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インフレ率を加味した「史上最高値の株価」は5万7千円のはず

2024年02月16日 | 経済

 

3万8900円の実質価値は2万700円

2024年2月16日

 日本の株価が34年前につけた史上最高値3万8915円の圏内にまで高騰しました。過去34年間の平均インフレ率0・6%を加味すると、実質的な最高値は5万7000円になるはずです。チャットGTPに質問しましたら、そういう回答でした。そこまで高騰しないと、通貨価値が同等にならない。

 

 株価は景気動向、インフレ率、企業決算、内外金利差、為替レート、国際情勢など、様々な要因で決まります。遊びのつもりで、株価がインフレ率にスライドして変動すると仮定して、チャットGTPに聞いてみたのです。

 

 逆に最高値の3万8915円がインフレ率にスライドして目減りしていると仮定すると、実質価値は2万700円だそうです。大雑把な計算ですし、株価の名目価値と実質価値を比べることにどの程度の意味があるのか。まあいろいろな視点から「史上最高値」の眺めてみることもいいでしょう。

 

 株価は16日も寄り付きで600円高の3万8700円で、外人投資家を中心に「買いが買いを呼ぶ」という展開になっています。1989年12月29日の史上最高値3万8915円の圏内です。今回も、ある種のバブルなのかもしれません。

 

 日経新聞は「史上最高値を視野、『割安日本』」に投資マネー」(14日)と高揚感に満ちた紙面編集です。「上昇企業の好決算が歴史的な株高を支えている」(同)と。この「歴史的な」という表現は証券業新聞ならばともかく、一般経済紙ならば使ってほしくない。

 

 数字だけからみて「歴史的な株高」というのはどうなのでしょうか。これも遊びのつもりで「株を買わないで、資金運用していたらどうなったか」。chatGTPに質問してみましたら、「過去30年間の平均短期プライムレート(ゼロ金利の期間を含める)は3%。仮に100万円をこの金利で運用していれば、現在7・6倍になっている」と、回答してきました。

 

 株を保有していたため、大損をしていたということになります。単純に考えれば、日本の株価も3万8915円の7・6倍になっていれば、預金に負けていなかった。chatは「米国のダウは直近の30年間で3千754㌦が3万400㌦(昨年12月現在)となり、9倍になった」とも答えています。

 

 バブル景気の崩壊後も、しばらく高インフレが続き、日銀は公定歩合を6%まで引き上げました。この10数年のゼロ金利を含めても、過去30年間の短期プライムレートの平均は3%と高い。ですから、銀行預金で運用していても、かなりの運用益がでて、9倍になっていたということです。

 

 さらに「EU(欧州連合)の株価は、ユーロストック50指数で4倍になった。ドイツ8・5倍、仏3・4倍、英2・3倍」とのことです。日本はやっと34年前に戻ったのですから、1倍ということです。「1倍に戻っただけなのに、株価が最高値(更新)」とかいうのは、おかしい。

 

 単純計算にしても、他国と比較すれば、「過去30年間で、株価は米国は9倍、EUは4倍になったのに日本は1倍に過ぎないことの意味を考えよう」というのが新聞の解説としては、正解でしょう。

 

 過去に記録した最高値はインフレ・スライドで計算すると、5万7000円に相当するので、これを超えないと、最高値の更新にならない。逆にインフレによる実質価値を勘案すると2万700円にまで減価する。つまり株価が2万700円を超えたところで、最高値を更新していた。まあ数字の遊びです。

 

 要するに、日経のいう「歴史的な株高」は国際比較やインフレ率の視点が抜け落ちた視野の狭い表現ということになります。大雑把でもいいから、いろいろな計算値を比べてみてほしいのです。

 

 30年前のバブル経済のピークの頃、地価も暴騰し、「皇居の土地を売ればカリフォルニア州が全部買える」、「東京はニューヨークをしのぐ世界の金融センターになる」と、真顔で議論する専門家もいました。現在の株価を指して「歴史的な株高」という記者らは過去を学んでいません。

 

 株価の国際比較以上に懸念すべきは、日本のGDPがドイツに抜かれ、世界4位に転落という公式発表です。ドイツのGDPが物価高で膨張し、さらに日本は円安(1㌦=150円)が進み、ドル建てでみたGDPは4兆2100㌦、対するドイツは4兆4500㌦で、逆転されました。

 

 外人投資家は日本のゼロ金利で円建て資金を調達し、日本株に投資すれば、簡単に儲けられる。日銀総裁は「金融政策を転換するとしても、大規模金融緩和は維持する」と表明していますから、どんどん金利が上げるようなことはないと保証してくれています。人がよすぎます。

 

 国内投資家には、証券会社の勧めで外国株、債券を買う人が多いらしく、円安要因になる。円安で輸入物価が上がり、暮らしに影響がでる。昨年後半、2四半期連続のマイナス成長になったのは、物価高による消費節約の結果でしょう。スタグフレーション(不況下の物価高)の気配があるのかもしれない。とにかく日本の金融財政政策は、ちぐはぐなのです。

 

 

 

 

 

 

 


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