今朝の厚木市は、台風8号が迫りくる気配を含んだ雨が降っている中でも、雲間から朝焼けの光がわずかに漏れるような実に珍妙な天候で明けました。あまりの異様さに外に出た時に思わずカメラを空に向けてみたのですが、
ちょっとおどろおどろしく見えるくらいの早朝の空の光景に驚かされました。
因みに、見出し画像はイギリスの画家ウィリアム・ターナー(1775〜1851)の《風下側の海辺にいる漁師たち、時化模様》という作品です。荒々しい不安定な波間に浮かぶ小舟の上の漁師たちの心的不安が画面上の暗色の海から想像でき、雲間から晴天が覗いている描写が、嵐が迫って天候が急変していく様を見事に物語っています。
ところで、こんな嵐の日に聴きたくなったのが、
アントニオ・ヴィヴァルディ(1678〜1741)のヴァイオリン協奏曲変ホ長調《海の嵐》です。
ヴァイオリン協奏曲変ホ長調《海の嵐》作品8-5はヴィヴァルディが作曲したヴァイオリン協奏曲の一つで、《四季》が集録されている協奏曲集『和声と創意への試み』作品8の中の《冬》に続く第5曲目にあたる作品です。ヴィヴァルディには、このヴァイオリン協奏曲を元に作られた同じ《海の嵐》というタイトルのフルート協奏曲もあります。
ヴァイオリン協奏曲《海の嵐》は、《四季》と同じく3つの楽章からなっています。
第1楽章はプレスト・変ホ長調、4分の4拍子で、3回のトゥッティの間に2回のソロが挟まれているリトルネロ形式の楽章となっていて、ソロには海のうねりを表すような技巧的な分散和音が多く使われています。そして完全には終止せず、途切れることなく第2楽章へと進みます。
第2楽章はラルゴ・ヘ短調、4分の4拍子で、わずか16小節の短い楽章です。その中でも頻繁に転調していきながら、こちらも完全に終止せずに第3楽章へと繋がります。
第3楽章はプレスト・変ホ長調、8分の3拍子で、5回のトゥッティの間に4回のソロが挟まれているリトルネロ形式の楽章です。トゥッティは3回目で変ロ長調で出る以外は全て変ホ長調ですが、ソロの方は各回ごとにかなり音型が変化していき、ヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲の中でも技巧的にかなり難易度の高いものの一つとなっています。
そんなわけで、台風の今日はヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲《海の嵐》をお聴きいただきたいと思います。ジュリアーノ・カルミニョーラのソロヴァイオリンによる、華やかな演奏でお楽しみください。
台風8号は着実に進路を東海・関東地方に向けて北上して、15時過ぎ頃に静岡県御前崎沖を通過しました。夕方から夜にかけてどのような進路をとるか分かりませんが、せめて台風8号の被害が予想されているよりも軽微でありますように…。