映画ログプラス 2021/07/28 18:00
小島秀夫、橋口亮輔監督、シシド・カフカら8名が絶賛!
カンヌ国際映画祭2019:監督週間で注目を集め、アカデミー賞2020では国際映画賞・ペルー代表に選ばれた新鋭メリーナ・レオン監督作品『名もなき歌』が7月31日(土)より東京:ユーロスペース他全国順次ロードショーとなります。公開を目前に控え、各界から8名のコメントが到着しました!
ゲームクリエイターの小島秀夫さんは「モノクロのTVサイズに抑制された映像で、貧困と混乱、絶望が現実であることを思い知らされる」、橋口亮輔監督は「新人監督の一作目は、世界に向けた最初の息吹き。 全てのカットに監督の確信を感じて勇気をもらうようだった」、ドラムボーカリスト・女優のシシド ・カフカさんは「終始フォトジェニックな世界観」などそれぞれの語り口で本作を絶賛。
また、ペルー在住のメリーナ・レオン監督から日本の観客に向けてのビデオメッセージも到着しました。本作『名もなき歌』に込めたメッセージや、溝口健二、小津安二郎、黒澤明、そして河瀬直美監督など、これまで影響を受けた日本の映画監督について語られています。
絶賛コメント続々到着!
誰も抗えない、声をあげられない、耳を傾けない。ただ弱者は押し黙り、歌うしかない。モノクロのTVサイズに抑制された映像で、貧困と混乱、絶望が現実であることを思い知らされる。“名もなき子守歌”を聴きながら、ラストで感じる無力感が決して耳から離れない。
小島秀夫 (ゲームクリエイター)
疎外された先住民。公的身分証明書がないため、そこに「いる」のに「いない」とされるが、このような「いない」とされる貧しい人たちを通じて儲けるのは、公職に就く裕福な人たちだ。当時のペルーの通貨はインティ。先住民言語で太陽を意味する。そして、作品冒頭に登場するハサミ踊りは、2010年にユネスコ無形文化遺産に登録された。先住民は、奪われるときだけ、そこに「いる」ものとして包摂される。
兒島 峰 (神奈川大学准教授 ラテンアメリカ研究)
キュアロン『ROMA /ローマ』の圧倒される美しさ、ディアス『立ち去った女』の高尚な静謐さ、あるいはイーストウッド『チェンジリング』の不条理な恐ろしさを想起させる『名もなき歌』。色を失った白黒の世界は、無数の希望が灼けつきた灰塵に見える。そんな世界のなかで、悲劇に見舞われた女とセクシュアリティを抑圧される男が手を取り合う。女性の新人映画作家が紡ぐこの抒情詩を見逃してしまうのは、あまりに惜しい。
児玉美月 (映画執筆家)
終始フォトジェニックな世界観 画角も色彩も限定されている中で、登場人物の時に激しく時に静かに揺れる心情が痛いほど真っ直ぐに伝わってくる
シシド・カフカ (ドラムボーカリスト・女優)
寓話であり、神話であり、悪夢のようである。美しいは残酷。残酷は美しい。白黒の映像がまるで冷たいメスのように心を裂いてくる。まだ明けない朝、窓を開け放ち、冷たい大気を吸い込んで宙に向かって息を吐く。新人監督の一作目は、世界に向けた最初の息吹き。 全てのカットに監督の確信を感じて勇気をもらうようだった。
橋口亮輔 (映画監督)
過去を呼び起こすモノクロームの映像美。盗まれた我が子を探す20才の先住⺠⼥性ヘオルヒナのひたむきな姿。彼⼥を⽀援するゲイの新聞記者。過酷な現実の中で人々が優しさと共感力でつながっていく。⼈種差別、格差、ジェンダー、多様なリアリティが交差する世界を描きだした監督の⼒量に脱帽
細谷広美 (文化人類学者 成蹊大学教授)
実際に起きたペルー先住民の嬰児誘拐事件をモノクロ・スタンダードで描き、ブニュエルの『糧なき土地』の崇高さに達する。世界のどこかにいる我が子のため母が歌う子守歌がアンデスの山に響き、観る者の胸を締めつける。
町山智浩 (映画評論家)
「名もなき歌」とは沈黙によって表現される哀歌である。先住民のヒロインは子を奪われた悲嘆を言葉では一切語らない。彼女に寄り添い、道行きをともにする記者もまたゲイとよばれる少数者だ。それぞれ苦しみを抱えた少数者どうしが「名もなき歌」に共振する時、この世の不条理に対峙する連帯のかたちが仄見える。それは腐敗しきった世界に対して、「別の視点から考えろ」という欺瞞を拒み、悲しむ者の側に立つ静かな闘いである。
真鍋祐子 (東京大学 教授)
■実際に起きた事件を基にした衝撃のドラマ
1988年、政情不安に揺れる南米ペルー。貧しい生活を送る先住民の女性、20才のヘオルヒナは、妊婦に無償医療を提供する財団の存在を知り、首都リマの小さなクリニックを受診する。数日後、陣痛が始まり、再度クリニックを訪れたへオルヒナは、無事女児を出産。しかし、その手に一度も我が子を抱くこともなく院外へ閉め出され、赤ん坊は何者かに奪い去られてしまう。夫と共に警察や裁判所に訴え出るが、有権者番号を持たない夫婦は取り合ってもらえない。新聞社に押しかけ、泣きながら窮状を訴えるヘオルヒナから事情を聞いた記者ペドロは、事件を追って、権力の背後に見え隠れする国際的な乳児売買組織の闇へと足を踏み入れるが―。
■現代社会のさまざまな問題を浮き彫りにした野心作
ペルー出身の女性監督、メリーナ・レオンの長編デビュー作となったこの作品は、かつて新聞記者だったメリーナの父が追った、実際に起きた事件に基づいて作られた。2019年カンヌ映画祭・監督週間で注目を集め、以来世界十数ヶ国の映画祭において作品賞他32部門で受賞。2020年アカデミー賞・国際長編映画部門ではペルー代表に選ばれ、ノミネートは逸したものの、その抑制を利かせた演出スタイル、モノクロ×スタンダードの画面に際立つヴィジュアル・センスは、新たな才能の誕生を実感させる。
赤ん坊を奪われた母親の悲哀と絶望、そして、孤独な新聞記者が内に秘めた苦悩と使命感を描いたこの作品は、貧困と格差、人身売買、民族差別とジェンダー差別、全体主義とテロリズムといった社会問題をも浮き彫りにし、それらが今の時代においても何ら変わっていないことを静かに提示してみせた野心作だ。
メリーナ・レオン監督ビデオメッセージ
公式HP
http://namonaki.arc-films.co.jp/
キャスト
へオルヒナ・コンドリ
パメラ・メンドーサ・アルピ
ペドロ・カンポス
トミー・パラッガ
レオ・キスぺ
ルシオ・ロハス
イサ
マイコル・エルナンデス
映画『名もなき歌』作品情報
監督: メリーナ・レオン
脚本: メリーナ・レオン、マイケル・J・ホワイト
製作: インティ・ブリオネス、メリーナ・レオン、マイケル・J・ホワイト
共同製作: ローランド・トレド、ラファエル・アルヴァレス、パトリック・ベンコモ、アンドレアス・ロアルド、ダン・ウェクスラー、ハマル・ツェイナル=ツァデ
撮影監督: インティ・ブリオネス
編集: メリーナ・レオン、マヌエル・バウアー、アントリン・プリエト
音楽: パウチ・ササキ
音響デザイン: パブロ・リヴァス
制作:ラ・ヴィダ・ミスマ・フィルムズ
共同制作:ラ・ムーラ・プロドゥクシオネス、MGC、ボード・カドレ・フィルムズ
提携制作:トーチ・フィルムズ
2019年/ペルー、スペイン、アメリカ合作/スペイン語、ケチュア語/モノクロ/スタンダード/5.1ch/ 上映時間:97 分
日本語字幕:比嘉世津子
配給:シマフィルム アーク・フィルムズ インターフィルム
後援:ペルー共和国大使館
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2021年7月31日(土)東京:ユーロスペース他全国順次ロードショー
https://news.goo.ne.jp/article/eiga_log/entertainment/eiga_log-86321.html