大好きなオペラ「魔笛」(モーツァルト)に関して、新たな情報提供が二つあったので忘れないうちにメモしておこう。
☆ ショルティ指揮の魔笛(デッカ:1969年10月録音)
先日のブログでアナログ時代のデッカ・レーベル(イギリス)の録音があまりにも優秀なため、それらの原盤が次々にSACD化されていることを述べたが、その最たるものがショルティが指揮した「魔笛」(CD3枚組)。
当初のCD盤とSACD盤との試聴比較を記載していたところ、オーディオ仲間のMさん(奈良県)から次のCDを試聴してみてくださいと送付されてきたのが同じくショルティ指揮の「魔笛」。
ちなみにMさんはバッハ通で「マタイ受難曲」という大物が大好きな方だが、同時に「魔笛」を愛されるという稀有な方である。
さて、送付されてきたCDについて「どこがどう違うの?」というわけだが、明確な差異があった。
上段の左が普通のCD(以下「A」)、右側が今回Mさんから送付していただいたCD(リマスター版、96KZ、24-bit、以下「B」)、そして下段がSACD(以下、「C」)の3種類。
3セットとも演奏はまったく一緒だがそれぞれデジタル処理方式が違っているので、これらを“音質的に”聴き比べて欲しいとのご要望である。
昨日(12日)の午前中、これら3セットをみっちり試聴させてもらった。これほどの名曲を前にして、デジタル処理による音の差なんて音楽から受ける感動に比べるとまったく取るに足らぬ話だが、オーディオマニアだと自称する以上、降りかかる火の粉は払わねばなるまい(笑)。
さて、このところSACDを導入したことで音の良し悪しの判断基準が以前と比べてすっかり変わってしまった。
低音も高音もそこそこ出ていればヨロシ。ポイントは両脇のスピーカーから醸し出される音響空間の大きさや、雰囲気の実在感、そして歌手や楽器の前後の位置関係がきちんと分かるかどうかにある。
そういう点からすると「魔笛」は舞台上の音響空間の佇まいや演じる歌手たちの位置などがとても分かりやすくてテスト盤にはもってこいである。
たとえば第二幕に当たるCDの2枚目の4トラックの4分経過した辺りで登場人物が舞台上を走りながら遠ざかって行くシーンがあるが、そのときの足音の聞こえ方が実に面白い。
シ~ンと静まりかえった空間の中で足音の反響音が、時間的に、そして距離的にどこまで明瞭に聴こえるか、はたしてそれは自然な音なのか、といったところに注目すると、CD盤の録音状態のみならずオーディオ・システム全体のあらゆる良否がモロに問われてくる。
ジャズなんかのソースでは音の勢いで誤魔化せてもオペラでのこういうSN比がモノをいうシーンではどんなテスト盤を持ってきてもとても太刀打ちできそうにない。
つい、ぐだぐだと調子に乗って言ってしまったが(笑)、試聴の結果、Cが一番良かった。歌手の声や足音の響き方などがとても自然で広大な音響空間が実に良く再現されていた。その次に良かったのがAで、残念なことに最後がB。
Bはちょっと音像のエッジが際立ち過ぎるように思った。登場人物の声もややかん高くてちょっと聴き疲れする印象を受けたが、むしろ鮮明過ぎる不自然さといった印象でリマスタリングも良し悪し、デッカレーベルあたりだと、むしろ中途半端にいじらない方がいいのかもしれない。
ただし、これは我が家のシステム環境ではという条件付き。折角、送っていただいたのにご期待に添えなくてMさん、ゴメン!
次にもうひとつ。
☆ 「魔笛」を高音質で聴く方法
これまで幾多のクラシックファンに接してきたが正直言って最強だと折り紙つきなのがY・Kさん。ご本人のクラシック評論のホームページがとても充実していて、上記のMさん(奈良県)に教えてあげたところ「凄いですね!」の一言だった。下手な音楽評論家なんぞはとても足元にも及ぶまいと思わせる(笑)。
そのY・Kさんから次のようなメールが届いた。
「またひとつお知らせしたいことがあってメールいたしました。それは「魔笛」を高音質で聴く方法です。何を聴くかというと、ブルーレイ・ディスクです。
私の手元には以下の7点があります。1.コリン・デイヴィス指揮、ロイヤルオペラ(2003) 2.リッカルド・ムーティ指揮、ウィーンフィル、ザルツブルク音楽祭(2006) 3.ローラント・ベーア指揮、ミラノ・スカラ座(2011) 4.ニコラウス・アーノンクール指揮、ウィーン・コンツェルトゥス・ムジクス、ザルツブルク音楽祭(2012) 5.サイモン・ラトル指揮、ベルリンフィル、バーデン・バーデン復活音楽祭(2013) 6.パトリック・サマーズ指揮、ウィーン響、ブレゲンツ音楽祭(2013) 7.マルク・アルブレヒト指揮、ネーデルランド室内管、ネーデルランド・オペラ(2014)
これらの7点とも、PCM音声のフォーマットは48kHz/24bit PCM、つまりハイレゾです。なので、CDよりも遥かに高音質なのです。
これを聴く方法ですが,同軸デジタル出力を備えたブルーレイ・プレーヤーで再生します。1~3万円程度で購入できます。この場合に注意すべきことは、同軸デジタル出力から48kHz/24bit PCMが出力できることです。
ブルーレイ・プレーヤーの同軸出力は仕様上の制限で,48kHz/24bitPCMよりも上位のフォーマット、例えば96kHz/24bitを再生したときには48kHz/24bit PCMにダウンコンバートされて出力されてしまうのですが、今回の「魔笛」の場合は幸いにもジャストフィットでダウンコンバートが生じません。
ブルーレイ・プレーヤーで再生する際には、DTSサラウンドではなくPCMを再生し、同軸出力から,エルガーの同軸デジタル入力に接続して聴くだけです。
「魔笛」に関して私が〇〇さまに申し上げられることもあまりありませんが、この7点のうち比較的音質が良いのムーティ、アーノンクール、アルブレヒトでしょうか。
特に,ハイレゾで聴くアーノンクール指揮のウィーン・コンツェルトゥス・ムジクスのオーケストラサウンドは、涙が出るほど素晴らしく、序曲を聴くだけでゾクゾクします。
また、ラトル指揮のものは2013年5月27日(月)【26日(日)深夜】午前0時20分~午前4時40分にプレミアムシアターでも放映されていますが、これもハイレゾで聴くと別次元です。パパゲーノの笛がピアニカなのには驚きましたが、最近の「魔笛」はとんでもない演出が多い中にあって、演出も歌手も含めてあまり違和感がありませんでした。
ブルーレイの再生について補足すると、ブルーレイ・ディスクに96kHz/24bit PCMといった音声が入っている場合、これをフルスペックで再生する方法はHDMI出力からDACに接続するしかないのですが、これに対応しているDACはLINNの製品がある程度で、全く普及していません。実際には、高級なブルーレイ・プレーヤーのアナログ出力で聴くことの方が多いのですが、それでも今回ご紹介する「安価なブルーレイ・プレーヤーの同軸出力+エルガー」の音質には及ばないと思われます。」
成る程、そういう手がありましたか!
ブルーレイレコーダーなら比較的安価に手に入るし、同軸端子や光端子があったら、「エルガー プラス」に繋いで本格的な再生ができる。それにUSB入力が備わっていれば言うことなし!ディスクの方も4000円程度なのでビンボー人にはちょっと痛いがオークションを節約すれば何とかいけそう。
ひとつ真剣に検討してみっかな(笑)。