「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

もっと「声」が良かったらなあ・・

2025年01月15日 | 独り言

「演奏家が語る音楽の哲学」を読んでいたら面白い記事があった。(67頁)



「顔の悪い結婚詐欺師はいても、声の悪い結婚詐欺師はいない」という俗な諺があるそうだ。電話によるオレオレ詐欺などとは違い、多くの場合本人と間近に顔まで合わせているのに、結婚詐欺が成立する余地があるのはなぜなのか。

それはもっともらしい話の内容にではなく、声に騙されるからだという。よく響く声には、矛盾をはらむ内容をあたかも真実を語っているかのように思わせる効果があるらしい。

言われてみれば、確信をもって人が真実を述べるとき、その声はしっかりと身体に共鳴している。皆が無意識に持っているその経験則を詐欺師は利用する。自信に満ちたよく響く声がいつのまにか被害者の心に潜り込み、彼女の心を詐欺師の心に同化させる。つまり、心が響き合う。

こうなれば詐欺師はしめたものだ。良い響きの声は心を双方向に解放させる。そう考えると器楽奏者以上に歌手がモテるのもいたし方なかろう(フルート奏者(著者)としては残念だが・・)」

とまあ、以上のような内容だった。

巷間よくいわれる「女性は耳で恋をし、男性は目で恋をする」にピッタリの逸話ですね。

娘によく言い聞かせておかねば・・(笑)。

ちなみに、本書は「楽器の響き」、たとえばスマホのプアな音などに言及しながら、その響きの重要性について事細かく述べられていて、オーディオ愛好家には心強い一冊です。興味のある方はぜひ・・。

で、人の「声」の魅力についてはこのブログでもずっと以前に「声を読む」というタイトルで投稿したことがあります。ご記憶でしょうか?



その中で紹介した著書「声の秘密」のあとがきに次のようなことが書いてありました。

「声は人間の社会で大きな役割を果たしているのに驚くほど顧みられていない。そのもどかしさが本書を書くきっかけとなった。

言語やボディーランゲージについては詳しく調べられ、その重要性が高く評価されている。一方、声は(少なくとも学問以外の世界では)なおざりにされ、称えられることはほとんどない。

声は文字にとって代わられ、画像にその地位を追われて<目が耳に勝った>といわれているがそれは間違い。人は家庭や職場で、あるいは友人知人との交流において、”声を読む”という優れた能力を利用している。

声を正しく理解するためには、鋭い感性を身につけなければならない。 ”深く聴く” ことが必要だ。」

というわけです。

たしかに「声を読む」というのは実に ”言いえて妙” でいろんな情報が声から得られるのは事実ですね。

自分の場合に例をとると、人と接するときに話の内容よりもむしろその人の表情とか声音で「ホンネかどうか」とか、いろいろと判断していることが意外と多いことに気付く。

その一方、近頃の若い人たちはSNSの情報に振り回されて、対面関係における表情とか声音の細かな気配を察知する経験が少なくなり、感度がおろそかになるのではと心配ですね、ま、要らん世話だけど~(笑)。

ちなみに、聴覚が視覚よりも情動的になぜ有利なのかについては、あの「養老孟司」氏(解剖学者)の著書
「耳で考える~脳は名曲を欲する~」に次のような箇所があって科学的な根拠が示されています。

「耳の三半規管は身体の運動に直接つながっているので退化せずに残っており、情動に強く影響する<大脳辺縁系>と密接なつながりを持っている。そしてこれと一番遠いのが<目>。だから、目で見て感動するよりも耳で聴いて感動する方が多い。」

あ~あ、もう少し度胸があって、そしてもっと「声」が良ければ、大いに人生を楽しめたのかもしれないのになあ~(笑)。



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