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「知る」から「感じる」へ。“アイヌ文化”が息づく『ウポポイ』で心に響く特別なひとときを。旅好きライターの体験レポートの画像一覧
北海道といえば、国内旅行の定番スポット。その中でも、次の旅先候補として注目したいのが白老町ポロト湖畔に広がる「ウポポイ(民族共生象徴空間)」。観光地のイメージとは少し異なりながらも、訪れてみれば先住民族アイヌの人々の文化や歴史が驚くほど身近に感じられ、時間を忘れて学びと癒しに没頭できる特別な空間でした。
ここでは、ただ知識を得るだけでなく、「触れて」「体験する」ことで、アイヌ文化の奥深さを肌で感じることができます。伝統的な住まいの再現や舞踊、楽器の音色が紡ぎ出す豊かな世界観は、心を静かに癒し、自然と調和して生きてきたアイヌ民族の思想へと引き込んでくれるものばかり。難しく思えるテーマも、実際に体験してみるとぐっと親しみやすく、魅力的に映ります。
何か新しいことに挑戦したい、自分をリフレッシュさせたいという方にもぴったり。知的好奇心を刺激し、自分自身をアップデートできる体験が待っています。今回は、プレスツアーで体感したその魅力をたっぷりとお届け!
アイヌ民族の歴史と文化を伝える「ウポポイ」とは?
白老町ポロト湖畔に位置する「ウポポイ(民族共生象徴空間)」は、アイヌ文化の復興と創造の拠点として2020年にオープンしました。東京ドーム約2個分の広大な敷地内には、道内初の国立博物館「国立アイヌ民族博物館」、五感で体験する「国立民族共生公園」、そして「慰霊施設」などが揃っています。「ウポポイ」とは、アイヌ語で「(おおぜいで)歌うこと」を意味する愛称です。
園内ではアイヌ語が第一言語として使われており、施設名や展示解説にはアイヌ語が先頭に表示されていました。スタッフ同士もアイヌ語のニックネームで呼び合い、訪れる人々を親しみのある挨拶で迎えてくれるのも印象的。また、園内を循環する無料の電動バスは、アイヌ文様をモチーフにしたデザインが特徴的。足の悪い方や小さなお子さん連れの方にも優しい設備が整っています。
幻想的な「いざないの回廊」から訪問スタート!
新千歳空港から車で約40分で到着するウポポイ。駐車場からエントランスまでは「いざないの回廊」と呼ばれる幻想的な通路を通ります。壁面には自然や動物のデザインが描かれており、まるで森の中を歩いているかのような感覚になります。これから始まるアイヌ文化との出会いに、自然と期待が高まります。
回廊を抜けるとお土産ショップや軽食が楽しめるカフェがある「歓迎の広場」が広がり、その後には円形のエントランス棟が待っています。ここまでは無料エリアのため、お散歩だけでも気軽に立ち寄れます。正面にはウポポイPRキャラクター「トゥレッポん」が出迎えてくれます。「トゥレッポん」はアイヌ語でユリ科ウバユリ属の多年草「オオウバユリ」を意味するturep(トゥレㇷ゚)から名付けられたそう。可愛らしいキャラクターグッズも園内で多数販売されています。
弓矢体験「アㇰシノッ」で狩猟の心に触れる
館内の説明を聞いたあと、早速体験学習館へ向かいました。最初に挑戦したのは、弓矢体験「アㇰシノッ」。これは、アイヌ民族の子どもたちが楽しんでいた弓矢遊びを再現したもので、狩猟の作法や技術を学ぶ目的があったそうです。使用する矢は安全のため先端が尖っておらず、熊やホタテの貝殻を模した的を狙います。
実際に挑戦してみると、弓を引くには意外と力が必要で、3本トライしましたが的にはかすりもしませんでした(笑)。それでも、スタッフの丁寧な指導のおかげで楽しく体験することができました。雨の日でも室内で楽しめるところも魅力的です。
アイヌ民族の伝統料理「オハウ」に舌鼓
「オハウ」は具だくさんの汁物で、アイヌ民族の食生活の中心にあった料理。地域で採れた野菜や肉・魚などを塩や油でシンプルに煮込んだもので、素材の味を存分に楽しめます。試食体験では、園内で作られた「サッチェㇷ゚」(干した鮭)や野草茶「エント茶」もいただきました。
「オハウ」のあっさりとした塩味は驚くほど美味しく、素材の味が引き立っていました。干した鮭は、鮭の旨味がギュッと凝縮されていて、パサパサしてないしっとり感にも感動!どちらもアイヌ文化の知恵が詰まった逸品です。「エント茶」は、シソ科のナギナタコウジュをアイヌ語でエントと呼ぶそうで、こちらも園内の畑で栽培されています。ハーブティーのような独特の風味でクセがなく飲みやすく、心も体も温まりました。
また、「歓迎の広場」にある『スイーツカフェ ななかまどイレンカ』では、「パピㇼカパイ(アップルパイ他季節のパイ)」も試食しました。「パピㇼカ」はアイヌ語で「豊作」などを意味する言葉です。自家製のサクサク生地と大きめにカットされたりんごのジューシーさが絶妙にマッチし、甘さも控えめで食べ応え抜群でした。このパイもぜひ試していただきたい一品です。
アイヌ語発音体験「イタㇰ トマリ」でことばに触れる
アイヌ文化の根幹をなす“ことば”を、聞いて、話して、体感できる「イタㇰ トマリ」。ここでは、インスタレーションアートを通じてアイヌ語を“生きたことば”として学べます。
アイヌ語の音声と連動した映像パネルでは、地域によって異なる挨拶の表現や、発音が似ていても異なる意味を持つ単語などを学習できます。また、大型モニターに映し出されるアイヌ語を声に出して読むと、その言葉が示す動物や楽器などの映像が現れる仕掛けも。耳で聞き、口で発音することで、自然とアイヌ語への理解が深まりました。
アイヌ語が他の言語と系統関係が認められていない「孤立言語」であることを知ると、その独自性にさらに興味が湧きます。発音が難しいカタカナ表記に最初は戸惑いましたが、体験を通して言葉を覚える楽しさを実感しました。
民族衣装「アミㇷ゚」や民族楽器「ムックリ」を体験
チセ(家屋)群が再現され、アイヌ民族の伝統的な生活空間を体感できるコタン(集落)エリアでは、室内の見学や儀礼の見学、民族衣装を着用して写真撮影が可能。衣装は子ども用から大人用まで20着ほど用意されており、気軽に体験できます。
アイヌの民族の衣装は地域によって異なるパターンがあるそうです。まず、シナノキ科の樹皮など木の繊維を布にして作った「アットゥㇱ」があり、その後布が手に入るようになると刺繍文化が発展。地域ごとの文様や技法の違いにより、「チカㇽカㇽペ」、「ルウンペ」、「カパラミㇷ゚」、「チヂリ」に分けられるそうです。刺繍部分に見られる尖ったツノのようなデザインが印象的です。美しく力強い結界のようなデザインに惚れ惚れ♡
その後、アイヌ民族に伝わる竹製の口琴の一種「ムックリ」も体験させてもらいました。竹製の薄い板(弁)に紐がついており、この紐を引っ張ることで弁が振動し音が発生。その音を口腔内で共鳴させ、口の形を変えたり、息を吸ったり吐いたりすることで、さまざまな音色を演奏できる楽器。体験では、スタッフの方からムックリの持ち方、鳴らし方、そして音色を変化させるコツを丁寧に教えていただきました。しかし、実際に音を鳴らしてみるとこれがなかなか難しい!竹の弁を振動させるタイミングや口の動きの調整が思った以上に繊細で、音を出すだけでも苦労しました。
伝統芸能上演「イメル」で感じる魂の響き
ウポポイを訪れたら見逃せないのが、伝統芸能「イメル」・「シノッ」の鑑賞。儀礼や日常生活で親しまれてきた歌や踊り、口承文芸、楽器演奏を一度に堪能できる貴重な機会。中でも、重要無形民俗文化財に指定される「アイヌ古式舞踊」は、その圧倒的な美しさと迫力で見る者を魅了します。
演じるのは、ウポポイの職員であり、アイヌ文化を受け継ぐ伝承者たち。喉を駆使した独特の発声や掛け声、巻き舌を用いた旋律は、力強くも心に染みわたる響きでした。複数人の声が織りなすハーモニーは、五線譜では表しきれない奥深い音楽の世界を感じさせ、初めて聞く音色に引き込まれました。
鑑賞中は自然との一体感を感じさせる表現力に心が震え、思わず涙が込み上げてきました。この素晴らしい体験が約25分、しかも無料で楽しめるのは驚きです。ぜひ一人でも多くの人に、この感動を味わってほしいなと思いました。
国立アイヌ民族博物館で学ぶアイヌ民族のスピリッツ
高床式を模した建物は斬新なデザインで、1階にはシアターやライブラリー、ミュージアムショップ、2階にはポロト湖を一望できるパノラミックロビーと展示室があります。
基本展示室は「私たちのことば」「私たちの世界」「私たちのくらし」「私たちの歴史」「私たちのしごと」「私たちの交流」の6つのテーマで構成されており、多角的にアイヌ文化を紹介しています。
特に心に響いたのは、アイヌ民族が大切にしてきた「カムイ(いわゆる神)」という価値観です。アイヌの人々は、火や水、太陽、月、動植物など、自然界のあらゆるものに魂が宿ると考え、これらの中でも人間の役に立ったり、強い影響力を持ったりするものを「カムイ」として敬ってきました。こうした自然との共生を重んじる姿勢は、現代を生きるすべての人々にとって、大切な学びがあるように思いました。
アイヌ民族の重要な儀式である「イオマンテ」も紹介されていました。「キムンカムイ」(山の神)として崇められるクマを神の国へ送り帰す儀式には、自然への感謝と再訪を願う祈りが込められており、アイヌ文化の奥深さに触れることができました。
ミュージアムショップでお土産探し
ミュージアムショップには、各地の作家が手がけたアイヌ工芸品やウポポイ限定のお菓子やグッズ、関連書籍が並びます。オンラインショップもあるので、遠方の方でもアイヌ文様の商品を手に入れることができます。気になる方はぜひチェックを!ウポポイ公式オンラインショップ
いろいろ欲しいものがあったのですが、私はエント茶とアイヌ文様がデザインされた鉢巻きを購入しました。鉢巻きは柄や色の種類が豊富で迷いましたが、普段使いしやすそうなデザインをセレクト。とても気に入っています♡
「ウポポイ」から帰ってきても、アイヌ文化の工芸や織物が気になってしまい、ネットオークションでこちらの太めの鉢巻きと壁掛けを買ってしまいました。
さまざまな角度からアイヌ文化や歴史を体感できる「ウポポイ」。今回ご紹介したもの以外にも、木彫りや刺繍の体験、口承文芸の実演など、多彩なプログラムが用意されています。新たな発見をする楽しさを存分に味わえる施設で、1日中いても飽きることはありません。むしろ時間が足りないくらいなので、あらかじめ軽くスケジュールを立てて訪れるとスムーズだと思いました。
私も次回は友人や家族を連れて、改めてゆっくりと訪れたいと思います。ウポポイで得た感動を共有しながら、アイヌ文化の奥深さに再び触れる機会を楽しみにしています。
【ウポポイ(民族共生象徴空間)】
所在地:北海道白老郡白老町若草町2丁目3
TEL:0144-82-3914
アクセス:JR白老駅(北口)から徒歩約10分、
札幌から約1時間、 新千歳空港から約40分
閉園日:月曜および3月1日〜10日(令和6年度)
※祝日または休日の場合は翌日以降の平日休み
※但し2月10日は開園
変則的な閉園日や開園日があります。詳しくは公式ウェブサイトで確認を。
公式サイトhttps://ainu-upopoy.jp/
文・撮影/鈴木恵理子
https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/monomax/trend/monomax-261586