ようやく「球春到来」・・、熱戦たけなわの「春の選抜高校野球」。
プロ野球にはない球児たちの「ひたむきさ」に、つい引き寄せられてテレビをつけっぱなしだが、それに加えて、オーディオの試聴ソースとしても、観衆のどよめきや場内アナウンサーの声の響きなどがもってこいで、どのくらい奥行き感があって豊かに聴こえるか無意識のうちにチェックしている・・。
常に生活の念頭にあるのが「音楽&オーディオ」というわけで、どうしようもない人間である(笑)。
それはさておき、野球の場合にとりわけ目立つのが左利きの選手が多いことで、野球は左利きが有利のスポーツだと感じさせる。
たとえば、左バッターは打ってから駆けだす方向の一塁に近いので有利だし、左ピッチャーは投げる時に一塁走者に相対するので牽制するのにたいへん有利だ。
このように野球の場合には「左利き」有利は明らかだが、一般的な社会生活では果たしてどうなんだろう?
恰好の本があった。
「左対右・きき手大研究」(化学同人社刊)
本書は、古来言われてきた、「左利きは器用」「左利きは怪我をしやすく短命」「なぜ左利きの人が少ないか」「利き手はいつ決まる」「利き手の矯正はよいことか」などの疑問に対して学術的にアプローチした本である。
著者は「八田武志」氏で関西福祉科学大学教授で心理学がご専門。
ひととおり、ざっと目を通してみたが医学的な観点からのアプローチがやや欠けているような気がするが世界各国のいろんな研究データを豊富に集めて考証されているたいへんな労作。
しかし、まだこの分野は未解明の部分が多いようで、著者の意見にも歯切れが悪いところがあって明快な結論が導き出されないのがチョットもどかしい。
とりあえず二点ほど興味のある項目を列挙してみよう。
なお、人間は「右利き」「左利き」「両利き」の3つに分類されるが、定義というほどのこともないが「左利き」としてのデータの解析対象とされているのは、「書字に使う手」「スプーンを持つ手」「ハサミを使う手」「歯ブラシを持つ手」「金槌を持つ手」にそれぞれ左手を使用することが挙げられている。
☆ 「左利き=短命説」
「左利き」の方にはドキリとするような説だが、1994年に「左利きは危険がいっぱい」という本が出版(外国)され、広く知られるようになった。
これは空軍の兵隊を対象に「スポーツに関連する事故」「作業に関連する事故」「家庭での事故」「道具に関連する事故」「運転事故」の5つのカテゴリーで調査した結果に基づいたもので事故に遭遇した確率が「左利き」の方が「右利き」よりも多かったというもの。
因みに調査対象者の内訳は「左利き」は119名、「右利き」は945名で右ききの割合は89%とおよそ通常の人口分布に占める割合との乖離がない状況だった。
結局、「左利き」が事故に遭遇しやすいというのが「左利き=短命説」の大きな根拠というわけだが、著者の見解によると現代医学では人間が死ぬのは最終的には心臓が止るか肺が機能しなくなるのかのどちらかなので、腕などの怪我(外傷)ぐらいで短命に結びつけるのは因果関係として弱いとの結論だった。
まずはひと安心・・、しかし「左利き」は戦争時の戦闘場面で命を落としやすいことが明白であり、かつ「右利き社会における長い間のストレス」については無視出来ない要因とのこと。
☆ 音楽の才能と左利き
聴くのが専門だが音楽愛好家の自分(右利き)としては非常に興味のあるところ。
音楽の能力には利き手による違いがあり、「左利き」が優れているという指摘が以前からあったが、本格的に「左利きと聴覚機能」に焦点が移ったのは1980年代から。
その結果、言語音は左脳がその処理に優れるが、音の高低の判別や音と音との間、音の大きさ、各種の音の配分など音楽を構成する要素には右脳の方が処理に優れることが次々に明らかにされた。
「プロソディ(韻律)」と呼ばれる音声言語の周辺的要素も右脳の働きであることが立証された。
そこで右脳は左手指の運動と関連が深いので、「左利き」は音楽の才能があるはずだという予測が生まれいくつかの実験調査が行われた。
☆ イギリスのある小学校(897名)の実験調査では差異は認められなかった。
☆ ある学生相手の音の記憶実験によると「左利き」の優位性がはっきりと認められた。「左利き」では音の記憶を左右両方の脳で出来るのに対して、「右利き」では右脳でしか記憶できないためと説明された。
☆ ドイツの音楽大学でピアノ学科52名を対象に初見演奏の実験を行ったところ「右利き」は「左利き」や「両手利き」よりも劣ることが明らかにされた。
初見演奏とは初めて見る楽譜を指の運動に直ちに変換して演奏したり、はじめて耳にしたメロディを再生する聴音演奏と同意語で音楽能力に必須の能力とされるもの。
(この初見能力について、幼少期のモーツァルトが門外不出とされた教会音楽を一度聴いただけで、後になってスラスラと楽譜にしたためた逸話を思わず想い出した!)
以上のことから導き出される結果は次のとおり。
「小学生を対象にした調査では利き手による音楽能力の違いが見出せなかったが、成人ではその関係を支持するデータが多い。
ということは左手の手指運動の訓練に困難さを感じる者(右利き)は楽器演奏の練習を途中で放棄するのに対して、それほど困難さを強く感じなかったものは”繰り返し練習”が持続した結果、音楽家への職業につながり、”右利き”の音楽家が少ないという理由につながっている」
結局、「音楽の才能と左利きは関係あり」で、さらに興味を引くのは音楽専攻生の場合、親に「左利き」がいる場合には遺伝的要素の関与や左手を使うことへの養育者周辺の容認度が高いことなどがあってより成績がいいそうだ。
したがって音楽的能力には「利き手」それも親の世代を含めた「利き手」が影響している可能性が大いにある。
ということでした。
で、読者の方々でご自身を含めて身の回りに純粋な「左利き」がおられますか?
今や生活の主流を成しているパソコンやスマホなどの機器を扱ううえで「両手きき」が、いちばん便利だと思うが、近年は「左きき から発展した 両手きき」が増えているように思えるがどうなんでしょう・・。
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