1月11日に東京のショップから試験的に借りたマーク・レヴィンソンのプリアンプ「No.26SL」。
ありていに言えば音質はまあまあだったが、「女房を質に入れてでも是非手に入れたい」というほどの情熱は掻き立てられなかった。
エージングが完全に済んではなかったものの、まあ、これまでの経験でおよその傾向は分かる。
丁度、手術なども折り重なって返品してしまい、とうとう縁がなかったが、それでもやはりプリアンプらしきものは欲しい気がする。
その理由のひとつに現在のワディアのDAコンバーター(「27ixVer.3.0」、以下「DAC」)に組み込んであるICアンプの音は、まあいいんだけれども、どうも鋭すぎていつも緊張感を強いられ長時間ともなると聴き疲れする感じ。
どちらかといえばお客さんと一緒にちょっとの時間だけ聴くのはいいという短期決戦型といえる。
もう少し”まろやか”に”ゆったり”と長時間聴けないものかというのがひそかな願い。これは中高域用のSP「アキシオム80」の高域が極めて繊細なことも影響している。
また、低域にトランジスターアンプ(ケンウッドの01-A)を2台使っているが、電源を落としたときのショックノイズがボンッとかなり盛大に出る。
SPを傷めるので以前から気になっているのだが、その原因としてはこのワディアの「DAC」を以前分解して回路をじかに見たときにICアンプの終段にコンデンサーを組み込んでなかったのが判明したこと。
たかがコンデンサー1個でも回路に入れてしまうと音質は劣化する。
日本のメーカーなら安全策優先でそんな危険なことはしないが、アメリカのメーカーでは音質優先でコンデンサーを入れない代わりにそれなりの工夫をやっているものの危険と紙一重なのは争えない。
とにかくプリアンプを入れることでこのショック・ノイズも無くそうとの一石二鳥の狙い。
手ごろな価格で真空管のプリアンプはないものかとオークションで探していたところ、ピンと来るものを発見。
6FQ7という長目の形状の双三極管を左右で1本づつ使った極めてシンプルな回路の小さなライン・プリアンプ。
しかもメーカーの大量生産品ではなくて個人が注文に応じて作っている新品で、ネットならではの商品といえる。
値段も非常に手ごろで、これなら購入してダメなときでも諦めがつくとすぐに落札。
商品の到着は1月28日。
早速接続して聴いてみたがちょっと高域のサーノイズが目立つ程度でなかなかのもの。
しかし、これにもっと音象の奥行き感が出れば言うことはないのだがと、つい限界が見えてきて、価格に見合わない欲求が出てくるこの身勝手さ。
回路図が付属していたがサッパリ分からないのでオーディオ仲間で若い頃に首都圏で1000件以上もオーディオの巡回修理をやってたというMさんに送付して見てもらった。
「出力の乏しいCDプレーヤーに元気をつける目的を持った回路だね。一部に半導体を使った差動方式のプリアンプになっている。」
「少なくとも今回の目的に合った回路とは言えないねえ~。高域のサーッというノイズは半導体を使っているせいだと思う。自分なら半導体を外して純粋に真空管だけを利用した回路にするね。」
「真空管はそのままにして改造できますか」
「ああ,出来るよ。2~3日はかかるかな。おそらくワディアのICアンプは高周波に独特の歪みが乗ってるので長時間聴くと疲れるんだと思う。それを打ち消すために逆に真空管の歪みを利用しよう、毒には毒を以って制すというわけだ。」
「普通、アンプは歪みを出さないように設計して作るものだと聞いてますが逆に歪みを出すように作るんですか?」
「真空管の場合、歪みのまったくない音は面白くないと相場が決まってるよ。歪みをうまく利用すると効果が倍増するときがあるね。ちょっと回路を考えてみようかな。それとボリュームが付いてるけどDACのを使えばいいから取り外したほうがいいね」
「それでは改造をお願いしましょうかね。現物を明日(1日)の午前中の到着で送りましょう。」
1日の午後、Mさんから電話。
「内部を見たけど結構、キチンと作ってあるよ。やはりプロの手際だね。しかし、どちらかといえば見かけ優先。ただしケースがアルミ製で鉄を一切使ってないのはいいねえ、大量生産品だとこうはいかないよ。」
「微小電流を扱うプリアンプなので磁界を有して誘導電流を起こし音質に悪さをする鉄を使わないとは結構分かった人かもしれませんね。素性のいいプリアンプだと思いますがそれでは改造をお願いしましょうかね。」
「入力を1系統にして出力を3系統にしてくれると今のシステムにピッタリなので助かります。楽しみに待ってます。しかし、ボリュームとセレクターのないプリアンプとなるとこのアンプは一体どういう役割になるんですかね?」
「DACのクセを真空管の歪みで直す役割を持っているというだけで、プリアンプではないよ。ほら、CDとパワーアンプの間にライン・トランスを入れる人がよくいるじゃない。そのトランスの役割を真空管でマイルドにやろうということ。DACとパワーアンプの間の一種の緩衝地帯というわけだ。」
「ただし、あまり期待されてもこればかりは出来上がってみないと分からないよ。本当は機器を追加して問題の解決を図るのは反対なんだ。音が1枚ベールを被ることになるからね。まあ、SN比を稼ぐためにDACの出力に対してどれだけゲインが下げられるか試してみようかな。」
以下、続く。
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