風はくるくる変わる ２０１３年９月３０日
大阪・堺市の市長選挙で、維新の会の橋下氏側が破れました。維新の会にかげりがすでに見え初めており、今回の敗北は維新の会の勢いをさらにそぐことになるでしょう。一時は政界の牛若丸、時代の異端児、あるいは時代の寵児などと持ち上げられた橋下旋風は今後、どう考えればいいのでしょうか。
何年か前、自民党政権が続いていたころ、自民党の実力者がゲストに招かれた懇話会に出席した時のことを思い出します。その方は「政治は風みたいなものです。その風はくるくる変わります。安心していてはいけない、と同時に風が吹き始めると、どうしようもなくなってしまう」と、正直におっしゃっていました。それからまもなく、民主党政権が誕生し、「これで日本の政治は変わる」とはしゃいだ新聞もありました。そして民主党の風はやみました。
わたしは大阪に出向していた経験があります。赴任してまもなく、橋本氏が府知事に当選し、さらに市長戦に転進し、ここでも勝ちました。会議で会ったことは何回かあります。とにかく口の回転が速く、しかも無遠慮な口調は大阪の風土にあっているようでした。関西のいくつかのテレビ局も橋下人気をあおるのに大きく貢献しました。とにかくメディアが飛びつきそうな発言の速射砲です。世論調査でも人気は上がる一方で、維新の会の設立で、風はとうとう中央政界の台風の目になりました。
市の行政では、公共交通、教育行政、職員の規律などの問題で、恐れを知らず、真っ向勝負で挑み、大きな期待を抱かせたのは事実です。その一方、橋下さんは、何を言えば世間に受けるかに本能的な関心を強くもっていたように見受けられました。世論の反応を調査機関を使って調べ、自分の発言、行動を考えていくタイプといわれておりました。政策の中身より、世論の受け方に比重をかける傾向が強くなりすぎて、世論は橋下さんに懐疑的になっていきました。そして今回の結果です。
地方政治家として、特に大阪ではやることがたくさんあり、突破力のある橋下さんにもっと実績をあげてもらいたいと思います。中央政治家としてはまだまだ未熟だったのです。慰安婦問題での発言には歴史的に正しい指摘も含まれていたにせよ、いかにも未熟でした。人気低下の挽回をねらったか、米国のご機嫌をとろうとしたのか、米軍機オスプレイの八尾空港の配備推進なども、何かあせりがあったのでしょう。国政をゆだねるのはまだまだ無理ということなのでしょう。
それでも国政に関与したいというなら、自ら出馬すべきだったでしょう。そういう選択はせず、自ら人選した国会議員も首を傾げる集団ですね。政治家養成の塾に千人単位の参加者があったり、区長公選に相当数の人が応募してきたり、橋下人気に便乗しようとした人も多数に上るでしょう。風が吹き出すと、皆、あおられるのですね。
