「あまりお金をかけずに音が良くなる方法が何かありましたら教えてくれませんか?」
と、たいへん”虫がいいお願い”をしたのは奈良県にお住まいのM中さん宛てのメール。
先日のブログで紹介したとおり「ブログの写真画像拡大」で非常にお世話になったM中さんとは、これをご縁にその後も度々メールの交換をさせてもらっているが、内容からしてオーディオには自分以上の筋金入りのお方で真空管アンプの自作もお手のもののご様子。
そこで、知り合ってあまり間がないのに冒頭の”ぶしつけ”な「お願い」となったものだが、返信のメールには最重要なのは「接続部のクリーニング」とあって、「レミックスのナノカーボン接点改質剤」「クレのCRC-2・26」そしてピンジャックのクリーニング用「スティック」の画像が添付されていた。
「さすがだな~」と思わず唸ってしまった。お金をかけずに音を良くする方法としては接点のクリーニングがベストであることは疑いを容れないが、案外、盲点みたいなところがあって改めて「目からウロコ」みたいな思いを抱いた。
人間の耳は結構、鈍感なところがあって音が急変するとすぐに気が付くが毎日聴きなれている音が次第に劣化していくと意外に気がつかないもの。
以下、あくまでも私見だがこの辺を詳述してみよう。
オーディオは固有の電気回路のもとにいろんな役割を持っている機器同士を組み合わせることによって成り立っているがその接続部は全てピンケーブルなどによる金属同士の接触。
それぞれの機器が持っている能力のベストの状態を発揮させて音楽を聴きたいのであれば個々の接続部にしっかりした電流を通してやらねばならないのがオーディオの基本中の基本であり大前提。
しかし、その接続部に日常的に電流が通っていく以上、異質の金属間で接続部に何らかの変化が生じて被膜化し時間の経過とともに次第に酸化していって音質に悪さをするのは容易に想像できるところ。
とはいえ通常、ピンケーブルなんかは酸化防止のために端子に金メッキが施してあるが、金といえども経年劣化や埃がつくのは必然で眼に見えないだけで顕微鏡で観るとビックリするほどの状況かもしれない。
それに、そのピンケーブルだって端子がピカピカに光っていていかにもピタリと接触できそうだが顕微鏡で拡大すると小さな凹凸だらけで、この接続部分で相当の通電量のロスがあることは間違いなし。
したがってピンケーブルの接続部分を全てハンダ付けしているという超マニアの話をときどき聞く。オーディオ仲間のM崎さんからは以前、真空管の全てのピンをソケットにハンダ付けしたと伺ったことがある。
「音はどうでした?」とお尋ねすると「まったく異次元の音みたいで改善効果は抜群」との回答。もっとも、これは真空管を交換するときなんかがたいへんだが、毎日のように聴いてもおよそ数年は大丈夫。古典菅のWE300Bなんかは10年以上の持ちはザラである。
したがって「オーディオの究極はハンダ付け」という説も十分うなづける話で安物の機器がハンダ付け接続のおかげで高級器並に変身というのも十分ありえること。もし棄てようとする機器があるならばとりあえず、接続部をハンダ付けして聴き直してみるのも悪くはない。
いまさら「ハンダ付け」なんてと馬鹿にされそうだが、これは金属同士の古くて新しいベストの接着方法なのである。あの科学技術の粋を極めた宇宙ロケットでさえもハンダを多用しており、総重量の軽減化にハンダの材質の軽量化が一番効果があったなんて話を読んだことがある。
話がやや逸れ気味だが、全ての接続部をハンダ付けすればクリーニングは一切必要ないということを言いたかったわけだが(ハンダ自体の経年劣化も当然あるがこれは別として)、現実には機器の移動や交換に伴う手間なんかを考えるとそういうわけもいかない。
自分の場合、クリーニングについては「絹の材質で接点を磨くといいよ」と教わったので、ときどき思い出したように実行してきた。ピンケーブルから真空管のピン1本1本に至るまで丁寧に拭くのである。つい、怠りがちになるが”ゆめゆめ”忘れてはならない作業である。
オーディオはとにかく”こまめ”な作業が欠かせないが、これは「女性を口説くのと一緒だ」な~んて、まあ!
さて、M中さんのメールを拝見して急いで古くなった絹のネクタイで全ての接合部を磨いたのは言うまでもないが、こんな使われ方をするネクタイがちょっと可哀想、しかしもう使い道が無いので許してほしい・・・・。
因みに、メールに添付したあった「レミックスのナノカーボン接点改質剤」に興味があったのでネットで検索したところ評判がいいのだろうか「在庫なし」の状況だった。
左の写真がレミックスのナノカーボン接点改質剤
中の写真がクリーニング用に使っているネクタイ
右の写真がこれから述べるSPケーブル端子の加工部分
M中さんのメールで思い付いて実行した次の対策が低域用のアンプとスピーカー(SP)を結ぶケーブル端子の改良である。
現在SPケーブルはウェスタン社の古くて細~いケーブルを使っていて引き回しが大げさにならずたいへん重宝しているが唯一の欠点なのが針金状の単線なのでアンプとの接続部分の密着度が”いまいち”なところ。
もちろんSPユニットとの接続部は昔のユニットなので直接ハンダ付けが可能でバッチリ処理できるが、アンプとの接続部は改造が難しくてそういうわけにもいかない。
そこで以前使っていた3cmほどの金の網線を引っ張り出してきて、ケーブルの端にハンダ付けしてみた。興味のある方は上記の写真上でクリックして拡大してご覧ください。この網線部分でアンプと接続させると密着度が飛躍的に向上する。左右プラス・マイナスで都合4本。
早速試聴してみたところ、こればかりは音が悪くなるはずがなく低域のボリュ-ムを一段階落としても十分な量の低音が響き渡った。通常、低域は中高域と違ってこの種の改善に鈍感とされるがそれでもこの調子。
余談になるがこれまでの経験で言わせてもらえれば、SPケーブルとSPユニットの端子との接続ばかりは絶対にハンダ付けがベストであると断言しておこう。この付近の音の変化は著しい。
とにかく今回は一切お金をかけずに十分な効果が得られたので大満足である。