内閣人事局改廃は不可避
2018年3月20日
森友学園関連の文書改ざんを巡る国会審議を続けているうちに、新事実も飛び出し、安倍政権は苦しい状況に追い込まれています。政治状況からすると、最大の選択肢は、9月の総裁選における3選断念でしょう。世論調査の支持率急落に対する党内の焦り、前川・前文科次官の講演に対する圧力、検察の捜査の進展が加わると、自民党内でも安倍下ろしの流れが加速してくるみられます。
麻生副総裁・財務相は「森友問題の発端は首相夫妻にあるのに、なぜ自分が辞任しなければならないのか」と、不満の様子です。「安倍・麻生」、つまりAA対立は乱気流になりかねません。批判の集中砲火を一身に浴びている佐川氏に関連して、前任・理財局長の迫田氏の責任追及の動きもあり、「佐川・迫田」、誰が本当の責任者かを問うSS対立も浮上しかねません。
新聞論調をみると、朝日新聞は打倒安倍政権に執念を燃やす一方、読売新聞も安倍政権を見限るような雰囲気を感じさせます。首相が検討している放送法の改正(政治的公平性の撤廃など)には、危機感をあらわにし、1,2,3面を使った17日の紙面は政権批判に遠慮を捨てた印象です。
窮地を切り抜けられるとすれば、北朝鮮がまた暴走を始め、内政より安全保障が最優先される国際情勢の再来です。米朝会談で北の核放棄に向け劇的な展開があれば、やはり強固な長期政権が不可欠との世論の揺り戻しがある場かもしれません。これは楽観的な見方で、結局、北の核放棄は至難でしょう。
憲法改正も結局、先送りか
3選断念の後、安倍政権はどうするか。「総裁選で後継を選ぶ」と、明言するしかありません。3選断念は、総仕上げにするつもりだった憲法改正の断念を同時に意味します。総裁を続け、粘って憲法改正に持ち込む選択肢はどうか。国会発議にまでこぎつけても、首相不支持が50%を超えたとなると、国民投票で勝てる公算は相当に厳しくなりました。負ければ、退陣を意味します。
政権のトップ、側近、担当省庁よる不透明な取引・画策、虚偽で固められた説明、関連文書の改ざん、廃棄の規模は、前代未聞、戦後最大ともいえます。3選断念に傾きつつ、世論の支持を少しでも、回復させる手を次々に打ってくるとすれば何か。
1つは内閣人事局の廃止です。今回の事件を招いたのは、官邸による官僚人事への政治介入の行きすぎという背景があります。もっとも、官僚組織には縦割り、省益優先、前例踏襲主義などがあり、人事局を廃止すれば、官僚制の弊害が復活します。内閣人事局への歯止め、官僚制が持つ弊害をどう調整するか。もっとも、検察捜査の区切り、全容解明までに時間がかかるとすれば、人事局の改廃は次の総裁候補が総裁選で競うという展開になるでしょう。
日銀の政治的中立の回復を
次は、金融政策の中立性の回復です。安倍政権がアベノミクスの名のもとに、政府と一体化した日銀が購入した国債は、過去最大の450兆円に達します。実質的な財政法違反にあたり、日銀の財務体質の劣化はひどいものです。どう国債を償還していくかの議論(出口論)さえ封じ込められています。確かに株価の急落を回避しながら、緩和政策を転換していくというのは、容易ではありません。だからこそ、異次元緩和は短期間に限定すべきだったのです。
いくら財政赤字を出しても、日銀が国債を購入してくれるため、政権にとっては、都合のいい財布と、勘違いしているのです。1000兆円を超える国債の返済は次世代に回していくことを意味します。安倍政権の財政再建計画を信じまる人はまずいない。政治、行政不信がここまでくると、消費税10%引き上げ(19年10月)の公約実現もあやしくなってきます。次期総裁選は人気だけでは戦えません。
黒田総裁は任期途中で退陣し、後任は日銀プロパーとし、政治からの中立性を回復する。緩和論者ばかりで固めた政策委員に、財政の専門家も加え、金融と財政バランスを回復させる。
安倍政権は頻繁に解散、総選挙をやりすぎました。選挙のたびに、カネのかかる目新しい政策を掲げるようことを続け、財政赤字拡大の一因となりました。財政危機の最中に、ポピュリズムをやりすぎました。政策を変更する際は、きちんと検証し、スローガンだけを書き換えるようことを今後はしない。政策立案も首相の思い付き、人気取りで行うのでなく、公正な政策決定メカニズムを回復する。
最後に、メディアに対する中立性の回復です。政権の宣伝機関になるような圧力をかけないことです。放送事業の見直しは、政権の意に添うようにメディアを誘導しするのが大きな狙いでしょう。こんなことを続けてきたから、メディアの政治批判力が落ち、今回のような不祥事が起きる土壌を生み出したともいえましょう。
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