電通と組織委の機能停止で準備不能
2022年11月27日
東京五輪の贈収賄汚職で区切りがつくかと思っていたら、大会事業の受注を巡る入札談合が発覚し、大会組織委員会までが関与した官製談合事件の疑いが浮上しています。来年に決める冬季五輪開催地(2030年)が札幌になることはもはや絶望的でしょう。
東京地検特捜部が増収賄事件の捜査に乗り出し、全容がほぼ明かになった段階で、私は2本のブログを書き、札幌冬季五輪を早期断念を決断するよう主張しました。関係者はなにをもたもたしているのだろうと思う。
「五輪汚職の拡大で札幌冬季大会は早期の断念が賢明」(9月18日)、「五輪汚職を反省し、札幌冬季大会の誘致を断念せよ」(11月10日)です。様子を伺ってばかりいて、大きな決断をできないのが日本の特徴です。国も自治体もJOCも大局を見ず優柔不断、意思決定能力に欠ける。
大口のスポンサーの何社かが「札幌五輪からは降りる」とでも意思表明すれば、それの段階で事実上、誘致断念が決着します。スポンサーも国、自治体、JOCの動きを見ているだけで、主体的に動こうとしない。
そうこうするうちに、談合事件の発覚です。東京五輪のテスト大会の入札談合疑惑を巡り、電通など大手広告会社2社と組織委の元幹部の自宅を捜索しました。組織委大会運営局が絡んで、受注調整をした疑いがあり、そうなると、官製談合事件となります。
テスト大会といっても、落札すれば本大会の運営も一体で受注できる。談合の疑いのある入札26件のうち、半数以上が「1社応札」だったといいますから、事前に落札業者を決めていたと、当局は見ています。競争制限で大会運営費が増大し、こちらのほうがたちが悪い犯罪です。
高橋容疑者の巨額汚職事件の段階で、札幌冬季五輪の誘致が難しくなっていたところに、組織委と電通などによる官製談合事件となれば、事態はこのほうが深刻です。確実に札幌五輪は誘致不能になります。
東京五輪でも、電通が仕切って、スポンサー、メディアをまとめて誘致運動を盛り上げました。それで市民の五輪支持率を底上げし、IOCにアッピールするのです。今回は電通が動けない。
だらだら準備を進めていたら、損失が拡大するばかりです。来春の札幌市長選が誘致派と反対派の泥仕合にならないよう、早期に誘致活動を打ち切るべきです。札幌市が主催者でも、実質的に国費の投入もあるのです。
札幌五輪組織委員会は東京五輪の縮小版です。その組織委が高橋治之・理事(電通元専務)一人に振り回され、約2億円の贈収賄事件に発展しました。巨大スポーツビジネスを公正に運営するノウハウ、ガバナンス、規範意識も組織委にはないことが立証されました。
組織委の会長は当初、森・元首相(後に橋本氏)で、事務総長は武藤・元財務次官という布陣でした。知名度があっても、森氏、橋本、武藤氏にはスポーツビジネスの経験、知見もなかった。高橋被告にいいようにかき回され、それを監視する理事会の機能、監査機能も落第でした。
それに加え、官製談合事件です。このほうがはるかに影響は大きい。贈収賄事件の時は組織委は被害者だったのが、官製談合事件となると、組織委が国や自治体に対する加害者となる。
事務局には、組織委員会職員が「準公務員」で、入札に関して何をしていいのか、いけないかの規範意識が欠けていたのでしょう。しかも、事務局には受注企業がからの出向者が多数いて、業務を仕切っていたから、談合が犯罪になるという意識がなかったとしか思えません。
電通が日本最大のスポーツビジネスの仕切り役であり、しかも電通に巨額の広告収入、スポンサー収入手数料が入る仕組みに根本的な原因があったのです。政にも官にも自治体にも、大きなスポーツビジネスを執行する力がないということがはっきりしたのです。
事件の解明には時間がかかる。その間、電通、JOC、スポーツ庁は札幌五輪の誘致準備ができるはずはない。本番でも、収支があうように、スポンサー料を集めることが難しいのではないか。
まして2つの事件の主役である電通の容疑が固まれば、少なくとも五輪ビジネスへの参入が禁止されることもあるでしょう。スポーツ関係に限らず、公共的ビジネスへの参入停止という処分もありうる。
電通は解体的な改革、企業体質の抜本的な改革に迫られる。経営トップも責任を問われ、早期の辞任表明が待たれます。社長交代を前提として、電通の解体的な改革に取り組むチームをスタートさせる必要もありましょう。
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