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床など踏む所に使わない/異なる文様秩序なく並べない 阿寒湖温泉にアイヌ文様活用指針

2018-03-29 | アイヌ民族関連
北海道新聞03/28 16:00
【阿寒湖温泉】環境省は釧路市阿寒町の阿寒湖温泉地域向けに、アイヌ文様を活用した景観のガイドラインを策定した。これに合わせて地元のアイヌ民族団体が、建物や商品などにアイヌ語、文様を使う際の認証制度を新年度中に創設することを計画している。アイヌ文化を取り入れたまちづくりを官民一体で推し進め、外国人観光客らにPRしたい考えだ。
 阿寒湖温泉を含む阿寒摩周国立公園は、環境省の訪日外国人旅行者向けの整備事業「国立公園満喫プロジェクト」に指定されており、ガイドラインは26日に策定された。内閣官房アイヌ総合政策室によると、国がアイヌ文化活用の指針を示したのは初めて。
 ガイドラインは、文様について「道路や床などの踏みつける箇所や、トイレなどの座る箇所には使用しない」「異なる文様を秩序なく並べない」などの基本ルールを提示。温泉街のホテルや土産物店の壁、シャッターなどに積極的に取り入れることを提案する。
 デザインなどについては、阿寒アイヌ協会など4団体で構成する「阿寒アイヌ文化知的所有権研究会」に相談するよう指定している。
■地元も認証制度計画
 同研究会はガイドラインを基に、認証制度を立ち上げることを計画。アイヌ語や文様を正しく使う施設などに対し、認証マークを付与することを検討している。道アイヌ協会によると、アイヌ民族内での認証制度は既にあるが、一般対象の制度は初めてとなる見込み。
 阿寒湖温泉では、地元観光協会などがアイヌ文化などを体験できるテーマパークの開設を計画。一部大手ホテルが同研究会の助言を受けて、新施設に正しいアイヌ語の名称を付けるなど、アイヌ文化を生かした観光振興策が進められている。その一方で、店の壁にアイヌ文様とは異なる曲線が描かれていたり、商品名にアイヌ語が誤用されたりするケースもあり、関係者から「アイヌ民族がいる街なのに恥ずかしい」との指摘があった。
 同研究会事務局長で阿寒アイヌ協会の広野洋会長(53)は「民族の知的財産を守りつつ、アイヌ文化を正しく活用してもらう仕組みを作りたい」と話している。(釧路報道部 佐竹直子)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/175721

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<教科書検定>アイヌ民族の世界観手厚く

2018-03-29 | アイヌ民族関連
北海道新聞03/28 05:00
 検定で合格した中学道徳の教科書では、アイヌ民族の世界観を手厚く紹介する教科書もあった。
 教育出版の中3の道徳教科書は、アイヌ民族の自然を敬う考え方について「カムイモシリ(神の世界)とアイヌモシリ(人間の世界)」という題名で4ページにわたって盛り込んだ。執筆者は札幌大学の本田優子教授(アイヌ文化)と胆振管内白老町のアイヌ民族博物館の村木美幸専務理事。
 本田氏は、アイヌ民族にとっての神は「動物や植物など『自然』と呼んでもいい存在」と説明し、心がけの善い人に動物や植物に変身して自然の恵みとして現れ、食糧や衣服をもたらすことを紹介した。
 村木氏は、自然の恵みを必要以上に捕らないという考え方を解説した上で、神と人間について「互いの役割を考え、互いに感謝し、常に相手を敬い、思いやりを持って接することで、良好な関係を保てる」と結んだ。
 2人は2012年からJR北海道の車内誌で毎月、アイヌ文化について柔らかい語り口でエッセーを連載している。教育出版の編集者から「エッセーと同じ雰囲気で書いてほしい」と依頼された。村木氏は「さまざまな相手の立場について考える大切さを教育現場で再確認してもらえれば」と話し、本田氏は「多様性を尊重する先住民族の思想を教科書で紹介するのは大変価値のあること」と語る。
 北海道アイヌ協会は、教科書の出版社に、アイヌ民族の歴史や文化の記述を増やすよう求めており、近年は歴史や国語の教科書で増加傾向にある。同協会の加藤忠理事長は「感謝しかない。今後も多くの理解を広げていきたい」と話す。
 中学道徳の教科書では、教育出版以外の3社でアイヌ民族に関する記述があったが、いずれも歴史や人権問題に関して触れる程度だった。
(報道センター 村田亮)
 ※「モシリ」の「リ」は小文字
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/175670

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道南アイヌ語方言辞典刊行 白老のアイヌ語教室、今回で14冊目

2018-03-29 | アイヌ民族関連
苫小牧民報2018/3/28配信

 白老楽しく・やさしいアイヌ語教室(大須賀るえ子代表)はこのほど「道南アイヌ語方言辞典」を刊行し、26日に白老町教育委員会を通じて町内の小中学校や図書館へ同辞典を寄贈した。今回で14冊目となる辞典の刊行となり、大須賀代表は「まだまだ勉強が足りないので、これからも勉強を続けていきたい」と話した。
 同教室は現在、5人で毎週木曜にアイヌ語について研究を重ねている。今回は、2012年に白老方言辞典に掲載した登別の幌別方言の話者、金成マツ、金成アシリロの語彙(ごい)を883語を追加した。
 大須賀さんは「12年に方言辞典を刊行し、もっと使ってもらえたらと、今回は多くの言語が残る幌別のユーカラの勉強を通じて、道南方言をまとめた」と紹介。「この辞典を通じてユカラの世界をもっと理解してもらえたら」と話した。安藤尚志教育長は「1年間、皆さんが勉強してきた成果を冊子にしてもらい、そして寄贈いただくことに感謝している。今後、小中学生にアイヌ語を勉強してもらいたいと考えており、その際には辞典を活用したい」と述べた。
 同辞典はアイヌ文化振興・研究推進機構の助成を受け200冊を発行。町教委を通じて、町内の小中学校や図書館に寄贈したほか、アイヌ語を研究している道内外の大学や図書館、博物館などにも寄贈される。
https://www.tomamin.co.jp/news/area2/13482/

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水上さんが白老のアイヌ博物館にたこなど寄贈【室蘭】

2018-03-29 | アイヌ民族関連
室蘭民報2018.03.26
 室蘭・礼文凧保存愛好会(笹山惠弘代表)の水上正司事務局長は19日、4月から休館する白老町の一般財団法人アイヌ民族博物館(野本正博館長)に、アイヌ文様が描かれたたこ5枚と、昔使っていた職員のユニホーム3着を寄贈した。
 水上さんは同館の元職員。1996年(平成4年)5月から8年ほど管理部長などを務めた。
 当時は観光客向けにたこ作り体験やたこ揚げを行っていたという。寄贈したたこは水上さんが保管していたもので、大きい物で縦1メートル、横0・7メートル。アイヌ民族の衣装や文様を模した絵柄が描かれている。ユニホームは色が紺とベージュで、背中には村の守り神のフクロウが刺しゅうされている。
 19日は同館の西條林哉渉外・広報課長が水上事務局長の自宅を訪れ、たことユニホームを受け取った。  西條課長は「資料として活用できるかを検討する。有効に活用していきたいと思っています」と感謝した。水上さんは「博物館の資料として残ればうれしい」と願っていた。
http://www.hokkaido-nl.jp/article/5359

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(世界発2018)マオリの子虐待、NZの暗部 全国の養護施設、政府が調査組織

2018-03-26 | 先住民族関連
朝日新聞2018年3月26日05時00分

 全国の福祉施設で、先住民の子どもたちへの虐待が長年にわたって続いていた――。ニュージーランド(NZ)政府が、こんな問題を調べる独立組織を立ち上げた。先住民マオリ=キーワード=との共存を課題としてきたこの国にとって、歴史と向き合う機会にもなる。
 ■「白人職員の個室で何度も性被害」
 「私がNZ南部にある養護施設に入れられたのは、ちょうど5歳の誕生日のことでした」。NZ北部ファンガレイの自宅で、ソーシャルワーカーのパオラ・モイルさん(54)は、つらい過去を語り始めた。
 父は白人で、母はマオリ。モイルさんら4人の子が生まれたが、父は酒と浮気に走った。母は落ち込み、育児に支障を来した。すると、息子とマオリの女性との結婚を望んでいなかった義母が、社会福祉当局に通報。当局はモイルさんと年下の2人の弟を施設に入れた。容姿が白人のようだった年長の姉は父方に引き取られた。
 施設には、数百人の子どもがいたが、大半がマオリだった。学校に通う以外、外出は許されなかった。
 待っていたのは、性的虐待だった。寝泊まりする大部屋から、お漏らしをしかる名目などで白人の職員に個室に連れて行かれることがあった。そこで、モイルさんと上の弟は何度もレイプされた。「入所前にあふれていた弟の笑顔が消えてなくなった」と振り返る。
 施設を出られたのは、18歳になった時だった。
 首都ウェリントンに暮らすユージン・ライダーさん(47)は11歳のとき、最大都市オークランドにある施設に入れられた。
 そこには、30人ほどの少年がいた。多くがマオリだった。プールや運動場もあり、食事も3回出た。だが、職員には親切な人たちがいる一方で、性的虐待の常習者が2人いた。シャワー室などでレイプされた。「2人が夜間勤務の時はみんな恐れた」
 16歳で社会に出るまで、4カ所の施設で生活したが、「(職員の)暴力は普通だった」と言う。ある施設では裸にされて木のむちで打たれたこともある。恥ずかしくて性的虐待された経験をずっと口にできなかった。そんな状況は自分たちだけでなく、広範に長年続いていたらしいと、最近知った。
 ■訴え2700件、新政権本腰
 長い間、表面化しなかった虐待だが、近年、謝罪や賠償を求める声が上がり始めた。08年以降、政府には2700件以上の訴えが届いた。昨年2月には、マオリの団体や人権委員会の幹部らが調査を求める公開書簡を政府に出した。
 昨年10月、調査を公約に掲げた労働党を中心とする連立政権が発足。新政権は2月1日、独立調査組織「王立委員会」の設置を発表した。アーダーン首相は「被害者らの体験から学ぶ重要な一歩だ」と述べた。
 委員会は、政府の保護政策のもとで起きた養護施設での虐待について、組織的な背景も含めて原因を調べ、責任をとるために必要な措置や、今後の福祉政策への教訓を提言する。
 委員長は裁判官や弁護士の経験もあるアナンド・サティアナンド元総督。さらに4人の委員を選び、6月には調査を開始、20年6月ごろまでの終了を目指す。サティアナンド氏は取材に「(被害者に)多くのマオリがいる」と認め、委員をマオリからも選ぶ方針を示した。被害者の体験を聞き取りや書面で集めるとし、その規模は「数千人になるかもしれない」とした。
 NZでは、60年代以降にマオリの権利を求める運動が高揚。政府は75年に、マオリが白人に奪われた土地の返還などを訴えられる司法機関を設置。87年にはマオリ語を公用語にした。
 「盗まれた世代」は、白人とマオリが和解する努力を続けてきたこの国にとって、残された課題とも言える。サティアナンド氏は「この国の歴史では不愉快な汚点だが、取り組む必要がある」と語った。
 (ファンガレイ=小暮哲夫)
 ■施設へ「保護」、背景に人種差別
 NZでは、1950年代から90年代に10万人以上の子どもたちが、虐待や貧困などの理由で、公立や民間の養護施設に入れられた。その大半はマオリの子どもたちだったとされる。
 この問題を調べてきたオークランド大法学部のアンドリュー・エルティ上級講師によると、失業やアルコール依存などの問題を抱えた家庭もあったようだ。ただ、「当局がマオリだという理由で(保護の)標的にした構図が見て取れる」とも指摘。施設での虐待も「人種差別がある状況で起きたと疑っている」と話す。第2次世界大戦後、地方にいたマオリが仕事を求めて都市に出てきた。白人と共に暮らす状況になり、人種間の緊張が生まれていたという。
 隣のオーストラリアでは、1910年ごろから70年代に入るまで、政府が先住民(アボリジナルピープル)の子どもを施設に入れたり、白人家庭に養子に入れたりした。先住民を白人に同化させる狙いだった。家族から引き離された子どもたちは「盗まれた世代」と呼ばれ、多くが虐待された。
 施設で虐待されたマオリの人たちは、これになぞらえて、NZ版の「盗まれた世代」とも呼ばれる。
 ◆キーワード
 <マオリ> ニュージーランドの先住民。14世紀ごろまでに南太平洋の島々から渡ってきたと伝えられる。1840年に首長らが主権を英国に譲渡。英国人らの入植の過程で土地などを奪われた。2013年の国勢調査では人口は全体の15%の約59万8千人。一方、失業率は全体の3倍の15・6%。高校進学率も低く、白人との格差は残っている。
https://digital.asahi.com/articles/DA3S13420480.html?_requesturl=articles%2FDA3S13420480.html&rm=150

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<北海道>巨大なアイヌ文様のパッチワークづくり進む(動画)

2018-03-26 | アイヌ民族関連
HTBニュース 3/25(日) 18:07配信
 胆振の白老町では巨大なアイヌ文様のパッチワーク作りが進められています。25日はタイからの学生が体験会に参加しました。
 2020年に白老町に国立アイヌ民族博物館を中心とする「民族共生象徴空間」がオープンします。これを前に町民の有志が様々な文化を取り入れた巨大なパッチワーク作りを進めています。25日は交流会として、タイからの学生たちが持ってきた布を使い、アイヌ文様の刺繍体験が行われました。完成作は町内に飾られる予定で、タイの学生たちが再び白老町を訪れるきっかけになったらと町は期待を寄せています。体験会のあとにはアイヌの伝統料理を食べ博物館の見学なども行われました。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180325-00000004-htbv-hok

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もう一つのサッカーW杯 安英学(元北朝鮮代表)が在日代表チームの監督兼選手として現役復帰

2018-03-26 | 先住民族関連

news.yahoo.co.jp3/25(日) 9:30
木村元彦 | ジャーナリスト ノンフィクションライター
2017年1月、Jリーグの横浜FCを退団し、引退を表明した安英学(アン・ヨンハ)が現役復帰を宣言して走り出した。正確には今年5月末にサッカーの母国・ロンドンで開幕するひとつの国際大会に向けて再びピッチに立つ準備を始めたのである。
 大会の名前はConIFA World Football Cupという。
ConIFA(Confederation of Independent Football Associations)という名称はいささか耳慣れないが、これは、FIFA(=国際サッカー連盟)に未加盟の国や地域をカバーする独立系サッカー協会のことである。FIFAの加盟承認の原則は「主権国家として認められており、国連に加盟している国」となっている。しかし、世界には複雑な情勢から国連に加盟できない国もある。そして当然ながらそんな国でもサッカー選手は存在する。またFIFA加盟国に生活していてもその国籍と自身のアイデンティティーがシンクロしないという人々も数多く存在する。ConIFAはFIFAに入れない国の人々、あるいは自身の文化に誇りを持って生活をしている少数民族や、迫害を受けて祖国を捨て異国のコミュニティで暮らす人々が、自分たちのアイデンティティーを掲げてサッカーができる場所として、2013年に設立されたのである。
創設者のペール=アンデルス・ブランドは、映画「サーミの血」でもモチーフとなったノルウェーの先住少数民族サーミ人である。彼は3歳で両親と共にスウェーデンに移住し、そこで筆舌に尽くせない差別と虐めに遭った。ドロップアウトをしかけたが、そんな彼を窮地から救ってくれたのがサッカーだったという。ボールの前では誰もが平等でチームは民族を超えてひとつになれる。「サッカーは差別を乗り越え分断されているものに橋をかける」。この思いがConIFAを設立する動機となった。4年前に設立されてから、加盟国は年々増加し、現在は47チームが加盟している。
もうひとつのワールドカップとも言われているConIFA World Football Cupロンドン大会には、タミル・イーラム(スリランカにおける内戦で祖国を追われたタミル人のチーム)、北キプロス(キプロス北部でトルコが実効支配しているとして国際的に未承認の国家)、チベット(中国から亡命して欧州でコミュニティを形成するチベット人のチーム)、パンジャブ(インドとパキスタンにまたがるパンジャブ地方の民族)、西アルメニア(オスマントルコによって迫害された歴史を持つアナトリアのアルメニア人の末裔)など16チームが参加する。
 安は当初、ConIFAからアンバサダーとしての就任依頼を受けていた。日本で在日コリアンとして生まれ民族学校で育ち、Jリーガー(アルビレックス新潟、名古屋グランパス、大宮アルディージャ、柏レイソル、横浜FC)として活躍、北朝鮮の代表選手として南アフリカW杯に出場したことのみならず、韓国Kリーグ(釜山アイパーク、水原三星ブルーウイングス)でもプレーの実績があり、すべての国のサポーターたちに愛された。新潟では日本人サポーターたちが今でも安のイベントがある度に参集し、昨年行われた新潟・釜山 での引退セレモニーでは朝鮮半島の南北間の 交流に貢献したとして感謝状も授与されている。日本、北朝鮮、韓国を繋いだまさにConIFAの理念を体現しているその生き方から白羽の矢が立ったのである。
 安がアンバサダー就任を引き受けると次は在日コリアンのチームとして大会に出場するユナイテッド・コリアンズ・イン・ジャパンのソン・チャノマネージャーから監督兼選手としてのオファーが舞い込んだ。こちらもまた在日サッカー選手のシンボルとして大きな期待がかけられた。ユナイテッド・コリアンズ・イン・ジャパンは前回アブハジア(国際的にはジョージアの一部とされているが、実質的にアブハジア共和国として独立状態にある自治区)で 行われた大会に続いて二度目の出場である。安がチームを率いる上で条件としたのは「在日で可能な限りの最強のチームを作る」というものだった。
 「サッカーをしにいくのですから、大会や相手チームに対して失礼の無いようにベストを尽くしたい」。友好、融和というキーワードが並ぶConIFAにおいて、だからこそ全力でプレーをして世界に向けて在日の存在をアピールする。普段は折り目正しく、分け隔てなく人と接することで知られる温和な安であるが、こういうとき表情は変わる。
 その半生を橋を架ける者たちに記したが、高校時代、安は全く無名の選手だった。高校選手権を東京都予選ベスト16で敗退したチームの中盤の選手に過ぎず、実績を考えればJリーガーになりたいなどと口にするのも憚られた。しかし、多くの選手がサッカーを辞める19歳から夢を描き、高卒後の進路に浪人を選択し、日本の大学でプレーをしてからのプロ入りを決意した。「もう年齢的にも遅い」「この一年の空白は埋まらない」「同世代の選手の経験にはもはや追いつけない」等々、数え切れないほどのあきらめるための言い訳を封印し、その夢を成し遂げた。立正大に合格してサッカーを続け、4年後にはアルビレックス新潟に入団しプロになったのである。そんな安であればこそ、サッカーに関して真摯にいらずにはいられない。
 監督を引き受けると同時に自ら選手の選考と招集を担った。独自にリサーチした人脈に基づいて、国内外のチームから選手を選んだ。オファーするにあたり安が直接出した条件は二つだけ。
「在日としての誇りを持っているか?」「魂を持って闘えるか?」。その呼びかけに対してNOという者はひとりもいなかった。そろそろ現役を引退しようかと悩んでいた選手も、そういう大会ならぜひとモチベーションを上げてきた。それぞれ朝鮮籍、韓国籍、日本籍と持つパスポートは異なってもオール在日代表チームの旗の元に続々と選手は集まって来た。香港リーグでプレーするソン・ミンチョル、クロアチアにいたリ・トンジュン、オーストラリアのアン・チニャなど海外組が5人、さらには元Jリーガーのキム・ヨンギ(湘南ベルマーレGK)、前回大会で監督を務めたユン・ソンイも再びスパイクを履く。
 安は言う。「僕はどこの国のチームに行っても応援してもらいました。その意味では全てがホームとも言えます。その上で今回はまた在日という一番身近なアイデンティティーを前面に出して闘えることが嬉しいです。在日の存在をサッカーの生まれた国で世界に向かって知らせたい。ああ、知らなかったけど、こいつらはこんなプレーをするんだと。在日の重みは誰よりも分かっているつもりですから」エンブレムのデザインには統一朝鮮半島に加えて日本の要素も入れたいという。今回は帯同するトレーナーも在日である。
 安は朝鮮籍ゆえにイギリスビザの取得は困難で時間もかかる。サッカーに集中する以前に煩雑な手続きが横たわる。それでも信頼するスタッフとともに粛々と書類を揃えながら、やるべきことに邁進している。すなわち復帰のためのトレーニング。闘う以上、優勝を目指すことを公言する。
 プロ選手になること、ワールドカップに出場すること。日本で在日コリアンとして生まれることは、同じサッカー選手でありながら、それらがあまりに狭き門として登場する。それでもたゆまぬ努力で成しえてきた安が、唯一実現できなかったヨーロッパでのプレーという夢が今回、実現しようとしている。
ユナイテッド・コリアンズ・イン・ジャパン応援ツアーの手配は旅行会社スタートラベルが行っている。(TEL.03-6455-5933)
https://news.yahoo.co.jp/byline/kimurayukihiko/20180325-00083097/

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台湾を変えた日本人シリーズ:台湾野球の礎を築いた日本人・近藤兵太郎

2018-03-26 | 先住民族関連
nippon.com[2018.03.25]

1931年、第17回全国中等学校優勝野球大会に出場すべく、台湾の嘉義農林学校野球部は、これまで1勝もしたことなかった台湾全島野球大会に挑んだ。連敗続きでのんびりしたチームだった嘉農野球部は、近藤兵太郎監督の鬼のような特訓を1年間受けると、選手に勝利への強い意志と甲子園出場への夢が芽生え、日本人のみの常勝チームであった「台北商業」を打ち負かして優勝した。台湾野球の歴史を塗り変えた出来事だった。
台湾の代表チームとして日本への遠征を成し遂げた嘉農野球部の快挙に、嘉義市民は歓喜した。全国大会に出場する嘉義農林ナインは、日本人3人、漢族2人、先住民族4人の民族混成チームであった。
近藤は当時、語っていた。「日本人は守備がうまく、漢人(族)は打撃に強く、蕃人(族)(先住民族)は走ることに長(た)けている。こんな理想的なチームはない」と。
身内の相次ぐ不幸もあって、心機一転、台湾に渡る
嘉農チームを育てた近藤は1888年、松山市萱町で生まれた。1903年に松山商業予科に入学し、創部間もない弱小の野球部に入った。手足が短く小柄で野球選手として決して恵まれた身体ではなかったが、誰よりも野球が好きで研究熱心で、内野・外野手として活躍し、主将も務めた。
その後、野球部監督となり19年に松山商業を初の全国出場(夏ベスト8)へと導くが、両親、おい、姉、長女の相次ぐ死を経験した近藤は、心機一転を図るべく台湾へ渡り、嘉義商工学校に簿記教諭として勤務することになる。渡台しても松山商業の監督は続けていたため、夏休みになると毎年松山に戻り母校の監督として采配を振るった。その結果、甲子園へ6年連続出場するという松山商業野球部第1期黄金時代を築いた。
しかし、25年夏の四国予選で高松商業に大敗したため、監督を辞退し嘉義商工学校の簿記教諭に専念していた。ところが、28年の創部以来1度も勝利なき嘉義農林野球部の選手が、近藤の内地での活躍を耳にした。選手から近藤の指導を熱望された濱田次箕野球部長は、近藤を連日口説いた。その結果、コーチを条件に指導することになったのである。近藤は40歳になっていた。
差別をせず実力主義のチームを作り、甲子園初出場準優勝に導く
野球は日本人のスポーツと思われていた当時の台湾で、民族など一切関係なく実力ある者が打って走り、点を取って最後まで守り抜ければ必ず勝てるという考えを近藤は持っていた。また選手に必要なのは、野球に対する情熱と身体能力だけだと考え、実力ある者がレギュラー選手になるべきだとも考えていた。
京都の平安中学校が台湾に遠征に来た時、選手の中に3人の先住民族がいるのを見た近藤は「あれを見ろ、野球こそ万民のスポーツだ。われわれには大きな可能性がある」と選手に語り、希望を持たせた。やがて台湾最強チームを作るべく校内の部活動に参加をする生徒を調べ、有望な選手を探し出して野球部に勧誘した。そしてスパルタ式訓練で鍛え、チームを創部3年で台湾代表として全国大会へと出場するまでの強豪へと育て上げた。
当時、中堅手だった蘇正生は語る。「マムシに触っても近藤監督に触るな、とみんなでささやき合うほど怖い人だった。しかし、大変に熱心で、けがなどをした者にはとことん気を配って優しかった。真剣、必死が好きで、いつも体中から熱気が溢(あふ)れているようだった。近藤先生は、正しい野球、強い野球を教えてくれた。差別は一つもありませんでした」と。周囲からは「コンピョウさん」と呼ばれ、親しまれていた。高熱であっても、担架に乗って練習場に来た時には、選手が言葉を失ったという。
バットには「一球入魂」と書き、ボールには「球は霊なり」とも書いた。近藤は「精神野球」と「データ野球」を大事にした監督だった。
初出場の選手にとって甲子園でプレイすることは、夢のまた夢であり、近藤にとっても同様だった。ラジオによる実況放送は台湾の嘉義でも聞くことができた。5万5000人の大観衆が見守る中、「KANO」と書かれたユニホームを身に着けた嘉義農林は、快進撃を続けた。第1回戦は3対0で神奈川商工に、第2回戦では札幌商業を破り、第3回戦も10対2で小倉工業を下した。嘉義市民は流れてくるラジオ放送に熱狂した。弱小だったチームが本土の強豪を次から次へと撃破するのである。
嘉農のエース、呉明捷は連投の疲労で、指の爪を剥がす大けがを負い、中京商業野球部との決勝戦ではボールを連発した。しかし、近藤に「この試合を自分の最後の試合と思って完投させてほしい」と頼み込む。呉の固い決意に感動した近藤と仲間たちは、一致団結して呉の願いをかなえようとする。しかし、石灰を傷にまぶしての呉の奮闘も、相手チームの攻勢には抗し難かった。
その時、チームメイトたちが声を掛ける。「思い切り直球を投げろ。守備は俺たちに任せろ!」「俺たちは台湾の嘉義から来た仲間じゃないか!」。球場の大観衆が驚いて見守る中、呉は歯を食い縛って一球一球、直球を投げ続ける。守りの選手たちは、一球また一球とキャッチするたびに、「いらっしゃいませ!」と叫んでは自分たちを奮い立たせた。その場に居合わせた全観衆を感動させると同時に、遠い台湾でラジオ放送を聴く台湾の人々をも興奮させた。近藤の胸は、頼りなかったメンバーが不屈の闘士に成長した姿を目の当たりにして、感慨でいっぱいになる。
球児たちの一球たりとも諦めない「ひたむきさ」「絶対に負けない」という精神が、球場の大観衆を魅了し「戦場の英雄・天下の嘉農」と称賛を浴びた。
当時、小説家の菊池寛は「僕はすっかり嘉義ひいきになった。日本人、本島人、高砂族という変わった人種が同じ目的のため共同し努力しているということが、何となく涙ぐましい感じを起こさせる」と新聞の観戦記に書いている。
決勝戦では、吉田正男投手を擁してこの年から史上唯一の3連覇を達成することになる中京商業に敗れ、準優勝に終わった。
近藤の教えは日台問わず現代に引き継がれた
甲子園で準優勝した年に建設された嘉義球場のホームベースの位置は、近藤が「夕日が選手の妨げにならないように」と太陽の沈む位置を見て決めた。
近藤は、松山商業時代に6回、嘉義農林時代は5回、甲子園に出場している。嘉義農林を率いて春夏連続出場した35年夏の甲子園・準々決勝では母校・松山商業と対戦し、延長戦の末4対5で惜敗した。松山商業はその後、準決勝・決勝と勝ち進み、初の全国制覇を達成した。応援に駆け付けた近藤は松山商業を率いていたかつての教え子で監督の森茂雄と抱き合い、涙を流して喜んだという。
1945年、日本敗戦と共に中国から台湾接収のためにやって来た中華民国の国民党は、野球を日本文化であるとして奨励しなかったため、生まれ故郷に帰った選手たちは、各地で少年に野球を教えた。やがて、台中市の少年チームが69年にリトルリーグ・ワールドシリーズで優勝し、野球が評価されるようになる。71年から4年連続優勝し、17回の優勝回数が世界一という快挙を成し遂げた。当然のように野球部ブームが起こり、プロ野球で活躍する選手も現れ、日本の球団にも多くの選手が入団している。
近藤の主な教え子に藤本定義、森茂雄(ともに松山商)、呉明捷、呉昌征、今久留主淳、今久留主功、呉新亨(ともに嘉義農林)らがいる。そのうちの藤本、森、呉は日本の野球殿堂入りを果たしている。近藤が活躍した28年からの10年間は、台湾野球の第1期黄金時代と言っても過言ではない。台湾の野球関係者いわく「近藤監督ありて、嘉義農林野球部あり、嘉義農林野球部ありて今日の台湾野球がある」と。
台湾野球の礎を築いた近藤は46年に故郷・松山に引き揚げた後、新田高校野球部の監督や愛媛大学野球部を指導した後、66年5月19日に永眠した。77歳の生涯だった。葬儀には教え子や各界から届いた多くの花輪が、自宅前の道路数十メートルにわたって飾られたという。
https://www.nippon.com/ja/column/g00507/

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アイヌ刺しゅう奥深さを感じて 登別で24、25日に作品展

2018-03-26 | アイヌ民族関連
北海道新聞 2018/03/24

【登別】登別アイヌ協会(上武和臣会長)は24、25の両日、協会メンバーや地域住民が手縫いで仕上げたアイヌ刺しゅう作品展を、幌別町3の鉄南ふれあいセンターで開く。
 柿渋を染みこませた和紙を貼った竹かごにアイヌ刺しゅうを施したかばんや、タペストリー、鉢巻きなど約70点を展示。細く裂いた樹皮と糸を織り込んだ儀式用の刀下げ帯「エムシアッ」もある。
 2020年東京五輪・パラリンピックのコーナーも設けた。同協会は、同五輪の開会式で披露予定のアイヌ民族の伝統舞踊の衣装づくりに協力。コーナーで開会式本番で着用する衣装のレプリカ25点を展示する。
 同協会の芳賀美津枝さんは「アイヌ刺しゅうの奥深さを肌で感じてほしい」と話す。
 両日とも午前10時~午後3時。問い合わせは同協会(電)0143・85・1062へ。(池田静哉)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/174470

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テレビアニメの追加キャストに杉田智和、大塚明夫、関俊彦

2018-03-26 | アイヌ民族関連
毎日新聞 2018/03/24
 野田サトルさんのマンガが原作のテレビアニメ「ゴールデンカムイ」に声優として杉田智和さん、大塚明夫さん、関俊彦さんが出演することが24日、分かった。杉田さんは双子の二階堂浩平、洋平の二役、大塚さんは“悪夢の熊撃ち”と呼ばれる二瓶鉄造、関さんは連続殺人犯の辺見和雄をそれぞれ演じる。
「ゴールデンカムイ」は、2014年から「週刊ヤングジャンプ」(集英社)で連載中のマンガ。かつて日露戦争で活躍した“不死身の杉元”が、北海道で死刑囚が隠した埋蔵金の手掛かりをつかみ、アイヌの少女アシリパらと共に冒険を繰り広げる姿を描いている。アイヌの文化や歴史、食事の描写なども評価され、「マンガ大賞2016」で大賞を受賞した。
 アニメは、劇場版アニメ「虐殺器官」(村瀬修功監督)を手がけたアニメ制作会社、ジェノスタジオが制作する。小林親弘さんが杉元、白石晴香さんがアシリパをそれぞれ演じる。4月からTOKYO MXほかで放送。
http://mainichi.jp/articles/20180324/dyo/00m/200/013000c

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TVアニメ『ゴールデンカムイ』アシㇼパがねんどろいど化!「ハフハフ顔」や「オソマ…顔」も付属

2018-03-24 | アイヌ民族関連
アメーバnews 3月23日(金) 18:30提供:ウレぴあ総研

©野田サトル/集英社・ゴールデンカムイ製作委員会
グッドスマイルカンパニーより、TVアニメ『ゴールデンカムイ』のキャラクター「アシㇼパ」をデフォルメ姿で立体化した新作フィギュア「ねんどろいど アシㇼパ」が発売されます。
北の大地で杉元が出会った、アイヌの少女「アシㇼパ」がねんどろいどに。表情パーツは、食事中に目を輝かせる「感動顔」、熱いものを食べているときの「ハフハフ顔」、カレーを目の前にした際のシュールな「オソマ…顔」のほか、オソマ入れなきゃいいけど…と杉元を見る「にやり顔」と、クールな雰囲気の「真剣顔」の5種類です。
オプションパーツとして、「お椀」「お箸」「カワウソの頭の丸ごと煮」も付属。表情豊かなアシㇼパを、さまざまなシチュエーションで楽しめます。
現在、全国のホビーショップやオンラインショップにて予約受付中ですが、公式ショップ「グッドスマイルオンラインショップ」にて予約すると、特典として「ねんどろいど用パァァァァ・・・特製背景紙」がもれなくプレゼントされるそうです。
「ねんどろいど アシㇼパ」は2018年9月に発売される予定で、価格は5,500円(税込)です。
https://news.ameba.jp/entry/20180323-896

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「海外挑戦基金」1期生10人と知事懇談

2018-03-24 | アイヌ民族関連
北海道新聞03/23 18:02 更新
若者の海外への挑戦を応援しようと、道が企業や個人から寄付を募り創設した「ほっかいどう未来チャレンジ基金」の第1期生が22日、道庁を訪れ、高橋はるみ知事と懇談した。
 1期生は10人。ワインの歴史や天然酵母の活用法を学んだり、アイヌ民族の刺しゅうを発信したりするため、昨年7月から順次、イタリアやベトナムなど10カ国へ渡った。
 滞在期間は3カ月~1年間で、懇談には3月までに帰国した6人が参加。マレーシアなど3カ国でイスラム教徒向けの「ハラル食」市場の調査などに取り組んだ北海学園大4年の中川竣貴(しゅんき)さん(22)は「経験を生かし、食品メーカーで働きたい」と話した。
 基金は2016年に創設され、これまで48の個人・団体から計3600万円の寄付があった。18~39歳の道民を対象に、留学や海外研修に必要な旅費や滞在費、授業料など、1人当たり150万円程度が支給された。
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/174211

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丸木舟で水草除去 阿寒湖マリモ保護 アイヌ文化も学ぶ

2018-03-24 | アイヌ民族関連
北海道新聞03/23 05:00

 【阿寒湖温泉】釧路市や環境省など14団体で構成する「阿寒湖のマリモ」の保護と活用を議論するプロジェクトチームは22日、阿寒湖(釧路市阿寒町)北部のマリモ群生地のチュウルイ湾で今秋から試行する水草除去のボランティアツアーに、アイヌ民族の丸木舟を模したカヌーを使うことを決めた。自然保護を図りながらアイヌ文化を学ぶ体験型観光につなげる狙い。
 ツアーを試行するのは、市や観光機関などで構成する地域団体「阿寒湖のマリモ保全推進委員会」。繊維強化プラスチック(FRP)製カヌーを2隻つなげて使用。パドルと帆で動かし、非常用に太陽光発電で動くスクリューを装備する。アイヌ民族の衣装を着たガイドが解説を行う。
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/174186

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双胴型帆付きカヌー試用…マリモツアー

2018-03-24 | アイヌ民族関連
読売新聞2018年03月23日

 釧路市の阿寒湖温泉地区の官民で作る「マリモの保護と活用に関するプロジェクトチーム(PT)」は22日、マリモ群生地を湖上から観察するガイドツアー計画で、双胴型帆付きカヌーを試験的に導入することを決めた。周辺環境への影響などを確かめ、2020年度からの運用を目指す。
 マリモ群生地は、水深2・5メートルと浅く、動力船の進入は規制されている。湖上から観察するガイドツアーの計画では、マリモを傷つけないことが重要な条件となり、繊維強化プラスチック(FRP)製のカヌーならクリアできると判断した。
 騒音がなく、安定性が高い点も評価された。実際にツアーを行う際には、観察だけでなく、マリモが球状になるのを阻害する水草の除去といった保護活動も盛り込む方針だ。
 舟は8人乗り。デザインは、アイヌの丸木舟をイメージし、帆やライフジャケットもアイヌ文様を入れる。4月以降、まずは舟を作って、実際の影響の有無などをテストする。テストは、同PTの上部団体の「阿寒湖のマリモ保全推進委員会」が行う。その後、ツアー内容や安全確保のマニュアル作り、運営体制の検討などを積み重ねていく考えだ。
http://www.yomiuri.co.jp/hokkaido/news/20180323-OYTNT50009.html

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東京五輪、パーム油調達基準が抱えるリスクと課題

2018-03-24 | 先住民族関連
alterna 3/23(金) 19:02配信
3月16日、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会(東京2020組織委員会)は紙とパーム油に関する調達基準案を作成しました。「持続可能性に配慮した紙の調達基準(案)」と「持続可能性に配慮したパーム油を推進するための調達基準(案)」が公表され、一般からの意見募集を3月30日まで行っています。(川上 豊幸=レインフォレスト・アクション・ネットワーク日本代表)
しかし、環境NGOの視点では大きな懸念があります。
まず、紙とパーム油の調達基準案の題名には大きな違いがあります。紙の基準案は「持続可能性に配慮した紙の調達基準」となっていますが、パーム油の方は「持続可能性に配慮したパーム油を推進するための調達基準」となっています。つまり、「持続可能性を満たしている基準ではない」ことをすでに認めた形になっているのです。
こうした表現になった理由は、マレーシアやインドネシアが国として進めている認証制度である「マレーシア・サステイナブル・パーム・オイル」(MSPO)や「インドネシア・サステイナブル・パーム・オイル」(ISPO)が東京2020組織委員会の基準に合致できていないにも関わらず、「活用できる」としてしまったことです。
例えば、MSPOやISPOには強制労働や移住労働者の権利といった項目がなく、同委員会の「持続可能な調達ワーキンググループ」では「持続可能性に配慮した基準を満たしているとは言えない」と議論になっていました。
しかし活用できる認証制度として列挙したことで、「持続可能性に配慮した調達基準」という名称では誤ったメッセージを送ってしまうとの懸念から、こうした修正が加えられたのです。
さて、ここからは、調達基準の4点について見ていきましょう。
パーム油については、以下の4つの基準があります(調達基準案 項目2より)。
1:生産された国、または地域における農園の開発・管理に関する法令等に照らして手続きが適切になされていること。
2:農園の開発・管理において、生態系が保全され、また、泥炭地や天然林を含む環境上重要な地域が適切に保全されていること。
3:農園の開発・管理において、先住民族等の土地に関する権利が尊重されていること。
4:農園の開発・管理や搾油工場の運営において、児童労働や強制労働がなく、農園労働者の適切な労働環境が確保されていること。
基準に含まれなかった「森林減少阻止」
まず基準2では「生態系が保全され、また、泥炭地や天然林を含む環境上重要な地域が適切に保全されていること」とあります。
基準案「別紙(調達基準4に関する確認方法)」(4ページ目に添付)には「泥炭地や貴重な天然林など保護が必要な重要な森林等がある地域についてはその保全のための措置が講じられていることを確認する」とありますが、保護が必要な「重要な」森林のみを対象としていて、一度伐採が入っているような二次林を含む一般の天然林は対象となっていません。
ちなみに、同基準で活用可能とされる「持続可能なパーム油のための円卓会議」(RSPO)、MSPO、 ISPOの認証制度においては、二次林を含む一般の天然林の保全規定はありません。さらに、MSPOやISPOでは合法性を超えるような環境保全の規定は見当たりません。
「森林減少阻止」には、「貴重な天然林など保護が必要な重要な森林」だけでなく、野生動物にとって重要な生息地である一般の天然林も含める必要があります。
すでに多くの森林に伐採が入っており、熱帯林の保全という観点から非常に重要です。「持続可能な開発目標(SDGs)」でも2020年達成が掲げられている目標なので、基準に組込んでもらいたかった点でした。広く意見を募っているパブリック・コメントにおいても、多くの人に基準の強化を求めてほしい点です。
「地域住民」の土地権も
基準3については、紙の基準案では「先住民族」だけでなく「地域住民」も明記されています。しかしパーム油の基準案ではなぜか書かれていません。
「先住民族等」の「等」に地域住民は含まれているのかもしれませんが、明確ではないので、ここは、先住民族のみならず地域住民の権利尊重も明記してほしいところです。なお、RSPOやMSPOでは、地域住民からの「事前の情報提供に基づく、自由意思による合意形成」が認証基準に含まれていますが、ISPOにはありません。
基準自体が満たせていない認証も「活用」?
基準4で「児童労働や強制労働がなく」と明記していますが、MSPOとISPOには「強制労働」を禁止する規定がありません。
また、前述の「別紙(調達基準4に関する確認方法)」では「移住労働者を含め、適切な雇用手続きや最低賃金その他労働条件が確保」とあり、調達全体に関わる「持続可能性に配慮した調達コード」でも「移住労働者」の人権尊重が述べられていますが、移住労働者に配慮した規定はMSPOやISPOにはありません。
油脂業界の方によれば、MSPOは強制労働については法律で対処していると説明し、「強制労働が行われているといった証拠ははない」と述べているそうです。
しかしマレーシアでのパーム油業界の強制労働問題は、大手メディアの調査報道や米国労働省も認めている課題です。法規制があるのならば、そうした規制の実施にも大きな課題があり、それこそ認証制度による確認が必要な部分と言えるのではないでしょうか。
またRSPO認証農園においても、様々な違法労働の慣行や労働環境の問題も報告されており、基準があったとしても、適切な監査が行われていない点も考慮しておく必要があります。
非認証油も混入
さて、不十分とはいえ、上記の基準があるにもかかわらず、非認証油の利用も認めている点も大きな問題です。
現在のパーム油の基準案では、非認証油を混入して利用することも可能なので、最終的に調達されたパーム油は基準を満たしていなくても問題になりません。
調達基準案の項目3(2)と(3)では、「上記(1)の認証パーム油については、流通の各段階で受け渡しが正しく行われるよう適切な流通管理が確保されている必要がある」とあります。
この文言だけ読むとわかりませんが、これは認証されていない油を混ぜることを認めている「マス・バランス方式」も利用可能であるという提案です。
さらには、「上記(1)の認証パーム油の確保が難しい場合には、生産現場の改善に資するものとして、これらの認証に基づき、使用するパーム油量に相当するクレジットを購入する方法も活用できることとする」とあり、結果として「持続可能性に配慮した調達コード」の規定を満たさないことが可能となってしまいます。
「これらの認証」とは、ISPO、MSPO、そしてRSPOを指していますが、つまり、認証制度を取得した農園生産において、基準を満たしたものを「後押し」していれば、実際に調達しているパーム油自体は基準はクリアしていなくてもいいということです。
サプライヤー企業の責任
さて、今回の基準案で評価できる点もあります。項目6で「サプライヤーは、トレーサビリティ確保の観点も含め、可能な範囲で使用されるパーム油の原産地や製造事業者に関する指摘等の情報を収集し、その信頼性・客観性等に十分留意しつつ、上記2を満たさないパーム油を生産する事業者から調達するリスクの低減に活用することが推奨される」との規定が行われている点です。
この規定は、たとえ認証が得られていても、調達先の農園だけでなく、同じパーム油生産事業者の別の農園で基準を満たさない事例がある場合にも対応を検討すべきことが明記されています。
レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)は、製品レベルでの調達先の評価に限らず、企業レベルでの評価により、持続可能性のリスク管理を行うことを求めてきたので、これは評価できる点です。
東京2020大会は持続可能性に対する責任を
パーム油の基準案は、全体的な「持続可能性に配慮した調達コード」を満たしていないと考えられる認証制度の活用を認め、さらに非認証油も混入できることとなってしまったことから、大きな課題とリスクを抱えている状況にあります。
これでは、東京オリンピック・パラリンピック大会が持続可能性に対する責任を果たしているとは言い難い状況ではないでしょうか。
川上 豊幸(かわかみとよゆき) レインフォレスト・アクション・ネットワーク日本代表
米国のサンフランシスコに本部を持つ環境 NGO 「レインフォレスト・アクション・ネットワーク」(RAN)日本代表。 経済学博士。専門は国際環境経済学。NPO 法人 AM ネット理事。熱帯林行動ネットワーク(JATAN)運営委員。2005 年にRAN の日本代表として事務所を設立し、豪州タスマニアの原生林保護に取り組んだ。その後、インドネシアの熱帯林保護活動に取り組み、森林に依存して生活する人々への悪影響是正に向けて、紙パルプやパーム油業界、金融業界への働きかけを行っている。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180323-00010001-alterna-soci

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