレーヤーになったり、何気ない渋谷の風景がAR技術によってデジタルアートの美術館に変わったり。『5Gによって、こんなこともできるの?』というのを実証実験によって伝えていき、渋谷の新たな文化創造に繋げていければと思います」(三浦氏)
 また、産官学民連携の新しい組織「一般社団法人渋谷未来デザイン」の金山淳吾氏は、渋谷の文化振興についての可能性を語り、世界のクリエイティブ産業先進国にも劣らない街づくりの構想を説いた。
「渋谷は文化振興を始めてから50年ほどで、まだまだ黎明期だと思っています。渋谷エンタメテック推進プロジェクトを通して、新しい産業と文化を生み出していけるような街づくりを目指したい。クリエイティブ特区として、渋谷に様々なクリエイターやアーティスト、アントレプレナーが集結すれば、もっと渋谷が面白くなり、ワクワクする街になる。今後も、様々な企業や団体と協力し、未来のイノベーション創出に繋がるようなエコシステムを作っていければと考えています」
 5Gインターネット先進エリアとして、AR技術によるレストラン検索やファッションショー、地域通貨「Bit Money SHIBUYA」などのインキュベーションシティとして、渋谷区はデジタルクリエイティブ溢れる街づくりを推進するという。
地域とコラボして、新しいクリエイティブを生む
 カナダのモントリオールは2006年、デザイン分野におけるユネスコの創造都市ネットワークに指定された。同市クリエティブ文化部門の経済開発委員を務めるカトリーヌ・ラロー氏は都市開発とクリエイティブの関係性についてイベントでこう話す。
「都市で、質の高いクリエイティブが発達するにはどうすればいいのか。そのためには、都市としてどのような土壌が必要なのか。これらを考えないといけません。我々行政はもちろん、クリエイティブを生み出す側もシティ・プラウド(誇りに思える都市)を持って、モントリオールのクリエティブを世界に発信できるよう取り組んでいくことが大事だと考えています」
 モントリオールは、Air CanadaやWeWorkといった企業とともに、クリエイティブ・アントレプレナーの育成プログラムを展開し、クリエイティブの力で都市開発を推進する取り組みを行なっているという。
 日本では、起業家育成のプログラムやスタートアップ支援は整備されつつある一方、デジタルクリエイティブ領域の人材育成は、まだまだ学校教育や企業での実務経験に頼らざるを得ない状況なのかもしれない。
店舗、公園、雄大な自然などが表現の場に
 パネルディスカッションでは、実際にデジタルクリエイティブを活かした観光スポットを創成し、都市の魅力づくりに成功した事例が紹介された。モントリオールを拠点に置き、世界的なデジタルアート集団として知られる「MOMENT FACTORY社」では、インスタレーションやプロジェクションマッピングなどの表現に音楽を溶け込ませ、場所にあらず様々なクリエイティブを作っているという。
 同社のフランチェスコ・フィオーレ氏はこう語る。
「テクノロジーを活かしたデジタルアートは、何もイベントだけではない。公共スペースや店舗、公園、雄大な自然など、景観をひとつの表現できる場と捉え、人々に新しいライフスタイルの提案をすること。これが我々が目指すクリエイティブです。日本の企業や地域とコラボすることで、今までにないクリエイティビティが生まれるのではと期待しています」
長崎市の伊王島に常設されたデジタルアート
 MOMENT FACTORY社が手がけるものでは、2018年春に長崎市の伊王島に常設された体験型マルチメディア・ナイトウォーク「ISLAND LUMINA(アイランドルミナ)」が大きな反響を呼んだ。
 雄大な自然広がる伊王島を、最先端のテクノロジーや映像といったデジタルアートにより、幻想的で非日常空間を体験できる観光スポットへと昇華させている。「魔法の宝石を探す旅」というストーリーのもと、従来の自然散策では決して味わえない感動を味わえるのだ。
 同様に、2019年7月には北海道の阿寒摩周国立公園にある阿寒湖にて、体験型ナイトウォーク「KAMUY LUMINA(カムイルミナ)」も手がけている。北海道の先住民族アイヌの文化をデジタルアートで表現し、湖畔での新しい観光体験を創出している。
 こうした、体験型のデジタルアート演出を手がけるのは、チームラボやネイキッドが有名だ。地域に眠る観光資源を、デジタルアートによって発掘する。自然との共生やアイヌ文化振興などこうした取り組みは、今後ますます注目されるだろう。
<取材・文・撮影/古田島大介>
bizSPA!フレッシュ 編集部
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191228-00252104-bizspa-life

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道立近代美術館で企画展 アイヌの美しき手仕事 衣装、木彫品、装身具など多彩 /北海道

2019-12-28 | アイヌ民族関連
毎日新聞2019年12月27日 地方版
 道立近代美術館(札幌市中央区北1西17)では1月13日まで、アイヌ芸術の魅力を紹介する展覧会「アイヌの美しき手仕事 柳宗悦と芹沢銈介のコレクションから」を開催中だ。衣装や木彫品、装身具など、多彩な展示を通して、アイヌ文化の豊かな精神世界に触れられる。
 会場で特に目を引くのは、個性豊かな文様の衣装の数々だ。渦巻きや、とげの形を複雑に組み合わせた切伏(きりぶせ)(アップリケ)と刺しゅうが丹念に施され、人の手が生み出した布の宝石のようだ。白や茶、紺を基調にした衣装の中に1点だけ、全体を赤いモスリン(薄地のウール)で仕立てた珍しい品があったのには驚いた。
 針仕事の細かさには、ため息が出た。1着仕上げるために、どれほど手間がかかるのだろう。衣装の文様は、…
この記事は有料記事です。
残り542文字(全文869文字)
https://mainichi.jp/articles/20191227/ddl/k01/040/037000c

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“食”だけではない北海道の魅力続々 来春開設のアイヌ文化施設、地域交流体験、玉入れ

2019-12-28 | アイヌ民族関連
OVO 12/26(木) 15:28配信
 北海道といえば、新鮮な魚介類、ジンギスカン、ラーメン、スープカレー、甘いトウモロコシ、アスパラガス、新鮮な牛乳から作られるアイスクリーム、ケーキといったデザートなどなど、食の魅力を語りだしたら、止まらなくなる。
 実際、民間シンクタンク「ブランド総合研究所」が10月中旬に発表した今年の市区町村別の魅力度調査によると、北海道函館市が2年連続6度目の1位を獲得し、2位も札幌市で(昨年3位)、街としてのブランド力の高さを示した。
 この結果についてブランド総合研究所は、函館市が地元産食材の豊富さなどが、札幌市は地場産品の魅力や住みたい町としての評価が上がったことが要因とみており、やはり「食の魅力」が大きなアピールポイントになっていることは間違いない。
 ただ、北海道は「食」だけでは語りきれない、さまざまな魅力を備えている。そんな数々の魅力を伝えようと、公益社団法人北海道観光振興機構がこのほど東京都内で、道内の自治体関係者らによる記者発表会を開いた。プレス関係者らで満席となった、当日の様子を報告する。
「あなたの心にそっと触れる」
  「イランカラプテ」という言葉が会場内に響いた。マイク台に立った、公益財団法人アイヌ民族文化財団民族共生象徴空間(ウポポイ)開業準備室の金子健太郎・誘客広報部長が、アイヌ語であいさつし、プレゼンテーションが始まった。
 イランカラプテとは、「こんにちは」という意味。元参議院議員の萱野茂氏がこの言葉を「あなたの心にそっと触れさせていただきます」と解釈し、広く知られるようになったという。政府(内閣官房アイヌ総合政策室北海道分室)が推進している「イランカラプテ」キャンペーンのメッセージで、これからの北海道のおもてなしの合言葉として使用している。

 ウポポイとは、北海道白老町で来年4月にオープンするアイヌ文化施設「民族共生象徴空間」のことだ。アイヌ語で「(おおぜいで)歌うこと」を意味する「ウポポイ」の愛称を持つ。
 広さ約10ヘクタールの土地に、国立アイヌ民族博物館、国立民族共生公園を中心に展開され、アイヌ文化を体験できる施設になる。公園の中には伝統的な住まい「チセ」がある集落「コタン」が再現されるなど、アイヌの生活も感じられるよう工夫がされている。
 新千歳空港から車で約40分の「ウポポイ」は現在、急ピッチで施設の工事が進められ、来年4月24日にオープンする。政府はアイヌ文化の復興・発展のための拠点となるナショナルセンターとして、年間来場者100万人を目標にしている。
 金子さんは「アイヌの歴史、アイヌ文化への理解を深め、未来に伝えていくことを目的にしたウポポイにぜひ来ていただきたい」と話した。
 開園時間、入場料など詳細はHPまで。
ウポポイ(民族共生象徴空間):https://ainu-upopoy.jp/
自分だけの名所を見つけて
 次に登壇したのは、(株)北海道宝島旅行社の観光地域づくり事業部でプランナーを務める常井玄さんだ。
 この会社は2007年に創業。北海道を宝の島にたとえ、道内各地域の人々と一緒に「観光地域づくり」を進め、地域の良さを再発見することを目指し、スタートした。その作業を通じ、 これまでになかった、時間や空間の過ごし方を積極的に提案している。最近は訪日外国人の観光客が増えているという。
 常井さんは「道内各市町村の自治体と連携し、交流人口を増やすための『観光地域づくり』を通じた地域の支援を行っています」と語り始めた。
 今回、紹介したのは、「岩宇(がんう)で人と暮らしにであう旅」という企画だった。岩宇は、北海道の西に位置し、新千歳空港から車で約2時間半。積丹半島の西側の岩内町、共和町、神恵内村、泊村の計4町村の地域が「岩宇」と呼ばれている。
 地域住民との体験プログラムでは、例えば共和町の農家の冬の暮らしぶりを味わうツアーを行っている。雪上車で冬の畑を散策したり、まゆ玉飾りを作ったりする体験を楽しんでもらうという。
 北海道宝島旅行社の企画する「岩宇で人と暮らしにであう旅」は通年実施されており、1日のツアー料金は1万2000円から(目安。要問い合わせ)。同社は「絶景やグルメだけが、名所ではありません。けれども、知られざる名所こそ、かけ足では出会えません。どうぞ、あちらこちら寄り道しながら、自分だけの名所を見つけて、心も、荷物も、いっぱいにしてお帰りください」と呼び掛けている。
 北海道の岩宇地域で、あなた自身の名所をみつけてみませんか。
北海道宝島旅行社:http://h-takarajima.com/town/town/ganwu
高さ4メートル12センチの玉入れに挑む
 幼稚園や小学校の運動会で、定番の競技が玉入れだろう。それを町おこしに活用しているところがあった。北海道中央部の旭川市から北へ36キロ、旭川空港から車で約1時間の和寒町(わっさむちょう)だ。
 人口3228人(2019年11月)。カボチャの作付面積、収穫量が「日本トップクラス」で、雪の下で甘みが増す「越冬キャベツ」の産地で知られる。
 その和寒町で1995年、全日本玉入れ協会(All Japan Tamaire Association)=AJTA(アジャタ)を設立。翌年 150チーム、選手関係者2000人が参加した、第1回玉入れ選手権大会が和寒町内で開催された。
 このアジャタは、写真を見ていただければ分かるように、地面からバスケットの高さが、なんと4メートル12センチもある。とにかく高いのだ。これは、過去の最低気温マイナス41・2度を記録したことから、決められた。バスケットの直径、深さも、この場所が北緯44度にちなみ、いずれも44センチになっている。
 このバスケットをめがけ、4~6人の選手が合計100個のボールを入れ終わるまでの時間を競う競技。毎年、和寒町AJTA(全日本玉入れ選手権)が開催され、優勝すれば賞金50万円(一般部門)を獲得できる。
 プレゼンした、和寒町産業振興課の山口敏典主事は「健常者と障害者が一緒に楽しめるウィルチェア アジャタも登場しています。未来のパラリンピックの競技を目指したい」とアジャタの新しい取り組みを紹介した。
 今後については「アジャタの競技人口を増やし、全国各地での認知度をいっそう高めていきたい」と意気込む。
 アジャタで汗をかいた後は、ビールを片手に、甘い「越冬キャベツ」を使ったホルモン鍋もおいしいだろう。雪が降るのが早く、量が多いという和寒町の気候条件を生かし、秋に収穫されたキャベツを畑に並べておいて、冬の間、雪の下になるようにする。このキャベツを掘り出し、ゆっくり暖めてやれば、みずみずしい新鮮なキャベツによみがえり、甘みも増しているという。
 大人から子どもまで楽しめるアジャタ。未体験の玉入れ競技に挑戦し、甘い越冬キャベツを食べに訪れてはいかがでしょう。
全日本玉入れ協会:https://ajta.jp/
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191226-00000005-ovo-life

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アイヌを名乗っていたのは…詩森ろば書き下ろし、流山児★事務所「コタン虐殺」

2019-12-28 | アイヌ民族関連
ナタリー 2019年12月26日 16:18 63

流山児★事務所公演「コタン虐殺」チラシ表
大きなサイズで表示(全2件)
流山児★事務所「コタン虐殺」が、2月1日から9日まで東京のザ・スズナリで上演される。
流山児★事務所と詩森ろばが2016年の「OKINAWA 1972」ぶりにタッグを組む本作は、1974年に起きた白老町長襲撃事件をもとにしたヒューマンドラマ。北海道白老町の町長を刺した若い男は、当初アイヌを名乗っていたが、実は本州から来た運動家であることが明らかになっていき……。
詩森が新作を書き下ろし、演出も担当。流山児★事務所の面々に加え村松恭子、みょんふぁ、serial numberの田島亮、杉木隆幸、藤尾勘太郎、黒色綺譚カナリア派の牛水里美が出演する。
https://natalie.mu/stage/news/361037

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大学の保管するアイヌ遺骨等の出土地域への返還に係る他の団体からの申請等の有無の確認について

2019-12-28 | アイヌ民族関連
文部科学省 2019年12月26日
 文部科学省では、平成30年12月に関係省庁が定めた「大学の保管するアイヌ遺骨等の出土地域への返還手続に関するガイドライン(※PDF 内閣官房アイヌ総合政策室ホームページへリンク)」に基づき、アイヌの人々の御遺骨等の出土地域への返還手続を進めています。
 出土地域が明らかな御遺骨等の返還申請については、10月25日で受付を終了したところですが、この度、文部科学省が設置した第三者委員会の意見も踏まえ、申請のあった一部の団体について地域返還対象団体として適切な者であると確認できたため、反対意見の受付を実施します。
 つきましては、以下のとおり、地域返還対象団体となり得る申請団体が返還を求める御遺骨等に関する情報を確認し、自団体への返還や北海道白老町の慰霊施設への集約を希望する場合には、申請を行ってください。
(1)地域返還対象団体となり得る申請団体が返還を求める御遺骨等に関する情報を確認
 以下より、地域返還対象団体となり得る申請団体が存在する出土地域が特定された御遺骨等に関する情報を確認してください。
地域返還対象団体となり得る申請団体が返還を求める御遺骨等に関する情報 (PDF:475KB)
(2)アイヌ遺骨等地域返還連絡室への連絡
 反対意見の提出を希望する方(出土地域アイヌ関係団体の代表者)は、アイヌ遺骨等地域返還連絡室にお問い合わせください。
   (アイヌ遺骨等地域返還連絡室)
    〒060-0001
     北海道札幌市中央区北一条西二丁目11-1 23山京ビル902
    TEL:011-330-8314
       011-330-8315
    FAX:011-330-8316
    E-mail:chiikihenkan@mext.go.jp
    受付時間
     月曜日~金曜日 10時00分~12時00分、13時00分~17時00分(祝祭日を除く)
     ※E-mailによる連絡は、申請受付期間中24時間受け付けております
(3)反対意見の提出
 反対意見を提出する団体は、返還を希望する御遺骨等の出土地域に居住する又は縁のあるアイヌの人々を中心に構成された団体であることや、返還後の祭祀供養方法を確認するための書類等を提出していただきます。
(4)当事者間の話合いを実施
 申請団体と反対意見を提出した団体により、話合いを実施していただくとともに、申請者等から文部科学省に対して当該話合いの結果を報告していただきます。
(5)返還の詳細に関する合意
 御遺骨を返還する団体が決定しましたら、御遺骨を保管する大学と協議の上、引渡日時、場所、方法等を決定し、合意の書面を交わします。
https://www.mext.go.jp/mext_00085.html

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アイヌ政策基本構想提示【新ひだか】

2019-12-28 | アイヌ民族関連
日高報知新聞2019.12.26
【新ひだか】町は25日、静内の真歌公園に整備を計画しているアイヌ文化拠点空間について、関係団体の代表らから意見を聞く「第2回町アイヌ施策懇談会」を静内庁舎で開き、町のアイヌ政策基本構想と拠点空間の全体ビジョン、現在の主要施設を建て替え一体化した施設イメージなどを示した。
 11月に発足の懇談会は、町企画課を事務局に町内3アイヌ協会や関連団体、主要産業・文化団体などの代表13人で構成。来年3月まで毎月1回開催し、本年度と来年度に基本構想の策定(業務委託)と構想内容を検討し、2021年度以降に設計、工事で拠点空間の整備を進める方針。
 町は本年度「町アイヌ施策推進地域計画」を策定。真歌公園の拠点空間は、この計画に基づきアイヌ文化を肌で感じる機会を継続的に作り、違和感なくアイヌ文化を受け入れる拠点と位置づけている。事業整備は、国のアイヌ政策推進法に基づく新たな交付金事業を活用する。
 この日は、議論のたたき台となる町のアイヌ政策基本構想を提示。全町民がアイヌ文化に対して理解を深めていけるよう、中長期の総合的なアイヌ政策の推進を説明。これをベースに、業務委託で基本構想の策定にあたる2社のコンサルが、真歌の拠点空間の整備ビジョンや施設イメージを紹介した。
 主要施設イメージは、アイヌ文化多機能型交流拠点施設として、老朽化したアイヌ民俗資料館と隣接のシャクシャイン記念館をアイヌの自然観を形にした建て替えで一体化。現2施設の機能のほか、体験学習などにも機能する新たな交流イベント・ホールの3ゾーンを設け、アイヌ文化関連図書や資料室、調理室、サロン、収蔵庫なども配置するイメージだ。
 ほか、新シャクシャイン像などがあるシャクシャイン・メモリアルゾーンのイメージなども説明。文化拠点空間での多様な事業で、収益事業を含めた人材育成と交流人口の拡大を図る構想。
 懇談会メンバーからは、静内を境界地にアイヌの2部族が東西で長く争ってきたこの地域の特異性から、文化も儀式も違う2部族の展示方法などに対する要望や疑問の発言もあった。
 次回懇談会は、年明け1月後半を予定している。
http://www.hokkaido-nl.jp/article/15347

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アイヌ文様刺しゅうサークルの作品展開催【白老】

2019-12-28 | アイヌ民族関連
室蘭民報2019.12.26
「チシポの会」によるアイヌ文様刺しゅう展
アイヌ文様の着物やタペストリー
 白老町内のアイヌ文様刺しゅうサークル「チシポの会」(石井シゲ代表)による作品展が、町内末広町のしらおいイオル事務所チキサニで開かれており、アイヌ文様刺しゅうを施した22点が並んでいる。1月13日まで。
 着物やタペストリー、きんちゃく袋、鉢巻き、バッグ、はし入れ、刀掛け帯など。タペストリーは大小さまざま。「チシポ」はアイヌ語で「針入れ」を意味する。
 チキサニは28日から1月5日まで休館。問い合わせはチキサニ、電話0144・82局6301番へ。
 ※「チシポ」の「シ」は小文字
http://www.hokkaido-nl.jp/article/15334

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人生で大切なことは偉人の泥酔から学ぼう

2019-12-28 | アイヌ民族関連
JBpress 12/28(土) 6:00配信
 忘年会続きに加え、来週には新年会ラッシュも始まるはずで、肝臓がお疲れの方々も多いことかと思います。二日酔いの重い体、断片的に思いだされる失言の数々、計算以上に軽くなっている財布。後悔先に立たず、の気持ちを抱えながらもそれでも翌日には会社に向かう、日本のサラリーマン。今夜も日本中のあちらこちらの街中で、酒席での失敗談、武勇伝が数多く生まれていることでしょう。
■ 秀逸な例えが冴える酒呑み伝
 そんな彼らに贈る励ましの書が、『人生で大切なことは泥酔に学んだ』(栗下直也)。
 泥酔してヤクザに殴りかかってしまった「世界のミフネ」三船敏郎、飲みかけの一升瓶を抱えたまま中央線水道橋駅のプラットホームから落下した「批評の神様」小林秀雄、二日酔いの酷さにゲーム中にかかわらずグラウンドに戻してしまった「あぶさん」永淵洋三・・・。
 作家や批評家、俳優、政治家、スポーツ選手といったさまざまなジャンルの偉人たちの逸話を通じて酒との上手い付き合い方を探っています。
 と、紹介すると、得てして武勇伝の列挙に終わってしまい、何かとコンプライアンスに厳しい現代ではありえない憧憬で終わってしまうもの。その点、本書は全体を通して肩の力を抜いて楽しめる読み物に仕立て上げており、著者の力量を感じずにはいられません。
 まず驚かされるのは、秀逸な例えを駆使した読みやすい文章。
 例えば太宰治の章でのフレーズ。
「無頼ぶらない太宰など、現代でいえば、裸にならない小島よしおであり、すべらないダンディ坂野である。」
 さらに梶井基次郎を指して
「キリンレモン、レモンサワーの次くらいに梶井基次郎である。レモネードより梶井基次郎である。」
 取りあげている偉人に、作家や評論家が多く含まれているところからも著者の文壇志向が垣間見られます。さらに書評サイトHONZや週刊誌、月刊誌などでレビューも執筆しており、本書の構成の上手さにも納得できます。
 表紙を開くと、「本書は偉人の泥酔ぶりから、処世術を学ぼうというコンセプトだ。」と書かれていますが、疑う読者も多いはず。ところが読み終えると、著者の術中に嵌められてしまったことに気づいてしまうのが不思議なところ。
 本書で、著者の妙技に酔ってみてはいかがでしょうか。
■ 箱根駅伝小説に新たなスタイルが
 ところで、今日から正月休みに入るサラリーマンも多いと思います。
 忘年会の疲れを取り、新年会に向けて、本来ならば肝臓を休めなければならないこの期間。それなのに炬燵に入り、テレビを見ながら熱燗をちびちびと、というのを楽しみにしているのが酒飲みの哀しい性で、おそらく私だけではないはず。
 特に目が離せないのが、令和最初の箱根駅伝。今年、平成最後の大会では、青山学院大学の一強体制が崩れ、東海大学が初の総合優勝を飾りました。今回はこの二校に東洋、駒沢、國學院、の各校が加わり、五強の争いになると見られています。
 東京・箱根間217.1kmを舞台に2日間にわたって繰り広げられるこの長丁場、今回はどんなドラマが待ち受けているのでしょうか。
 その前に、ぜひ今年中に読んでおいて欲しい一冊が、『タスキメシ 箱根』(額賀澪)。
 本書は、2015年に刊行された『タスキメシ』の続編です。前作で、自分の限界を感じアスリートの土俵から降りた主人公の眞家早馬が、弱小校の紫峰大学駅伝部に栄養管理兼コーチアシスタントとして赴任してくるシーンから物語がスタートします。
 キャプテンで4年生の仙波千早はそんな早馬に反発しつつも、徐々に距離を縮めながら、箱根駅伝出場を目指しますが、果たして・・・。
 登場人物のサクセスストーリーが主流になっているスポーツ青春小説。それに逆行するかのように、挫折や焦燥、妬みといったマイナスの感情も隠さずに織り込んで行く展開は、物語に深みを与えています。決して思い通りの道を進んでいなくても、全てを受け止めて自分の足で前に進む主人公の姿に、思わずうるっとくることでしょう。
 また前回同様に、具だくさん雑煮といった早馬が調理した美味しそうな献立がそれぞれ物語のアクセントになっており、さらに弟の春馬、親友の助川、またライバルの藤宮たちが元気な姿を見せてくれているところにも、著者の丁寧な執筆ぶりが伺えます。
 『風が強く吹いている』(三浦しをん)や『チーム』(堂場瞬一)といった箱根駅伝をテーマにした小説が増えてきた書店の店頭。そこに今回、新しいスタイルの傑作が仲間入りを果たしました。
■ 次回直木賞候補作の一押しはコレ! 
 そんな正月休みも終えると、出版業界の話題は第162回芥川賞・直木賞の発表に移ります。
 先日には候補作、それぞれ5作が発表され、なかでもすべて単行本化されている直木賞に関しては、さわや書店でも特設コーナーを設置しました。
 巨大ショッピングモールで起きた無差別殺傷事件が謎を呼ぶミステリー『スワン』(呉勝浩)や、小さな町で起こった忌まわしい事件に迫る映画監督と脚本家の姿を描く『落日』(湊かなえ)といった力作がノミネートされましたが、なかでも私の一押しなのが『熱源』(川越宗一)。
 明治から昭和初期にかけての樺太を舞台に、列強に並び立たんとする日本と、帝国主義を推し進めるロシアの狭間で翻弄されるアイヌの姿を描いています。
 何も悪いことはせずに、自己完結した生活を送っているにも関わらず、なぜか庇護するべき存在と認識されてしまい、必要以上に介入されてしまう主人公のヤヨマネクたち。しまいには滅びゆく民族の烙印まで押されてしまいますが、それでもアイヌの誇りを胸に、ヤヨマネクは子どもたちへの教育に尽力します。
 そんなアイヌ文化を研究し、伝播することで彼らをフォローすることになったプロニスワス・ピウスツキ。彼の故郷であるリトアニアもまた、ロシア領に取り込まれてしまっており、領土はもちろんのこと、急激な統一化のもと失った母語であるポーランド語を取り戻すことが悲願でした。
 本書は、巻末にあるように史実をもとにしたフィクション。金田一京助の筆記による「あいぬ物語」の著者であり、ピウスツキにも説話を語りつつ、白瀬矗の南極探検隊にも犬ぞり担当で参加したヤヨマネク、日本名・山野辺安之助を中心に、祖国を失ったピウスツキの姿も交えて、物語は進みます。
 この民族とは、国家とは何かを問いかけてくる壮大なスケールの物語、とにかくまずは読んでいただきたい。
 そして私の力不足もありますが、なかなか言葉にできない、内から噴き出してくるこの熱い感情を、ぜひ一人でも多くの読者と共有したいものです。読み終えたあと、「熱源」というタイトルに魅入られてしまうのは、きっと私だけではないことでしょう。
栗澤 順一(さわや書店)
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191228-00058711-jbpressz-life&p=3

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