「本の寄贈をしたいんですけど受け付けてもらえますか?」と、いつも利用させてもらっている隣町の図書館に電話してみた。
「はい、郷土資料は別なんですが、一般的な書籍は発行から5年以内のものに限っています。それに破損のひどいものは受け付けていません。」
「エッ、発行から5年という制約があるのですか・・・。それではちょっと無理ですね~。」
我が家のそれほど大きくもない倉庫にもう10年以上も読んでいない本が山積みされている。そこで処分して出来るだけスペースを確保し、オーディオルーム内の余分な機器類を置こうという目論みだった。
結果的にオーディオルームの音響空間が広くなるし音質改善にもきっと寄与できるはずで、本の処分の動機はやっぱりオーディオがらみだったことになる(笑)。
で、結局古本屋さんに持って行ってもどうせ二束三文だろうし、図書館に寄贈するのはあえなく挫折・・、やっぱり廃品回収に出すしか方法はないようだ。そうすると何だか惜しくなって、1冊づつ本の吟味をすることになった。
音楽関係の本はのちのちブログの材料になる可能性があるので残しておくことにしたが、想像した以上に「釣り関係」の本が多かった。
若い時分は「オーディオ」よりも「海釣り」の方に夢中になっていたし、「防波堤の上で死ねたら本望だ。」と思っていたほどの熱中ぶりだった。
そういえば、どうしても欲しいオーディオ機器があったがとても高価で手が出せず悶々としていたときに、釣りに夢中になると あら不思議 いつの間にか欲しい気持ちがすっかり薄らいでいたという経験が何度もあった。
「オーディオ」と「釣り」の間でうまく欲求のバランスを取っていたことになるが、これを「互恵関係」と称するのだろうか(笑)。
ただし、現在では体力の衰えで釣りに行くのが億劫になり、オーディオ一辺倒になってしまったが、よくしたもので授業料を払ってせっせと失敗体験を積んで、いくらか耳が肥えたせいもあろうが、どうしても欲しくてたまらないオーディオ機器がほとんど無くなってしまった。
見ただけでどういう音が出るかおよそ想像がつくし、実際に聴かなくても我が家の既存の機器との相性の良し悪しがだいたい分かるようになったのは大きい。
我が家のオーディオもようやく9合目あたりまでは来たかなあ・・、まあ、自己評価だけどね(笑)。
話が逸れたが本の整理に戻ろう。
釣り関係の本でも深く思い出に残る本は何冊か残しておくことにした。そのうちの1冊が「チヌ釣り大全」だ。
北九州の名釣り師「若松敬竿(けいかん)」さんの名著である。
とても懐かしい若松さんは今でもご健在なんだろうかと、名前をググってみたところ2008年12月に亡くなられていた。もう16年も前ですか・・。
どなたかのブログに次のような記載があったので無断転載させていただこう。
若松の海から、細島、対馬の海でのさまざまなチヌとの会話、知ることがなかったチヌの習性など、釣り技、釣道への探求が書かれている。」
以上、まったく同感だがこれにあえて付け加えさせてもらうと、若松氏は文章が実に巧みだった。
この「チヌ釣り大全」は「釣り文学」の最高峰と位置づけしてもいいくらいで、釣りに留まらず人生観にまで踏み込んだ含蓄の多い文章のおかげで繰り返して読めば読むほどに物事に深く傾注する「熱意」の底知れない世界へと引き込まれていく。
オーディオ界でいえば「瀬川冬樹」さん(故人)あたりを彷彿とさせてくれますかね~。
こういう風に本の整理にためつすがめつ、いろいろ手間取ったがとりあえず廃棄本をゴミの収集日に出したが、その一方では何だか心にぽっかり穴が開いたような気がするのは否めない。

自分の血となり肉となった分身のようなものをアッサリ切り捨てていいのか・・、という感じ。
そういえば不要になったオーディオ機器(真空管を含む)を処分するのは、一向に痛痒(つうよう)を感じないけど、本となると別~。
なぜなのか・・、まずは存在価値の多少が挙げられ、そして処分したときの「対価」の大小も理由のひとつ、実はこれがいちばん大きいかもねえ~(笑)。

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