ウクライナ戦争からの教訓
2022年4月14日
ロシアのウクライナ侵略に刺激され、「憲法に非常事態条項を明記すべきだ」との主張、さらに「核シェア(共有)を」との声が聞かれます。その前にはっきりさせておくべき重大な問題が忘れられていると思います。
それは非常事態の発生や核戦争の懸念が生じた場合などに備え、首相官邸の機能をそっくり移して指揮をとれる地下シェルター(避難所)が準備されているのかどうかという問題です。それがないようなのです。
堅固な造りによる地下シェルターがなければ、現在の官邸(写真)が爆撃を受けて機能不全に陥った場合、緊急事態に対して指揮をとる司令塔さえない。また、いくら米国と核シェア(共有)したところで、核攻撃に耐えられるよう地下に設置した作戦本部を用意しておかなければ、意味がない。
ロシアによる残虐なウクライナ侵略の映像を見るにつけ、ロシア軍はゼレンスキー大統領個人や政府・軍司令部に対する空爆、襲撃も考えていると想像します。クライナ側も当然、それに備えて大統領府機能、軍の指揮機能を地下シェルター(避難所)に移し、秘密裡に使用しているに違いない。
シェルターは複数、分散して構築され、そこで作戦会議を開く。政府や軍の要人が長期に居住できる空間もある。緊急対応できる医療施設、長期にこもるための飲食料品の備蓄もしてあると想像します。
一方のロシアのクレムリンには、大統領政府機能が置かれ、緊急事態に備えた巨大な地下シェルターもあるはずです。通常の空爆ではびくともせず、核攻撃にも耐えうる。北朝鮮の金正恩総書記の居住場所は地下にもあり、官邸機能も地下にもおいてあるはずです。
米国はどうか。ホワイトハウス(大統領府)の地下に大統領危機管理センターがあり、同時多発テロ事件(2001年)の際は、ブッシュ大統領がここから国民向けに演説、国家安全保障会議もここで開きました。当然、地下シェルターとして設営したのでしょう。
日本の首相官邸のホームページをみると、「地上3階、地下1階。鉄筋コンクリート構造」とあります。首都直下型地震など緊急事態などに備えて、頑丈な造りにしたというのはいいにしても、次元がかなり違うと思います。
地下1階には、官邸危機管理センターがあり、緊急事態発生時には、政府の危機管理の中枢となる施設です。激甚災害時には、首相が緊急災害対策本部を設置するとのことです。それは海外に見られるような国際紛争対応、戦時を想定した地下シェルターといったものなのか。違うでしょう。
プーチン露大統領はウクライナに対し残虐な大量殺人、民間施設への空爆、襲撃を繰り返し、核使用までちらつかせています。時代は一変し、何をしでかすか想像できない独裁者に対し、国家安全保障政策の再構築が必要です。政府機能を保全できる施設の整備も問われます。
隣国の北朝鮮の金正恩総書記はミサイル発射実験を重ね、核武装を強化しています。日本はもちろん、米国本土まで核ミサイルの射程に範囲に入っています。「在日米軍基地を核攻撃する選択もある」と言い出すかもしれない。今の日本の危機管理・防備体制では、お手上げでしょう。
そのような時代を迎えてしまったのに、「和風の建築構造を大切にして設計された気品のある美しさ」(官邸ホームページ)を誇っているようでは心配です。大規模襲撃、空爆があれば、官邸の地上部分は吹っ飛び、1階だけの地下部分も簡単に壊滅するでしょう。
おまけに歴代首相の多くは、官邸住まいを嫌い、自宅から通勤していました。安全保障法制の強化にこだわった安倍元首相も自宅通勤でした。万一の場合、誰れが指揮をとるのか。岸田首相が官邸に引っ越したのは当然です。米大統領、露大統領が自宅から大統領府に通う姿は想像できません。
地下鉄の駅構内が核危機の際の避難所となりうるとの指摘があります。一般市民の避難所となっても、官邸機能を担える場所にはなりえません。地下シェルターとして当初から設計、整備しておくべきものです。
ウクライナ戦争では、ドローン(無人機)が駆使されています。ドローンといえば、2015年4月22日、首相官邸の屋上のヘリポート付近に着地(落下)しているのが見つかった事件がありました。
逮捕された犯人によると、着地させたのは4月9日ということですから、2週間弱、官邸は気が付かなかった。監視カメラがあったらすぐ分かったはずですから、それすら設置されていなかったのでしょう。
ドローンに不法着地された官邸では、安全保障法制の整備に安倍政権が懸命になっていました。その官邸の屋上に「反原発アピール」を目的とした犯人がドローンを気づかれずに着地させる。平和ボケもいいところです。
最後に、防衛庁には地下シェルターがあるだろうと思って検索すると、「旧日本軍の大本営地下壕跡(防衛庁敷地の市ヶ谷)を一般公開」(昨年6月)をみつけました。そんなことより、防衛庁が堅固な地下シェルターを備えているかどうかが知りたかったのです。
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