「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

「腕力で書く」とは

2024年01月15日 | 読書コーナー

昨日の1月14日は日曜日なので、読売新聞の文化欄ではいつもの「新書」の書評特集だったが、そのうちの一つがこれ。



本のタイトルは「鬼の筆」、主人公は脚本家の「橋本 忍」氏。

日本映画史に残る傑作「生きる」「羅生門」「七人の侍」「砂の器」「八甲田山」とくれば、往年の映画ファンにとっては忘れられない作品ばかり。

ふっ、ふっ、ふっ・・と、つい含み笑いが出てしまった。タイミングよくちょうど読み終えたばかりなんですよねえ~(笑)。



元々「橋本氏」には興味があったので「一気読み」でした。たしかに「評伝の傑作」といっても間違いなし、機会があればぜひご一読をお薦めします。

興味深いエピソードを箇条書きしてみよう。

 父親に似て博打好きで、脚本料としてもらった200万円を帰りにそのまま競輪に突っ込んで全部スッてしまった。映画の興行だって当たるかどうかの博打みたいなもので、脚本の中にいろいろ仕掛けを講じて聴衆の反応を予測するのが楽しい。

 黒澤監督との軋轢(あつれき)も興味深い。脚本の出来は映画の死命を制するものといっていいが、一連の名作は橋本氏抜きでは考えられないものだったが、監督の考えは違っていた。

(橋本氏は)単なる雇人の一人に過ぎず、名声はすべて自分(監督)に帰すものと考えていた。橋本氏がやっと世間の陽の目を見たのは名作「真昼の暗黒」からだった。

 「腕力で書く」

256頁に次のような記述があった。

脚本家にとって腕力が大事だということは、(師事した)伊丹(万作)さんの基本なんだ。何となしに、僕は伊丹さんに教えてもらったからね。伊丹さんに「特別な勉強の仕方があるんですか」って聞いたんだ。

そしたら伊丹さんはねえ、「いや、そんなものはない」と。「ただな、橋本君、字を書く仕事だからね。原稿用紙に20枚なり、30枚なり、字を書くことを毎日やれ。書くことがなければ、いろはにほへとでもいい。とにかく字を書くことが基本だから」と、言われてね。

それで、字さえ書きゃいいのかなという風に思って始めて、1日にペラ30枚だ、40枚だ、平然とそれを書き続けたらやっぱり書き手としての腕は太くなるよ。要するに字を書けってことだな。それは野球選手のキャッチボールみたいなものだよね。絶えずやってて、それに慣れるということだと思うんだ。

そうしてやって来たのでね。やっぱりそれをやってきた強さじゃないかな。これはなかなかできないよ。実際に実行できるかどうか。僕はそれをやってきたわけ」

というわけです。

大脚本家を引き合いにするのはまことに恐れ多いが、毎日ブログを更新している我が身にとっては、「腕力で書く」とはまさにピッタリ・・。

「毎日のブログ更新ってたいへんですねえ・・」、誰も労(ねぎら)ってくれないので自分で言うしかないが(笑)、実は頭で書くのではなくて「腕力」で書いているつもり。

たとえば、「なぜ毎日更新するんですか? 1円の得にもならないのに・・」 もし、こう問われたらどう答えようか。

「ハイ、自分の取り柄は書くことだけですからね。高レベルのものは書けないにしても、間断なく続けることに意味があると思っています。いわば腕力勝負です。それに、いったん休むとリズムが崩れますからね、次に書くときに億劫になります。まあ、自転車操業みたいなもんです」

ただし、「音楽&オーデイオ」愛好家にとって「少しでも参考になることがあれば幸い」という思いは微かにありますよ~、それに・・、「自己顕示欲」がまったく無いといえば、ウソになりますかなあ(笑)。



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