その昔、日本のポップグループに「チャゲ&アスカ」という二人組がいて、「始まりはいつも雨」という歌があった。「晴れ」ではなくて「雨」というところに「しっとり」とした抒情性が感じられて好きな歌だった。
今回のタイトルはそれをもじって「始まりはいつも感動から」。
「セレンディピティ」(Serendipity)という言葉がある。
何だか舌を噛みそうな言葉だが、折にふれ目にしたり耳にされたことがあるかもしれない。
広辞苑によると、カタカナにもかかわらずちゃんと意味が記載されている。
「思わぬものを偶然に発見する能力、幸運を招きよせる力」とあり、もっとくだいて言えば、「ほかの目的で活動しているときに、当てにしていなかったものを偶然に見つける才能」といえば少し身近になる。
「果報は寝て待て」、「待てば海路の日和あり」方式の、なるべく努力しないで得することが大好き人間なのでこういう便利な言葉は放っておけない(笑)。
「偶然からモノを見つけだす能力」~セレンディピティの活かし方~(澤泉重一著、角川書店)。
ところが、一読してみると意に反してなかなか真面目な本だった。努力が要らないどころか、むしろ必要とする内容だったので半分がっかりしたが、有用な本だと思ったので記憶に留めておくために抜き書きして保存しておこう。
本書では「セレンディピティ」を「偶察力」(偶然と察知力を合わせた著者の造語)として取り扱っている。
まず、表紙の裏の見出しに「世界的発見の多くは”偶然の所産”だった。」とある。
☆ ”偶然”に感謝するノーベル賞受賞者たち
☆ 発見・創造の能力とは、偶然を最大限に活かす能力
☆ 感性を研ぎ澄まし、察知力を養えば偶然は偶然でなくなる
☆ 異文化との接触は新しい感動と発見を生む
☆ 誰しもが体験する日常生活での偶然の不思議を想い出そう
☆ 遊びの中にも偶然の面白さはいっぱいある
ご覧のとおり”偶然”という言葉がひっきりなしに出てきて、なにもかも世の中の事柄すべてが偶然に左右されているようなすごい勢い~(笑)。
たしかに、人生は「出会い」を始めとして偶然の連続ともいえる。
たとえば自分の場合では就職先の選択ではたまたま出会った知人のアドバイスによるものだったし、通常2年配置の地方への配属期間がたまたま3年となり、1年遅れたばかりに幸か不幸か(笑)今の結婚相手と出会ったし、その後の友人・知人との交流のきっかけといった節目には偶然が遠因~原因となっている。
さらには目を遠大な方向へ向けると、人類に福音をもたらすノーベル賞クラスの大発見にも偶然が大きな要素を占めているとなれば単なる「偶然」も見捨ててはおけない。
自分の記憶にある事例では2002年度ノーベル化学賞を受賞された島津製作所の田中耕一さんも、たしか他の目的で実験を重ねているうちに偶然発見されたものだった。
本書の中でもノーベル賞受賞者の「セレンディピティ」の恩恵に浴した事例が沢山紹介されているが、これら受賞者ははじめからこの能力に恵まれていたわけではなく、努力と研究を重ねるうちに自然と身につけたものだという。
一般人の場合でも訓練次第で向上することが可能ということで三つの要点が挙げられている。
☆ 広い視野からものごとを見る
革新的な進歩を振り返ってみると、意外にも専門分野の外と思われたところにその突破口が見出せたという実例が多い。つまり広い範囲で活動できる学際的な素養を身につけることが肝要。
☆ 偶然の活用
偶然がもたらす楽しみは意外性の面にある、繰り返しの単調さから抜け出して通常使っていない能力を発揮する機会が生じることに意義があるので意外性を見逃さない意欲が必要。
☆ 察知力を活かす
そのための基本ステップとして挙げられている項目を挙げておくと、一番に挙げられているのがまず「感動」で以下、観察、連想へと続く。
偶然出会った物事に対してまず「感動」が出発点になるというのが面白い。
「感動」というと少し大げさだが「ハット胸を打たれる」ことでもいいと思う。いわば「理」よりも「情」が先行するというわけ。
そういえば「音楽」と「オーディオ」の関係も、まず音楽を聴いて感動し、もっと「いい音で聴きたい」とオーディオに昇華していくケースの方が(オーディオが)長続きすることが多いと思うのでこの順番は納得です~。
何かと気忙しい世の中ですが、常に瑞々しい感性を持っておきたいものですね。
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