東日本大震災の爪跡がいまだに生々しいが、焦点は福島第一原子力発電所の処理問題に移ってきた感がある。
現地で危険をかえりみず復旧作業に当たっている方々には本当に頭の下がる思いがするが、責任の当事者、東京電力の苦衷は察するにあまりあるところ。
事後処理にこれからどれだけの資金が費やされることか想像もつかず、これに伴って東京電力の信用力もガタ落ちで1日には株価が一時400円割れの状況に。
ちなみに、大震災前の3月1日現在の株価を調べてみると2,456円で何と1/6に急降下!
以前は株を取得するのでさえ困難を極めた超優良企業が一夜にして転落、(株価の)大幅な下落で保有株数N0.1の「第一生命」などでは評価損が大きな話題になっている。
こういう難局に直面して、陣頭指揮に当たる社長さんはさぞや「大変だろうなあ」と深く同情していたところ、ご本人は高血圧でめまいがして入院という事態でいっさい表舞台に登場してこない。
病気なら仕方がないけどねえ。しかし、ちょっと情ないなあ~。
その代わりにというわけで会長さんがテレビの記者会見でお詫びと今後の方針を述べていたが、この会長さんを見ていて、つい連想してしまった。
第一印象だけで物を言うのはちょっと気が引けるが、「直感はあやまたない、誤るのは判断だ」という文豪ゲーテの言葉(五味康祐著「西方の音」より)もあるので勘弁してもらおう。
何だか高級官僚タイプを思わせて怜悧かつ学究肌の雰囲気だが、ちょっと”覇気”に乏しそうな印象を受けた。
民間企業のトップによく見受けられる野性味があって押しの強いタイプとは程遠い感じ。
この「勝俣」さんという人はたしか社長を経験してから会長に就任された方。
フ~ン、「電力会社」ってこういうタイプが出世するんだ!
電力会社の会長さんといえばたいへんなポストで地方に行けば全て地域財界のトップに就任するのが慣例。
たとえば現在の九経連〔九州経済団体連合会)の会長はたしか九州電力の会長のはずで常に指定席。
東京電力でも、かって「木川田 一隆」さん(元経済同友会代表幹事)という人がいて哲学的財界人として有名だった。
しかし、企業〔株式会社)とはいいながら「電気」という独占かつ公益事業の第一の使命は安定的供給にあり、セコイ利潤追求の方は二の次、いわゆる「殿様商売」の中で育まれた方々ばかりだろう。
こういう企業風土の中で偉くなった会長さんが後継者に選んだ社長さんだからどうせ似たようなタイプだろうとはおよそ想像がつく。
これまでの人生経験からすると、こういうタイプは頭は抜群に切れるもののとかく守勢に回りがち、”蛮勇をふるう”ということになると腰が及びがちで難局に脆い気がする。
これまで我が世の春を謳歌し、順風満帆の企業に突如押し寄せた今回の大きな荒波。
思わず「疾風に勁草(けいそう)を知る」という諺を思い出してしまった。
ご存知の方も多いと思うが、これは中国の「後漢書」の中に書かれている言葉。
激しい風(疾風)に吹かれて弱い草は皆、倒れ伏してしまう。そんな中ではじめて本当に強い草(勁草)の存在を知ることが出来ることから、
「困難や試練に出会って、はじめて人の節操が堅固であるかどうかが分かる」という喩え。
逆に言えば困難や試練に出会ってこそ、はじめて自分の真価が発揮できるという前向きの気持ちを持つことが大切。
昔の中国人は実にいい言葉を残してますね~!
(そういえばこの言葉にちなんで「勁草書房」という出版社があったっけ。政治、経済、法律の勉強を少しでもかじったことのある人なら覚えがあるはず。)
もちろん、一介の市井の徒が口幅ったいことを言える身分でもないし、その資格もないが、こういうときこそトップの資質が問われますよ~。
今からでも決して遅くない、がんばれ、清水社長さん!