読売新聞 2025/02/01 16:13
日本フィルハーモニー交響楽団の第50回九州公演が8~19日、福岡市など9都市で行われる。東京に拠点を置くプロオーケストラが50年にわたって九州で定期的な公演を続けるのは異例。2023年に同楽団の首席指揮者に就任したシンガポール出身のカーチュン・ウォンさんがタクトを振る。
会場ごとに曲目が異なり、5会場でチャイコフスキーの「交響曲第5番」、4会場でムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」を披露する。日本を代表するピアニストの仲道郁代さんは5会場、チェリストの宮田大さんは4会場でソリストとして登場する。
ウォンさんは16年のグスタフ・マーラー国際指揮者コンクールで優勝し、ドイツのドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団でも首席客演指揮者を務めるなど国際的な注目を集める。伊福部昭の音楽に引かれてアイヌ民族の文化を探究するなど、音楽の背景にある歴史や文化にも関心を寄せる。
「日本フィルには歴史と伝統があり、そこからエネルギーを必要とする強固な音楽が生み出されている」と話し、初出演の九州公演について「50年も続けてきた九州の皆さんの文化への深い愛と伝統に尊敬の気持ちを持っている」と語った。
楽団の危機を九州の民放労組が支援
1975年、当時民放の専属楽団として存続の危機に陥っていた日本フィルに対し、九州の民放の労組が支援のためコンサートを始めたのが九州公演のきっかけ。その後、市民が支える公演として裾野が広がった。
第1回から長崎公演に携わる「長崎日本フィルの会」の河野英雄会長は、「第1回のシベリウスの『フィンランディア』の演奏があまりにも美しくて感動し、やめられなくなった。観客からも『また来年も』と背中を押されてここまで来た」と話す。
ウォンさんは、今回演奏する曲について「日本フィルが何度も演奏してきたチャイコフスキーの『交響曲第5番』やムソルグスキーの『展覧会の絵』からは、まさに団員の骨の髄まで染みこんだ伝統そのものを感じてもらえるはず」と自信を見せた。問い合わせは日本フィル九州公演事務局(092・781・7270)へ。日程と会場は次の通り。
8日 長崎市民会館(長崎市=完売)、9日 大牟田文化会館(福岡県大牟田市)、11日 北九州ソレイユホール(北九州市)、12日 iichikoグランシアタ(大分市)、14日 都城市総合文化ホール(宮崎県都城市)、15日 宝山ホール(鹿児島市)、16日 アクロス福岡シンフォニーホール(福岡市)、18日 佐賀市文化会館(佐賀市)、19日 熊本県立劇場コンサートホール(熊本市)
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