これまでいろんなお宅を訪問させていただいて「音」を聴かせていただいたが、その結果はあまり芳しいものではなかった。
大いに気に入って、このまま(このシステムを)持ち帰って我が家で鳴らしてみたいと思ったことは一度もないし、「まあまあ」と思ったのがおよそ3割程度、あとの7割はタダでくれるといっても要らない代物だった(笑)。
のっけから過激な発言だが何が言いたいかというと、それほど音に対する感受性は各人でマチマチだということ。もちろん自分の耳だけが正しいと唯我独尊のように思ったことは一度もない。
そういうわけで、つい先日、大分市内のまったく見知らぬオーディオ愛好家の方から「ブログを拝見しました。参考のために一度試聴させてください。」と、メールが届いたときも我が家の音は自分で勝手にいいと思っているだけなので、実際にお聴きになってガッカリさせたとすると、「お気の毒だなあ」と、そちらの心配の方がつい先に立ってしまった。
ブログに書いてる内容と現実のギャップは確実に存在するし、「聴かぬが花」で想像の世界に留めておくのが一番だと思うが、ま、反面教師という言葉もあるし、それでもいっか~(笑)。
メールを受け取ってからお互いに日程調整をし、実際にお見えになったのは1週間後の小春日和となった3月中旬の午後のことだった。
予定が13時半だったので、12時半ごろに自宅の周囲を(昼食後の)ウォーキングをしていたところ携帯が震えた。「現在、目印の〇〇商店のところに来ております。」
「エッ、そのまま待っててください。すぐに行きますから。」
何しろ初めての見知らぬ土地だから道に迷って遅くなってはいけないと、きっと早めにお見えになったに違いない。とても丁寧かつ慎重な方のようである。
「いやあ、どうもはじめまして~」
お見えになったのはお二人だった。さっそくオーディオルームにご案内して、自己紹介。
すると、年恰好も似ていてお互いに3歳以内に収まっているし、職業の方も3名とも元公務員と分かった。道理で醸し出す雰囲気が何だか皆よく似ている、というわけですぐに意気投合(笑)。
しかも、お二人さんともとても年期の入った真空管アンプ・ビルダーさんだった。うち、お一人は製作したアンプをオークションに出品され700件を越える取引をされているほどでたいへんな場数を踏まれている。
お好みの音楽のジャンルを伺ってみると、お二人とも「ジャズ系です。」
そうですか・・・。
これは余談になるが「大分は日本のスペインだ」と喝破したのは評論家の大宅荘一氏だが、スペインといえばフラメンコとギターだが、いずれにしてもややウェット気味のクラシックのイメージとは程遠い。
大分の県民性は開放的で熱しやすいが、移り気なところがあって絶対安全だとされていた大物代議士がいきなり選挙で落選するという波乱がよく起きることで有名な土地柄だった。
それに革新系が強く、かっての村山富市元首相のおひざ元とあって、現在凋落の一途を辿る社民党だがいまだに人気があっておそらく全国一だろう。
これはおそらく大分の海岸部の主要都市が乾き気味の「瀬戸内式気候」の圏内にあるせいで出来上がった気風かと勝手に推測しているが、風土的にも明らかにジャズに合っていそうだ。
以上、福岡で生まれ育った人間が長年大分で暮らして客観的に感じている印象である。
そういうわけで今回の試聴盤は「エラ&ルイ」「サキソフォン・コロッサス」そして「加藤登紀子詠歌集」に絞った。
さっそく試聴に入ったが、前もってインプットしていたシステムのプログラムは次のとおり。
鳴らすスピーカーは4系統とし、その順番は「AXIOM80」、「AXIOM 150マークⅡ」、「フィリップス」、そして最後がタンノイ「ウェストミンスター」。
当然「順番への思惑」がある。まず最初が肝心である。ぐっと興味を引き付けておいて二番目でさらに展開力を発揮し最後のウェストミンスターでトドメをさす(笑)。
しかし、この目論見はあえなくお客さんのリクエストで覆された。
「AXIOM80」をしばらく聴いた後で「今度はウェストミンスターを聴かせていただきませんか。」
やっぱりというか大型スピーカーの誘因力は凄い。
2時間ほどかけてひとおとおり聴き終ったが、元公務員とあって皆さま一様に慎重で口が堅い(笑)。
音がどうのこうのとハッキリ仰らないので、「どれが一番お気に召しましたか。」と、そっと水を向けると異口同音に「本格的にペアで聴いたのは初めてですがAXIOM80です。」
ヤッパリ(笑)。
「今度はアンプを替えてみましょうかね」と「171シングル」から噂の「6FD7シングル」へと繋ぎ替え。
「見事にAXIOM80の重心が下がりましたね」とお客さん。
「テレビ用の球ですけど中低音域の分厚いところがとても気に入ってます。まだエージングの段階ですからこれからもっと音がこなれてくると思いますよ。」
初対面の緊張も何のその、肩が凝らずにとても楽しい試聴会だった。
「今度は私のほうから近日中にお伺いしますので是非試聴させてください。」とお願いすると、「はい、いつでもどうぞ~。」
交流圏が広くなればなるほどオーディオは面白くなる!
オーディオの新しい交流もまた良き哉~(笑)。