先住民族関連ニュース

先住民族関連のニュース

認否避ける国 浦幌アイヌ民族の歴史直視を サケ漁訴訟原告側「生活と誇り取り戻したい」

2022-08-31 | アイヌ民族関連
北海道新聞08/30 18:52 更新

先祖を供養する伝統儀式に参加するラポロアイヌネイションの差間正樹さん=21日、浦幌町
 十勝管内浦幌町のアイヌ民族団体「ラポロアイヌネイション」(旧浦幌アイヌ協会)が国などに地元の川でサケ漁を行う権利の確認を求めた行政訴訟で、「明治以降の開拓で根拠なく権利を奪われた」とする原告側の主張への認否を国側が避け続けている。訴訟の結論に歴史的経緯は影響しないとする国側に対し、札幌地裁も積極的に認否を求めておらず、同団体会長の差間正樹さん(71)ら原告側は「国も裁判所も、歴史を直視すべきだ」と訴える。
 「生活が失われれば文化は消える。川でサケを捕ることを生業とし、アイヌとしての生活と誇りを取り戻したい」。浦幌町でサケ定置網漁を営む差間さんは、こう力を込めた。
 幼少期から差別を恐れ、自らがアイヌ民族であることを口にしなかった。しかし、40歳を過ぎたころ「知らんぷりしていたら差別的な状況は変わらない」と思い立ち、現在の北海道アイヌ協会浦幌支部に入会。仕事の合間を縫って文化伝承活動に取り組んできた。
 2014年には浦幌から持ち出されたアイヌ民族の遺骨の返還を求めて北大を提訴。和解後、遺骨と共に返還された副葬品から漁網を修理する木製の網針を見つけ、目を見張った。「先祖は確かにこの川でサケ漁をやっていたんだ」。自分は浦幌十勝川流域に住み続けてきた集団(コタン)の一員だと自覚した。
 17年には米北西部のインディアントライブ(先住民の集団)を視察した。現地では先住民族が漁業委員会を組織し、サケ漁で生計を立てるとともに厳格な資源管理を徹底。自分たちの土地と資源を自分たちで管理する「夢にまで見た暮らし」がそこにはあった。
 同団体は20年8月に提訴。差間さんたちが取り戻したいものは、先住民としての誇りある暮らしだ。アイヌ民族のサケ漁は「明治以降の政府が強制的に禁止したため事実上できなくなっただけであり、(一定の慣習に法的効果を認める)『慣習法』を根拠とする」との主張は、先祖たちが長年にわたって生活してきたコタンを和人に根拠なく「侵略」されたという歴史認識をその基礎としている。
 しかし、国側は河川でのサケ捕獲を原則禁じた水産資源保護法などの現行法を根拠に原告側の権利を否定し、歴史的経緯の認否は「必要ない」と拒否。地裁は当初、国側に認否を促したが、昨春から担当する中野琢郎裁判長は今年5月の第8回口頭弁論で「裁判所が認否を強制する話ではない」と述べ、近く結審する可能性にまで言及した。
 差間さんは「アイヌ民族を先住民族と認めながら歴史や先住権に向き合わないなんてひきょうだし、悔しい」と国の態度を批判。原告弁護団長の市川守弘弁護士(旭川)は「原告に守られるべき権利があるかどうかは現行法の文言のみからは見えてこない。裁判所には、歴史的事実から目をそらさない訴訟指揮を求めていきたい」と話している。
 次回、第9回口頭弁論は9月1日午後2時から。原告側は閉廷後の午後3時から、札幌市教育文化会館(中央区北1西13)で訴訟の学習会を開く。参加希望者は直接会場へ。無料。(金子文太郎、角田悠馬)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/723848/

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

外界との接触絶ち約26年……先住民部族最後の生き残り男性が死亡 ブラジル

2022-08-31 | 先住民族関連
BBCニュース2022年8月30日
ヴァネッサ・ブッシュルーター、

人類学者ヴァンサン・カレリ氏がかつて撮影した映像に男性の顔がわずかに映っていた
ブラジルで外界と接触を絶っていた先住民部族の最後の1人が死亡した。ブラジルの国立先住民保護財団(FUNAI)が28日、発表した。
死亡した先住民の男性は、ブラジル北西部ロンドニア州にあるタナル先住民地区で約26年間、1人で暮らしていた。今月23日、小屋の前のハンモックで死亡しているのが発見された。暴力を受けた形跡はなく、自然死と見られている。推定60歳だった。
男性の名前は不明で、複数の深い穴を掘っていたことから、「穴の男」などと呼ばれていた。穴には、動物の捕獲用のものもあれば、身を隠すためとみられるものもあった。
男性の部族のほとんどは1970年代に、牧草地を拡大しようとする違法伐採業者らに殺害された様子。1995年に同じ部族の6人が違法採掘業者に殺害されたため、この男性が部族唯一の生存者となった。
ブラジルの国立先住民保護財団(FUNAI)が、男性の存在に初めて気づいたのは1996年。それ以降、男性の安全確保のため周辺地区を定期的にパトロールしていた。
こうしたパトロールの一環で、FUNAIの職員アルテア・ホセ・アルガイエ氏が23日に男性の遺体を発見した。植物でできた小屋の前で、ハンモックに横たわっていた男性の体は、インコの羽で覆われていたという。
先住民族に詳しいマルセロ・ドス・サントス氏は現地メディアに、自分の死を悟った男性が、鳥の羽を自分の身に着けたのではないかと話した。
「死を待っていたようだ。暴力を受けた様子はなかった」とサントス氏は言い、男性が死亡したのはおそらく遺体発見の40~50日前だっただろうと述べた。
ブラジル当局によると、タナル先住民地区に外部から何者かが侵入した形跡はなく、小屋の中も荒らされていなかった。何らかの病気が死因だったのか確認するため、検視を行う方針という。
外部の人間との接触を避けていた男性が、どの言語を使い、どの民族集団に属していたかは分かっていない。
FUNAIは2018年、密林で男性と偶然出くわし、撮影に成功している。斧(おの)のようなもので木をたたく様子が映っている。
男性の目撃情報はこれ以降はなかったものの、FUNAIの職員は男性による複数の小屋や、男性が掘ったとみられる深い穴を複数発見している。
穴の一部には、先端を鋭くして槍(やり)状にした棒が底に仕込まれていた。イノシシなどを狩りで追い込むわなだったのではないかとされている。
男性の遺体を発見したFUNAIのアルガイエ氏によると、男性がこれまでに作った50以上の小屋の中にもすべて、深さ3メートルの穴があったという。
アルガイエ氏は穴について、男性にとって何かスピリチュアルな意味合いを持つのではないかと考えている。他方、身を隠すためのものだったのではないかという意見もある。
これまで周囲で見つかった証拠から、男性はトウモロコシやキャッサバを植え、ハチミツを集めていた。ほかにも、パパイヤやバナナといった果物も採集していた。
ブラジルの憲法は先住民に対して、自分たちの伝統的な土地で生活する権利を認めている。男性が暮らしていたタナル先住民地区に外部から入ることは、1998年から規制されてきた。
広さ8070ヘクタールのこの先住民地区を取り巻く地域は、農地として使われている。農場主など周囲の地主たちはこれまで、先住民地区への立ち入りが禁止されていることに、強く反発してきた。
2009年にはこの地域のFUNAI駐在所が攻撃され、現場からは薬莢(やっきょう)が見つかった。男性と、男性を守る財団職員への警告だったとみられている。
先住民地区への立ち入り制限は毎年見直しの対象になる。制限が続くには、先住民が居住している記録が求められる。
男性の死亡を受け、先住民の権利保護団体は、タナル先住民地区を恒久的な保護措置の対象にするよう求めている。
ブラジルには約240の先住民部族がいる。その多くは違法の採掘や伐採、農地開発などの業者に脅かされていると、先住民の権利保護団体「サバイバル・インターナショナル」は指摘する。
ブラジルの先住民が直面する危険については、昨年11月に英グラスゴーで開かれた国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で注目を集めた。先住民の環境保護活動家チャイ・スルイさんが、開会式で森林保護の重要性について熱弁した後、チャイさんは大勢から殺害すると脅された。
(英語記事 'Man of the Hole': Last of his tribe dies in Brazil)
https://www.bbc.com/japanese/62710641

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

学生がアイヌ文化振興策発表【平取】

2022-08-31 | アイヌ民族関連
日高報知新聞2022.08.30

【平取】22日から町内で開かれていたアイヌ文化に理解を深める講座「大地連携ワークショップ夏㏌びらとり」(町主催)は、最終日の26日、参加者が6グループに分かれて町やアイヌ文化振興策について発表し、5日間の日程を終えた。
 全国16大学の大学生、大学院生のほか、米国と台湾から留学生2人を含む計23人が参加した。講座では、萱野茂二風谷アイヌ資料館、二風谷アイヌ文化博物館やアイヌ古式舞踊体験、木彫・アットゥシ織体験、イオルアイヌ文化ガイドツアーのほか、さまざまなアイヌ文化を体験した。
 最終日の26日は、6グループに分かれて学生の目線で平取町やアイヌ文化振興策について発表した。
 審査の結果1位になったCグループ(沖津茉奈さん、原田ひかるさん、宮田果奈さん、木村麟之輔さん)は「アイヌサークルの設立と平取町の大地連携プロジェクト」と題し発表。私営資料館の課題を挙げた上で、アイヌサークルの設立や平取町の大地連携プロジェクト、インカレのサークル(他大学の学生も参加可能)、人件費削減、学生の経験になる、持続性があるなどを提案した。活動内容として①博物館の清掃②案内表示などの外国語訳③サークルでの講義④SNSでの広報⑤商品企画提案(ニシパの恋人グミの商品案提案)。
 今後の展望として、北海道大学での公認サークル化を目指し活動。Zoom・VRを活用し、現場に劣らない活動を提供。ウレシパクラブを参考に法人化の検討などを示した。
 2位のAグループはキッチンカーを使い~二風谷らしさを活かしてアイヌ文化を広めよう~と発表。二風谷から出発して北海道各地でアイヌ文化を盛り上げたい。アイヌ料理のキッチンカーを平取の特産品とコラボして出す。町が支援金計画を立案し経営主体となる。民間からの事業者を募り、具体的なメニューも提案した。3位のEグループはフィールドキャンプ「びらとりに泊まる・つながる・深まる」。4位のFグループは「美味しいアイヌ土産」(現代の人に合わせたアイヌ料理を土産にする)。5位のDグループ「アイヌの世界観伝承企画」(イヨマンテ)。6位のBグループはアリキキチセ(伝承者育成事業受講生を主とする伝統工芸後継者の滞在施設)などそれぞれ発表した。各グループには、賞品として、関根真紀さんのTシャツ・タオル・ハンカチタオル(1~3位)、藤谷るみ子さんのキーホルダー(4位)、尾崎友香さんのトートバッグ(5位)、川上ききょうさんのイケマの魔除け(6位)が贈られた。
 活発な質疑応答や教職員も助言を加えるなど有意義な発表となり、町も活性化へのヒントを得れる講座となった。
http://www.hokkaido-nl.jp/article/26370

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

世界の「希少言語」100以上を調査 言語オタクによるマニアックなガイドブック(レビュー)

2022-08-31 | 先住民族関連
ブックバン8/30(火) 7:00配信

『あなたの知らない、世界の希少言語』ナショナル ジオグラフィック[編集]ゾラン・ニコリッチ[著]藤村奈緒美[訳]山越康裕[監修]塩原朝子 [監修](日経ナショナルジオグラフィック社)
世界中のあまり知られていない100以上の言語を紹介した一冊『あなたの知らない、世界の希少言語―世界6大陸、100言語を全力調査! ―』はどんな本なのか? 世界の辺境を旅するノンフィクション作家の高野秀行さんが寄せた書評を紹介します。
 ***
 宣言するのも恥ずかしいが、私は言語オタクである。アニメ、鉄道、アイドル、歴史……と、今やほぼあらゆるジャンルにオタクがいる時代だが、「言語オタク」の存在はまだよく知られていない。ましてやオタクの書いた言語本など、翻訳ものも含めて、今まで見かけたことが全くと言っていいほどない。言語本は言語学者かその言語の専門家が書くと相場が決まっているから、世界的にも珍しいのだろう。
 その希少な一冊が本書だ。著者は、かつて4つの主要言語をもつ国として知られていた旧ユーゴスラビア出身で本人もおそらくマルチリンガルだと思うが、「言語学に関してはあくまで素人」と断っている。
 鉄道オタクに「乗り鉄」や「撮り鉄」などさまざまあるように、言語オタクも人によって萌えポイントが異なる。「語源」に萌える人もいれば、「文字」に萌える人もいる。私はどんな言語も一度は現地で実際に使って(喋って)みることに萌えるから、「乗り鉄」に近いのかもしれない。あと、マイナーな言語も大好き。
 本書の著者の萌えポイントは極めて独特だ。タイトルには「希少言語」とあるからそれだけなら私に近いが、著者が好きなのはただのマイナー言語ではない。「周りを多数派の言語に取り囲まれたマイノリティの言語」、言語学では「言語島」と呼ばれるジャンルである 。歴史的に強い言語(民族)に圧迫されながらも、なんとか生き残ってきた「サバイバー言語」ということになる。
 そんな言語を世界各地から100も集めてきているのだから、さすがオタク、気合がちがう 。こういうコレクション的な作業を、言語学者はやりたがらない。
 中にはスペインとフランスにまたがって暮らしているバスク人のバスク語(既知のどの言語とも系統が不明な孤立言語)やイギリスのスコットランド語といった比較的有名な言語もあれば、アフリカの狩猟採集民ハッザ人が話すハッザ語や、シルクロードの隊商民として知られるソグド人の言語(ソグド語)の末裔で、キルギス、ウズベキスタン、カザフスタン、ウズベキスタンの国境地帯にひっそりと残っているヤグノブ語など、私でも聞いたことがない言語が続々と登場する。
 注目は日本の言語。まずアイヌ語。ロシアのサハリンにも100人ほど話者(アイヌ民族)がいるとか、最近の遺伝的研究では、トリンギット人などアラスカとカナダの太平洋沿岸の先住民と近い系統関係をもつことがわかっているといった、マニアックな情報に唸らされる。
 いちばん驚いたのは八丈語。伊豆諸島八丈島で話されている言葉だ。現在、海外の言語学者の間では、「日本語」は10前後の言語からなる「日本語族」もしくは「日琉語族」とされ、日本国の標準語である日本語のほか、奄美諸島や沖縄、伊豆諸島の言語が「方言」でなく「別言語」として認識されている。そこまでは私も知っているのだが、八丈語が沖縄の大東諸島で話されているなんて本書を読むまで知らなかった。もともと無人島だったこの島に、明治期に砂糖の生産のため八丈島から移民がやって来た。その結果、今でも八丈語が使用されているのだという。
 このような愛と執念の結実とも言うべき細かい目配りが世界中になされていて、これほど有益なガイドブックはない。パッと見た限り、言語学的にも間違ったことは書かれてないように思えるし、本書を参考にして、さらにネットで細かく検索できるのが嬉しい。
 学者の本とは異なり、難しい言語学用語もほとんど使用していないから、一般の人たちがパラパラ見て「へー、こんな言語があるんだ」と世界言語旅行を楽しめるはずだ。
 言語オタクにもそうでない人にもお勧めできる一冊である。
[レビュアー]高野秀行(作家)
たかの・ひでゆき
新潮社 Foresight 2022年8月9日 掲載
https://news.yahoo.co.jp/articles/36a0838483b7c86f55574829b49782b04906077a

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

世界に存在する「未接触部族」とは

2022-08-31 | 先住民族関連
10MTV2022/08/31 00:00
 「未接触部族」とは、「文明社会から隔絶された場所に住む人々」です。しかし、より正確にいうと「外界との接触を回避、もしくは拒否している人々」であり、「自ら進んで孤立した生活を続ける人々」ともいえます。
 なぜ彼らは、外部社会との未接触を選択し続けているのでしょうか。そして、どのような人々なのでしょうか。
●「未接触部族」の特徴
 まずは、「未接触部族」の特徴を見てみましょう。
 「未接触部族」は、「非接触部族」「孤立部族」とも呼ばれ、世界に100以上の部族がいると推測されています。主にペルー・ブラジル・ボリビアの国境付近をはじめとした密林、インドネシア周辺やインド沖の島などに住んでいるといわれています。
 そして、「未接触部族」が文明社会と距離を置く理由には、一方的に奴隷や人身売買の被害者とされた負の歴史や、金の採掘や森林伐採など資源開発という名目の略奪、文化や環境の破壊などが挙げられます。
 また、たとえ文明社会側に悪意はなくとも、外部と接触することではしかが流行し部族の半数以上が亡くなったり、一般的な風邪でも致死にいたったりするなど、外部の病原菌に対する免疫力が極端に弱いことから、感染症防止といったことも不干渉の理由となっています。
●有名な「未接触部族」・3選
 では具体的に、「未接触部族」はどのような場所に住み、どのような生活をしているのでしょうか。また、外部との接触による事件などはないのでしょうか。居住地域や推定人口、生活スタイルや近年の接触による事件などとあわせて、有名な「未接触部族」・3選を紹介します。
(1)センチネル族
居住地域:インド洋北東部のベンガル湾に浮かぶ北センチネル島(島はほとんどが密林)
推定人口:50~400人(正確には不明)
特筆事項:警戒心の強さ。外部からの接触を徹底的に拒み、外部からのあらゆる接触に弓や石で応じる。
生活スタイル:狩猟や釣りで食料を確保し、火をおこして自給自足の生活を過ごしているとみられる。沿岸の浅い海域を移動するためにカヌーを使うが、オールは使わず長い棒で海底を押して操作する。
言語:かつて言語を聞いた近隣の島民は理解できなかったとされる。
インド政府およびアンダマン・ニコバル諸島当局の政策:保護政策をとっている。北センチネル島を治外法権と考え、干渉しない方針を示している。
近年の接触による事件:2004年にスマトラ島沖地震の救援物資輸送ヘリコプターが攻撃される。2006年に島に漂着したインド人2名が殺害される。2018年に接触を試みたアメリカ人の宣教師が殺害される。なお、後者2件は遺体回収も不能。
「センチネル」の意味:英語で「番兵」「見張り」
(2)ヤノマミ族
居住地域:ブラジルのアマゾン熱帯雨林からベネズエラのオリノコ川流域全般
推定人口:1万人以上(正確には不明だが「大規模の未接触部族」とされている)
特筆事項:アマゾンで最も獰猛な先住民といわれる。100以上の部族、氏族で村ごとに別れて暮らし、民族内部での戦争状態が断続的に続いている。理想像は勇者(ワイテリ)。
生活スタイル:狩猟と村の防衛は男たちの仕事、それ以外のほとんどは女の仕事と、男女の役割分担が明確に分かれている。男は女に対して支配的かつ暴力的だが、女も他の村に誘拐されるよりはよいとの思いなどから、男に優しさよりも強さを求めている。酒を造って飲む文化はないが、ハイテンションで深夜まで歌い、踊る。アマゾンの他の部族がシャイであることと比べて感情の振り幅が大きく、喜怒哀楽の表現も豊か。
言語:外部に言語理解者がいる(探検家・医師・武蔵野美術大学名誉教授の関野吉晴氏もヤノマミ語話者の一人)。
ブラジルの政策:土地が法的に保護されているなど、保護政策をとっている。
近年の接触による事件:2016年に違法採金者6人がヤノマミ族に弓矢で射殺される。2018年に居住地近くの金の採掘による水銀中毒被害の調査結果が発表される。2022年にベネズエラ軍とのWi-Fiをめぐる争いでヤノマミ族4人が死亡した。
「ヤノマミ」の意味:ヤノマミ語で「人間」
(3)マシコ・ピロ族
居住地域:ペルーのマヌー国立公園
推定人口:600~800人(正確には不明)
特筆事項:外部との接触は友好的な場合も多いが、時に暴力的にもなる。近年では密林外での目撃が増えている。
生活スタイル:泳ぎは苦手だが、木登りには長けている。食料は狩猟と採取でまかなっている。竹筒の中で果実を発酵させ、酒を造る。
言語:周辺の先住民族と共通の言語体系を持つ。そのため、外部者とも話すことができる。
ペルーの政策:保護政策をとっている。
近年の接触による事件:2010年に10代の若者が槍で襲われて負傷する。2012年に地元の観光ガイドが竹矢で殺害される。2014年に弓矢で武装した200人余りのマシコ・ピロ族の一団が近隣の2つの村を襲撃した。
「マシコ」の意味:周辺先住民族の言葉で「野生人」「野蛮人」※そのため、当人たちは「マシコ」と呼ばれることを嫌い、「兄弟」「同郷の人」を意味する「ノモレ」を好む。
●「未接触部族」の不変と変化
 世界中を調査・探検したドキュメンタリーを発表し続けているナショナルジオグラフィックは、2000年代以降もブラジルのアマゾン熱帯雨林での新たな「未接触部族」が発見されていることを発表しています。そして、「未接触部族」がヘリコプターに向かって弓矢を構える理由を「邪魔をせず、そっとしておいてほしい」という“健全な抵抗のサイン”として紹介しています。
 他方、ペルー政府の保護官ポンシアーノ氏は、「未接触部族」であるマシコ・ピロ族との接触時のルールとして、(1)ほしがる物を与える、(2)長く話しすぎない、(3)周辺住民から距離を置くように警告する、(4)罠を避けるために会う場所を変える、(5)繊細な話題に触れない――を挙げ、「大事なのは、交流とスケジュールにおける規律です。これらのシチュエーションでは、言葉に気を付けなければなりません」と述べています。
 国家を越えて地球規模で一体化が広がるグローバリゼーションが加速している現代ですが、グローバリゼーションは単なる一体化では不十分です。グローバリゼーションを進める際に絶対におろそかにしてはいけないことは、多様性を尊重し認めあうことです。
 地球規模の環境変化や社会変化が起こっている現代において、「未接触部族」の不変を尊重し見接触という交流を続けると同時に、ときとして彼らが希望する変化を受け入れて新たな共存をそれぞれの立場で考えていくことが、多様な人々に求められているように思います。
<参考文献・参考サイト>
・「この地球に生き続けるためにヤノマミ・アナザーストーリー」『BE-PAL』(2021年7月号、関野吉晴著、小学館)
・「初めてのヤノマミの村へ」『わたしの外国語漂流記』(関野吉晴著、河出書房新社編、河出書房新社)
・宣教師を殺害したインド孤立部族、侵入者拒む歴史│日経ナショナル ジオグラフィック
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/18/113000522/
・「文明未接触の島」どう守る 旅行者接近を懸念 - 産経新聞
https://www.sankei.com/article/20190111-A6WALY5KK5JSRDYY7JPRO5MDRQ/2/
・アマゾンの「孤立部族」を偶然撮影、部族名も不明│日経ナショナル ジオグラフィック
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/122600496/
・森林伐採の危機、アマゾン孤立部族│日経ナショナル ジオグラフィック
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/3761/
・「非接触部族」マシコ・ピロ族、頻繁に出没の謎│日経ナショナル ジオグラフィック
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/b/101900042/?P=1
・アマゾンのヤノマミ族、希少な村に迫る「魔の手」│日経ナショナル ジオグラフィック
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/112500452/?P=1
https://news.goo.ne.jp/article/10mtv/world/10mtv-3534.html

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アイヌ文化を地域で生かせ 全国の学生ら平取のワークショップで発表

2022-08-30 | アイヌ民族関連
北海道新聞08/30 05:00

アイヌ文化を生かした平取町の活性化策について発表する大学生ら
 【平取】全国の大学生や院生が、アイヌ民族の踊りや料理を地元の工芸家や保存会から教わる講座「大地連携ワークショップ」(町主催)が町二風谷地区で22日から5日間行われ、23人が参加した。最終日の26日は学生らが六つの班ごとに、アイヌ文化を生かした地域活性化策を発表した。
 同講座は2013年度から毎年開催。昨年度から夏と冬の2回に増やしたが、新型コロナウイルス禍で昨夏は中止し、冬はオンライン形式で実施した。
 26日は班ごとに、沙流川歴史館で町民らに向けた発表会を開いた。《1》キッチンカーでアイヌ料理や工芸品を販売《2》大学生がサークルをつくり、町内の資料館での多言語案内板の設置や商品開発に協力《3》アイヌ民族の踊りや工芸体験を楽しめるキャンプを企画し、アイヌ文様をデザインしたキャンプグッズを販売―といった提案があった。
 発表を聞いた遠藤桂一町長は「学生の考えを町が実行するのも一つの手法だが、皆さんと一緒に実践できる制度もつくりたい」と話した。立命館アジア太平洋大(大分県別府市)1年生で米国から留学中のエイブリー・ロングスドーフさん(19)は「外国では和人の文化しか知らない人が多い。今回の体験を通し、アイヌ文化は生きていて、真剣に守らなければいけないと思った」と語った。(杉崎萌)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/723438/

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

目の前の動植物から学ぶアイヌ文化 帯広の各施設に名前や生活知る「仕掛け」

2022-08-30 | アイヌ民族関連
北海道新聞08/30 05:00

野草園のパネルに表示されたQRコードを読み込む観察会の参加者
 帯広市緑ケ丘公園内で、アイヌ語名が表示された動植物のパネルを見たことがあるだろうか。園内の帯広百年記念館とおびひろ動物園、市野草園を「アイヌ文化とのふれあいゾーン」と位置づけ、目の前の動植物とアイヌ文化を結びつけて学べる仕掛けが作られている。
 パネルには写真やアイヌ文化にまつわる解説文、QRコードが掲示され、園内に20枚ほどある。昨年秋から今年にかけて設置され、スマートフォンなどでコードを読み込むとさらに詳しい解説が載ったホームページ(HP)が表示される。
 百年記念館は8月、ゲーム形式でアイヌ文化にまつわる野草園の動植物を探す自然観察会を開いた。食用や薬に使う「食文化」、衣類や生活用品などの「物質文化」、まじないや魔よけの「精神文化」に分け、指定された動植物を参加者12人が探した。
 一緒に園内を歩くと、オオウバユリやギョウジャニンニクのパネルと植物を発見。池のそばに立つオヒョウのパネルには、アイヌ民族の伝統的な衣装「アットゥシ」の写真がある。QRコードからHPを見ると、アットゥシの作り方が分かり、「この木から繊維を取るんだ」と想像が膨らむ。同館の池田亨嘉(ゆきよし)学芸員(58)の解説も加わり盛り上がった。足元の小さな植物ラベルにもアイヌ語名が添えられていた。池田学芸員は「いつもの散歩道がもっと豊かに変わります」とPRする。
 おびひろ動物園にはエゾタヌキやエゾシカなど4カ所にパネルがあり、QRコードからは言い伝えや生態が分かる。山川良則管理係長(57)は「触れることの少なかった名前や生活を知れた。皆さんにも知ってもらえたら」と話す。
 さらにアイヌ文化を知りたい人は百年記念館へ。アイヌ民族文化情報センター「リウカ」は民具、標本のほか、論文から一般書、絵本までが並び、北海道の歴史や動植物の資料もあるので幅広く調べられる。常設展示室はアイヌ民族関連の展示物40件と関連づけたモバイルガイドも用意。解説のほか、踊りや楽器「ムックル」の動画も見られる。(小久保友香)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/723428/

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

タクシー1台4千円で余市観光楽しんで ワイナリーやアイヌ交易拠点など周遊

2022-08-30 | アイヌ民族関連
北海道新聞08/30 05:00
 【余市】町は、アイヌ民族と江戸商人の交易拠点だった「旧下ヨイチ運上家」と、アイヌ民族の祭具や生活民具など約200点の資料を展示する「よいち水産博物館」、人気の高い町内のワイナリー巡りをセットにした観光タクシー周遊事業を始めた。
 国からのアイヌ政策推進交付金18万円を充てる。昨年度実施予定だったが、新型コロナ感染拡大の影響で本年度に延期された。
 ルートはニッカウヰスキー前を出発し、余市ワイナリーとオチガビワイナリーを見学後、よいち水産博物館、旧下ヨイチ運上家などを巡り、JR余市駅で降りる。所要時間は約2時間半を想定する。
 タクシーの乗車は1台最大4人で、料金は乗車人数にかかわらず1台4千円。期間は11月30日までだが、60回の運行で終える。アイヌ関連2施設が休館する月曜は運行しない。
 事前予約が必要。問い合わせ、申し込みは小樽つばめ交通余市支店、電話0135・23・3111へ。(松嶋加奈)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/723363/

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アイヌタイムズ、創刊25年 若い人に受け継ぐまで 購読者減でも「発行続ける」 /北海道

2022-08-30 | アイヌ民族関連
毎日新聞 2022/8/30 地方版 有料記事 1707文字
アウタリ オピッタ ウトゥラ・アン ワ アリキキ・アン ロ!
 アイヌ語を現代に復活させ、世界に発信することを目的とした団体「アイヌ語ペンクラブ」が発行する新聞「アイヌタイムズ」が今年、創刊から25年を迎えた。カタカナとローマ字表記のアイヌ語でニュースを掲載。同クラブの会長で「萱野茂二風谷(にぶたに)アイヌ資料館」(平取(びらとり)町)の館長を務める萱野志朗さん(64)は「アイヌ語を後世に伝えるためにも発行を続けたい」と意気込む。【真貝恒平】
 「こんなに分厚くなった」。萱野さんが手にする厚さ十数センチのファイルには、創刊号から今年6月に発行した第77号までのアイヌタイムズが収められている。A4判12ページ。創刊から数年は年4回、現在は年2~3回発行している。
この記事は有料記事です。 残り1375文字(全文1707文字)
https://mainichi.jp/articles/20220830/ddl/k01/040/055000c

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

廃校での映画祭、25回で幕 アイヌ特集など9本上映 北海道・新得

2022-08-30 | アイヌ民族関連
毎日新聞 2022/8/29 09:28(最終更新 8/29 09:28) 1237文字

空想の森映画祭のポスターの横で来場を呼びかける藤本幸久監督=北海道新得町で2022年8月18日、鈴木斉撮影
 北海道新得町在住の映画監督、藤本幸久さん(68)が1996年から毎年、町内の廃校小学校でドキュメンタリー映像を上映する「空想の森映画祭」が、25回目となる9月17~19日の開催で幕を下ろす。今秋から「世界の先住民と先住権」をテーマに、北米などを回る大掛かりな映画製作に力を入れるためで、最後の映画祭に向け、「やり残したことをやっておきたい」との思いを込めて準備を進めている。【鈴木斉】
 映画祭は藤本監督が新得町に移住した95年の翌年から、新型コロナウイルスの影響で中止した2020、21年を除いて年に1回、開催。「やり残したことを」と取り組む今回は、自身も撮影を進めるアイヌ民族に関係する映画特集と国内のドキュメンタリー映画界で著名な原一男監督の作品を中心に計9本の映画と映像を上映する。
 17日はアイヌ特集として、サケ漁を通じて先住権を考える映画などのほか、アイヌ文様に焦点を当てたファッションショー、アイヌ民族バンド「ニンチュプ」のライブ。18日は原監督特集で「極私的エロス・恋歌1974」(74年)「ゆきゆきて、神軍」(87年)などを上映する。原監督は初日から現地入りする予定だ。
 最終日となる19日は「戦争と平和の最前線」と題し、沖縄・宮古島ピースアクション実行委員会の清水早子代表が講演。新基地建設の現状などを20年間にわたって共同取材してきた藤本監督と影山あさ子監督(札幌市)が、沖縄戦後史を映像とトークで報告する。各映画とも上映後は監督や関係者と参加者が語り合う場を設ける。
 16日は前夜祭としてアイヌ遺骨返還活動に取り組んだ浦幌町のラポロアイヌネイション(旧浦幌アイヌ協会)の姿を追ったドキュメンタリーも上映する。
 会場の旧新内小(新内ホール)の校庭にテントを持ち込み、宿泊することも可能。藤本監督は「小さな校舎での映画祭だが、その小ささを大事に、出会いの場にしたいとの思いで続けてきた。気軽に来てほしい」と話す。
 入場料は1プログラム券が1500円、1日通し券が2000円、3日間通し券が3000円で、高校生以下は無料。前夜祭とさよならパーティーは各1000円(1ドリンク、軽食付き)。詳細はホームページ(http://www.kuusounomori.com/)か、藤本監督(090・8278・6839)。
上映予定のドキュメンタリー作品
16日(前夜祭) 18時半=「ホシッパアンナ―先祖の魂 故郷へ還る」(五十嵐貴博監督)
17日 10時=「八十五年ぶりの帰還 アイヌ遺骨 杵臼コタンへ」「アイヌプリ埋葬・二〇一九・トエペッコタン」、13時半=「カムイチェプ サケ漁と先住権」(藤野知明監督)
https://mainichi.jp/articles/20220829/k00/00m/040/045000c

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アイヌ民族文化祭2022

2022-08-30 | アイヌ民族関連
Domingo8/28

開催日時
2022年9月3日(土)
13:00~17:15 (12:30開場)
概要
北海道アイヌ協会主催による「アイヌ民族文化祭2022」が釧路町公民館で開催されます。
この文化祭は、毎年道内各地で開催しているもので、今年度で35回を迎えます。2022年度は、アイヌ逓送人吉良平治郎の殉職から100年を迎えることから、吉良平治郎の実績や当時のアイヌ民族が置かれた状況についての講演、演劇上演、アイヌの芸能音楽に関する講演、国の重要無形民俗文化財に指定されているアイヌ古式舞踊の披露が内容となります。
アイヌ民族の文化を知ることができる貴重な催しですので、是非この機会にご参加お待ちしております。
[定員]130名
[申込方法]公益社団法人北海道アイヌ協会に電話でお申込みください
定員に達していない場合は当日受付可能です
※イベントの開催状況につきましては、主催者様の公式サイトを必ずご確認ください。
プログラム
ポスター
会場
釧路町公民館
主催者
(公社)北海道アイヌ協会
お問い合わせ
公益社団法人北海道アイヌ協会
0112210462
概要引用元: 釧路町
※内容は予期せず変更になる場合がございます
https://domingo.ne.jp/event/31659

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

極北の息吹、克明に 星野道夫 生誕70年展 市川市文学ミュージアム /千葉

2022-08-30 | 先住民族関連
毎日新聞 2022/8/30 地方版 有料記事 495文字
 アラスカの雄大な自然や野生動物、先住民族の暮らしを写真や文章で表現し続けた写真家、星野道夫さん(1952~96年)の作品展「生誕70年記念 星野道夫展 oneness―いのちの循環―」が、出身地の市川市文学ミュージアム(同市鬼高1)で開催されている。9月4日まで。【真田祐里】
 星野さんは同市南八幡生まれ。慶応大在学中、アラスカの先住民族が住む村の空撮写真に魅せられ、20歳でアラスカを訪問。こ…
この記事は有料記事です。 残り297文字(全文495文字)
https://mainichi.jp/articles/20220830/ddl/k12/040/062000c

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

一度は一掃されたはずの違法な採鉱がアマゾン熱帯雨林で再び勢いを増している理由(後編)

2022-08-30 | 先住民族関連
ニューヨーク・タイムズ(米国)2022.8.29

熱帯雨林と先住民の生活を脅かす採鉱を推し進める、実業家・政治家のロドリーゴ・マーティンズ・デ・メロ Photo: Victor Moriyama / The New York Times
一度は一掃されたのに…
ここ最近の、ブラジル全土で急増する違法採鉱は、前例がないわけではない。1980年代のゴールド・ラッシュは、いまと非常によく似た危機をもたらした。
報道によれば、国際的な圧力を受け、ブラジル政府は滑走路数十本を爆破したり、鉱夫たちの投獄や強制送還、ヤノマミ族の土地での数ヵ月にわたる上空飛行禁止措置などの対応により、大半の違法採鉱の息の根を止めたという。
今日(こんにち)の違法採鉱に対峙するためには同様の戦術をとらなければならない、と多くの法執行官たちが口をそろえる。しかし、ボルソナロ大統領のもとでは、環境問題や先住民問題よりも規制のない経済発展を優先させてきた行政により、保護政策が骨抜きにされているという。
2018年、退役陸軍大尉のボルソナロは、極右候補として大統領選に出馬した。彼の公約は、環境保護規制の緩和、それも特にアマゾン流域の環境保護規制を緩和することによる、ブラジル農業関連経済の強化であった。
残り: 3417文字 / 全文 : 3850文字
この記事は会員限定です。
https://courrier.jp/news/archives/299053/?utm_source=article_link&utm_medium=longread-lower-button&utm_campaign=articleid_299049

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

人体に有害な濃度が検出 違法採鉱で垂れ流される「水銀」がアマゾンの河川を蝕んでいる(前編)

2022-08-30 | 先住民族関連
ニューヨーク・タイムズ(米国)2022.8.29

先住民の住む保護区域に違法につくられた採鉱現場 Photo: Victor Moriyama / The New York Times
アマゾンの熱帯雨林は、何百億トンもの二酸化炭素を吸収するとともに、生物多様性の宝庫でもあり、地球全体にとって重要な場所だ。しかし近年、開発による破壊が後を絶たず、環境への影響が懸念されるのみならず、先住民の生活環境にも大きな打撃を与えている。
問題の一つが、ブラジルにおける金やスズの違法採鉱だ。採鉱によって先住民の生命線である川は壊され、有毒物質が垂れ流しにされる。そして、違法であるのに、取り締まりは機能していない。米紙「ニューヨーク・タイムズ」が、違法採鉱の闇に切り込む。
熱帯雨林に走る無数の「ひび割れ」
上空750m超から見ると、その汚れた滑走路は、どこまでも続くかのような熱帯雨林に走る、一筋のひび割れにすぎない。その周囲を取り囲むのは泥だらけの採鉱場であり、そこから川底へと有毒な化学物質が流れ出ている。
この滑走路の所有者は、ブラジル政府である。保健局が付近の村に住む先住民の人々に接触するには、これが唯一の手段だ。ところが、この滑走路を違法採鉱者たちが横取りし、道路のない地域への小型航空機による機材・燃料輸送に利用している。そして、他の航空機が近づくと、滑走路に燃料容器をずらりと並べて着陸不能にするのだ。
「あの滑走路は、今はもう鉱夫たちのものです」。先住民保健局職員のジュニオル・エクラリはそう語る。
鉱夫たちは、付近にさらに4本の滑走路を違法に建設した。ヤノマミ族の土地として保護されていることになっているこの地域に、彼らはあまりにも急激に違法採鉱を拡張させたので、犯罪行為が跋扈(ばっこ)して取り締まりもきかず、公務員たちが怖がって足を踏み入れなくなっている。
だがこれは、規模としては小さいほうだ。違法滑走路群は無数にあり、アマゾン熱帯雨林の最奥部にまで金とスズ鉱石の違法採鉱は広がろうとしている。青々とした密林の風景の中に穿たれたこれらの滑走路は、巨大な犯罪ネットワークの一部であり、大半が摘発を受けないまま操業している。ブラジル政府の規制・執行当局(軍も含めて)が見て見ぬふりをしたり、無能だったりするからだ。
「ニューヨーク・タイムズ」紙が2021年に、ブラジルのアマゾン熱帯雨林内に確認した無認可滑走路は1269本にのぼった。このうちの多くが、ジャイル・ボルソナロがブラジル大統領になってから勃興した不法産業を支えている。
大統領に就任してからのボルソナロは、アマゾンの盗掘を許しているとして、国際的な批判を受け続けている。急激に広がる不法採鉱が、アマゾン川に頼って生活している何百万もの人々に害を与えかねないし、世界最大の熱帯雨林の破壊を加速させることにもなる、と当局筋は話す。
深刻な環境破壊が進む
アマゾンは巨大なスポンジのような役割を果たし、大気中の何百億トンもの二酸化炭素を吸収する。だが近年、伐採、大規模な焼畑農業、採鉱、その他適法・違法な脅威により、著しい破壊にさらされているのだ。
最近の調査によるとアマゾンは、気候変動と大規模な森林開発のせいで、ダメージからの回復力が崩壊する臨界地点に近づきつつある。そうなれば最終的に、地球全体の何年分もの二酸化炭素が大気中に排出されることになりかねず、地球温暖化との戦いがさらに困難なものとなるだろう。
2019年に就任して以来、ボルソナロ大統領は、熱帯雨林破壊を加速させる産業を擁護し続け、森林開発の記録的な増加をもたらしている。ボルソナロは、アマゾンでの伐採と採鉱の拡大のために規制緩和をするとともに、保護も縮小している。さらに、連邦の予算と人材を大幅に削減し、先住民・環境系の法執行機関を弱体化させている。
ボルソナロは長らく、先住民の土地での採鉱を合法化することに賛成している。彼は、保護区とみなされていたはずの土地に違法に造成された金坑の視察までやってのけ、ブラジル・アマゾンでの違法行為を支持していることを公に示してみせたのだ。
「試掘の鉱夫たちを犯罪人にするのは間違っている」。ボルソナロは2021年、首都ブラジリアの自宅前で支持者たちにこう主張した。
およそ9万7000平方キロメートル、ざっとポルトガル一つ分の面積をもつヤノマミ族の土地だけでも、3万人の鉱山労働者が政府の保護する地域で違法に働いている、と法執行機関の職員たちは見積もる。
しかし、取り締まりはほとんど行われていない。近年、鉱山労働者の急激な増加が原因で、死者を出すほどの対立が生じたり、先住民コミュニティが移住を余儀なくされたり、急激な森林開発や土地・河川の破壊を引き起こしたりしている。河川については、けた違いの水銀汚染が判明している。
べネズエラとの国境に近いヤノマミ族の土地での違法採鉱は、ブラジル国土の約6割を占めるアマゾンの熱帯雨林全体で何が進行中なのかを知る手がかりでもある。
「ニューヨーク・タイムズ」が確認した1269本の無認可滑走路の多くは、金とスズ鉱石が豊富な地域での航空機の着陸を可能にしている。そこは密林と険しい地形のため、航空機がなければ到達するのがほぼ不可能な土地だ。
違法鉱山に航空交通が果たす役割はこれまでもたくさん書かれてきたが、「ニューヨーク・タイムズ」は各滑走路を照合し、その違法産業の大きさがわかる、これまでのところ最も広範囲な画像を集めるために、2016年まで遡った何千枚もの衛星写真を精査した。
分析の結果、その滑走路の少なくとも362本(全体の4分の1以上)が、無認可鉱山から約20㎞以内にあることがわかった。その採鉱法は、非常に有毒な水銀を大量に用いるやり方である。こうした滑走路の約6割が、あらゆる形態の採鉱が禁止されている、先住民の住む保護された土地にあるのだ。
残りの何百もの滑走路は、もっと遠距離から違法採鉱をサポートしているものが多い。あるいは麻薬商人か、農薬散布の農夫に利用されている。これ以外にも鉱夫たちは、役人が人里離れたコミュニティを訪ねるのに欠かせない政府の滑走路を違法に利用し、そのうちの何十かは既に横領までしている。
「我々の認識では、飛行機がなければヤノマミ族の土地での採鉱は無理です」。こう話すマテウス・ブエノは、ヤノマミ族の土地の一部が含まれるロライマ州の州都、ボア・ヴィスタの州執行官である。
ブラジルのマップビオマスという、気候に特化した非営利団体・学術協会の分析によると、2010年から2020年の間に、違法鉱山は先住民の土地で約500%も増加し、保護区では300%増加したという。
先住民に大きな被害
違法鉱山は、ヤノマミ族に既に甚大な被害を与えている。
ブラジルとベネズエラにまたがった土地に住む、人口ほぼ4万人のヤノマミ族は、アマゾンで比較的孤立して暮らす先住民族の中では最大の部族である。ヤノマミの非営利団体フトゥカラによる最近の研究では、ブラジル側のヤノマミの地域で暮らすおよそ半数が違法鉱山の被害を受けていると推測されている。
この報告書によれば、農産物へのダメージや、耕作放棄に起因する栄養失調、露天掘りの鉱山や切り拓かれて丸裸になった森林地で大量発生する蚊が原因のマラリアの蔓延などの被害があるという。
さらに違法鉱山は、先住民の間に分断を生んでいる。鉱夫たちと共に働く者がいれば、それに反対する者もいるわけだ。今年、2つの集団間で衝突が起こり、2名が死亡し、5名が負傷した。
しかし、保健局の役人が最も心配しているのは水銀被害だ。川底の泥から砂金を分離するのに使われる水銀が、部族の共同体の命綱である川と魚を汚染しているのである。
ブラジル保健省傘下の研究所フィオクルスの報告書によれば、水銀中毒は子どもの発育を阻害しかねないし、中枢神経を冒すため、失明から心臓病までさまざまな病気の原因になりうるという。
最近ブラジル政府が、ヤノマミの土地に流れる4つの川から採取した水を分析したところ、人体に影響ないと考えられている濃度の8600%もの水銀が検出された。
「いくつかの共同体で被害があれば、全体にもあるということです」とエクラリは言う。「鉱山はどこにでもあるのですから」
違法採鉱の流れ
試掘の典型的なパターンは、まず一人の男がシャベルに鍬(くわ)、砂金の選鉱鍋とGPS装置を携えて森に入るところから始まる。
こうした鉱夫は、生活費以上のものを稼ぎたいと考える貧困地区出身者である場合が多い。彼らを雇う親方は、細分化しているが政治的に強い力を持つ犯罪企業に属している。これらの企業は近年、低賃金労働者市場と、価格が高騰している金とスズに投資している。
ひとたび有望な採鉱場所が見つかると、初期採鉱用の設備を運ぶ鉱夫たちがやってくる。ディーゼルのポンプで川底の泥めがけて水を強烈な勢いで噴射して緩め、その泥を別のポンプで川底から吸い上げると、川の流れをせき止めるほどの巨大なクレーターができる。次に、砂金を分離するために、吸い上げた泥に水銀を混ぜる。処分した泥のなかにも水銀は微量ながら残るし、製錬過程で蒸気となって大気中に放出されもする。
それから、高くつく空輸サプライチェーンに見合うほど豊富な鉱物がある地域に、滑走路が作られる。
「彼らはこうやって規模を大きくしていくのです」と話すグスタヴォ・ガイゼルは、ブラジル連邦警察と共に数件の違法採鉱事件を担当した経験を持つ、科学捜査の専門家だ。
それから、採掘された金が売られる。無免許の者もいる買い手は、その金をブラジル国内の精錬業者に引き渡したり、海外の精錬所に出したりする。それがしばしば世界中の銀行に、あるいは携帯電話や宝石などの製品に形を変えて落ち着く。
試掘そのものは合法の場合もあるが、その多くが必要な環境基準を満たさずに行われる。あるいは、試掘禁止の保護区で行われる。
2021年に実施された、ヤノマミ族の土地での違法採鉱に関する広範な調査の一環で、ブラジルの環境保護機関IBAMA(ブラジル環境・再生可能天然資源院)と連邦警察は、飛行機とヘリコプター数十機を押収し、こうした違法操業のロジスティックスの仕組みを暴いた。
ロライマ州唯一の航空機燃料卸売業者は、間に合わせのガソリンスタンドを経営する無登録業者に販売したとして罰金を課せられ、現在も捜査を受けている。燃料はそのとき、滑走路に運ばれていたのだが、その近くの森を切り拓いた場所には、航空機とヘリコプターが隠されていた。
5月、エージェントが見つけた滑走路の一本を、「ニューヨーク・タイムズ」がドローンを使って観察したところ、未知の積み荷を積んだ2機の飛行機と、燃料缶を載せた数台のピックアップトラックが走り寄っていくのが確認できた。こうした操業をやめさせるために、いかに執行機関が苦労しているかの一例である。(続く)
後編では、こうした大規模な違法行為がなぜ摘発されないのかに迫る。そこには、ブラジルの現政権が採鉱を「黙認」しているどころか、「推進」しているとも言えるような実態があった。
https://courrier.jp/news/archives/299049/

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ニュージーランドはなぜ「強力にタバコを禁止する」のか

2022-08-30 | 先住民族関連
8/29(月) 12:24石田雅彦ライター、編集者
 ニュージーランド(アオテアロア)政府が議会に提出した喫煙防止法案が話題になっている。これは2009年以降に生まれた子どもは、一生涯、タバコを吸うことを禁じるという法案だ。なぜ、ニュージーランドは喫煙に対し、このように厳しく臨むのだろうか。
先住民族の高い喫煙率と健康格差
 この法案の内容は、2009年以降に生まれた人に紙巻きタバコを販売した人は15万ニュージーランドドル(日本円で約1270万円)以下の罰金になる可能性があり、同じ年齢の人に無償で譲った場合は5万ニュージーランドドル(約424万円)以下の罰金になる可能性があるというもので、加熱式タバコと電子タバコなどは適用外になっている。
 同様に、デンマーク政府は、2010年以降に生まれた人へのタバコ製品の販売を禁じる法案を検討中とされ、マレーシア政府も2005年以降に生まれた人へタバコ製品の販売を禁じる措置を検討中とされている。
 ニュージーランド政府の今回の動きは、同政府が進める「Smokefree Aotearoa 2025」という健康推進計画によるものだ。このプランでは国民の喫煙率を2025年までに5%未満にし、タバコ販売店を現在の10%以下にするという目標を掲げている。同国では受動喫煙を含む喫煙により、毎年約5000人が死亡しているとされ、特に先住民族であるマオリ族や太平洋諸島の住民の健康被害が大きく、これを是正するために提案されたものだ。
 ニュージーランドの喫煙率は、マオリ族、太平洋諸島の住民、白人、アジア人などで大きく異なっている。1980年代の調査ではマオリ族の肺がんの罹患率は世界で最も高く(※1)、1984年の調査によれば、マオリ族の喫煙率は12歳以上の男性で57%、女性で63%と女性の喫煙率のほうが高かったという(※2)。
 現在も同じ傾向が続き、毎日喫煙する人の割合は、マオリ族で22.3%、太平洋諸島の住民で16.4%、ヨーロッパ系などの住民で8.3%、アジア系住民で3.9%となっている。また、経済格差による健康格差の影響も大きく、最貧層地域の住民の喫煙率は最富裕層地域の住民の約6倍という試算もあるようだ(※3)。
 2010年に同国政府が行った調査でわかったのは、全体の喫煙率は減少しているが、マオリ族と太平洋諸島の住民の喫煙率は逆に高くなっていたことだ。特にマオリ族の女性の喫煙率は高く、肺がんの発生率も世界的に高い。同調査では、妊婦の喫煙による胎児への悪影響、子どもへの受動喫煙なども問題視され、マオリ族の伝統的な長老文化も破壊される危険性があると指摘された(※4)。
 こうした背景があり、ニュージーランド政府は、2020年8月11日に新型タバコを含む厳格なタバコ規制を新たに打ち出し(※5)、国民が参加した議論の末に上記「Smokefree Aotearoa 2025」プランを始めたのだという。今回、政府が議会へ提出した2009年以降に生まれた人に対する喫煙防止法案もこのプランの一環であり、法案を提出した同国保健省はこの施策はタバコ産業への強いメッセージなるとしている。
 以上をまとめれば、ニュージーランドでは先住民族や貧困層、女性などの弱者の喫煙率が高く、大きな健康問題になってきた。そのため、国民から政府に対して強いタバコ規制の要請が起き、世界でも初めての規制に踏み込んだというわけだ。日本政府も国民の健康を考えれば、同様の政策を考えるべきだろう。
 今回の法案は、自由至上主義を標榜するACT党以外の賛成を得て成立すると考えられているが、緑の党は過度なタバコ規制により闇市場が形成される懸念を表明し、世界で初めての試みに対する不安を示す議員もいるようだ。可決されても立法までに、国民も参加する専門家などを交えた委員会が設置され、さらなる議論を経て順調にいけば2023年に施行されるという。
※1-1:Matier Harwood, et al., "Lung cancer in Maori: a neglected priority" The New Zealand Medical Journal, Vol.118, No.1213, 2005
※1-2:Caroline Shaw, et al., "Varying evolution of the New Zealand lung cancer epidemic by ethnicity and socioeconomic position (1981-1999)" The New Zealand Medical Journal, Vol.118, No.1213, 2005
※2:Sanford Marvin Siegel, "Hydrogen sulfide and health in Rotorua, New Zealand : final report March 1984 - September 1985" Department of Botany, University of Hawaii ato Manoa
※3New Zealand, Ministry of Health, "Annual Update of Key Results 2020/21: New Zealand Health Survey" 1, December, 2021
※4:Report of the Maori Affairs Committee, "Inquiry into the tobacco industry in Aotearoa and the consequences of tobacco use for Maori" 14, March, 2011
※5:New Zealand Legislation, "Smokefree Environments and Regulated Products (Vaping) Amendment Act 2020” 11, November, 2020
https://news.yahoo.co.jp/byline/ishidamasahiko/20220829-00312504

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする