共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

今日はブラームス《交響曲第2番 ニ長調》の初演の日〜クライバー&ウィーン・フィルによるライブで

2024年12月30日 17時17分17秒 | 音楽
今日は12月30日、2024年も明日の大晦日を残すのみとなりました。そんな中、私は今日もひたすら折り紙を折りながら、いろいろと音楽を聴いていました。

調べてみたところ、12月30日には様々な音楽が初演されていることが分かりました。ざっと挙げてみると

●1877年 ブラームス《交響曲第2番》

●1884年 ブルックナー《交響曲第7番》

●1905年 レハール オペレッタ《メリー・ウィドウ》

●1921年 プロコフィエフ 歌劇《三つのオレンジへの恋》

とこれだけあったのですが、今回はその中からブラームスの《交響曲第2番》をご紹介しようと思います。

《交響曲第2番 ニ長調 作品73》は、



ブラームスが1877年に作曲した2作目の交響曲です。重厚で壮大な第1交響曲とは対照的に伸びやかで快活な雰囲気を示すことでベートーヴェンの《交響曲第6番『田園』》に例えられ、「ブラームスの『田園』交響曲」と呼ばれることもある作品です。

1877年6月、ブラームスは



南オーストリアのケルンテン地方、ヴェルター湖畔にあるペルチャッハに避暑のため滞在していました。そこで第2交響曲の作曲に着手し、9月にはほぼ完成したといいます。

その後ブラームスは10月にバーデン=バーデン近郊のリヒテンタールに移り、そこで全曲を書き上げました。《交響曲第1番》が推敲を重ねて20年あまりを要したのと対して《交響曲第2番》の作曲期間は4ヶ月とかなり短期ですが、実は第1交響曲の作曲中にも準備が進められていたという説もあるようです。

ブラームスは、ペルチャッハから批評家エドゥアルト・ハンスリックに宛てた手紙に

「『ヴェルター湖畔の地にはメロディがたくさん飛び交っているので、それを踏みつぶしてしまわないように』、とあなたに言われることでしょう。」

と書き送っています。その後、ブラームスは2年間続けてペルチャッハで夏を過ごし、この地で《ヴァイオリン協奏曲》や《ヴァイオリンソナタ第1番『雨の歌』》などを作曲しました。ブラームスの親友のひとりである外科医のテオドール・ビルロートは、第2交響曲に接して

「ペルチャッハはどんなに美しいところなのだろう。」

と語ったといいます。

初演は1877年12月30日、ハンス・リヒター指揮のウィーン・フィルハーモニー管弦楽団によって行われました。この初演は大成功で第3楽章がアンコールされ、翌年9月にブラームスは故郷のハンブルクに招かれて自身の指揮によって再演を果たしています。

第1楽章はアレグロ・ノン・トロッポ ニ長調 3/4拍子。

冒頭に低弦が演奏する基本動機が登場し、この低弦の動機と共にホルンや木管によりゆったりとした美しい第1主題が奏でられます。その後出てくるヴィオラとチェロによる第2主題は豊麗な音が響き、魅力的なものとなっています。

前半部に繰り返し記号があるのですが、あまり実行されることはありません(私自身、前半部を繰り返して演奏したことは1〜2回しかありません)。後半部からはブラームスらしい厚みのある音楽が展開されますが、コーダでは弦楽合奏のピチカートの上に木管楽器群やホルンが可愛らしくも感じるメロディを展開し、冒頭のテーマを木霊のように響かせながら静かに閉じられます。

第2楽章はアダージョ・ノン・トロッポ ロ長調 4/4拍子

どことなく寂しげなチェロの第1主題によって始まり、ヴィオラがその裏に有機的に絡んでいきます。この主題は裏拍であるはずの4拍目から出発し、音楽の重みが弱拍である4拍目と次の小節の2拍目にあるのが特徴で、長調の楽章ではあるものの、全体に明るい交響曲第2番の中で重い一面を見せています。

第3楽章はアレグレット・グラツィオーソ ト長調 3/4拍子

スケルツォに相当する楽章ですが諧謔的な感じはあまり強くなく、どちらかというとのどかで楽しげな印象を受けます。オーボエの愛らしい主題から始まるこの楽章は演奏時間が短い中でテンポやリズムが何度も変化し、ブラームスならではのオーケストレーションの工夫が随所になされています。

第4楽章はアレグロ・コン・スピリート ニ長調 2/2拍子
 
弦楽器が静かに基本動機を用いた第1主題を掲示し、管を加えて明るい旋律が続いた後、休符を挟んで突然大きな音量でエネルギーが放たれます。強烈な音型や木管の柔らかい旋律を経てヴァイオリンとヴィオラによる第2主題が現れた後、トランクイロ(静かに)と指定された場面で弦と木管が三連符で応答します。

この曲では、ブラームスの4つの交響曲で唯一この曲にのみ使われるテューバを含めた金管楽器群が活躍します。そして最後はトロンボーンのドミソの和音の咆哮の中で、歓喜の高まりを感じながら華やかに締めくくられます。

そんなわけで、今日はブラームスの《交響曲第2番 ニ長調》をお聴きいただきたいと思います。カルロス・クライバー指揮のウィーン・フィルハーモニー管弦楽団による1991年のライブ録音で、『ブラームスの田園』とも称される伸びやかな交響曲をお楽しみください。



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