北海道新聞01/31 05:00
道内6遺跡を含む「北海道・北東北の縄文遺跡群」が昨年7月27日に世界文化遺産に登録されてから半年が過ぎた。新型コロナウイルス流行により関連施設が一時閉鎖となる影響もあったが、登録効果で来訪者が例年の倍以上に増えた地域もある。新たな展示施設をつくる動きもあり、関係者はコロナ収束後を見据え、遺跡の価値を国内外に発信する取り組みを続ける。
今月27日、函館市南茅部地区の市縄文文化交流センターには、市立大船小学校の全児童16人の姿があった。子どもたちは石皿や土器、道内唯一の国宝「中空土偶」に興味津々。坪谷正樹教頭は「世界遺産のある地元に愛着や誇りを持つきっかけにつながれば」と話した。
縄文遺跡群は4道県の17遺跡で構成され、道内には函館、千歳、伊達の3市と胆振管内洞爺湖町に計6遺跡がある。世界文化遺産登録前後から、各地には修学旅行生や家族連れなどが続々と訪れるようになった。
垣ノ島遺跡と大船遺跡がある函館市によると、両遺跡と市縄文文化交流センターの来訪者は例年3万人ほどだが、昨年4~12月は9カ月間で約7万7千人と倍以上に増加。伊達市の北黄金貝塚には、昨年4~11月で2020年度の倍近い約1万4千人が訪れた。洞爺湖町の入江・高砂貝塚、千歳市のキウス周堤墓群も同様の傾向という。
遺跡の魅力を発信する活動は、コロナの流行に翻弄(ほんろう)もされた。道内は昨年以降も、まん延防止等重点措置や緊急事態宣言が出され、キウス周堤墓群はそのたびに案内所を閉鎖し、ガイド活動を中止。函館市が海外客向けに20年につくった通訳ガイドの人材バンクはコロナ禍で活動を開始できず、28人の登録者は研修を受けながら活躍の機会を待っている。伊達市も今月予定していた縄文関連のシンポジウムの開催を中止した。
各地域は手をこまぬいているだけではない。函館市は今夏、垣ノ島遺跡でVR(仮想現実)やAR(拡張現実)といったデジタル技術を使った解説を始める。3千万円をかけ、遺跡でスマートフォンをかざすと、縄文人の暮らしをコンピューターグラフィックスで再現することを想定している。伊達市は遺跡周辺に駐車場を増設する工事費を新年度予算案に計上する方針。千歳市は出土品や模型、説明パネルを展示する案内施設の新設を検討している。
道もガイド向け教材を本年度中に作り、地元市町に配布予定。道縄文世界遺産推進室の阿部千春特別研究員は「コロナ禍を準備期間と捉え、専門的なガイドを育成したい」と語る。
札幌国際大の越田賢一郎教授(考古学)は「一過性のブームとしないためにも、アイヌ民族、開拓など他の歴史や北海道の自然と合わせた情報発信が大事だ」と指摘した。(磯田直希、今井彩乃、伊藤友佳子)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/639609
道内6遺跡を含む「北海道・北東北の縄文遺跡群」が昨年7月27日に世界文化遺産に登録されてから半年が過ぎた。新型コロナウイルス流行により関連施設が一時閉鎖となる影響もあったが、登録効果で来訪者が例年の倍以上に増えた地域もある。新たな展示施設をつくる動きもあり、関係者はコロナ収束後を見据え、遺跡の価値を国内外に発信する取り組みを続ける。
今月27日、函館市南茅部地区の市縄文文化交流センターには、市立大船小学校の全児童16人の姿があった。子どもたちは石皿や土器、道内唯一の国宝「中空土偶」に興味津々。坪谷正樹教頭は「世界遺産のある地元に愛着や誇りを持つきっかけにつながれば」と話した。
縄文遺跡群は4道県の17遺跡で構成され、道内には函館、千歳、伊達の3市と胆振管内洞爺湖町に計6遺跡がある。世界文化遺産登録前後から、各地には修学旅行生や家族連れなどが続々と訪れるようになった。
垣ノ島遺跡と大船遺跡がある函館市によると、両遺跡と市縄文文化交流センターの来訪者は例年3万人ほどだが、昨年4~12月は9カ月間で約7万7千人と倍以上に増加。伊達市の北黄金貝塚には、昨年4~11月で2020年度の倍近い約1万4千人が訪れた。洞爺湖町の入江・高砂貝塚、千歳市のキウス周堤墓群も同様の傾向という。
遺跡の魅力を発信する活動は、コロナの流行に翻弄(ほんろう)もされた。道内は昨年以降も、まん延防止等重点措置や緊急事態宣言が出され、キウス周堤墓群はそのたびに案内所を閉鎖し、ガイド活動を中止。函館市が海外客向けに20年につくった通訳ガイドの人材バンクはコロナ禍で活動を開始できず、28人の登録者は研修を受けながら活躍の機会を待っている。伊達市も今月予定していた縄文関連のシンポジウムの開催を中止した。
各地域は手をこまぬいているだけではない。函館市は今夏、垣ノ島遺跡でVR(仮想現実)やAR(拡張現実)といったデジタル技術を使った解説を始める。3千万円をかけ、遺跡でスマートフォンをかざすと、縄文人の暮らしをコンピューターグラフィックスで再現することを想定している。伊達市は遺跡周辺に駐車場を増設する工事費を新年度予算案に計上する方針。千歳市は出土品や模型、説明パネルを展示する案内施設の新設を検討している。
道もガイド向け教材を本年度中に作り、地元市町に配布予定。道縄文世界遺産推進室の阿部千春特別研究員は「コロナ禍を準備期間と捉え、専門的なガイドを育成したい」と語る。
札幌国際大の越田賢一郎教授(考古学)は「一過性のブームとしないためにも、アイヌ民族、開拓など他の歴史や北海道の自然と合わせた情報発信が大事だ」と指摘した。(磯田直希、今井彩乃、伊藤友佳子)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/639609