ある晩、愉快でないできごとがありました。些細といえば些細な話なので忘れることにしておりました。それが、ある時、周りの人にに話すと、「けしからん、けしからん」と皆がいいます。規律が求められるSP,それも元首相のSPなので、皆さんにもお話することにいたしました。
SPとは、Security police の略称で、要人の身辺警護をする警察官です。警察に判断基準があって、元首相はSPがつくことになっているようです。元首相に万が一のことがないように、身辺に付き添い、警護いたします。
昔の記者仲間で時々、夜、会食して議論する会を作っており、わたしもいくつか参加しています。ほとんどが新聞記者のOBで、多くが年金生活者です。会合は会費制、割り勘でやります。官僚OBなどもメンバーであることがあり、かれらも同額の会費を払い、議論に参加します。会合にはゲストを招くことがあり、お話しを伺い、遠慮のない質問を浴びせます。ゲストには謝礼を払いません。そのかわり、ゲストの食事代はわれわれが割り勘で負担します。
その晩は、ゲストが元首相であったこともあり、実り豊かな会合になりました。会合が終わり、ゲストを見送った後、幹事役がその晩の会費を集め、帳場に払いにいきました。幹事役が不快な表情を浮かべて戻ってきました。何があったのか。「付き添いのSPがこの店で食事をしました。その分はSPからいただいておりません。皆さんがはらってください」と、帳場でいわれたそうです。
簡単な弁当程度の食事ならともかく、コース料理の食事だったようです。この晩は、高層ホテルにある日本料理屋が会場でした。安くはない金額です。押し問答するのも、おとなげないので、わたしたちが割り勘で、SPの分を払いました。たとえば、経済人の集まりとか、社費で会食している会合にSPがついてきて、そこで食事をとった場合、経済人側がその代金を払うことが多いでしょう。もともと社費による負担だし、あまりケチなことをいう人たちではありませんからね。
あるところでその話をすると、議論百出です。「公務中の食事なのだし、SPは自腹で負担すべきだった。相手側(つまりわれわれ側)に負担さすのは論外だ」「要人のそばを離れるわけにいかず、同じ料理屋で食事をしなければならない。コンビニ弁当を買ってくるわけにもいかないだろう。仕事中なのだから、警察側がきちんと食事代を支払うべきだ」「警察が負担しない慣行なら、その要人が払うべきだ」などなど。
わたしは、ある時期、社業での夜の会合があり、社用車の運転手さんに待っていてもらう場合、心づけを渡し「これで食事をしておいてください」というやり方をしておりました。そういう人がきっと多いと思います。
もうかなり昔の話を思い出しました。記者クラブの有志が官庁側の数人と夕食をともにしながら、懇談したことがありました。費用は記者も官僚もお互いに自腹です。相手側は、その当時は公用車付きの人たちでした。会合の最中、おかみさんが幹事役に「運転手さんが一人あたり3000円の食事代をだすか、店側が夕食弁当を皆に用意してくれ、といってきました。どうしましょうか」といってきました。「はねつけてくれ」と幹事役がいったのはいうまでもありません。当時はまだそんな慣行があったのですね。
今や、綱紀や規律が厳しくなり、そうした悪習はめったにないはずです。と思っていたところに今回のSPの話です。些細といえば、些細なことです。でも、釈然としません。要人をお招きした側にツケを回す。いつもこうしているのではないかと想像できます。このSPに限った話ではないのではないかとも思います。この程度のことでも、きちんと規律を守れなくて、要人の身辺警護ができるのだろうか。これが結論です。今回は些細な話を持ち出して、すみませんでしたね。
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