突出する読売新聞の猛反対
2015年9月11日
いったい何が起きたのか、何を考えているのか。消費税10%時(17年4月の予定)の負担軽減策(財務省案)をめぐる新聞界の反応です。全国紙、なかでも読売新聞の反対キャンペーンが突出しています。
財務省原案の報道は1週間前からです。与党税制協議が10日に開始されましたので、財務省がそれに向けて案をまとめ、正式には昨日、両党に提示したのです。新聞界にも、財務省にも、両党にも、首相官邸にも表にだせない腹の内、本音が隠されていますので、そこを読み解かなければなりません。
紙面をまるで総動員
猛然と噛み付いたのは読売新聞だと、世間はみています。この1週間、連日のように、一面、2面、経済面などおびただしいスペースを割いて、財務省案の撤回、当初案である軽減税率(生活必需品等の8%据え置き)の導入を迫っています。
主な記事を拾ってみますと、「給付型は軽減感が薄い」(5日)、「与党合意に背反。国民に煩雑さを強いる」(6日)、「マイナンバー活用案に懸念。端末配備が難しい」(7日)「財務省案に疑問続々」(9日)、「軽減税率は欧州で定着」(10日)、「給付上限5000円に引き上げも、与党反発で懐柔案」(10日)などです。
11日になると、「協議に一段と厳しさ。首相は財務省案にこだわらない。白紙撤回も」と。事実のフォローなのか、期待なのか判然としない表現です。社説では「国民への配慮を欠く。軽減税率の導入を貫け」と、追い討ちをかけています。
新聞に軽減税率は必要と願う
軽減税率になぜここまでこだわるかといえば、財務省原案では、新聞・出版物が除外されてしまうからだと、推察されます。生活必需品への軽減税率導入なら、その時、一緒に新聞にも適用させられるだろう、との思惑があるからでしょう。新聞の部数が落ち、新聞離れが深刻になっており、そのうえ消費税があがると、部数減に拍車がかかるとの懸念を強めているのです。
これまでの与党協議では、新聞に対する軽減税率の適用は、ほとんど議論されておりません。財務省はまったく乗り気ではないでしょう。そういう状況の時に、「給付型負担軽減制度」が決まってしまえば、新聞界の望みは断たれます。
マイナンバーが悲願の財務省
財務省の本音はいくつかあります。、巨額の税収減につながる軽減税率は避けたい。税金の還付(給付)の際にマイナンバー・カードを使わせることで、一気にマイナンバーを普及させたい。そうしておけば、将来、国民の所得・資産の詳細を把握でき、脱税を防ぎ、徴税に役立てられる。還付金に上限を設けたり、所得制限をかけたりでき、社会的公正を狙っていると、主張できる。などなどです。
与党はどうでしょうか。「軽減税率は選挙公約になっている」というのは事実です。そこで財務省は原案を「日本型軽減税率制度」と命名しました。与党の顔を立てたつもりでしょう。実体はとうか。原案は「軽減税率制度」ではなく、「負担増を軽減する多給付金制度」です。これを「軽減税率制度」と呼ぶのは、官僚の悪知恵で、ルール違反です。軽減税率に熱心だった公明党が怒るのは当然でしょう。
自民党はどうか。「マイナンバー制を早く普及させられては困る」でしょう。支持層に多い金持ち、資産家、高所得者ほど、この制度を嫌うからです。
決断の時期をずらしたい首相
首相官邸といえば、財務省案に沿って、年内に対応が決まってしまうと、2017年4月の10%上げをずらすわけにはいきません。予算案、予算関連法案を決める年内に決着し、16年度の法案が成立し、それを前提に関連業界が「マイナンバー型給付金制度」で準備に走りだすと、安倍政権はもう後戻りできません。
表向きは「予定通りに10%を実施」と、首相はいっています。実際は、一年半先の経済、景気情勢の見極めが難しいのに、財務省ペースで早々に「10%」が固まってしまるのは避けたいと思っていることでしょう。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます