今日は朝こそ冷え込んだものの、日中はかなりポカポカとした陽気となりました。明後日から3月になることもありますから、本格的に春めいてきたのかも知れません。
ところで、今日は
ベートーヴェンの《交響曲第8番ヘ長調》が初演された日です。
交響曲第8番は、交響曲第7番などとともに1814年の2月27日に初演されました。第7番の殆どが完成した後の1812年にテープリッツで養生しているときに作曲し始めて、その年の内には完成したと言われています。
それまでの交響曲をはじめとしたベートーヴェンの作品は、ベートーヴェンを経済的に支えたパトロンたちに献呈されたものが殆どでした。しかし、この交響曲第8番はベートーヴェンの全9曲の交響曲のうち誰にも献呈されていない、つまり誰からも頼まれていない交響曲を作曲家が自発的に発表したことになります。
ベートーヴェンにとって交響曲第8番は絶対的自信作でしたが、初演での聴衆の人気はより大規模な交響曲第7番に集まりました(現在でもこの傾向があります)。この反応に対しベートーヴェンは
「聴衆が交響曲第8番を理解できないのは、この曲があまりに優れているからだ」
と言ったそうですが、自発的に作曲した作品に対する聴衆の反応の悪さにベートーヴェンが納得いかなかったのは想像にかたくありません。
交響曲第8番は他の交響曲に比べて小規模で、演奏時間もベートーヴェンの交響曲の中で最も短く30分かからないことなどから、スケールが小さい作品と言われることもあります。しかし、特に第1楽章や第4楽章はベートーヴェンらしい力強い音楽ですから、この曲のスケールが小さいと言うには早計と言わざるを得ません。
ベートーヴェンは第7番と第8番を作曲してから、しばらく交響曲を書きませんでした(《交響曲第9番》が初演されたのは10年後の1824年のことです)。ですから、もしかするとこの2曲はベートーヴェンにとって交響曲制作の一つの区切りとなるものだったのかも知れません。
そんなわけで、今日はベートーヴェンの《交響曲第8番ヘ長調》をお聴きいただきたいと思います。古楽オーケストラのハノーファー・バンドによる演奏で、古雅な響きのベートーヴェンをお楽しみください(インタビューの後、本編は4:55から始まります)。