中央フォーカス台湾 2015/07/28 18:38
6月26日から台北市内で開催されていた「第17回台北映画祭」(台北電影節)の閉幕に際し、「台北映画賞」(台北電影奨)の授賞式が7月18日、台北市の中山堂で行われた。同賞は国産映画の推進と発展を目的としたもので、審査の対象作品は全て台湾映画。今年応募されたのは、フィクション長編51作品、短編117作品、ドキュメンタリー58作品、アニメーション33作品の計259作品。バラエティー豊かな作品の中から、厳正な審査の上、受賞者・作品が選ばれた。
◇最多受賞はチャン・ツォーチ(張作驥)監督の「醉・生夢死」 6部門制覇
今回、最多受賞となったのは、チャン・ツォーチ監督の「酔.生夢死」。グランプリ(百万首奨)、最優秀フィクション長編(最佳劇情長片)、最優秀主演男優賞(最佳男主角奨)、最優秀助演男優賞(最佳男配角奨)、最優秀助演女優賞(最佳女配角奨)、メディア賞(媒体推薦奨)の6部門を制覇した。
同作は酒に溺れる母親、失恋しアメリカから台湾に戻ってきた同性愛者の兄、ヤクザと揉め事を起こすなど退廃した生活を送る弟の人生模様を描く。
受賞理由は「写実的なストーリー軸の中に高度に奔放な内なる精神が描かれ、作者は大胆な表現で生に必死になる登場人物を作り出した。セクシーで大胆、かつ創作精神に満ち溢れた作品」。
チャン監督は女性への性的暴行により、現在服役中。審査員を務めた香港の映画監督のフルーツ・チェン(陳果)氏は記者からこのことが影響を与えたか聞かれると、事件について知らなかったようで、純粋に作品のみを見て評価したと話した。
主演男優賞でリー・ホンチー(李鴻其)の名前が呼ばれると、プレスルームでは歓声が上がり、その支持の高さがかいま見られた。ホンチーはステージに立つと「撮影は大変だった」と声を詰まらせ、「この賞はチャン監督のものです」と監督への感謝を示した。ホンチーは元々は制作スタッフ。初めての映画出演で受賞したことに「考えてもいなかった。ずっと先のことだと思っていた」と満面の笑みを見せた。
同作で母親役を演じ、助演女優賞を受賞したルー・シュエファン(呂雪鳳)は、プレゼンターから名前を呼ばれ、ステージに立つと「ハハハ」と笑い、喜びをこらえきれない様子。感謝を述べると、涙を見せた。シュエファンは歌仔戯(台湾オペラ)の出身の女優。取材エリアでは「歌仔戯の役者が賞をとるのは非常に難しい」と今回の受賞に感慨深げだった。
取材中にメディア賞の受賞が発表されると、シュエファンは大興奮で記者らに対し「あなた方はわたしの恩人です」と握手を求める場面もあった。
助演男優賞のチェン・レンショウ(鄭人碩)もホンチーと同様、制作スタッフをしていたところをチャン監督に抜擢されての出演。「この賞は励みになった」と喜びを見せた。同作では男性同士の過激なラブシーンも披露。相手役を演じたホアン・シャンホー(黃尚禾)も犠牲は大きかったと話し「シャンホーも賞をもらうべきだ」と共演者への賞賛を示した。
◇最優秀監督賞はツァイ・ミンリャン(蔡明亮)監督に
監督賞(最佳導演奨)は短編映画「無無眠」のツァイ・ミンリャン(蔡明亮)監督が受賞。同作は夜の東京の駅前や電車、大浴場が舞台。日本人俳優の安藤政信も出演している。「ツァイ監督は非凡な才能を再度発揮し、観客を異なる都市空間に誘い、時間の中を異なる速度での移動を感じさせた。身体同士が近づくゆっくりさ、電車が移動するゆっくりさなどあらゆる場面で欲望が表現されている」と評価された。
ツァイ監督は海外にいるため式を欠席したが、スタッフに託したコメントでは「嬉しすぎる。ありえない。審査員にご飯をおごります」とユーモア混じりに話し、会場を笑わせた。
◇台湾原住民を主人公にした「太陽的孩子」が観客賞受賞
観客の評価を基に決定される観客賞(観衆票選奨)には、チェン・ヨウジエ(鄭有傑)監督と勒ガー・舒米監督の「太陽的孩子」が選ばれた。(ガー=口へんに戛)
同作は家計を支えるため台北で働いていた台湾原住民(先住民)アミ族の女性が父親の病気を機に故郷に戻り、集落の豊かな自然を守るため奔走する姿を描いた。勒ガー・舒米監督の母親が実際に行った取り組みが基になっているという。
主演の阿洛・カー力亭・巴奇辣は、高評価を下してくれた観客に対し「すごく感謝」と笑顔。受賞は先住民にとって素晴らしいことだと話した。また、プレミア上映会後に多くの観客から感想を伝えられ、感動したエピソードも語った。(カー=上の下にト)
主演女優賞(最佳女主角奨)を獲得したのは、日本人女優の永作博美。チアン・ショウチョン(姜秀瓊)監督作品「さいはてにて やさしい香りと待ちながら」(寧静[口加][口非]館之歌)での演技が「人物に十分なバックグラウンドがない状態にもかかわらず、独特な個人的魅力と奥深く細部を正確に表現した演技で、役柄に生き生きとした魂を吹き込み、キラキラとした印象深い女性を作り出した」として評価された。同作は同映画祭で実施されたもう一つの部門、国際新人監督コンペティション部門で観客賞を受賞している。
記者から永作が選ばれた理由を聞かれたチェン審査員は、「作品を見てみてください」と述べ、演技が素晴らしかったことをほのめかした。
(後編に続く)
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