新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ

全国紙の元記者・中村仁がジャーナリストの経験を生かしたブログ
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VWに対する制裁措置の甘さ

2015年10月04日 | 経済

 

 

排ガス違反車の即時走行停止を

2015年10月4日

 

 超優良企業の代表とされた独WVの排ガス規制逃れは、連日、続報が伝えられています。公表された事実、メディアの報道で判断する限り、不思議でならないことがいくつもあります。


 まず、1100万台に排ガス規制の不正なソフトが組み込まれ、これらの車を路上で走行させると、規制規準の40倍もの窒素酸化物を放出するそうです。事件が明るみになったにもかかわらず、ユーザーが保有する欠陥車の走行が停止を命じられたということは聞きません。


 これほど地球環境の保護、温暖化ガスの規制強化が叫ばれているのに、なぜ欠陥車両が走り続けているのでしょうか。窒素酸化物は光化学スモッグ、酸性雨を引き起こす汚染物質です。二酸化炭素の300倍もの温室効果があり、オゾン層破壊物質でもあります。


改修終了まで放置するのか


 リコールして改修するまでは、放置していていい、ということでしょうか。放置することによる環境汚染の賠償はどうするのでしょうか。せめて抜き取り検査を大々的に実施し、違反車両は走行停止にすべきでしょう。ユーザーが被る損害はメーカーが負担すべきでしょうね。


 運転者自身に危害が及びそうな欠陥車は、リコールによる修理が終わるまで自発的に運転を控えるでしょう。今回のような排ガス問題は、運転していても自分の身の危険は感じませんね。それだけ対応がやっかいです。

 

 9月の新車販売は米国で、前年比で微増にとどまり、他メーカーは2ケタ増です。よく分らないのは、売れた新車が規制基準を満たすような改造が行われたどうかの言及が報道ではありません。違反を承知で販売することはいくらなんでもないでしょうから、不正の発覚後、不正ソフトを改修したと思うのが自然です。そうなのですか。


欠陥中古車も販売か

 

 次は中古車です。燃費がいいということで、VWのディーゼル車は中古車市場でも人気があるはずです。規制当局が販売停止処分にしたというニュースは目にしていません。VW社自ら直ちに修理して店頭に置いているという話も聞きません。


 走行中の車の走行停止、中古車の販売禁止にしたら、車社会の米国は大混乱に陥り、マヒしてしまうでしょう。不正の事実関係、犯罪性の有無、規制当局の責任が確定するまでは強硬措置に踏み切らないということなのでしょうか。


2兆円制裁金は何に使う


 さらに分らないのは、米国が課す制裁金は最大で2兆1600億円だそうです。その制裁金は米国の国庫の収入になるだけなのでしょうか、米国の国庫を潤すだけなのか。違反の重大性に対するペナルティーにしても、それだけなのか。窒素酸化物による環境汚染、大気汚染対策費用に使うのか使わないのか。使うとすれば、米国の環境対策費は上積みされるのか、されないのか。


巨大事故における企業と国家


 フクシマ原発の事故でも、東電の負担や電力業界の資金協力で汚染物質の除去を進めています。避難住民対策でも費用を負担しています。それだけでは不十分でしょうし、またどこまで負担させたらいいのか。東電をつぶしてしまったら、賠償、補償の出し手がいなくなります。殺さないようにして、目一杯の責任をとらせ、連帯責任がある国も直接、間接に費用を負担していくということでしょうか。


 世界金融危機を招いたリーマンショック、東電の原発事故、今回の自動車のVW事件など、地球環境、世界市場に与えた損害が巨大になる場合、企業ばかりでなく、国家がどういう協力をすべきなのか。市場が巨大化、一体化し、巨大企業が市場を支配する時代です。そこにまた新しい事例が加わりました。


 













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