相変わらずジメ〜っとした暑さが続いていますが、それでも朝夕の空気には涼しさを感じられるようにもなってきました。今はただ、来週から涼しくなるという天気予報だけが心の支えです(大袈裟な…)。
ところで、今日9月21日はホルストの誕生日です。
グスターヴ・ホルスト(1874〜1934)は、イングランドの作曲家、編曲家、教育者です。特に、管弦楽による組曲《惑星》があまりにも有名です。
ホルストは1874年、イギリスのグロスターシャー州チェルトナムに生まれました。王立音楽院を卒業後トロンボーン奏者として活動し、1905年から没するまでセント・ポール女学院の教師を務めながら作曲活動にも力を注ぎました。
ホルストといえば、何と言っても《惑星》ですが、今回は毛色の違う作品をご紹介しようと思います。今回取り上げるのは《吹奏楽のための第一組曲 変ホ長調 作品28-1》です。
この曲と、続く《吹奏楽のための第二組曲 ヘ長調 作品28-2》は、ホルストが教職にあった1909年に作曲されました。作曲の経緯や動機、初演の日時や演奏者など様々なことが不明ですが、1920年にイギリスの王立陸軍軍楽学校のバンドで演奏されたという記録があり、作曲者の娘であるイモージェン・ホルストによれば作曲と同年に演奏されている可能性が高いようです。
曲は3曲から成る組曲で、第1曲で冒頭に奏される低音楽器による主題が形を変えてすべての曲に現れ、全曲を通しての統一感を出しています。
第1曲:シャコンヌ Chaconne
シャコンヌは古典舞曲の一つから派生した音楽で、特定の低音・和声進行・リズムパターンを何度も繰り返す音楽技法を持つ曲のことを指します(同様の曲にパッサカリアがあります)。特にバッハの《無伴奏ヴァイオリンのためパルティータ第2番ニ短調》の終楽章に書かれたシャコンヌは有名なので、ご存知の方も多いかと思います。
冒頭8小節の低音楽器の主題に続いて、15の変奏が続いていきます。ラヴェルの《ボレロ》のように冒頭から最後にかけて大きなクレッシェンドがかかっている作りで、吹奏楽のダイナミクス能力を楽しめる作品です。
第2曲:間奏曲 Intermezzo
軽快なクラリネットによる刻みの上をオーボエ・クラリネット・コルネットが旋律を奏し、それらをトライアングルの涼やかな音色が縁取っていきます。中間部ではクラリネットによるシャコンヌの主題の変形が奏された後に冒頭の旋律が再現して、この楽章に登場する旋律が対位的に現れて静かに終わっていきます。
第3曲:行進曲 March
木管楽器のトリルを伴う短い序奏と祝砲のようなバスドラムの強打の後、いかにもブリティッシュ・スタイルのマーチが始まります。イギリスは木管楽器を含むウインド・バンド編成よりも金管楽器と打楽器だけで構成されるブラス・バンドのほうが伝統的にさかんであるためか、この楽章ではマーチの主部は金管と打楽器だけで書かれています。
トリオに入ると木管楽器による低音の旋律が現れますが、これも第1曲のシャコンヌの旋律に基づいています。最後はマーチの旋律とトリオの旋律が木管、金管立場を入れ替えて同時に演奏され、コラール風にトリオの旋律が奏された後、マーチのリズムに導かれてシャコンヌの主題の断片を掛け合いしながら賑やかに曲を閉じます。
私も中学生時分に、吹奏楽部でこの曲と第二組曲とを演奏したことがあります。定期演奏会でも披露した曲なので、今でも自身の担当したパートを思い出せるくらいです。
そんなわけで、今日はホルストの《吹奏楽のための第一組曲 変ホ長調 作品28-1》をお聴きいただきたいと思います。吹奏楽関係者なら知らない者は無いと言って過言ではない、ホルストの名曲をお楽しみください。