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閣僚のドミノ辞任は異常事態でなく「常態化事態」

2022年11月23日 | メディア論

 

政治ジャーナリズムの覚醒を求める

2022年11月23日

 1か月で3人の閣僚が辞任し、後任の総務相にも「政治とカネ」の問題が指摘され、さらに岸田首相には「宛名のない領収書」疑惑が浮上しています。こうしたドミノ倒し現象は、自民党政治の異常事態ではなく、新常態(ニューノーマル)なのでしょう。

 

 「新常態(ニューノーマル)」というより、以前から自民党政治で恐らく常態化していたのでしょう。そういう意味では、異常事態ではなく、「常態化事態」、つまり「常態事態」といってもよい。

 

 1人ずつ単発で問題が表面化すれば、釈明し、不備を詫びれば幕引きできたのかもしれません。それが次々に不祥事、不手際が連続すると、自民党政治の構造、体質の問題に拡大し、一つ一つを切り離せなくなる。一気に「常態化した自民党政治の病巣」への対応が必要になったと思う。

 

 新聞論調を読むと、政治ジャーナリズムは覚醒してほしいと感じます。日経社説は「一か月足らずで閣僚が3人の辞める異常な事態である」と指摘しています。毎日は全く同じ表現で「異常事態である」と、読売も「異常事態だ」と嘆いています。

 

 政治ジャーナリズムは「異常事態どころか、常態化した自民党政治の構造、体質に問題がある」となぜ指摘しないのか。「異常事態」なら対応によってしのげる。「常態事態」なら長期にわたる構造改革、体質改善なしに、政治を正常化できません。

 

 3人の辞任、更迭の理由は、旧統一教会との接点の問題(山際経済財政・経済再生相)、「死刑執行にハンコ」という職責を軽んじる発言(葉梨法相)、政治資金収支報告書のずさんな管理(寺田総務相)と、不祥事や不備・不正の類型が見事に勢ぞろいしています。

 

 「旧統一教会問題とは無縁」という理由で起用されたらしい松本総務相には、さっそく政治資金の処理における規制違反の疑いが浮上しました。さらに「本人たちに丁寧な説明を求める」と言い続けてきた岸田首相にも、「宛名書きのない政治パーティー領収書発見」の疑惑が浮上した。

 

 これが事実だとすれば、首相自身の説明、釈明が問われます。3人の閣僚を更迭、辞任に追い込んだだけに、首相自身はどう身を処すのか。首相自身の発言が自分自身に跳ね返ってきました。

 

 新聞論調は「対応が後手後手に回った」、「丁寧な説明が必要だ」、「首相の任命責任が問われる」で、各紙とも同じです。「タガを締め直して国政に臨んでもらいたい」(日経)も、「首相官邸と自民党との連携不足が目立つ」(読売)も、論じるべき次元が低すぎる。

 

 「後手後手」の理由は、身ぎれいな後任を簡単に見つけられないことが大きいでしょう。多くの議員が似たようなことをやっているからです。だから短期間では身元調査を十分にできかねる。

 

 平議員の不祥事はニュース価値は低い。閣僚に就任すると、ニュース価値が一気に高まり。文春砲(週刊文春)などに狙い撃ちされる。だから閣僚のなると、次々に疑惑が発覚する。

 

 朝日新聞は一面トップで、「首相陳謝『任命責任は重い』」との見出しで、首相の発言を伝えました。歴代の首相が閣僚の不祥事のたびに「任命責任は私にある」と発言してきたことか。任命責任を負うとは、具体的に何をするのか。何ができるのか。単なる政治用語でしかない。

 

 政治ジャーナリズムはそこを問わない。首相が「任命責任」を口にすれば、それで首相もジャーナリズムも幕引きをしてきたのです。軽々にそういう空疎な表現をジャーナリズムは使ってはいけない。

 

 野党を含め、政界の人材のレベルが低下していることは間違いない。国際市場で過酷な競争にさらされる民間企業とは違い、政界は日本国内、さらに言えば永田町という狭い世界に生息しています。それが人材の質的な低下を招く大きな一因になっています。

 

 それを監視すべき政治ジャーナリズムも、日本政治を国際比較して論じ、問題を提起する広い視点を持たない。政治家との接点を持ち、維持して情報が途切れないようにすることにエネルギーを注力しています。

 

 岸田首相も、葉梨氏も寺田氏も、後任の松本氏も皆、世襲政治家です。松本氏が「高祖父は初代首相の伊藤博文で、父親は元防衛庁長官、親族に外交官も多い」(日経)。そこまで書いても、世襲政治と小選挙区制がセットになり、政界を目指そうとする人材に対する参入障壁になっている構造的な問題に言及しない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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